伝説のニート、平成のアイドルと共に佐賀を救う   作:スピリタス3世

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第十七話 世界に一つだけのSAGA

  愛視点

 

 山籠りから数日後のこと。さくらがなんらかの衝撃で記憶喪失になった。私の姿を見てもゾンビが出たと叫ぶばかり。

 

「愛〜、どうしたの〜?」

「いや、さくらがね………」

「ぎゃああああああああ⁉︎ゾンビが増えたぁぁぁぁぁ⁉︎しかも私の名前を知られてるぅぅぅぅぅ⁉︎」

「こんな感じで………」

「さくら〜、本当にどうしたの〜?」

「本当に私、もっとらん………」バタン

 

 彼女は怖さのあまり、ショックで気絶してしまった。何これ、どういうこと?もしかして昨日轢かれた衝撃で記憶が飛んじゃったの⁉︎でもそれなら、名前を思い出してるのが妙だし……

 

「記憶喪失して、逆に生前の記憶が蘇ったとか?」

「そうかも〜。とりあえず、話聞いてみるしかないね〜。」

 

 これなら納得がいく。名前も思い出せるけど、私たちのことは思い出せないし。

 

「でも、私たち怖がられてるし………」

「一旦いつものメイクしようか〜。」

「アイツにも伝えなくちゃね。」

「ボクが電話してくるよ〜。」

「ありがとう。」

 

 とりあえず、ここはメイクしよう。あとは今の状態だと、さくらは自分のことをまだ人間だと思ってるかもしれない。寝ているうちに、念のため彼女のメイクも落としてあげるか。

 

 

 

 数十分後、さくらが再び目覚めた。もちろん私と奈々子はメイクしてる*1が、巽ほど上手くないためちゃんと見えるかが不安だ。

 

「大丈夫?」

「えっ、み、水野愛?なんで水野愛が⁉︎」

 

 この反応。メイク自体は上手くいった。ただ、完全にゾンビ後の記憶が抜け落ちてる。わかってても傷つくわね。私が同じメンバーの一員じゃなく、ただの芸能人の1人として見られているってことが。

 

「おはよ〜♪」グビグビ

「えっ、あっ、アル中?なんで水野愛がアル中と一緒に⁉︎」

 

 あとさくら、そこは気にしなくていいのよ。私だって好きで世話係してるんじゃないんだから。

 

「さくらも飲む〜?」

「アンタは酒飲ませんじゃないわよ‼︎」

「飲みません!私高校生ですし!それに、水野愛に何かあったらどうするんですか⁉︎あの水野愛ですよ‼︎アイアンフリルの‼︎」

 

 にしても、この反応………。もしかして、さくらも私のファン?それはそれで嬉しいわね。

 

「大丈夫〜、愛はボクのこと養ってくれるから〜♪」

「なんなんですか、この人………」

「養わないっつーの‼︎つーか話が全然進まないじゃん‼︎早く本題に戻るよ!」

「は〜い♪」

 

 さてと、さくらの状態を整理しないと………

 

「ねえ、自分が誰だかわかる?」

「えっと……源さくらです。」

「自分の住所とか、電話番号とか、家族は?」

「分かりますけど………?」

「やっぱり………」

「ボクたちの考え通りだね〜。」

 

 ドンピシャだ。生前の記憶が蘇って、代わりにゾンビになった時の記憶が抜けてる。これは相当まずいわ。なんなら私たちが今まで見てきたさくらと、生前のさくらの性格は違うかもしれない。とりあえず、まずは今の状況を話してあげないと………

 

「さくら。今まで何があったか話すから、落ち着いて聞いて。」

「君はボクたちと同じく、既に死んでるのさ〜。で、ゾンビとして蘇ったってわけ〜。」

「はぁ?何を言って………?」

「10年前、おそらく事故か何かで………」

「鏡見る〜?」

「はえ…………⁉︎」

 

 奈々子が手鏡を渡す。するとさくらは自分のゾンビ姿に驚いたのか、はたまた事故のことを思い出したのか。驚いたような、そして絶望したような表情で手鏡を見つめていた。

 

 

 

 

 その後、私たちはさくらに事情を説明したあと、皆の元へ彼女を連れて行った。

 

「おい、愛、奈々子‼︎」

「さくらちゃんは⁉︎どんな感じ⁉︎」

「うん。多分だけど、昨日轢かれたショックで生前の記憶が戻ったみたい。」

「代わりにゾンビになってからの記憶が一切ないっぽい〜。」

「「「「えっ⁉︎」」」」

「さくら〜、この子達が、さっき話したメンバーだよ〜。」

 

 奈々子がさくらに皆を紹介する。どうやらそれを見ても全然ピンと来ない様子。本当に記憶がないのね。

 

「リリィたちのこと、何も覚えてないの?」

「す、すみません………」

「大丈夫〜、ボクだってお酒飲んでよく忘れるから〜!」

「アンタは関係ないでしょ⁉︎」

「ええ…………」

 

 申し訳なさそうなさくらを、冗談言って和ませようとする奈々子。こういうことは私苦手だから、彼女がいてとても助かっている。

 

「ってことは、さくらライブに出れんとかよ⁉︎」

「このグループで、初めて500人規模のライブを行うの。もうすぐ、アルピノっていうところでね。」

「アルピノ………?」

「私たちにとって、すごく重要なイベントよ。」

「それに向けて、皆必死に練習してたの〜!さくらもね〜。」

「今は混乱してるだろうけど、きっと本番までには、同じステージに立てる。」

「本当に、私が………アイドル?」

「そうだよ〜、アイドル〜?やりたかったの〜?」

 

 そして、もうすぐ来るアルピノライブ。それに向けてとなると、1からになる。ただ他のみんなもちゃんとサポートしてくれるし、さくら自身の才能は記憶に左右されないと思っている。何より本人がちょっと見せた嬉しそうな表情。もしかしてアイドルやりたかったのかな?なら………

 

 

 

 

「いえ、私は結構です。」

 

 え?断るの………?

 

「心配なかて!」

「練習してたら、きっと思い出しますよ!」

「そういうことではなく無理です!」

「やってみなきゃ分からないでありんす!」

「やりたくないんです‼︎目標に向かってとか、そういうの………。私、もってないですから。」

「持ってないって何を〜?」

「何をやっても(ろく)な結果にならないということです。頑張るだけ嫌な思いをするだけなんで。それでは。」

 

 嘘………でしょ?何をやっても上手くいかない………?そんな、なんで色々と諦めてるのよ………。まさかさくらの生前の性格がそうだったなんて………

 

 そして、私たちが止める間もなく、彼女は去ってしまった。

 

 

 

 さくらが出てってから、私たちは混乱していた。

 

「この間ようやく元の調子が戻ったのに………」

「山籠りの時の比になりんせん。」

「はぁ⁉︎さくらの奴、フランシュシュ辞めるってことか⁉︎」

「え〜☆」

「がぁぁぁぁ………」

 

 特にたえの落ち込みっぷりが凄かった。元々さくらに懐いてただけあって、完全に忘れられたのが相当キツいのだろう。私だって正直キツいし。

 

 そんな事を思っていると、

 

「もってないって、ツイてないってことかな〜?」

 

 奈々子が変なことを言い始めた。

 

「運が無いってことですか………」

「そう。そう言う人結構いるんだよ〜。人生頑張っても上手くいかなくて〜、何かの巡り合わせが悪いというか〜。」

「それで悲観的になってるって事?」

「そう!ギャンブラーが言っても説得力無いけどさ〜、人生って正直運の要素も強いんだよね〜。どんなに才能があって、かつ努力をしていても、それを活かせる機会がやってくるとは限らないし〜。」

 

 確かに一理あるかも。アイドルだってどんなに可愛い子がどんなに努力していたって、同じ時期にもっとすごい人が出てきて埋もれちゃうとかザラだし。私だって純子と同じ時期だったらヒットしてたか怪しいし、リリィと同じ時期だったら有名人になれなかったかもしれない。伊達に26年間生きてないわね。

 

「でもよ、運とかどうしようもねえじゃんか‼︎」

「リリィたちでどうにもならないし…………」

「でも〜、逆転の発想もあるよ〜。どうせボクたちツイてないって。」

「それじゃあダメじゃない。」

 

 ただ、自分たちもさくらと同じになっては意味がない。むしろ悪い気がするような………

 

「だからこそ〜、こんな不幸な人たちが集まったら何が起きるか。不運(ハードラック)と……」

(ダンス)っちまおうぜ‼︎」

「そうそう〜!」

 

 そんなことを思っていたら、奈々子とサキが凄いことを言った。不運な状況をむしろ楽しむ。確かにここにいる人らはみんなもってない。ヤンキー同士の事故で死んだ人*2、飛行機が墜落して死んだ人、不毛な地にやってきて死んだ人、髭が生えて死んだ人、未だに意識が戻らない人、ボートレースに全財産突っ込んで負けて死んだ人………は自業自得か。そして、雷に打たれて死んだ人。そんな人らが集まったら………これはすごいわね!

 

「題して、『不運乙女(ハードラックガールズ)の下剋上』‼︎これよかやね⁉︎」

「なんかダサ〜い☆」

「うっせえちんちく‼︎」

「でもまあ、その気持ちは大切ね。」

「それじゃあ、いっちょやったりますか〜!」

「「「「オー!」」」」

 

 ということで、私たちのさくら励ましプロジェクトが幕を開けた。

*1
アニメだと普通にレベル高いメイクでしたが、幸太郎の技量を考えると2期1話の白いメイクになる。本作では後者を採用。

*2
サキやゆうぎりの死因は後から聞いた

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