伝説のニート、平成のアイドルと共に佐賀を救う   作:スピリタス3世

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第十話 だってセンチメンタルSAGA

  愛視点

 

 チェキ会終了後、私たちは巽にこっぴどく怒られた。そして巽はそのまま部屋を後にした。それもそうだ。あんな無様なチェキ会をファンの方々に提供してしまったんだし。

 

「自分が何をやったか、純子が1番分かっているはずよ。仕事の放棄はアンタ1人の問題じゃない。」

「あれが仕事だっていうんですか。」

「立派なね。」

「あんな破廉恥な真似、私はしたくないです。」

 

 ダメだ。純子は今のアイドルを分かっていない。ここはチェキ会の重要性も含めて教えないと………

 

「いい?私たちはまず、いかにファンに知ってもらえるか、身近な存在になれるかが大切なの‼︎」

「それです!昨日もデビューから1年でと自慢していましたが、ファンに媚びさえすれば、実力が伴わなくてもいいと思ってるんですか⁉︎」

「はぁ⁉︎誰がそんな事言った⁉︎喧嘩売ってんの⁉︎」

「その辺にしとけよ〜。」

「愛ちゃん、純子ちゃん!」

「2人とも落ち着いて〜!」

 

 コイツ………っ!なんでこんなに頑固なの⁉︎だからそういうこと言ってるんじゃないのに‼︎

 

「ファンの方との関係性を考えるべきだと言っているんです‼︎」

「それが分かってないのはアンタでしょ‼︎」

「私と水野さんたちとでは、ファンに支えられているの意味が全く違うんです‼︎アイドルはファンの善意に頼ってやるものではありません‼︎」

「何時代遅れなプライドひけらかしているのよ⁉︎」

「時代遅れはお互い様じゃないですか‼︎」

 

 それは………ダメだ、言い返せない。私だって私の死後を奈々子に教えてもらってから、色々と実感している。でも……っ!

 

「もうやめて‼︎」

「これからアイドルをやっていくなら、アンタのその考え方は邪魔になる。」

「…………っ!」

「2人とも〜、ストップ〜!ここは一回かいさ〜ん!各自でクールダウンしよ〜!」

「………奈々子の言う通りやな。一回解散すっぞ。」

 

 もっと純子と言い争おうとしたら、奈々子に止められた。クールダウン、ね。そんな事言われて、簡単に頭が冷えるわけないでしょうが。そんな事を思いながら、私は部屋を出た。

 

 

 

 

 

 私は部屋を出て屋敷を出て、辺りを散歩していると、私の後に奈々子がやってきた。

 

「はぁっ………はぁっ………。愛〜、あれは言い過ぎじゃな〜い?」

「そんな事ないでしょ。純子が分かってないようだったから言っただけ。違う?」

「それはそうだけどさ〜。」

 

 なんとも言い切れない奈々子。フワフワした言い方が今日は逆にムカつく。

 

「だいたい、何が言いたいのよアンタは?私と純子が仲直りしろって⁉︎仲良しごっこじゃアイドルは出来ないのよ‼︎」

「そんなの知っ………じゃなかった〜、別に仲直りしろなんて言ってないよ〜。」

「じゃあ何?」

「怒りをコントロールするのさ〜。ちょっと時間をおけば、上がったボルテージが下がる。そうすれば〜、少しは冷静になって話し合えるのさ〜。」

「そういうこと?」

「うん!」

 

 頭を冷静にするために、あえて離す………か。アイアンフリルの時も言われてたな。離れた時間で、頭を整理する。よく怒りっぽい私に、大切な友達が言ってくれたっけ。あれ…………

 

 

 

ドカァァァァアン‼︎

 

 

 

 次のことを考えようとした途端、突如雷鳴が轟き、大雨が降り始めた。なんでこんな時に雷なの………。怖い、怖いよ………。思わずその場にうずくまってしまった。

 

「大丈夫、愛⁉︎」

「う、うう…………」

「ボクがそばにいるから!一緒に来て!」

「う、うん………」

 

 そんな私を奈々子は心配して、肩を組んで避難場所を探してくれた。そしてしばらく走った後に、公園にある土管の中に私たちは身を隠した。

 

「愛、ここまでくれば大丈夫だよ〜!雷は当たらないから!」

「あり、がとう…………」

 

 ダメだ、どうしても怖い…………。私の命を奪った雷が………。そんな私を見て、奈々子はそっと抱きしめてくれている。いつもの揶揄(からか)ってくる感じは全然なく、今は本当に優しいマネージャーだ。

 

「愛にとっては怖いよね〜、雷。」

「恥ずかしいと思うでしょ………。いつもみたいに揶揄いなさいよ………」

「ボクはゾンビだけど鬼じゃないからさ〜。雷で死んだ人をそう揶揄えないよ〜。」

「…………知ってるんだ。」

「もちろん。」

 

 そこまで知ってたんだ。なんだかんだ私のこと、ちゃんと見てくれてたんだ………

 

「ボクもその場に居たし。」

「えっ…………?」

 

 そんな事を思っていたら、意外な事を言われた。その場に居た………?まさか奈々子があの、私が死んだライブ会場に来てたってこと………?

 

「アンタ私のファンだったんだね。」

「バレちゃったか〜!流石名探偵〜♪」

「今の話を聞けば分かるでしょ。」

 

 私のファンだったのか………。だからこんなに私に引っ付いてたのね。最初に会った時に私の名前を一番最初に呼んだのもそういうことだったか。それなら、私が死ぬ瞬間を目の前で見てたってことよね………

 

「それより、アンタは怖くないの?」

 

 だとしたら、人が雷で死ぬ瞬間を目の前で見てたら、相当トラウマになるだろう。むしろ私以上に苦手になってもおかしくない。それなのに、なんでアンタは飄々としていられるんだろう?

 

「いや、怖くないさ。むしろ憎いくらいだよ〜。」

 

 そんな事を思っていたら、意外な答えが返ってきた。

 

「憎い?」

「うん。だって伝説のアイドル『水野愛』がこれから大成するって時にさ〜、命を奪いやがったんだよ〜。そんなの許せるわけないじゃ〜ん!なんでだよ〜、って思ったね。だからボクは雷を倒したいって思ってるよ!」

「倒したいって………っw」

 

 私の命を奪った雷。その相手に向けて、まるで大切な人の仇を取るかのように憎しみ怒る。普通に考えたら勝てるはずないのに。そんな独特な彼女に、思わず笑ってしまった。

 

「あ〜、ちょっと笑ったな〜⁉︎」

「だってw、アンタが変な事言うんだもんw」

「そんな事ないよ〜!」ゴロゴロ

 

 そんな事を思ってたら、また雷‼︎

 

「ひっ!」

「ほらほら〜、大丈夫だよ〜!」

「ありがとう………」

 

 さっきまでああやって揶揄っていたのに、またこうやって優しく包んでくれる。さっきまで私が怒鳴り散らしていたにもかかわらず。今日はそんな彼女の優しさが、とても暖かかった。

 

 

 

 

 その次の日のこと。私たちはまたミーティングをすることになった。

 

「おっはよぉぉぉぉございまぁぁぁぁぁす‼︎今日もお前らに、嬉しいニュースがありまぁぁぁぁぁす‼︎」

 

 嬉しいニュース?一体何?純子が私の考えを理解してくれたってこと?

 

「なんとフランシュシュがぁぁぁぁぁぁ、今年のサガロックのニューカマー枠に出ることになりましたぁぁぁぁぁ‼︎」

「「「「えっ………?」」」」

 

 嘘でしょ⁉︎昨日話題にあげてたサガロックに出演⁉︎しかもこの状態で⁉︎出来るわけない………けどやるしかない………っ!

 

「いいかお前ら、こんなチャンスは2度と来ない。ここは、何がなんでもものにするんじゃい‼︎この日、佐賀が世界の中心になる‼︎更にその中心に、お前らが立つことになる‼︎フランシュシュ、初めての野外ステージだ‼︎」

 

 そう思ったのに………。野外ステージ………?嘘でしょ………?

 

「愛〜、大丈夫〜?」

「う、うん………」

「お前らの歌声を、ダンスを、精一杯響かせてくるんじゃぁぁぁぁい‼︎」

 

 奈々子が私の手を握ってくれる。それが今は嬉しいけど………それでも不安だ。だって私の命を奪った、あの時と同じなのだから。

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