白月の君といつまでも   作:はすみく

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-- Spring, about 17 years old

▽前回のあらすじ
ブルーパロットの奥で、快斗は寺井に花梨への狂おしいほどの独占欲を吐露する。彼女を「沼」と称し、全てを奪いたいと願う快斗。帰宅後、青子との約束を前に、快斗は素顔を隠そうとする花梨を励まし、白髪のままの姿で外の世界へ連れ出した。

第57話
トロピカルランド二日目w
公式ヒロインとイチャイチャするのも好き。


057:園内散策

 

 

 

 

 

「おーい、青子ー!」

 

「あー、バ快斗! おっそーい! もうっ十五時って言ったでしょ! 十五分も過ぎてるじゃない! って……はううっ!? そちらのめちゃくちゃ綺麗なおねーさんはだあれ!?」

 

 

 トロピカルランドに着いたのは、十五時十五分過ぎ。

 結局遅刻してしまった。

 

 快斗が入口前で待つ青子に声を掛けると、青子は不機嫌を爆発させたが、後ろにいる花梨に気が付くと瞳を輝かせた。

 ……青子は綺麗なものが大好きなのだ。

 

 

「オレの彼女!」

 

 

 ――なあ青子、青子ならわかるだろ?

 

 

 青子の食いつきに、快斗は満面の笑みで言ってのける。

 きっと花梨推しの青子、彼女なら気が付くはずだ。

 

 

「あなたの彼女は花梨ちゃんでしょ! って花梨ちゃんはどうしたのよ!? まさか、この綺麗なお姉さんに乗り換えたとか言わないわよね? だとしたら青子怒るよ!?」

 

「まっさかー。オレは花梨一筋だぜ?」

 

 

 快斗のシャツの胸元を掴み青子が詰め寄ると、快斗は頭の後ろに手を組んでへらへら笑みを浮かべて愉快そうだ。

 

 

「花梨一筋って、じゃあこのおねーさんは……って、あれ……? え? え? その綺麗な瞳の色、見覚えがある……えっ、えっ? えええええっ!?」

 

 

 訝しげに花梨へと視線を移した青子の様子が、徐々におかしくなっていく。

 最後には、目が飛び出してしまうのではないかと心配になるくらい驚いて声を上げた。

 

 

「あ、青子ちゃん……遅れてごめんね」

 

「かっ、かぁああああ~~りぃいいいんちゃあーーん!!? いや、マジで? いや、声がそうね。本当に花梨ちゃんなの!? だって、か、髪が……」

 

 

 おずおずと花梨が挙手すれば、驚愕した青子が疑問に思って当然の白髪について言及する。

 

 

「あ、えと……実はこれが地毛で、普段は(かつら)を被っててね……」

 

「はぁううぅっ!! ヤバい。胸が苦しい……」

 

 

 花梨が説明すると、青子は突然胸元を押さえ俯いてしまった。

 

 

「ごめん……みすぼらしいよね……こんなおばあさんみたいな白髪頭……」

 

「ちがう! ときめきが止まらないの。花梨ちゃん。やっぱり私の目に狂いはなかった……! 可愛い、すき……♡ 好きです、付き合って下さい……!」

 

 

 がしっと青子の両手が花梨の両肩を掴む。

 そして、真っ直ぐ花梨を見据えてまさかの告白。

 

 ……どこかで聞いた告白と同じだ。

 

 

「えっ……えぇ?」

 

「おい青子。オレの彼女だぞ」

 

 

 呆気に取られる花梨の隣で、快斗が露骨に眉を寄せた。

 

 

「青子、快斗なんかよりも、ずっと花梨ちゃんの役に立てる自信ある。今日は快斗なんて放っておいて、二人でデートする?」

 

「おい」

 

「やだ、マジ尊い……。なんで? なんで今まで黙ってたの~……!?」

 

 

 青子の瞳には、もはや快斗を監視する義務など忘れたかのように、大きなハートマークが浮かんでいた。

 快斗がツッコむも、それを無視して青子は花梨に抱きつく。

 

 

「あ……えと……。私、昔この髪のせいでいじめられてて、あんまりいい印象が無くて隠してたの」

 

「そうだったの……辛かったのね。でも大丈夫だよ! 花梨ちゃんすっごく可愛いから! たぶん、いじめてた人たちは花梨ちゃんがあんまり可愛くて、嫉妬して意地悪してたのよ」

 

「青子ちゃん……」

 

 

 とんとん、と。青子が優しく背を撫でてくれる。

 

 ああ、青子ちゃんはやっぱりいい人だ……。

 花梨が感動していると、頭に快斗の手が触れた。

 

 

「そうだぜ。花梨の可愛さはマジ異次元レベル。芸能人も真っ青ってやつよ」

 

 

 快斗もぽんぽんと優しく頭を撫でてくる。

 

 

「か、快斗……ほ、褒めすぎだから」

 

「わかるー」

 

「あ、青子ちゃんまで……、恥ずかしいよ……」

 

 

 快斗と青子に褒めちぎられた花梨は、身を小さく縮こまらせる。

 そんな風に褒めてもらったことなど今までなくて、気恥ずかしさに赤面した。

 

 

「それにしても、なに? 快斗はもう花梨ちゃんのこと呼び捨てにしてるのね? 花梨ちゃんも快斗って……」

 

「え? あ、ああまあ……な?」

 

「え? あ、うん……」

 

 

 青子の指摘に、快斗と花梨は互いに目配せし合って頬をぽっと赤く染める。

 ……金曜の夜から自然とそう呼ぶようになってしまい、そのままなのだ。

 

 

「え、なに? この空気? へ?」

 

 

 ――なんだろう……? 二人ってこんな感じだったっけ……? 纏う空気が違うような……?

 

 

 花梨はともかく、快斗はグイグイ行くタイプで、照れなんて見せなかったはずだが、その彼までもが照れ臭そうにしているのは――なあぜなあぜ?

 青子は、二人の間の空気が以前と違っていることには気付いたが、なぜなのかはよくわからなかった。

 

 

「……と、とにかく中へ入ろうぜ!」

 

「っ、そうだね!!」

 

「あっ、待ってよ~!」

 

 

 気まずい快斗は、花梨の手を取り、青子から奪って園内へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 怪盗キッドの犯行予告時間は二十時。

 

 花梨たちは、昨日行けなかったアトラクションを中心に園内を回ることにした。

 女の子二人の後ろを快斗がついて行く形で歩く。

 

 ……園内クルーズも、ミステリアスハウスも、ゴーカートも。青子は花梨に夢中で快斗のことなど見向きもしなかった。

 

 

「オレ、いる意味ある?」

 

 

 ――オレを見張るために来たんじゃねーのかよ……。

 

 

 昨日は楽しかったのにな……と、一人後ろについて歩く快斗は、頭の後ろに手を組みつまらなそうに歩く。

 

 

「バ快斗、ちゃんとついて来なさいよー?」

 

「あっ、ポップコーンワゴン!」

 

「食べよ食べよー♡」

 

 

 後ろを振り向き、青子は快斗に注意しつつ、園内のワゴンを見つけた花梨に賛同。二人して別の味のポップコーンを購入した。

 

 

「花梨ちゃんあーん♡」

 

「あーん」

 

「きゃわわ♡」

 

 

 青子がキャラメルポップコーンを花梨の口元に持っていくと、花梨は口を開ける。

 素直な花梨に萌えた青子は、未だ瞳にハートマーク全開。花梨を餌付けし懐柔しようとしている。

 

 

「ん、甘い! 青子ちゃんも食べる?」

 

「あーん♡ ん! バター醤油おいしっ!」

 

「ふふふっ♪ キャラメルもおいしいね!」

 

「ねー♡」

 

 

 花梨も自身が購入したバター醤油味のポップコーンを青子に催促され、口に入れてやり二人して絶賛。キャッキャウフフ。

 

 

「……オレ、要らねーじゃん。ていうか青子、オレの彼女餌付けすんな」

 

「快斗もあーんして?」

 

 

 不満を口にする快斗に、花梨はポップコーンを一粒口元に持っていく。

 

 

「っ、あーん♡ うまっ♡ オレ、バター醤油味一気に好きになったわ!」

 

「うふふっ。おいしいよねー♡」

 

 

 快斗の機嫌は一気に良くなり、嬉しそうに顔を綻ばせた。

 そうして快斗はポップコーンで汚れた花梨の手首を取り、指先をちゅっ、ちゅっと啄む。

 

 

「花梨の方がおいしいけどな?」

 

「っ、もうっ、なに言ってるのっ!」

 

 

 ニヤッと口の端を上げて快斗が見下ろせば、花梨は耳まで紅く染め上げた。

 

 

「っ……おのれ、バ快斗デレデレしおって……」

 

 

 ――はあはあ……照れてる花梨ちゃんてえてえ……!

 

 

 目の前でいちゃらぶを見せつけられた青子は一瞬赤面したものの、花梨の恥じらう姿に身悶える。

 快斗に対してメラメラと嫉妬の炎を燃やした。

 

 ……さあ次のアトラクションへ行こう。

 そんな時だった。

 

 

 “ぐ~きゅるるる。”

 

 

「「ん?」」

 

 

 青子の隣で何かが鳴った。

 後ろを歩く快斗と青子、二人の視線が花梨へと注がれる。

 

 

「あ」

 

「なに? 今の可愛い音! 花梨ちゃんお腹減っちゃった感じ?」

 

「っ、ご、ごめん……お昼あんまり食べてなかったから……」

 

 

 ――そうです、私のお腹の虫が鳴りました……!

 

 

 静かに花梨は手を挙げた。

 顔が……赤い。

 

 腹の虫の主は花梨である。

 夢の中の食事では気持ちは満たされても、腹は満たされていなかったらしい。

 花梨は青子に指摘され恥ずかしさに俯いた。

 

 

(だから食えって言ったのに……! 夢の中でパスタ食ったから大丈夫とか、どこのファンタジーだよ!)

 

 

 心の中で盛大にツッコみつつも、真っ赤になって俯く彼女があまりに可愛くて、快斗は吹き出しそうになるのを必死で堪えた。

 

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