伝説のニート、平成のアイドルと共に佐賀を救う   作:スピリタス3世

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第二十三話 愛と青春のアコースティックSAGA 後編

  愛視点

 

 それからというもの、奈々子プロデュースによる私のソロ活動が始まった。佐賀のテレビ番組出演やタマネギフェアなどのイベント、そしてグッズ販売まで。

 

「お〜お〜、順調に仕事が来ますなぁ〜♪」

「次はどこ?そろそろ県外?」

「ごめ〜ん、佐賀以外の仕事は引き受けるなって幸太郎に言われてるの〜。」

「なんでよ⁉︎他県の仕事も引き受けた方が絶対知名度アップに繋がるでしょ⁉︎」

「ボクもそう思ってるんだけど、頑なに佐賀オンリーでって言われてるんだよ〜。だからごめんね〜。」

「全く…………」

「お詫びに今度炭火焼肉してあげる〜!」

「えっ、いいの⁉︎ありがと〜♪」

「愛ってやっぱりチョロ〜い♪」

「うるさい‼︎」

 

 何故か佐賀限定だけど。そんなアイツの方針と奈々子の煽りに不満を抱きつつも、ご飯が美味しいからなんとかやれている。あと、私はチョロくないから。決して。

 

 

 

 ソロ活動にもだいぶ慣れてきたある日、私と奈々子は仕事帰りに、誰かに声をかけられた。

 

「フランシュシュの3号さんね。」

「アイアンフリルの………」

「本当にそっくりなのね。」

 

 振り返ってみると、そこにいたのはアイアンフリルの現センター、羽場詩織だった。

 

「おっと〜、うちの3号さんに何か用ですか〜?」

「あなたは………新人の7号さん?」

「違うよ〜。マネージャーの奈々子だよ〜。」

「ま、マネージャー⁉︎そうだったんですね……」

「そんな畏まらなくていいよ〜。」

 

 すかさず奈々子が割って入る。いきなりアイドル同士の接触とか、プロデューサーやマネージャーからしてみたら避けたいものね。本当はあっちのマネージャーと話すべきなんだけど、今はここにいないから仕方ないわね。

 

「それで〜、お話ってな〜に〜?」

「はい。フランシュシュのことは、結構前からチェックしてたんです。」

「お〜、天下のアイアンフリルが私たちのこと気にかけてたんだって〜♪よかったね〜、3号!」

「そうね。私も正直びっくりよ。」

 

 それはそうと、アイアンフリルのセンターが私たちのことを気にかけてたなんて。かなり驚きね。地方アイドルなんか数が膨大すぎて追いきれないのに。気にかけてくれるのは正直嬉しい。ただ、何が狙い………?

 

「そういえばあなた、最近ソロで活動してるんですって。ようやく目覚めたのね。」

 

 本当に何が狙い?目覚めたって………?

 

「そうなんだよ〜!3号はボクを養うという心に目覚めてくれたのさ〜♪」

「そんなわけないでしょ‼︎余計なこと言って混乱させない‼︎」

「ごめ〜ん♪」

「あの、このマネージャーって………」

「ただのニートよ。マネージャーやらせてるだけ。気にしないで。」

「今は元ニートですぅ〜♪」

「アンタはちょっと黙ってて‼︎」

「ええ………」

 

 奈々子はうざいから放っておくとして………本当にこの子は何が言いたいの?

 

「で、話って何?」

「気づいたんでしょ?あなたにはフランシュシュは相応しくない。」

「えっ………?」

 

 フランシュシュに相応しくない………?えっと、私が独立したがってると………?

 

「パフォーマンスに滲んでいるのよ。あなたが目指しているのは、私たちアイアンフリル。絶対王者に君臨し続ける、最強のトップアイドルの姿。他の誰が気づかなくても、私には分かる。私も、追い続けて来たんだもの。伝説の初代センター、水野愛。あの輝きを超えるためなら、私は如何なる努力も惜しまないでやってきた。」

 

 そんな事はない………っ!確かにトップアイドルは目指しているけれども、それは………っ!

 

「私は………っ!」

「フランシュシュ3号、アイアンフリルに入りなさい‼︎」

 

 そう思っていたら、思わぬことを言われた。私がアイアンフリルに復帰⁉︎嘘でしょ⁉︎

 

「あなたにはポテンシャルがある。でも佐賀なんて辺境の地で燻っていたら、目指す栄光には届かない。アイアンフリルは最強よ。そして、未来まで最強であり続けるための努力を惜しまない。アイアンフリルこそが、あなたの立つべき唯一の場所よ!今すぐにとは言わないわ。週末、ライブの後で返事をちょうだい。見せてあげる。フランシュシュでは絶対到達することの出来ない、王者のパフォーマンスがどんなものか。」

 

 まさかのスカウト。確かにここに入れば、私はすぐトップアイドルになれるかもしれない。でも………

 

「今度からそういう事は、自分のところのマネージャー通して言ってね〜。びっくりしちゃうから〜。」

「は、はい。すいません………」

「いいえ〜。それじゃあ〜、タクシー呼ぶからここで待ってて〜。この時間にJK1人は危ないしぃ〜。ボクたちもここで待ってるよ〜。」

「ありがとうございます。」

 

 それにしても、なんでコイツは止めなかったの?マネージャーなら、すぐに断ることもできたじゃない‼︎

 

 

 

 羽場詩織が帰った後、私は奈々子を問い詰めた。

 

「なんでアンタ、アイツを止めなかったの⁉︎」

「別に、止める必要がないからだよ〜。」

「止める必要がない⁉︎」

「どっちで活動したいかなんて〜、愛自身が決めることだしぃ〜。」

「でもさ、アンタはフランシュシュのマネージャーでしょ⁉︎私が出てってもいいわけ⁉︎」

「うん。」

「はぁ⁉︎」

 

 てっきり奈々子のことだから、その話はすぐに断ると思った。元私のファンで、今もなんだかんだ私のために動いてくれている。でも私がフランシュシュじゃなくなったら、会えなくなる。それに、他の皆のためも思えば、あんな話は無い方がいいはずなのに。コイツは一体、何を考えてるのよ………?

 

「だってボクも一緒に行けばいいんだも〜ん。」

 

 私に………ついてくる………?

 

「えっ………?」

「愛がアイアンフリルに行ったら、ボクもマネージャーとして一緒に行けばいい。愛がフランシュシュに残るなら、ボクも残る。」

「えっ?でも、他の皆は………?」

「そりゃ、さくらだって、サキだって、純子だって、ゆうぎりだって、リリィだって、たえだって、幸太郎だって〜、いい人だな〜、とは思ってる。でもボクの最優先は愛なんだよ。愛がアイドルとして成功するのを見るために、ボクはフランシュシュのマネージャーをやってるの。その場所が変われば、ついていくまでさ!」

「そう………だったの…………」

 

 私が最優先………。いくら元ファンとはいえ、そこまでするつもりだったの………。確かに奈々子はマネージャーの割には、全然みんなに平等に接している感じではなかった。純子の説得は途中で諦めてるし、巽だってさくらに任せっきり。他の皆にはそこまでキツい言葉は使わないのに、私にだけ全力。他のメンバーの悩みにはそこまで深入りしてないのに、私だけには全力で向き合ってくれた。こんな人、後にも先にも………

 

「…………」

「あっ、でもそんな気負わなくていいよ〜!なんか変なのがついてくるくらいに思ってくれれば〜!」

「いや、そういう事じゃなくて………」

 

 いや、1人居たな。棚橋灯里(たなはしあかり)、私の大切な友達だ。黒髪ロングのメガネっ子で、ぱっと見は大人しそうな女の子だった。でも意外とお調子者で、とても芯が強い女の子。私がアイアンフリルのメンバー入りして上京する時に、私を応援するって言って一緒についてきたんだよね。秋田から東京まで。しかも2人で暮らして、学校の勉強を教えてくれたりご飯を作ってくれたりしたっけ。本当に大切な思い出だ。灯里は今何をしてるのかな……?

 

「懐かしい人を思い出したの。」

「懐かしい人〜?」

「私の大切な友達。アイアンフリルの時、一緒に暮らしたんだよね。今元気にしてるかな?」

「………どうなんだろ〜?でも、きっと愛のことを応援してくれてると思うよ〜!」

「そう?そうだといいな。」

「その子のためにも、どっちに行くか決めないとね〜!」

「そうね‼︎」

 

 ふと思い出した彼女。東京に行ったら会えるかもしれない。だからアイアンフリルに入れば………。でも、今のみんなだって大切にしたい。どっちのグループでやっていくか。人生すでに終わったはずなのに、大きな岐路に立たされてしまった私だった。

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