白月の君といつまでも   作:はすみく

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-- Spring, about 17 years old

▽前回のあらすじ
夕食後、三人で立体映画館へ。予告時間が迫る中、快斗は正体を疑う青子によって、隣の花梨と手錠で繋がれてしまう。しかし、過去の経験から「拘束」に動じない花梨は、快斗の正体を知りつつ彼を送り出す。快斗は身代わりを残し、夜の空へと消えていった。

第59話
物騒な展開…。
あれれ~? ただらぶらぶしたかっただけのはずなのにおかしいな~w


059:狙撃未遂

 

「わぉ!(快斗の形してる……!)」

 

 

 風船は快斗の形をしており、自動でどんどんと大きく膨らんでいく。

 花梨は驚いて目を瞬かせた。

 

 

「今の、すごいシーンだったね!」

 

「え? あ、うんっ! びっくりした……!」

 

 

 思いのほか大きい声が出ていたらしく、青子に声を掛けられてしまう。

 花梨も慌てて3D眼鏡を装着し、前を向いて3D映画を楽しんだ。

 

 快斗が戻って来るまでに、何度か青子が花梨にくっついてきたが、彼女が彼を気にする様子はなかった。

 快斗が言っていたように、花梨に監視を任せっきりにしている……。

 

 そうして、そろそろ映画も終わる時間。

 物語は序破急を経て、爆音とともに大団円で終わった。

 

 

「うわぁ~~っ♡」

 

 

 パチパチパチ。

 青子が興奮気味に拍手してから3D眼鏡を外す。

 

 

「おもしろかったねー♡」

 

「はあっ、はあっ、あ、ああ……」

 

 

 ふいに、青子の視線が快斗に向けられたが、快斗は花梨を抱きしめていた。

 

 

「ちょっ!? 快斗、なに花梨ちゃんに抱きついてんのよ、えっち! 離れなさいよっ!」

 

「あ、ああ……ちょっと寝ぼけてたみてーで……」

 

「なーんで、あんなにおもしろかったのに寝ちゃうのよバ快斗~!!」

 

 

 青子が慌てて花梨から快斗を引き剥がし、叫んだ。だが、花梨は茫然とし固まったままで。

 快斗はといえば、青い顔で身体を震わせながら、花梨の様子を窺っている。

 

 ……三人は映像館を出て、閉園時間も間近ということで、帰宅することにした。

 

 

「……あ、お父さんだ!」

 

「え? なんだ、テレビか……」

 

 

 出入口に向かい、通り掛かった園内の巨大モニタに、夜のニュースが流れる。そこに中森警部の映像が映った。

 

 

『見てるか!? 怪盗キッド!! この次は必ずきさまを逮捕してやる!!』

 

 

 ……インタビューを受け、興奮気味に唾を飛ばしながら告げる中森警部の様子に、犯行時、青子の変装をしてから逃げて来た快斗は、自分の疑いは晴れたと感じた。

 

 

「快斗はやっぱり快斗ね! よかったね、花梨ちゃん!」

 

「……、……へ? あ、うん……」

 

 

 青子が花梨の肩をぽんと叩くも、花梨は上の空だ。

 ……映像館で遭ったことを考え込んでいる。

 

 

「あー、よかったよかった!! 安心したらアイス食べたくなっちゃった。買って来るね~!」

 

 

 そう言って、青子はアイスクリームワゴンを見つけ、駆けて行った。

 

 

「花梨……大丈夫か? 怪我は?」

 

 

 青子のいない間に快斗は、花梨に近づき声を掛ける。

 

 

「う、ん……してない。大丈夫……今はまだ……」

 

「今は……?」

 

「ん……」

 

「……あとで話そう? まずは青子を帰してやらないと」

 

「うん……」

 

 

 ……快斗が映像館に戻ってくる直前のことだ。

 

 快斗は予告通り、天使の王冠を見事盗み出し、映像館のテントを突き破って戻って来たのだが、落下する視界の端で、花梨に向けてボウガンの矢が放たれるのを目撃した。

 一本、二本と矢が放たれ、落下しながらトランプ銃を構えるも間に合わない。 万事休すかと思われたが、なぜか矢は空中で折れて弾け飛んだ。

 

 そして、少し遅れて三本目が放たれる。

 

 

「はあっ、はあっ……花梨っ!」

 

「へっ?」

 

「あっぶねえっ!!」

 

「ええっ!?」

 

 

 ……これなら間に合う。

 席に着地した快斗はすぐさま花梨を抱き寄せ、ボウガンの矢に向けトランプ銃を発射。

 トランプに当たった矢は逸れ、床に落ちた。

 

 

「……び、びっくりしたー……(い、今の矢だよ、ね……?)」

 

「っ、オレもだよ! はあっ、はあっ(ってか犯人はどこだ!?)」

 

 

 ボウガンが放たれた方角を見たが、すでに誰もおらず……。

 一体何が起こったのか、花梨も快斗もわからなかった。

 

 周りは映画のクライマックスの爆音で気付いていない。

 人の数が多過ぎて、犯人の特定もできないまま、逃げるように映像館を後にしたのだ。

 

 

「お待たせ~! じゃーん! アイスだよ~!」

 

 

 ……青子がアイスを手に戻って来た。

 快斗と花梨は互いに目を合わせた後で、青子に笑顔を向ける。

 

 

「わぁっ! おいしそう! 青子ちゃんありがとう! お金払うね、いくらだった?」

 

「いいよいいよ! 今日は青子に付き合ってくれたから二人にお礼!」

 

「でも」

 

 

 青子が買って来たアイスは三種類。

 イチゴバナナに、メロンシャーベット、チョコレートアイスだ。

 

 花梨には青子に奢ってもらう理由がない。

 遠慮しようとしたが、快斗が青子からチョコレートアイスを受け取り、一舐めする。

 

 

「サンキュー。やっぱチョコレートアイスだな。礼だって言ってるし、花梨ももらっておけばいいんじゃねーの?」

 

「そう?」

 

「そうそう、どっちがいい? 青子、メロンシャーベットが食べたいな~」

 

 

 快斗が、ウマウマとチョコレートアイスを食べながら言うものだから、花梨は青子をちらり。

 青子にメロンシャーベットが良いと言われたため、イチゴバナナをもらうことにした。

 

 

「ん~♡ おいしぃっ♡ ありがとう、青子ちゃん!」

 

「ンフフ~♡ どういたしまして! 花梨ちゃんこそ、今日は付き合ってくれてありがとう! 快斗もね」

 

「ん? あ、ああ……」

 

 

 晴れ晴れとした青子の笑顔に、花梨と快斗は互いに視線を交わし微笑み合う。

 きっと青子は、幼なじみの疑いを晴らすため、急だが今日、トロピカルランドに誘ったのだ。疑いが晴れほっとしたことだろう。

 

 ……青子の気持ちが花梨にはなんとなくわかる。

 

 花梨も、もし新一が事件の犯人だと疑われたら、疑いを晴らすためにあれこれと動いたに違いない。

 恋愛感情はないが、幼なじみというものは、それくらい大切な存在なのだ。

 

 そうして三人はアイスを食べ食べ帰宅の途に就く。

 今日は三人なので、バスで帰ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……?」

 

 

 バス停ではバス待ちの客が複数いて混雑し、長蛇の列となっている。

 二人ずつ並ぶ蛇行方式で花梨たちもそこに並んでいたのだが、ふと誰かの視線を感じた。花梨はその方向へと顔を向ける。

 

 

「花梨、どした?」

 

「あ……ううん、誰かに見られている気がしたんだけど……」

 

「なに!?」

 

 

 映像館での出来事のせいか、快斗は険しい顔で花梨の視線の先に目を凝らす。

 

 

「……でも気のせいだったみたい」

 

「そっか……。こっちおいで」

 

「え?」

 

「もう少し内側に入っていた方が安全だ」

 

「快斗……ありがと……」

 

 

 快斗に手を引かれ、花梨は列の内側へと移動させられた。

 視線を感じた方向から見えない位置に移動すれば、おいそれと襲われることはないはず――。

 

 そう考えた快斗は、自分が花梨の壁になるように彼女の腰に手を回した。

 

 

「……、……、……っ(なになになにー!? 二人の雰囲気がやばいんですけどー!?)」

 

 

 快斗と花梨のやり取りを見た青子の頬が、真っ赤に染まった。

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