伝説のニート、平成のアイドルと共に佐賀を救う 作:スピリタス3世
愛視点
巽復活、奈々子休職から数日後。私たちはサキの影響で、筋トレを始めた。確かにダンスするにも基本的な筋力は必要よね。あとは体力と柔軟性。アイドルは思ったより体力仕事だからね。だから奈々子が裏方を希望したんだけど。
そんな事を思ってると…………
「あ〜ん、負けた〜!お金なくなっちゃった〜!」
絶賛休職中の奈々子が帰ってきた。どうやらパチンコで手持ちの1万円を溶かして帰ってきたらしい。
「おっ、奈々子!テメェも筋トレするとか?」
「しないよ〜、お金借りにきただけ〜。」
「は?」
しかも金を借りにきたらしい。ホント相変わらずだ。ここは私がビシッと言っておかないと!
「何度も言ってるけど貸さないよ?アンタは際限なく金を使っちゃうんだから、ちゃんとセーブしないとね。そのための小遣い制でしょ?」
「前借り前借り〜!愛は頭が硬いな〜♪」
「だからそれはダメだっつーの‼︎いい加減諦めて‼︎」
「え〜‼︎そもそも1万って少なすぎるのに〜‼︎4パチだったら一瞬だよ〜?」
「知らないわよそんなの‼︎」
「え〜、ケチ〜!」
とても巽が帰ってくるまで一生懸命働いていた人とは思えない。むしろあの期間が異常だったんだけども。今やただのニートだ。しかも金がかかるタイプの。本当に過労時代に戻ってほしい。
「それじゃあ寝る………のも暇だし〜、練習動画撮るよ〜。」
「えっ、働いてくれるの?ありがとう。」
「給料マシマシでね〜。」
「それはアイツに言って。」
にしても、暇なら働くって意外だな。元ニートなのに。前までの奈々子だったら多分ずっと寝てたんだろうけど、何かが変わったのかな?それなら本当に嬉しい。
しばらくすると、私たちはいつもの通りミーティングをした。どうやら今度の仕事は観光地のレポートらしい。TVレポーターだ。しかも歌手のホワイト竜と共演するらしい。あんまりお会いした事はなかったけど、ロックとラジオで有名な人よね。サキが大ファンらしく、ドラ鳥やガタリンピックの時みたいに1人でやたらと盛り上がってた。
ちなみに奈々子は休みなので、その時間は自分の部屋に戻ってふて寝してた。最近休職してるせいで、全然一緒に仕事してないな。ライブ会場ではお客さんとして来てくれるけど。アイツも金無くてやる事無さそうだし、誘おうかな。そう思って、私は奈々子の部屋までやってきた。
「ねえ奈々子、今暇?」
「ん〜、暇だよ〜。お金ないし〜。」
ドアを開けると、そこには奈々子がいつものスウェットでスマホを見ながら寝っ転がっていた。格好といい、部屋の適度な散らかり方といい、完全にニートだ。
「じゃあさ、仕事しなくていいから、私たちの仕事について来ない?」
「いいよ〜♪」
そんな彼女は、意外にもすぐ着いてきてくれた。まあやる事ないしね。私の読みは当たったというわけだ。
「あっ、あとお酒無くなったからお金ちょうだ〜い♪」
「それはダメ。」
「え〜、ケチ〜!」
「ケチじゃない!これが普通よ!」
そして、お金をせびってくるところまで予想通りだった。気がついたら、アイツの行動を予測できるようになっちゃったな。全然嬉しくないけど。
それから数時間後。私たちは現地に到着し、打ち合わせの後に収録を始めた。もちろんフランシュシュとホワイト竜の8人で。
「皆さんこんにちは!フランシュシュです!私たちは今、ホワイト竜さんと祐徳稲荷神社に来ています!えーと、あっ、ホワイト竜さん!普段こういうところはよく来られるとですか?」
さてと、最初はさくらのセリフからスタート。それにホワイト竜が返す形ね。
「もしも俺に聞いてるならば、Yes.だが、もしも佐賀の風に聞いてるならば、Yes.」
いや、何よその言い回し⁉︎マジで意味わかんないんだけど⁉︎
「Yes!」
サキ、アンタは真似しなくていいのよ!
「えっと………」
(さくら、カンペ出てる………)
(あっ、ありがと!)
それはさておき、カンペの内容は………『いい感じに回って。』か。
「くるくるくるくる!」
いや、物理的に回転してどうすんのよ⁉︎全く、ここは私がフォローするしか………あれ、奈々子もカンペ出してる………?
『3号、パンツ見せて。』
ってバカじゃないの⁉︎茶々入れないでよ‼︎全く、ここはスタッフの方のに従うしかないわね。
「この商店街は一点一品を掲げていて、お店ごとに自慢の一品があるんだって〜?」
「わ〜、回ってみよ〜☆」
ということぇ、私たちはホワイト竜と一緒に色んなところを巡った。途中よく分かんない事を言われたり、よく分かんない箸置きを貰ったりしたけど、なんだかんだ盛り上がった。
その後、私たちは祐徳稲荷神社へとやってきた。
「わ〜、すごくカラフルな神社〜!」
「おもちゃみたいで可愛いね〜☆」
「吉原の九郎稲荷とは、全く違いんす。」
で、ここで出されたカンペが………『いい感じで縁結びの神様』と、『3号、いい感じで4号に告白』………ってアイツはまた変なカンペ出しやがって!別に純子に抱いてるのは恋愛感情じゃないから!アイドルとしての憧れだから!
「4号ちゃん4号ちゃん、あれ、縁結びの神様だって!行ってみよ!」
よかった。バカなカンペに流されず、さくらがちゃんと言ってくれたか………
『これが
ってやかましいわ‼︎奈々子め、いちいちカンペでいじってくるんじゃないわよ‼︎
「えっ、縁結び………要りません‼︎///」
「ええっ⁉︎」
アンタは断るんかい‼︎純子、アンタ19歳でしょ⁉︎それくらいで照れるんじゃないわよ‼︎
『3号、フラれたり………』
だから違うっつーの‼︎
その後、私たちは境内で参拝した………のだが………
「次のレースで大当たりしますように〜♪」
「アンタは出てくるんじゃないわよ‼︎」
「ごめ〜ん、つい勝ちたくなっちゃって〜♪」
おふざけカンペニート女が出しゃばったせいで、このシーンだけ撮り直しになった。
境内での参拝シーンを撮影し終えた後、いよいよ最終シーンとなった。ホワイト竜が締めの言葉を言うのだが………
「今の時代、真実は街の灯りと雑踏にかき消されてゆく。そいつを、這いつくばってでも追う覚悟があるなら連れて行ってやる。奥の院へな。」
「奥の院‼︎行かせてください‼︎アタシらはもう、自由なんっス‼︎
なんと彼のアドリブとサキのノリによって、めちゃくちゃ長い階段の先にある奥の院へ登ることになった。このおっさん大丈夫なのかな?歳的に、多分きついと思うけど………
その後、私たちは無事に奥の院へ辿り着いた。そこには素晴らしい山脈と有明海という、最高の景色が待っていた。のだが………
「ふぅ………ふぅ………ふぅ………」
「はぁ………はぁ………き…………つ………」
ホワイト竜と奈々子が息を切らしながら、遅れてやってきた。ほら言わんこっちゃない‼︎流石にその歳でこの山道はキツいでしょ‼︎あと奈々子、アンタはついてこなくてよかったのに‼︎運動音痴なんだから‼︎
「竜さん、大丈夫っスか⁉︎」
「何か掴むってことは………いつだって苦しいもんだ………」
「竜さぁぁぁぁぁぁん‼︎」
「奈々子、アンタは来なくてよかったのに‼︎」
「どこかで働くってことは〜、………いつだって苦しいもんだ〜………」
「奈々子ぉぉぉ………ってなるかあ‼︎」
言ってることが完全にニートじゃん‼︎ホワイト竜の発言を台無しにするんじゃないわよ‼︎
「ぶっちゃけOK!」
「いい感じ〜!」
嘘でしょ⁉︎いいのこれで⁉︎適当すぎない⁉︎そんな事を思った日だった。
屋敷に戻ると、私たちは意外な話に花を咲かせた。
「サキちゃん、ずっと落ち込んどるとね〜。」
「あのおじさんのこと、好きだったのかな☆」
「恋ってこと?」
「そうじゃな〜い?単に憧れてるって感じじゃなさそうだし〜。」
「奈々子はんが言うと説得力がありんすなぁ。」
「伊達に26年生きてないからね〜。」
なんと恋バナだ。ホワイト竜の衰えやテレビ局からの悪口への反応。更にはあの人に何かを言われたのだろう。彼女は珍しく悶々として黙り込んでいた。奈々子もこういうところは流石26歳というべきか。
「ゾンビというか、そもそも私たちアイドルですよ?いいんですか?」
「アイドルは誰かを好きになっちゃいけない〜、なんてのは今は無いよ〜。パフォーマンスに影響が出なければいいのさ〜。」
「それでもっと輝けるなら、リリィは別にいいと思う☆」
「う〜ん、頭から否定は出来ないかな。実際に付き合うとなると、話は別だけど。」
そして、今のアイドル像も変わりつつある。ただ、恋愛を表に出すようならばダメだ。ここの線引きは正直変わってないと思う………
「愛ちゃんは好きな人おったと⁉︎」
ってさくら‼︎それを聞かないでよ‼︎
「言うわけないでしょそんなの⁉︎///」
「愛が好きな人はね〜、」
「アンタは言うな‼︎///」
というか奈々子もノるな‼︎別にいなかったけど‼︎全く、心臓に悪いんだから‼︎そうだ、お返ししてやる‼︎
「というか奈々子はそういうの経験あるんじゃないの?男に寄生とか言ってたし………」
「そうだよ〜。今までだと………5人かな〜。」
「「「5人⁉︎」」」
って思ったら素直に返された⁉︎なんか負けた気がする‼︎コイツ、こういうところは大人なんだから‼︎
「親に絶縁されてからは〜、ホームレス→ナンパ待ちながらギャンブル→男に寄生→捨てられてホームレス………を繰り返してたよ〜。」
「「うわっ…………」」
「酷い人生ですね………」
「金食い虫どすなぁ。」
「この間一切働いてないのよね?」
「もちろ〜ん!」
「ホント凄いわ………悪い意味でね。」
にしてもホント酷い人生よね。ギャンブルに酒にタバコ。それでいて働く気が一切なし。そりゃ捨てられるって。サキの純粋な恋愛を見た後だと、めちゃくちゃ濁って見えるなぁ。これが現実、それとも大人の恋愛?いや、そうじゃないはずだと信じたくなった日だった。
竜さんマジで何言ってるか分かんねえ………。聞き取るの大変でした。