伝説のニート、平成のアイドルと共に佐賀を救う   作:スピリタス3世

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第二十二話 愛と青春のアコースティックSAGA 前編

  愛視点

 

 ムツゴロウ広場でのライブ。ホワイト竜からメインパーソナリティーを引き継いだラジオ。ちょっとずつスケジュールが埋まり始めてきて、仕事の手応えを感じてきたある日。私は奈々子の部屋で、アイアンフリルの動画を見ていた。

 

「ここまで精密なシンクロ……今の私たちには難しいか。」

「そ〜だね〜。もっと頑張らないとね〜。」

 

 難しい振り付けと完璧なタイミングでのお互いの動き。それでいて疲れを見せず、曲にマッチした表情をし続ける。このレベルに到達するには、今よりももっと頑張らないといけない。今のレベルで満足してたら、全然ダメなんだから。つい思い詰めてしまう。

 

「そ〜だ、純子の生前の動画も見る〜?」

「うん、見たい見たい!」

「おっけ〜。」

 

 そんな時は、純子の動画を見て気分転換をしている。たった1人で観客を惹きつける。その圧倒的な実力とカリスマ性に、つい惹かれてしまう………

 

「愛さん、水道空きましたよ!」

 

 って純子⁉︎いつの間に⁉︎

 

「へっ⁉︎あっ、なんでもない‼︎今から行く///」

 

 大丈夫だよね⁉︎バレてないよね⁉︎危なっ‼︎

 

「ウケる〜♪」

「ウケんな‼︎」

 

 奈々子にはニヤニヤからかわれるし‼︎絶対バラさないでね‼︎頼むから‼︎そう思いながら、私は水浴びに行った。

 

 

 

 

 その数日後、私たちはいつものようにミーティング室でミーティングをすることになった。ちなみに奈々子はこの日から復職した。

 

「アイアンフリルが来・る・ぞー!アイアンフリルが来・る・ぞー!こいつはどえらいライブだぞー‼︎殴り込め、殴り込め、殴り込めぇぇぇぇぇ‼︎」

「きゃぁっ⁉︎」

「そら殴り込めやぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 そして、いつものようにアホみたいなテンションで入ってくる巽。しかも何故か水鉄砲を持っている。さくらにサキと次々ヒットさせ、いつも通り奇行で暴れ散らかしていた。次の標的は奈々子っぽい………

 

「あれ〜、これお酒じゃくてお水だ〜。」

「何してんの⁉︎」

 

 いや、その水飲むなし‼︎あとお酒なわけないでしょ⁉︎なんで巽はどっちもアホなのよ⁉︎

 

「いい加減にして!早く仕事の話をしてちょうだい!」

 

 そんな事よりも、早く仕事の話をして欲しい。私たちも暇じゃないんだから。

 

「いいだろう、その耳の穴をかっぽじってよ〜く聞け‼︎この佐賀の不毛の地に新たな戦場がおっ立ったんじゃい。その名も佐賀アリーナ‼︎その柿落(こけらお)とし公園に………………来るんじゃい、アイアンフリルが‼︎」

 

 そんな事を思っていると………嘘でしょ⁉︎佐賀ロック以来のアイアンフリル再来⁉︎

 

「何が柿落としライブじゃい⁉︎佐賀のアリーナっつうのに東京のアイドルが柿落とすんじゃい………ってことで、ハイドーン‼︎お前らをアイアンフリルの前座にねじ込んでおきました‼︎」

「マジかよ………」

「アイアンフリルが………?」

「どやんすどやんす〜っ⁉︎」

 

 私の古巣にして、今の目標。それの前座をまた出来るんだもの‼︎これは燃えてきたわね‼︎

 

「みんな〜!今回だけは〜、アイアンフリルに憧れるのをやめましょ〜!憧れてしまったら、越えられないんです〜!」

「アンタ、いい事言うじゃん!」

「えへへ〜!マネージャーとギャンブラーの二刀流、ボクこそ佐賀のショウヘイなのさ〜!」

「イッペイの間違いでしょ。」

 

 憧れずにライバルとして扱う。レベル差なんて上等‼︎やってやろうじゃない‼︎

 

「それはさておき………やろう‼︎私たちなら出来る‼︎絶対‼︎」

「ちなみに、愛は今回欠席です。」

 

 そんな事を思い、意気込んでたんだけど………。えっ………?ちょっと待って………?私が………欠席?

 

「えっ⁉︎なんでよ⁉︎」

「え〜、出れると思うんでちゅか愛ちゃんは⁉︎アイアンフリルの真ん前に⁉︎伝説の初代センターまんまのそのお顔で⁉︎」

「ぐっ……………」

 

 そう言われると言い返せない。確かに私が顔バレする可能性が高いけど………っ!でも………っ!

 

「ざっけんな!ここまで散々顔晒して活動してきたやろが‼︎」

「アイアンフリルとなら、佐賀ロックでも一緒に出れたよ☆」

「そうですよ、今更愛さん抜きでなんて!」

「フランシュシュは皆でフランシュシュなんですよ、幸太郎さん!」

「がぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 皆がフォローしてくれる。それが今はありがたい。そして、だからこそなんで私を除け者に………?

 

「ウジ虫ゾンビィども、さっさと準備始めんか〜い‼︎それと愛、お前にはソロの仕事を入れておいた。明日からは、奈々子と一緒にそちらに行ってもらう。以上‼︎」

「ってことで、よろしく〜♪」

 

 私は完全にソロ活動。奈々子が一緒に来てくれるものの、みんなとはしばらく別行動。更にはああなった巽は言うことを聞かないということ。もうこうなった以上は、別行動を受け入れるしかないか………

 

「おい奈々子‼︎事情を説明しやがれ‼︎」

「幸太郎は自分たちで意味を見出して〜、って言ってたよ〜。だから今回はボクの口から何も言わな〜い!」

「何か考えあってのことなのね。それならいいわ。」

「愛、お前がいいなら………」

「ありがとう〜!」

 

 流石にここでの別行動は、身バレ以上の何か得るものがあるということか。とりあえず、今ざっと思いつくことを言っておこう。

 

「今思いつく事を言うね。アクシデントでメンバーが休むこと自体は今後もあり得る話。考えようによっては、フランシュシュがもう一回り成長するチャンスかもしれない………というか、アイツらもそれを狙ってる気がする。」

「そうなの、奈々子ちゃん?」

「言えませ〜ん!ごめんね〜。」

「意地悪〜☆というか愛ちゃんだけ居ないの寂しい……」

「今回だけだから。この経験も、駅スタへのリベンジに繋げよう。」

 

 そして、私無しでやるとするならば………

 

「純子、皆のことお願いね。この中で純子が、一番ベテランなんだから。」

「………はいっ‼︎」

 

 純子が主体になる。まあ、あの彼女のことだ。全然心配してないけどね。

 

「それじゃあ皆、頑張って!」

「おう!愛も頑張れよ!」

「「頑張ってね!」」

「がぁぁぁぁぁ!」

「健闘を祈りんす。」

「行ってらっしゃいませ!」

「ありがとう!」

「それじゃあ幸太郎グループの皆さ〜ん、しばしのお別れなり〜♪」

「その呼ばれ方はなんか嫌やな。」

 

 ということで、私は専属プロデューサーならぬニートを連れて、その部屋を後にしたのだった。

 

 

 

 

 その後、私は奈々子の部屋に入り、早速事情を聞くことにした。

 

「で、何が狙い?」

「一つはボクが裏方として自立すること………って言ってたけど〜、これはこの間散々やったからオッケー。」

「まあそれはそうね。」

「で、残りは………まず愛の考えを聞こうか〜。」

 

 が、どうやっても口を割らなそうだった。奈々子はたまに頑固なところあるからなぁ。こうなったら、自分の頭で考えるか。意味のあること……フランシュシュの成長……

 

「まず私の成長。グループに慣れてる人間が、1人で上手くやっていけるか。」

「お〜、流石〜!で、残りは〜?」

「これは自分で言うのもなんだけど………エースの私がいない間で、フランシュシュがどう成長するか、でしょ?」

「さっすが愛〜♪分かってるじゃ〜ん♪」

 

 やっぱりこれか。あの2人が意味のない事をやるわけないからね。私が練習を仕切っている現状を奈々子は見ていたし。こう考えても当然だろう。そういうことなら、この期間はとことんソロの力を伸ばす。そして皆を信じるしかないわね。

 

「でも〜、あと一個足りませ〜ん!」

「えっ?」

 

 そんな事を思っていたら、奈々子に変な事を言われた。あと一個足りない?ここから更に何か考えが………

 

「巽奈々子という1人の女を養う。それによって、大黒柱としての責任感を育てるのさ〜♪」

 

 無かった。

 

「分かった。お小遣いは無しでいいね?」

「ちょっと〜⁉︎そんなのダメだよ〜‼︎」

「元々私がアンタの金を管理するよう、アイツからも言われているから。2人きりになった今、今までよりもちゃんと管理してあげる♪」

「うわぁ〜、鬼だ〜、悪魔だ〜!え〜ん、いっぱい飲みたいよ〜、吸いたいよ〜、打ちたいよ〜!」

「グダグダ言ってないで仕事する事。いい⁉︎」

「は〜い…………」

 

 ぶっちゃけ巽のもう一つの目的。私にニートの世話をさせる。絶対これに違いない。なんとしてもコイツの根性を叩き直してやるんだから‼︎そう思った日だった。

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