白月の君といつまでも   作:はすみく

68 / 189
-- Spring, about 17 years old

▽前回のあらすじ
不健全な空気を松田に一蹴された快斗と花梨。警察組から説教を受けつつも、降谷から一カ月限定の「身辺警護契約」を提示される。費用を負担し花梨を守ろうとする彼らの厚意を受け入れることにしたが、松田のいたずらで再び騒動に発展し……。

第67話
プレイ中のゲームはアレです。アレ。


067:快斗の提案

 

「……そういうわけで、黒羽君、安心してもらえたかな?」

 

「え? あ……、はい……」

 

 

 ――おお、急に言い合いが終わった……!

 

 

 しばし口喧嘩らしき言い合いを経て、最後に降谷と松田は和解(?)。

 どういうわけかはよくわからないが、降谷は花梨に警護がつくから過度な心配はしなくていい、と言いたかったようだ。

 

 ……伊達は元警察官で、現在は警備会社のプロの警護スタッフ。

 その警備会社は通常は警備業務が主だが、身辺警護も請け負っている。

 明日挨拶に来る女性スタッフもかなり腕の立つ人物で、大男も簡単に制圧できる程の実力者だから、安心していいとのことだった。

 

 プロの警護人がついてくれるのなら……少し不安材料を手放してもいいかもしれない。

 一昨日から緊張で張り詰め気味だった快斗から、「はぁ……」と小さくため息が漏れた。

 

 ……花梨がサインし、警護契約は締結。

 その後、降谷たちは花梨のトレーニングルームで再び汗を流し始める。

 花梨と快斗は、その間リビングでゲームをしながら過ごした。

 

 

「じゃー、またなー」

 

「明日、挨拶に伺う前に連絡を入れる」

 

 

 トレーニングが終わり、さっぱりすっきりした顔の松田と、仕事モードな伊達がそれぞれ靴を履き、花梨の家から出て行った。

 

 

「花梨ちゃん、高校生なんだからしっかり勉強するんだよ。色恋なんかに現を抜かさないように」

 

「零お兄ちゃん……」

 

「ちょっ、それは余計なお世話だろっ!!」

 

 

 最後に降谷が快斗に冷たい視線をチラッと送ってから、花梨の頭を撫で、学業を頑張れと爽やかな笑顔で言い聞かせてくる。

 ……快斗が反論する前にドアは閉まり、言い逃げされた。

 

 

「……あのにーちゃんたち、本当に汗流して帰っていくのな……。しかもあの松田って人、シャワーまで浴びてったな……」

 

「ふふっ。そうだよ? いっつもあんな感じ。私、自分の部屋か、ここでゲームしてるし」

 

「そうなんだ……」

 

 

 リビングに戻った花梨と快斗はソファに腰掛け、プレイ中のゲームを再開する。

 

 

「あっ! 花梨っ、今甲羅投げるなよっ! クラッシュしたじゃん!」

 

「へっへーんっ! 投げたもん勝ちーっ!」

 

「あ~~、またオレの負け確!」

 

「フッフッフ。アイテムの使いどころが肝だよねー♪ やったぁ♡ 一位ゲット~!」

 

「あー……くっそ。かわええ……♡」

 

 

 カーレースゲームにはしゃぐ花梨に、快斗の頬は緩みっ放しだ。

 花梨からは何も教えてもらえなかったが、同席してよかった。

 

 ……明日は自宅待機で花梨の外出はなくなり、明後日から警護のプロが付く。

 ならばそこまで心配しなくていいかと思うと、安心して大好きな彼女の顔を眺めていられるというもの。

 

 快斗は怪盗キッドとしての活動もあるし、花梨の元に来るのは着替えてからでないといけないが、それでもこれでいいとほっと胸を撫で下ろした。

 

 

「明日、本当は青子ちゃんと遊ぶ予定だったんだけどなー……」

 

「ガマンガマン、命大事に。だぜ?」

 

「そうだね……」

 

 

 ――今月は絶対大丈夫なのに……。

 

 

 メッセージアプリで青子に明日の断りを入れ、快斗に宥められて、花梨は不服ながら頷く。

 

 

「なあ、花梨」

 

「ん?」

 

 

 “ピコン!”

 

 快斗に呼ばれたタイミングで花梨のスマホに通知が鳴る。

 開くと青子から「大丈夫だよー! また今度遊ぼ♪ 明後日学校でね!」というメッセージと、トロピカルランドのマスコットキャラ・トロッピーのスタンプが届いていた。

 

 

「明後日からさ、この髪のまま学校行ってみない?」

 

「ええっ!? お婆さんのまま!?」

 

「おばぁって……大丈夫! 花梨は綺麗だよ。お婆さんなんてとんでもない……! みんな驚くぜ? 手の平クル~ってな!」

 

「てのひらくるー?」

 

 

 スマホを操作する花梨の髪を一束手にして、快斗が(かつら)を被らずに学校へ行こうと誘う。

 花梨は驚いたが、快斗は大丈夫だと優しい瞳で微笑んだ。

 

 

「オレ、彼女自慢したいなっ♡」

 

「んー……自慢になるのかな……。快斗、こんな白髪の彼女恥ずかしくないの?」

 

「恥ずかしいもんか! 優越感に浸ってやるわ!」

 

 

 ――連休前に花梨の陰口を叩いていた奴ら、吠え面かくがいい……!!

 

 

 本当の花梨を前にして惚れない男はいまい、女も然り。

 機は熟した。

 今一番彼女に近い男は快斗、自分のみだ。

 

 隣に連れて歩いたら羨ましがられること間違いなし。

 それに、彼女が自信を持って前を向いてくれるよう後押しするのは、彼氏の役目である。

 

 

「ゆうえ……? ……よくわかんないけど、快斗が大丈夫っていうなら……暑くなってきたしまあいいか……」

 

「……あ、なに? 実用的な問題……?」

 

 

 ――よっし! 花梨も大丈夫そうだぜ……!

 

 

 花梨は今一つよくわかっていない様子ながら、快斗の言葉通りに頷く。

 数日前までは拒否反応が凄かったが、毎日「可愛い」と言い続けた甲斐がある。

 ……いや、暑くなってきたとは……一体……。

 

 

「そう、暑いと蒸れちゃって」

 

「ハハハッ! じゃあ去年、結構大変だったんじゃねーの?」

 

「そうだよー。もう、汗だらだらで。夏なんて私、プールも見学してたでしょ? 暑くて辛かったよ……」

 

 

 暑いと蒸れる。

 そう、鬘は頭が蒸れるのだ。

 

 去年の花梨は通常の体育はともかく、水泳は鬘が外れる危険があるためプールに入れなかった。

 これからの季節、気温もぐんぐん上がり暑くなってくる。

 鬘を外す、ちょうど良い機会だと受け入れることにした。

 

 事あるごとに快斗が「綺麗だ」と、「大丈夫だ」と言ってくれる。

 きっと傍で見守っていてくれるだろうし、怖くない。

 彼が「大丈夫だ」と言えば、大丈夫な気がしてくるから不思議だ。

 

 

「おおっ♡ じゃあ、今年はプールに入れるっ!?」

 

「っ、な、なにその目……えっち」

 

「花梨の水着姿、楽しみにしてるっ♡ 夏になったら海でも行こーぜ!」

 

「海……ふふっ。行けたらいいね……!」

 

 

 快斗の目がニヤニヤしている。なんだかイヤラシイけれど、本当に嬉しそうだ。

 

 海に行くのは夏……。

 その頃隣には居られないが、一緒に行ったイメージだけは膨らませておいた花梨だった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。