伝説のニート、平成のアイドルと共に佐賀を救う 作:スピリタス3世
愛視点
ムツゴロウ広場でのライブ。ホワイト竜からメインパーソナリティーを引き継いだラジオ。ちょっとずつスケジュールが埋まり始めてきて、仕事の手応えを感じてきたある日。私は奈々子の部屋で、アイアンフリルの動画を見ていた。
「ここまで精密なシンクロ……今の私たちには難しいか。」
「そ〜だね〜。もっと頑張らないとね〜。」
難しい振り付けと完璧なタイミングでのお互いの動き。それでいて疲れを見せず、曲にマッチした表情をし続ける。このレベルに到達するには、今よりももっと頑張らないといけない。今のレベルで満足してたら、全然ダメなんだから。つい思い詰めてしまう。
「そ〜だ、純子の生前の動画も見る〜?」
「うん、見たい見たい!」
「おっけ〜。」
そんな時は、純子の動画を見て気分転換をしている。たった1人で観客を惹きつける。その圧倒的な実力とカリスマ性に、つい惹かれてしまう………
「愛さん、水道空きましたよ!」
って純子⁉︎いつの間に⁉︎
「へっ⁉︎あっ、なんでもない‼︎今から行く///」
大丈夫だよね⁉︎バレてないよね⁉︎危なっ‼︎
「ウケる〜♪」
「ウケんな‼︎」
奈々子にはニヤニヤからかわれるし‼︎絶対バラさないでね‼︎頼むから‼︎そう思いながら、私は水浴びに行った。
その数日後、私たちはいつものようにミーティング室でミーティングをすることになった。ちなみに奈々子はこの日から復職した。
「アイアンフリルが来・る・ぞー!アイアンフリルが来・る・ぞー!こいつはどえらいライブだぞー‼︎殴り込め、殴り込め、殴り込めぇぇぇぇぇ‼︎」
「きゃぁっ⁉︎」
「そら殴り込めやぁぁぁぁぁぁ‼︎」
そして、いつものようにアホみたいなテンションで入ってくる巽。しかも何故か水鉄砲を持っている。さくらにサキと次々ヒットさせ、いつも通り奇行で暴れ散らかしていた。次の標的は奈々子っぽい………
「あれ〜、これお酒じゃくてお水だ〜。」
「何してんの⁉︎」
いや、その水飲むなし‼︎あとお酒なわけないでしょ⁉︎なんで巽はどっちもアホなのよ⁉︎
「いい加減にして!早く仕事の話をしてちょうだい!」
そんな事よりも、早く仕事の話をして欲しい。私たちも暇じゃないんだから。
「いいだろう、その耳の穴をかっぽじってよ〜く聞け‼︎この佐賀の不毛の地に新たな戦場がおっ立ったんじゃい。その名も佐賀アリーナ‼︎その
そんな事を思っていると………嘘でしょ⁉︎佐賀ロック以来のアイアンフリル再来⁉︎
「何が柿落としライブじゃい⁉︎佐賀のアリーナっつうのに東京のアイドルが柿落とすんじゃい………ってことで、ハイドーン‼︎お前らをアイアンフリルの前座にねじ込んでおきました‼︎」
「マジかよ………」
「アイアンフリルが………?」
「どやんすどやんす〜っ⁉︎」
私の古巣にして、今の目標。それの前座をまた出来るんだもの‼︎これは燃えてきたわね‼︎
「みんな〜!今回だけは〜、アイアンフリルに憧れるのをやめましょ〜!憧れてしまったら、越えられないんです〜!」
「アンタ、いい事言うじゃん!」
「えへへ〜!マネージャーとギャンブラーの二刀流、ボクこそ佐賀のショウヘイなのさ〜!」
「イッペイの間違いでしょ。」
憧れずにライバルとして扱う。レベル差なんて上等‼︎やってやろうじゃない‼︎
「それはさておき………やろう‼︎私たちなら出来る‼︎絶対‼︎」
「ちなみに、愛は今回欠席です。」
そんな事を思い、意気込んでたんだけど………。えっ………?ちょっと待って………?私が………欠席?
「えっ⁉︎なんでよ⁉︎」
「え〜、出れると思うんでちゅか愛ちゃんは⁉︎アイアンフリルの真ん前に⁉︎伝説の初代センターまんまのそのお顔で⁉︎」
「ぐっ……………」
そう言われると言い返せない。確かに私が顔バレする可能性が高いけど………っ!でも………っ!
「ざっけんな!ここまで散々顔晒して活動してきたやろが‼︎」
「アイアンフリルとなら、佐賀ロックでも一緒に出れたよ☆」
「そうですよ、今更愛さん抜きでなんて!」
「フランシュシュは皆でフランシュシュなんですよ、幸太郎さん!」
「がぁぁぁぁぁぁ‼︎」
皆がフォローしてくれる。それが今はありがたい。そして、だからこそなんで私を除け者に………?
「ウジ虫ゾンビィども、さっさと準備始めんか〜い‼︎それと愛、お前にはソロの仕事を入れておいた。明日からは、奈々子と一緒にそちらに行ってもらう。以上‼︎」
「ってことで、よろしく〜♪」
私は完全にソロ活動。奈々子が一緒に来てくれるものの、みんなとはしばらく別行動。更にはああなった巽は言うことを聞かないということ。もうこうなった以上は、別行動を受け入れるしかないか………
「おい奈々子‼︎事情を説明しやがれ‼︎」
「幸太郎は自分たちで意味を見出して〜、って言ってたよ〜。だから今回はボクの口から何も言わな〜い!」
「何か考えあってのことなのね。それならいいわ。」
「愛、お前がいいなら………」
「ありがとう〜!」
流石にここでの別行動は、身バレ以上の何か得るものがあるということか。とりあえず、今ざっと思いつくことを言っておこう。
「今思いつく事を言うね。アクシデントでメンバーが休むこと自体は今後もあり得る話。考えようによっては、フランシュシュがもう一回り成長するチャンスかもしれない………というか、アイツらもそれを狙ってる気がする。」
「そうなの、奈々子ちゃん?」
「言えませ〜ん!ごめんね〜。」
「意地悪〜☆というか愛ちゃんだけ居ないの寂しい……」
「今回だけだから。この経験も、駅スタへのリベンジに繋げよう。」
そして、私無しでやるとするならば………
「純子、皆のことお願いね。この中で純子が、一番ベテランなんだから。」
「………はいっ‼︎」
純子が主体になる。まあ、あの彼女のことだ。全然心配してないけどね。
「それじゃあ皆、頑張って!」
「おう!愛も頑張れよ!」
「「頑張ってね!」」
「がぁぁぁぁぁ!」
「健闘を祈りんす。」
「行ってらっしゃいませ!」
「ありがとう!」
「それじゃあ幸太郎グループの皆さ〜ん、しばしのお別れなり〜♪」
「その呼ばれ方はなんか嫌やな。」
ということで、私は専属プロデューサーならぬニートを連れて、その部屋を後にしたのだった。
その後、私は奈々子の部屋に入り、早速事情を聞くことにした。
「で、何が狙い?」
「一つはボクが裏方として自立すること………って言ってたけど〜、これはこの間散々やったからオッケー。」
「まあそれはそうね。」
「で、残りは………まず愛の考えを聞こうか〜。」
が、どうやっても口を割らなそうだった。奈々子はたまに頑固なところあるからなぁ。こうなったら、自分の頭で考えるか。意味のあること……フランシュシュの成長……
「まず私の成長。グループに慣れてる人間が、1人で上手くやっていけるか。」
「お〜、流石〜!で、残りは〜?」
「これは自分で言うのもなんだけど………エースの私がいない間で、フランシュシュがどう成長するか、でしょ?」
「さっすが愛〜♪分かってるじゃ〜ん♪」
やっぱりこれか。あの2人が意味のない事をやるわけないからね。私が練習を仕切っている現状を奈々子は見ていたし。こう考えても当然だろう。そういうことなら、この期間はとことんソロの力を伸ばす。そして皆を信じるしかないわね。
「でも〜、あと一個足りませ〜ん!」
「えっ?」
そんな事を思っていたら、奈々子に変な事を言われた。あと一個足りない?ここから更に何か考えが………
「巽奈々子という1人の女を養う。それによって、大黒柱としての責任感を育てるのさ〜♪」
無かった。
「分かった。お小遣いは無しでいいね?」
「ちょっと〜⁉︎そんなのダメだよ〜‼︎」
「元々私がアンタの金を管理するよう、アイツからも言われているから。2人きりになった今、今までよりもちゃんと管理してあげる♪」
「うわぁ〜、鬼だ〜、悪魔だ〜!え〜ん、いっぱい飲みたいよ〜、吸いたいよ〜、打ちたいよ〜!」
「グダグダ言ってないで仕事する事。いい⁉︎」
「は〜い…………」
ぶっちゃけ巽のもう一つの目的。私にニートの世話をさせる。絶対これに違いない。なんとしてもコイツの根性を叩き直してやるんだから‼︎そう思った日だった。