白月の君といつまでも   作:はすみく

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-- Spring, about 17 years old

▽前回のあらすじ
花梨の容姿を認めた深沢が彼女をモデルとして意識し始める一方、謝罪した内田たちは花梨から容赦ない拒絶を受ける。そんな中、快斗と花梨が靴下やシャツの貸し借りを平然と話し、クラスは「事後」の連想で赤面。無自覚な二人が教室を騒然とさせた。

第74話
基本的に土日はデートしようと思ってます。
お買い物の回。


074:デートのお誘い

 

 

 

 

 

「え、スケートリンク?」

 

「そっ! 屋内スケートリンクなんだけどさ。土曜、一緒に行かねー?」

 

「いいよー」

 

 

 昼休みになり、昼食を終えた花梨たち。快斗が土曜にスケートリンクでデートしないかと誘ってくる。

 花梨は特に予定もなかったので、二つ返事で了承した。

 

 

「お! 花梨ちゃんノリいいね! さっすがオレの彼女!」

 

「私、スケートやったことないの。だからやってみたい……!」

 

「そっかそっか! よかった♡ オレの奢りだから安心してくれていーぜ!」

 

「わーい、ありがと~♡」

 

 

 普通スケートリンクは冬季のみの営業が多い。だが屋内スケートリンクはこの時季でもやっているらしい。

 気温の高い昨今、屋内スケートリンクは涼を得るのに人気のスポットとなっている。

 

 快斗の奢りと聞いて、花梨は奢ってもらわなくてもよかったが、トロピカルランドの入場券のこともあり、断るのも悪い気がしてそのまま好意を受け取ることにした。

 自分が喜べば快斗も嬉しそうに微笑むから、これでよかったのだと花梨はにこにこ。

 

 

「この時期にスケートリンクなんて涼しくていいな~。青子も行きたーい!」

 

「えー、オレたちデートなんだけど?」

 

「青子も行くー! 花梨ちゃんにスケート教えた~い!」

 

 

 花梨と快斗の話を聞いていた青子が自分もスケートリンクに行きたいと挙手してくる。

 快斗は不服そうに頬を膨らませるが、青子は是非にと花梨に詰め寄った。

 ……そんな青子に花梨は。

 

 

「行こ行こ!」

 

 

 青子の参加を快諾。

 明るい笑顔で「滑るコツとかあるの?」なんて青子に質問し始める。

 

 

「花梨……」

 

「みんなで行くときっと楽しいよ♪」

 

「……しょうがねーなぁ~!」

 

 

 せっかくのデートだというのに、あっさり青子の参加を許す花梨に快斗は眉を寄せたが、可愛い彼女がそう言うならと渋々了承した。

 

 あとで花梨に相談するつもりではあるが、実は今度のデート。次のターゲットの下見を兼ねている。

 屋内スケートリンクの窓から土曜、美術館に持ち込まれるとされる絵画、“アダムの微笑(ほほえみ)”を確認するために計画したもの。

 夜には怪盗キッドが掻っ攫う予定なのだ。

 

 もちろん、搬入確認さえ終えたら、時間が許すまで花梨といちゃいちゃするつもりだったから、青子までいるとなると二人の時間が減ってしまうわけで。

 青子は遠慮しろよと思った快斗だった。

 

 

「恵子も行くよね!」

 

「ごめーん! その日は用事があるからダメだわ」

 

「え……、じゃあ、青子お邪魔虫じゃん……」

 

 

 ……いつの間にか青子が恵子を誘っている。

 だが、恵子は用事があるから行けないらしい。

 

 自分の置かれた状況に気付いた青子は、気まずそうにチラッと花梨に目を向けた。

 

 

「そんなことないよ! 私、青子ちゃんと一緒に滑りたい! トロピカルランドすっごく楽しかったもの!」

 

「あぅ、花梨ちゃん……♡ すき……♡」

 

 

 花梨はにこにこしながら青子の手を取る。

 天使のような花梨の微笑みに青子はめろめろだ。

 

 

「はあ……」

 

 

 ――花梨がいいって言うならしゃーねーな~……。

 

 

 今日も眩しい笑顔を見せてくれてありがとう。

 快斗は可愛い彼女の笑顔に口角を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……約束は土曜日、その前日金曜の帰り道――。

 

 “今日は花梨と帰るー!”とのことで、快斗がいつものように花梨の鞄を持ち、手を繋ぎながら仲良く家路をゆく。

 権堂が近くにいるらしいが、姿が見えないから会話も聞こえていないだろう。

 だが、聞かれるとまずいので、快斗は花梨の耳に顔を近付け耳打ちをした。

 

 

「ンっ、くすぐった……え? ターゲットの下見?」

 

「へへっ♡ そ。隣が美術館なの知ってる?」

 

「あ、うん。地図見たら書いてあったね」

 

「うん、そこに土曜、ターゲットが搬入されるんだ」

 

 

 耳に吐息が掛かり、花梨は肩を竦めつつそっと快斗を窺う。

 花梨の様子に快斗の顔はにやにや。嬉しそうに続けた。

 

 ターゲットの下見……。

 それはつまり、怪盗キッドが盗みに入るということである。

 

 

「そうなんだー」

 

 

 嬉々として語る快斗に次のターゲットを知らされた花梨は、何でもないことのようにさらりと流す。

 快斗のしたいことは進んで協力しないまでも、止めるつもりはない。

 

 世間一般の犯罪の善し悪しについて、正義の塊みたいな新一には決して言えないが、花梨は他の人間とその辺りの感覚がそもそも違う。

 誰かが理不尽に傷付けられることがなければ、その罪のほとんどを許容できるほど寛容だ。

 

 

「花梨に付き合ってもらうのは悪いなーと思ってんだけどさ」

 

「ううん、いいよ。スケート楽しみだし♪ 屋内だから権堂さんも警護しやすいと思うの。私にばっかり構わないで、快斗も好きに行動してくれていいからねっ」

 

「っ、花梨ちゃん理解ある~! もうすき~♡♡」

 

 

 不意に快斗の唇がぶっちゅ~っと頬に吸い付いた。

 

 

「ンッ! も、もぉっ快斗! ここ道路だよ!?」

 

「ほっぺにちゅーくらいいーじゃん! ちゅー!」

 

「いーやー!」

 

 

 花梨は、誰もが行き交う道路にも関わらず、キスをしてくる快斗の頬を全力で押し返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここで大丈夫なのか?」

 

「うん、権堂さんもいるから」

 

「わかった。じゃあ……明日な」

 

「ん」

 

 

 本当ならマンションまで送りたかった快斗だが、花梨はスーパーに寄ってから帰るため、今日は途中でお別れだ。

 快斗も明日に備えて準備もあるのだろう。花梨が呼び寄せ権堂がやって来ると「花梨をお願いします」、そう言って頭を下げて帰っていった。

 

 

「スーパーに寄られるとか」

 

「はい、今夜はカレーでも作ろうかなって。権堂さんも食べて行かれませんか?」

 

「宜しいのですか!?」

 

「もちろん! 今夜は快斗もいないし、私一人だから、よかったら一緒に」

 

「……お、お心遣い痛み入ります。私、カレー大好きです」

 

 

 権堂は花梨の前だとなぜか少々緊張したような顔をする。

 一見クールなのに不思議な人だ。

 

 ……花梨は、権堂とともにいつものスーパーへと向かった。

 

 

「今夜はバタチキカレーにしようかな~」

 

 

 スーパーの精肉コーナーで花梨は鶏もも肉を手に取る。

 今夜のメニューはバターチキンカレーにしたらしい。

 

 あと必要なものは玉ねぎにヨーグルト、そしてカレー粉。ナンも作るから小麦粉も要る。

 他の材料は家にあるから不要。

 それと、サラダとデザートに果物も食べたい。

 

 

「バターチキンカレーですか……、美味しそうですね。ですが材料を見たところ一から……? 作るのは大変なのでは……」

 

「簡単バタチキカレーで検索したら、簡単にできるレシピを見つけたんです。ネットって便利ですよね♪ 前に一度作ったらおいしくって!」

 

 

 権堂に尋ねられ、花梨はスマホの検索履歴を開いて“簡単バターチキンカレーレシピ”のページを開いてみせた。

 そこには本格的ながら、素人でも簡単にできるバターチキンカレーの作り方が作業工程の写真とともに載っている。

 出来上がり写真を見た権堂はじゅるりと涎を垂らしそうになり、慌てて口元を拭った。

 

 

「なるほど……検索項目の頭に“簡単”を入力すると良いレシピが……。花梨さんは賢いですね。私、スマホも料理もどうも苦手でして……。食べるのは得意なのですが……」

 

「ふふっ、そうなんですね。私もスマホはあんまり得意じゃないですよ。あっ、カレーはたくさん作る予定なのでいっぱい食べてって下さいね!」

 

「ありがとうございます。楽しみです!」

 

 

 ……嬉しそうに微笑む権堂を眺め、彼女は松田と同じく食べる専門……と、花梨は何となく心の中に書き留める。

 

 

(権堂さん、カッコいいのに食べ物の話になると急に可愛くなるなぁ……)

 

 

 花梨はそんな彼女に親近感を抱きながら、さらにカートを押し進めた。

 

 バターチキンカレーは大量に作って冷凍保存しておけば、三週間くらいは好きな時に食べられる。

 快斗にも食べてもらいたいし……と、花梨が押すカートのカゴの中には鶏もも肉が一キロ分。

 お次は青果コーナーへ。

 

 

「玉ねぎゲット! 権堂さん、くだものは何がお好きですか? デザートに食べようと思って」

 

「え? 私ですか? これといって特に好みはありません。花梨さんのお好きなもので」

 

「そうですか? じゃあ、このカットパインにしようかな……ん? あ、レモンが……」

 

 

 玉ねぎをゲットした花梨は食後のデザート用の果物を選んでいたが、足に何かが当たって目を瞬かせた。

 何がぶつかったかと思えばレモンだ。レモンがあと二つ、花梨目掛けて転がってくる。

 花梨は転がってきたレモンを拾い、転がってきた方向へと視線を移した。

 

 

「……」

 

 

 そこには花梨を見て惚ける、買い物かごを手にした明るい茶色の髪に、スーツを着た背の高い男性の姿があった……。

 

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