白月の君といつまでも   作:はすみく

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-- Spring, about 17 years old

▽前回のあらすじ
快斗の家に初めて泊まることになった花梨。甘い時間の中で、彼女を取り巻く男たちの存在に快斗は思わず嫉妬を覗かせる。一方、花梨は大切な「縁」への想いを静かに語り――。

第46話
アレを忘れてて…。


046:大事なアレ

 

「……っ、わかった。花梨ちゃんの命がかかってるなら嫉妬してる場合じゃねーな。わりぃ……」

 

 

 ――そうか。幼なじみはともかく、警察の兄ちゃんたちは花梨ちゃんの護衛ってことなんだな……!

 

 

 それなら女子高校生の家に入り浸る(×入り浸ってはいない)のも無理はない。

 ……快斗は自分なりに解釈し、嫉妬心を鎮める。

 自分一人で彼女を守るには限界がある。彼女が無事ならそれが一番だ。

 

 

「ごめんね、快斗くん……。でも、嫉妬してくれたことはうれしいよ」

 

「っ、あったりまえだろ! オレは花梨ちゃんが大好きなんだから!」

 

「ありがと、私もすきだよ?」

 

「ちゅーしていー?」

 

「ん」

 

 

 ……快斗の嫉妬の炎はまだ燻っていたが、チュッと最後に軽く口づけをして和解した。

 

 

「お家にある材料使っていい?」

 

「もちろん! あ、けど、あんま入ってないから買いに行く?」

 

「それもいいね!」

 

 

 結局夕飯は二人で買い物へ行き、メニューはオムライスに決定。

 花梨がとろとろ卵のオムライスを作ると快斗は「すげー! 洋食屋のオムライスじゃん!」なんて褒めた。

 

 

「ふー、食った食った。満腹! もう入んねえ……花梨ちゃんおいしかった! ありがとう!」

 

「よかった~上手にできて」

 

 

 ――零お兄ちゃん……ありがとう……!

 

 

 快斗が満腹と腹を撫でる向かいで花梨はほっと胸を撫で下ろす。

 とろとろ卵は降谷に教わったのだ。

 

 

(練習台になってくれた陣平さんたちにも感謝しなきゃ)

 

 

 快斗の不必要な嫉妬を誘いたくないから、心の中だけで手を合わせる。

 

 

「さて、と。……風呂、沸かす?」

 

「え、あっ、うん。でもシャワーでいいよ?」

 

「そう? じゃあ先に使って。これ」

 

「あ、うん、ありがと……」

 

 

 タオルを手渡され、花梨はバスルームへ向かった。

 だが服を脱ごうとして気付いたが、お泊まりセットは快斗の部屋だ。

 寝間着を取りに快斗の部屋へと戻る。

 

 その途中で。

 

 

『ああああぁ~~っ!!』

 

 

 部屋の中から快斗の叫び声が聞こえた。

 

 

「快斗くんどうしたのっ!?」

 

 

 驚いた花梨はノックもせず部屋のドアを開いた。

 

 

「へ……? あ、花梨ちゃん? ふ、風呂は?」

 

 

 快斗は部屋の中央でなぜか頭を抱えて天井を見上げており、花梨に気付くと尋ねてくる。

 

 

「あ、お泊りセットここだったなって取りに……なにかあったの……?」

 

「や? いや……、その……」

 

「ん?」

 

「……アイスが食べたくなってさ! 買いに行こうかなって!」

 

「え、アイス?」

 

「ああ……食後ので、デザートに……」

 

 

 花梨が尋ねれば快斗はアイスを食べたいと言う。

 アイスであんな大きな声を出したというのか。

 さっきお腹がいっぱいだと言っていて、アイスが食べたそうな顔ではない気がするのだが……。

 

 何となく歯切れが悪い気もするが、そんなに食べたいなら買いに行けばいい。

 

 

「うん、いいよ? コンビニ行こっか」

 

「花梨ちゃんは風呂に入ってていいよ?」

 

「私も行く。いっぱい食べちゃったから少し歩かなきゃ。ってまた食べるんだけどねっ」

 

「ぅ、可愛い……っ、花梨ちゃんがそう言うなら……」

 

 

 コンビニにアイスを買いに行こうということで、提案してみたが快斗はついて来て欲しくなさそうだが渋々了承した。

 結局二人で手を繋ぎコンビニへ――。

 

 

「……好きなの選んでて。オレちょっと買わなきゃいけないもん思い出した」

 

「はーい」

 

 

 快斗は花梨をアイスクリームケースの前に残し、一人、別の商品棚へと向かった。

 

 

「……っ」

 

 

 ――ど、どれを買えばいいんだ……!?

 

 

 快斗が立ち尽くしたのは、衛生用品の棚の前だ。

 部屋の掃除に気を取られ、大事なアレ(・・)買うのを忘れていた。

 しかも、それは快斗にとって人生で初めて購入するもので――。

 

 

「快斗くん……?」

 

「あっ」

 

「……あ、なるほど、こん……どー……」

 

「ちょっ、タンマ!!」

 

 

 棚の前でフリーズしていた快斗の背後から、花梨がひょっこりと顔を出した。

 その単語を口にする前に、快斗は慌てて彼女の口を両手で塞ぐ。

 

 

「ンン……?」

 

「花梨ちゃん、あなたときどき、本当に心臓に悪いわ……!」

 

 

 ――なんではっきり言おうとするんだよ!

 

 

 そう、快斗が買い忘れたアレ(・・)とは、避妊具。

 愛し合う者同士、互いを守るために不可欠なものだが、それを真っ向から実況されるのは、いかに怪盗といえどポーカーフェイスを維持できない。

 

 花梨の声は普通の声量だったが、声に出されると慌ててしまう。

 

 

「小声ならいいよね? ……ゴムって色々あるんだねー?」

 

「……っ……(無邪気過ぎる……)」

 

 

 花梨が避妊具を見つつ手を口元に添え、こっそり伝えてくるから快斗の頬は真っ赤に染まった。

 

 

「あ、サイズがあるんだね。快斗くんのサイズは?」

 

「ぁぅ……花梨ちゃん、……そういうこと、女の子が口にしちゃいけねーの。……っていうか、わざとなのか? 誘ってるのか!?」

 

 

 ――この子なんなの? 天然なの? えっちなの? ……もう、食べちゃうよ?

 

 

 淡々と純粋な疑問をぶつけてくる花梨に、快斗はたじたじだ。

 

 

「そうなの? ごめん、私そういうの疎くって。純粋な質問だったのだけど」

 

「……無邪気すぎるのも心配だなぁ……」

 

 

 この子の前だと、世界一のポーカーフェイスも形無しだ。

 悟った快斗は花梨に金を渡し、「アイスを買って来なさい」とアイスクリームケースへと再び追いやり、花梨がアイスを選んでいる間にさっと購入した。

 

 ……会計を済ませ、コンビニを出て手を繋いで歩く。

 

 

「快斗くん、チョコアイスでよかった?」

 

「オレ、チョコアイスだいすき!」

 

「そうなんだ? 私はバニラにしたよ。でもチョコアイスも食べたいから一口交換してもらってもいい?」

 

「もっちろん!」

 

「ふふっ、やった~。うれしいなっ♡」

 

「……かっわっ。つらっ……!」

 

 

 ――もう、アイスはあげるから、早くオレに食べられちゃいなよ。

 

 

 快斗はにこにこと朗らかに笑う花梨も好きだが、キスしたときのうっとりした艶姿も大好きだ。

 早く家に帰ろう。もうあそこは二人の愛の巣。今晩は寝かさない。

 

 ……そう思うと頬は熱くなり、鼓動が早鐘を打った。

 

 

「だ、大丈夫?」

 

「うわあ~! 花梨ちゃーん♡♡」

 

「っ??」

 

 

 花梨が首を傾げて見上げると、快斗は道端だというのに花梨に抱きつく。

 

 好き過ぎて辛い……。

 快斗の胸は今夜の期待と緊張でドクンドクン。痛みも伴い、花梨が背中をトントンと撫でてくれたが、しばらくの間治まらなかった。

 

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