伝説のニート、平成のアイドルと共に佐賀を救う 作:スピリタス3世
愛視点
山籠りから数日後のこと。さくらがなんらかの衝撃で記憶喪失になった。私の姿を見てもゾンビが出たと叫ぶばかり。
「愛〜、どうしたの〜?」
「いや、さくらがね………」
「ぎゃああああああああ⁉︎ゾンビが増えたぁぁぁぁぁ⁉︎しかも私の名前を知られてるぅぅぅぅぅ⁉︎」
「こんな感じで………」
「さくら〜、本当にどうしたの〜?」
「本当に私、もっとらん………」バタン
彼女は怖さのあまり、ショックで気絶してしまった。何これ、どういうこと?もしかして昨日轢かれた衝撃で記憶が飛んじゃったの⁉︎でもそれなら、名前を思い出してるのが妙だし……
「記憶喪失して、逆に生前の記憶が蘇ったとか?」
「そうかも〜。とりあえず、話聞いてみるしかないね〜。」
これなら納得がいく。名前も思い出せるけど、私たちのことは思い出せないし。
「でも、私たち怖がられてるし………」
「一旦いつものメイクしようか〜。」
「アイツにも伝えなくちゃね。」
「ボクが電話してくるよ〜。」
「ありがとう。」
とりあえず、ここはメイクしよう。あとは今の状態だと、さくらは自分のことをまだ人間だと思ってるかもしれない。寝ているうちに、念のため彼女のメイクも落としてあげるか。
数十分後、さくらが再び目覚めた。もちろん私と奈々子はメイクしてる*1が、巽ほど上手くないためちゃんと見えるかが不安だ。
「大丈夫?」
「えっ、み、水野愛?なんで水野愛が⁉︎」
この反応。メイク自体は上手くいった。ただ、完全にゾンビ後の記憶が抜け落ちてる。わかってても傷つくわね。私が同じメンバーの一員じゃなく、ただの芸能人の1人として見られているってことが。
「おはよ〜♪」グビグビ
「えっ、あっ、アル中?なんで水野愛がアル中と一緒に⁉︎」
あとさくら、そこは気にしなくていいのよ。私だって好きで世話係してるんじゃないんだから。
「さくらも飲む〜?」
「アンタは酒飲ませんじゃないわよ‼︎」
「飲みません!私高校生ですし!それに、水野愛に何かあったらどうするんですか⁉︎あの水野愛ですよ‼︎アイアンフリルの‼︎」
にしても、この反応………。もしかして、さくらも私のファン?それはそれで嬉しいわね。
「大丈夫〜、愛はボクのこと養ってくれるから〜♪」
「なんなんですか、この人………」
「養わないっつーの‼︎つーか話が全然進まないじゃん‼︎早く本題に戻るよ!」
「は〜い♪」
さてと、さくらの状態を整理しないと………
「ねえ、自分が誰だかわかる?」
「えっと……源さくらです。」
「自分の住所とか、電話番号とか、家族は?」
「分かりますけど………?」
「やっぱり………」
「ボクたちの考え通りだね〜。」
ドンピシャだ。生前の記憶が蘇って、代わりにゾンビになった時の記憶が抜けてる。これは相当まずいわ。なんなら私たちが今まで見てきたさくらと、生前のさくらの性格は違うかもしれない。とりあえず、まずは今の状況を話してあげないと………
「さくら。今まで何があったか話すから、落ち着いて聞いて。」
「君はボクたちと同じく、既に死んでるのさ〜。で、ゾンビとして蘇ったってわけ〜。」
「はぁ?何を言って………?」
「10年前、おそらく事故か何かで………」
「鏡見る〜?」
「はえ…………⁉︎」
奈々子が手鏡を渡す。するとさくらは自分のゾンビ姿に驚いたのか、はたまた事故のことを思い出したのか。驚いたような、そして絶望したような表情で手鏡を見つめていた。
その後、私たちはさくらに事情を説明したあと、皆の元へ彼女を連れて行った。
「おい、愛、奈々子‼︎」
「さくらちゃんは⁉︎どんな感じ⁉︎」
「うん。多分だけど、昨日轢かれたショックで生前の記憶が戻ったみたい。」
「代わりにゾンビになってからの記憶が一切ないっぽい〜。」
「「「「えっ⁉︎」」」」
「さくら〜、この子達が、さっき話したメンバーだよ〜。」
奈々子がさくらに皆を紹介する。どうやらそれを見ても全然ピンと来ない様子。本当に記憶がないのね。
「リリィたちのこと、何も覚えてないの?」
「す、すみません………」
「大丈夫〜、ボクだってお酒飲んでよく忘れるから〜!」
「アンタは関係ないでしょ⁉︎」
「ええ…………」
申し訳なさそうなさくらを、冗談言って和ませようとする奈々子。こういうことは私苦手だから、彼女がいてとても助かっている。
「ってことは、さくらライブに出れんとかよ⁉︎」
「このグループで、初めて500人規模のライブを行うの。もうすぐ、アルピノっていうところでね。」
「アルピノ………?」
「私たちにとって、すごく重要なイベントよ。」
「それに向けて、皆必死に練習してたの〜!さくらもね〜。」
「今は混乱してるだろうけど、きっと本番までには、同じステージに立てる。」
「本当に、私が………アイドル?」
「そうだよ〜、アイドル〜?やりたかったの〜?」
そして、もうすぐ来るアルピノライブ。それに向けてとなると、1からになる。ただ他のみんなもちゃんとサポートしてくれるし、さくら自身の才能は記憶に左右されないと思っている。何より本人がちょっと見せた嬉しそうな表情。もしかしてアイドルやりたかったのかな?なら………
「いえ、私は結構です。」
え?断るの………?
「心配なかて!」
「練習してたら、きっと思い出しますよ!」
「そういうことではなく無理です!」
「やってみなきゃ分からないでありんす!」
「やりたくないんです‼︎目標に向かってとか、そういうの………。私、もってないですから。」
「持ってないって何を〜?」
「何をやっても
嘘………でしょ?何をやっても上手くいかない………?そんな、なんで色々と諦めてるのよ………。まさかさくらの生前の性格がそうだったなんて………
そして、私たちが止める間もなく、彼女は去ってしまった。
さくらが出てってから、私たちは混乱していた。
「この間ようやく元の調子が戻ったのに………」
「山籠りの時の比になりんせん。」
「はぁ⁉︎さくらの奴、フランシュシュ辞めるってことか⁉︎」
「え〜☆」
「がぁぁぁぁ………」
特にたえの落ち込みっぷりが凄かった。元々さくらに懐いてただけあって、完全に忘れられたのが相当キツいのだろう。私だって正直キツいし。
そんな事を思っていると、
「もってないって、ツイてないってことかな〜?」
奈々子が変なことを言い始めた。
「運が無いってことですか………」
「そう。そう言う人結構いるんだよ〜。人生頑張っても上手くいかなくて〜、何かの巡り合わせが悪いというか〜。」
「それで悲観的になってるって事?」
「そう!ギャンブラーが言っても説得力無いけどさ〜、人生って正直運の要素も強いんだよね〜。どんなに才能があって、かつ努力をしていても、それを活かせる機会がやってくるとは限らないし〜。」
確かに一理あるかも。アイドルだってどんなに可愛い子がどんなに努力していたって、同じ時期にもっとすごい人が出てきて埋もれちゃうとかザラだし。私だって純子と同じ時期だったらヒットしてたか怪しいし、リリィと同じ時期だったら有名人になれなかったかもしれない。伊達に26年間生きてないわね。
「でもよ、運とかどうしようもねえじゃんか‼︎」
「リリィたちでどうにもならないし…………」
「でも〜、逆転の発想もあるよ〜。どうせボクたちツイてないって。」
「それじゃあダメじゃない。」
ただ、自分たちもさくらと同じになっては意味がない。むしろ悪い気がするような………
「だからこそ〜、こんな不幸な人たちが集まったら何が起きるか。
「
「そうそう〜!」
そんなことを思っていたら、奈々子とサキが凄いことを言った。不運な状況をむしろ楽しむ。確かにここにいる人らはみんなもってない。ヤンキー同士の事故で死んだ人*2、飛行機が墜落して死んだ人、不毛な地にやってきて死んだ人、髭が生えて死んだ人、未だに意識が戻らない人、ボートレースに全財産突っ込んで負けて死んだ人………は自業自得か。そして、雷に打たれて死んだ人。そんな人らが集まったら………これはすごいわね!
「題して、『
「なんかダサ〜い☆」
「うっせえちんちく‼︎」
「でもまあ、その気持ちは大切ね。」
「それじゃあ、いっちょやったりますか〜!」
「「「「オー!」」」」
ということで、私たちのさくら励ましプロジェクトが幕を開けた。