伝説のニート、平成のアイドルと共に佐賀を救う   作:スピリタス3世

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第十一話 けれどゾンビメンタルSAGA

  愛視点

 

 そのミーティング以降、私たちはサガロックに向けて準備していた。最初は私たちの喧嘩のせいで、さくらたちが参加するか迷っていたが、奈々子が彼女たちを誘って連れてきてくれた。

 

 ただ、純子はというと………どうやら引きこもってから2週間経つらしい。奈々子も説得しようとしたけど取り合ってくれなかったので、今回は諦めるとのこと。私と純子のソロ曲とはいえ、純子があの状態じゃ仕方ない。私がフォローして、純子のパートも歌わないと………。雷のことなんか怯えている場合じゃない。私が一番経験あるんだから、皆の分も頑張らないと………。幸いゾンビは休む必要がない。だから寝ずにずっとやるしかない‼︎

 

 

 

 

 

 そう思って私は深夜、寝ずに練習を………

 

「愛、無茶しすぎ〜。ストップ‼︎」

 

 しようとしたら、奈々子に止められた。でも止まってる場合じゃない‼︎ここで私がやらなきゃ、誰がやるのよ‼︎アンタが言うように悠長にやってたらダメなのよ‼︎

 

「はぁ⁉︎ここで止めてたら、間に合うもんも間に合わなくなるでしょ‼︎だから練習するの‼︎現役の時はこのくらい当たり前だったし、平気よ‼︎」

「愛‼︎いいパフォーマンスをするには、いい休憩が大切って言わなかったけ、ボク⁉︎」

「えっ………?」

 

 そう思って喋ったら、奈々子に信じられないくらいの怒鳴り声で反撃された。普段緩い口調でしか喋らない彼女が声を荒げたので、思わずたじろいでしまった。で、でも、ここで引くわけにはいかない……っ!

 

「わ、私たちはゾンビだから、休まなくていいのよ‼︎」

「不老不死になったからって、集中力が続くようになるわけじゃない‼︎脳みそはそう簡単に変わらないんだよ‼︎皆が疲れて寝てるのは何故⁉︎」

「でも、私は………っ‼︎」

 

 くそっ、言い返せない……っ!それどころか、いつになくキツい口調の彼女に対して、上手く喋れない‼︎でも、やらなければ………っ!

 

「私は…………っ!」

「休憩も大切な仕事‼︎休むったら休む‼︎悪いけど、引き摺り回してでもベッドに入れるから‼︎」

「ちょっと奈々子っ‼︎離しなさい‼︎」

 

 そう言って奈々子は私の腕を引っ張ってきた。この人、いつになく強引なんだけど……っ‼︎生前アイアンフリルの時に身体を壊さないようにって、友達やマネージャーが私を休ませようとしてたけど、それと同じものを感じる!なんでなのよ⁉︎普段ニートのくせにっ‼︎

 

「雷が不安なら、ボクがなんとかする。クオリティが足りないのは、練習時間を闇雲に増やせば補えるわけじゃない。それ以外に今やる理由は?」

「えっと………」

「無いね!はい決まり!ということで、愛は今からボクと一緒に寝ま〜す!言う事聞かないなら、今から皆も起こして止めさせるよ〜。」

「分かったわよ、寝るから………」

「それでいいのだ〜♪」

 

 結局私は奈々子の熱意に負けて、大人しく寝ることにしたのだった。なんなら奈々子が無理矢理私の布団に潜り込んできて、一緒に寝るハメになった。私を逃さないためだろう。そして、心なしかいつもの口調に戻った奈々子に、ちょっと安心した自分がいた。

 

 

 

 

 そして数日後。私たちは遂にサガロック当日を迎えた。

 

「時間だ、乗れ。」

 

 純子は来なかった。だけどいい。今いるメンバーで、精一杯を尽くす。そう思って車に乗り込んだ。そして車は発進。私たちは純子を置いていくことに決めた。

 

「待ってください、私も行きま……っ‼︎」ドゴォ‼︎

「あっ………!」

 

 その瞬間に、前に立ち塞がった純子を巽が轢いた。えっ、嘘でしょ⁉︎

 

「純子ちゃ〜ん!」

「手を出すな‼︎」

「なんでですか⁉︎」

 

 いや、助けた方がいいって!ゾンビとはいえ、轢かれたんだよ⁉︎

 

「立て純子‼︎お前はこんな事で負けるような女じゃない‼︎」

「テメェが跳ね飛ばしたとやろがぁ‼︎」

「私も………っ!行きます……っ!だって、アイドルだから‼︎私は昭和のアイドル、紺野純子です‼︎」

 

 それはともかく、純子も行くって決めたみたい。そう、復活するのね。これで7人揃ってサガロックに挑めるわ。

 

「ボクは、平成*1のニート、巽奈々子だよ〜!」

「アンタは出しゃばんなくていいのよ‼︎」

「えへへ〜♪」

 

 そして、隣で和らげてくれる奈々子。彼女の緩い笑顔が、張り詰め過ぎたものを(ほど)いてくれた。本当にありがたい。後はこのまま、天気がいいのを祈るだけだ。

 

 

 

 

 

 だけど、その祈りは負けそうだった。天気は曇り。しかも今にも雨が降り出してもおかしくなかった。更には季節は夏。夕立の雷が鳴ってもおかしくなかった。

 

 そんな中で、私たちは出番が来るまで外で待機していた。次のグループは………アイアンフリルか。懐かしいな。

 

「お、アイアンフリルじゃ〜ん!愛の居たとこ〜!」

「懐かしいわね。」

「あの頃のメンバーは誰も居ないけどね〜。」

「そうね。」

 

 でも、完全にメンバーが入れ替わってしまった。懐かしいグループなのに、全然知らないグループを見ているようだった。そして、溢れるコールに大歓声。昔は自分もあそこに居たのに。そんな事を思うと、とても複雑な気持ちになった。

 

 

 

 

 

 アイアンフリルの出番から数十分後、いよいよ私たちの出番となった。

 

「さあ、リーダー。」

「アタシはもうさっき言った。」

「じゃあさくら。」

「今日は、皆がここにおってがば嬉しい!私はこのメンバーで頑張りたい!ずっとずっと、このメンバーで!」

「しゃあ‼︎気合い入れていくぜぇぇぇぇぇ‼︎」

「「「「「オー‼︎」」」」」

「がぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 そう思って出発した時………雨が降り出してきた。

 

 

 

 ステージに上がると、雨の影響もあってか、観客席にいる人はだいぶ少なくなっていた。それと同時に、ゴロゴロという嫌な音が鳴る回数も増えてきた。でもダメだ。ここでびびっちゃいけない……っ!いけない………っ!

 

「ちっす!えっと〜、アタシは佐賀で生まれて死んで〜、あっ、死んだっつーか、死んだ気になって!そんで、コイツらと会って〜、その〜、そんな佐賀が好きっす!以上です!」

 

 私がっ………、私がやらないと!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うお〜‼︎雷よ〜、かかってこ〜い‼︎ボクが相手だ〜‼︎」

 

 そんな事を思っていたら、奈々子が観客席の後ろの方で叫んでいた。しかも超長い金属棒を天に突き上げて。嘘でしょ⁉︎アイツ何してるの⁉︎

 

「3号〜、雷はボクが受け止める〜‼︎」

 

 バカじゃないの⁉︎雷が直撃したらどうなるか分かってんの⁉︎‼︎アンタ、死ぬって‼︎いや、ゾンビだから死なないけど……ってそんな事考えてる場合じゃ………

 

「だから思いっきり歌え〜‼︎君の凄さを世界に知らしめろ〜‼︎」

(大丈夫です、私もフォローしますから。)

(ありがとう、純子。)

 

 そうね………。アイツがここまでやってくれてるんだもの。純子だってフォローしてくれる。他のみんなも、だったら、私だって歌わなくちゃね‼︎

 

 

 

 その後、私は少し震えながらも、なんとか歌い切った。私のパートを純子が裏で小さく歌ってくれてたし、他のみんなもいつもよりパフォーマンスがよかった。本当にみんなに支えられて、この曲を乗り切れた。あとはもう一曲歌い切るだけ。頼むからもう少しだけ、雷落ちないで………っ‼︎

 

 

ドカァァァァアン‼︎

 

 

 って落雷⁉︎しかも奈々子の用意した避雷針に直撃⁉︎嘘でしょ⁉︎大丈夫かな、奈々子…………

 

「ふっふ〜ん!雷なんて、チョチョイのちょいだぜ〜!こうしてやるんだから〜!」

 

 そんな事を思ってたら、避雷針の下でニヘラっと笑った奈々子がいた。しかも私たちに向けてビームを打ってきた。これは何⁉︎思いっきり当たったんだけど………っ⁉︎

 

(なんともない………)

(私たち、ゾンビですから!)

 

 しかもなんか帯電して、エレクトロボイスになってる⁉︎嘘でしょ、こんな事ってあるの⁉︎

 

「ミュージック、スタート‼︎」

 

 ってヤバい、歌わないと!

 

 その後、私たちは『目覚めRETURNER 〜Electrical Version〜』を歌って大盛況を収めたのだった。フランシュシュとして活動して以来、初めて味わう大歓声。そして雷に打ち勝ったという達成感。それもこれも、純子がすごいフォローをしてくれたおかげ。他のメンバーが私のことを支えてくれたおかげ。巽が舞台を用意してくれたおかげ。そして奈々子が雷を倒してくれたおかげ。皆のおかげで、この歓喜の波に身を揉まれることが出来た。それがたまらなく嬉しくて、そして皆へのとめどない感謝が溢れ出してきた。そんな最高の1日だった。

 

 

 

 

 

  幸太郎視点

 

 これが、アイドルの発祥。始まったな。

 

「幸太郎〜、おつかれ〜!」

「お前もやるな、奈々子。」

「それほどでも〜。なんてったって、推しのためですか……うっ、吐きそう………」

「何やってるんだお前ぇぇぇぇ‼︎飲み過ぎだ‼︎」

 

 そきて、巽奈々子。元ニートでありながら、推しのために働き始めた女。最初はアイドルとして使おうと思ってたが、これもこれで良かやな。そう思った1日だった。

*1
作中はまだ2018年のため

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