伝説のニート、平成のアイドルと共に佐賀を救う 作:スピリタス3世
愛視点
次の日の夕方のこと。いつものようにソロ活動を終えた私と奈々子は、公園で俯いている純子を発見した。
「おっ、純子じゃ〜ん。こんにちは〜!」
「こんばんはだよ‼︎」
「お、お疲れ様です………」
それにしても、今は純子が仕切ってるはず。なのに1人でこんなのところにいるって………。どういうこと?
「それより何してるの、こんなところで?練習は?」
「えっと………すみません。」
そう言って去ろうとする純子。一体どうしたんだろう?なんか変だ。引き止めてでも、話をしなきゃ。そう思い、私は去ろうとする彼女の腕を掴んだ。
「何かあったの?」
「いえ、ちょっと休んでいただけで………。大丈夫ですから。」
「皆と喧嘩でもした?」
「本当になんでもないんです。愛さん、この後もお仕事ですよね?心配しないで、頑張ってください。」
「誤魔化さないで。何があったの?」
「…………」
何かを隠そうとする純子。本当に心配だ。一体何があって………
「愛さんは今のフランシュシュよりも、アイアンフリルだった頃の方が良かったのでしょうか?」
それ………?こんな時に何を考えてるのよ?頼むからしっかりして!
「何言ってるの⁉︎アンタがそんなんじゃ、皆だって不安になる。今がフランシュシュにとってどれだけ大事な時か、分かってるでしょ?駅スタの二の舞にするつもり?」
「聞いてたんじゃないの〜?愛が勧誘受けた話。」
そんな事を思ってたら、しばらく黙っていた奈々子が口を開いた。えっ、あの話、聞かれていたの………?
「じゃないとこんな事言わなくな〜い?ねえ、純子〜、どうなの〜?」
「………はい。聞いてました。」
「そう、だったの………」
どうしよう………。それは確かに動揺するか………。いや、でも、私だって考えがまとまってないし…………
「愛さんはさっきの話………否定してくれないんですね?」
「えっと………」
だめだ。答えられない。比較できない。こんな時すぐに言えたらいいんだろうけど、そんなのすぐには無理だ。
「悩むのも分かるけどさ〜、愛も昨日の今日で混乱してるんだよ〜。聞いてたのなら、そんなすぐに問い詰めないであげて〜。」
「奈々子さん、あなたは愛さんの味方なんですよね?私たちなんか、見捨てていいって思ってますよね?」
「お〜っと、ボクの話も聞いてたか〜。」
奈々子が純子を宥めようとするも、逆に問い詰められる。私の話も聞いてたなら、奈々子の話も聞いてるよね。彼女は思った以上に、私のためならフランシュシュを捨てる覚悟がある。それを直接聞いちゃったのなら、複雑な気持ちになっても仕方ないか………
「とにかくさ〜、純子は愛に居て欲しいんでしょ〜?だったら実力で黙らせちゃえばいいんだよ〜!アイアンフリルなんて行く気にもならないような〜、すっごいパフォーマンスをね〜!」
「そんな、簡単に言われても困ります………」
そうよね。純子は私にいて欲しいのよね。私だって逆の立場だったらそう言うし。それに、奈々子が言うことはもっともなんだけど………そんな簡単に今のアイアンフリルを圧倒するパフォーマンスなんて、出来るわけがない。そんなのアイドル経験者なら、なおのこと分かるはず………
「へ〜、伝説の昭和のアイドルはこんなもんか〜。」
そんな事を思ってたら…………コイツは何を言ってるの⁉︎
「えっと………」
「はぁ⁉︎アンタ何言ってるの⁉︎純子はあの時代をたった1人で駆け上がったスーパースターなのよ⁉︎バカにしていいわけないでしょ‼︎」
「あっ、愛さん………っ⁉︎///」
「あっ…………///」
やばっ、思わず言っちゃった⁉︎どどどどどうしよう⁉︎
「えっと、あの、その、これはね、事実というか、その………///」
「じ、事実ですか………///」
「いや、えっとっ⁉︎///」
焦って余計な事ばっか言っちゃう⁉︎あーもう、なんなのよ⁉︎
「お〜お〜、いいね〜!そしてぇ〜、愛にここまで言わせたのに〜、純子はこのままでいいのかな〜?」
「………分かりました。見せてあげます。」
「そう来なくっちゃ〜♪常識をぶち壊し、皆で輝くのさ〜!」
でもなんか純子が覚悟決まったみたいだし、結果オーライなのかな?私の恥ずかしい思いはバレちゃったけど‼︎あと輝くって………
「で、愛もちゃんと考えないとね〜♪」
「分かってるよ。」
にしても、なんだかんだ奈々子に助けられたなぁ。彼女が居なかったら、今頃もっと気まずくなってたのか、あるいは純子のこと知らずに終わったのか。こんな人がずっと着いてきてくれるのは、本当にありがたい。
「それじゃあ、ボクはパチンコ行ってきま〜す!」
「行く金無いでしょ。」
「確かに〜。じゃあ貸して〜!」
「ダメ。いい加減諦めて。」
「ええ〜、ひど〜い‼︎」
「本当なんなんでしょうね、この人は………」
「そうよね。ちゃんと最後まで締めてほしいわね。」
でも、邪魔な時もある。そろそろ諦めろっつーの‼︎
次の日のこと。私は仕事前に楽屋でお昼ご飯を食べようとしていた。最初は外食にするか悩んだけど、せっかくだし料理の得意な奈々子に任せてみることにした。そしたら本当に美味しくて美味しくてたまらない!革新的でかつ懐かしく、そして温かい彼女の味。気がついたら私に胃袋を掴まれていた。さてと、今日のお弁当は何かな〜?そう思いながら弁当箱の蓋を開けたら………
「カバ………バカってこと?」
ご飯の上の海苔がそう書いてあった。コイツ、さては私のことバカにしてるな⁉︎
「奈々子、何これ⁉︎私がバカってこと⁉︎」
「ん?あ〜………、バレちゃったか〜♪」
「何がバレちゃったよ⁉︎バカにしないで‼︎」
「じゃあお金ちょ〜だい♪」
「それは無理………」
ん?蓋の上に海苔がついてる?一部取れてたのか………。これを元の位置に戻すと………『ガンバレ』……か。
「ごめん奈々子。」
「も〜、気づくの遅いんだから〜!流石おバカさん♪」
「うるっさいわね‼︎」
「ということで〜、お弁当代プリーズ♪」
「バカにされたから無し‼︎」
「ひど〜い!DVだDV〜‼︎」
でも結局バカにされた‼︎全くコイツは………っ‼︎こうやって人の胃袋を掴んで、自然とヒモになれるようにしてきたのね‼︎ホント腹立つんだから‼︎
それから数日が経ち、いよいよ佐賀アリーナでのライブの日を迎えた。そして私と奈々子は廊下でちょうどアイアンフリルの詩織とすれ違った。
「おっ、詩織じゃ〜ん!おひさ〜♪あれからちゃんと帰れた〜?」
「お久しぶりです、マネージャーさん。おかげさまで無事にホテルに帰れました。」
「そっかそっか〜!良かった〜♪」
「本当にありがとうございました。」
奈々子と詩織のやりとりを見ると、ちゃんと大人と高校生のやりとりに聞こえる。奈々子にはいつもこうして欲しいんだけどな。
それはさておき、あの時の答えを聞かれるよね………。大丈夫、ちゃんと用意したから。
「それで、3号さん。あれから考えてくれた?これであなたもアイアンフリルに………って、なんで衣装じゃないの?」
「だって今日は私出ないし。」
「どういうこと⁉︎」
「私たちにもプランがあるの。そういうことだから、じゃあね。」
「………私たちは最高のパフォーマンスを見せるつもりで来た‼︎なのに、あなたのいないフランシュシュなんて………烏合の衆も当然じゃない⁉︎」
「フランシュシュを舐めない方がいい。あの子たちは進み続ける。私だって油断したら、あっという間に置いていかれる。ステージを見て、あなたにも分かるはず。」
「………楽しませてもらうわ。」
「それじゃあまたね〜!」
「はい。」
ということで、私たちは詩織と別れて客席へと向かった。
客席の最後列では、既に巽が待っていた。
「どうだお前ら。この期間で何か得るものはあったか?」
「パチンコで3万勝ちました〜♪」
「そんな話は聞いてない‼︎」
「色々と考えさせられたわ。あとは皆のパフォーマンスを見るだけね。」
「そうかそうか。それは良かったなぁ‼︎」
ダブル巽が考えた別行動プラン。結果的にこれで良かったと思っている。あとは皆のパフォーマンスがどうなるか。さくら、サキ、ゆうぎり、リリィ、たえ、そして純子。見せてよ、今のフランシュシュを………っ‼︎
そして、フランシュシュのライブが始まった。最初は………
たえのドラムソロ⁉︎嘘でしょ、アンタドラム叩けたの⁉︎しかもなんかカッコいいし‼︎
そして次は純子のエレキギター⁉︎嘘でしょ⁉︎めちゃくちゃかっこいい‼︎ゴリゴリのロックじゃん‼︎何これ、これがギャップ萌えってやつ⁉︎純子の歌は動画サイトでアコースティックギターしか聴いたことなかったから、とても新鮮!
そしてみんなの歌は、なんとラップ調‼︎カッコいいじゃん!すごい、すごいって!そして盛り上がって………いよいよサビ‼︎
って、純子の歌カッコ良すぎでしょ‼︎なにあれ、すごい‼︎めちゃくちゃすごいじゃん‼︎凄すぎててバカになってる‼︎ヤバい‼︎
「どうですか〜、推しの生ライブは〜?」
「最高っ‼︎」
「それは良かった〜♪」
これは夢中になるって‼︎この感覚、なんだか懐かしい‼︎そして、本当に最高………
「うあぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」ガシャーン‼︎
「あっ…………」
って、純子がギター壊した⁉︎何してんのアイツ⁉︎巽が絶望してるじゃん⁉︎完全なロックンローラーになったってこと⁉︎
「…………」スッ
そして、無言で壊れたギターを私の方に向ける。これは………っ、来いってことね‼︎
「よしっ!」
「3号、行ってらっしゃ〜い‼︎」
「あっ………俺のギター、…………」
こうして、私は純子の元へと駆けていった。それからのライブはとても楽しかった。純子がエレキの電源から帯電し、皆に移した。そしていつもの『目覚めRETURNER 〜Electrical Version〜』をパワーアップさせ、手からレーザー光線を出して可愛らしい演出を追加。憧れの人と一緒のステージに立てるのが、本当に本当に嬉しかった。
ライブ後、私たちは詩織に話しかけられた。
「いいステージだったわ。正直、あそこまでやれるとは思ってなかった。今から最強を見せてあげる。あなたにも分かるはずよ。自分が立つべき場所が。」
自分が立つべき場所。それはもう決めてある………っ‼︎
「3号はフランシュシュのメンバーです。絶対に渡しません‼︎」
ってあれ、純子⁉︎それに他のみんなも威嚇⁉︎えっ、ちょっ、そんなに⁉︎これは尚のこと嬉しいわね‼︎
「ごめん。その話だけど、私はフランシュシュに残るから。それじゃあ頑張って!」
「…………そう。」
「フラれちゃったわね。」
「…………」
そう言って、アイアンフリルはステージに上がった。あと金髪の子、フラれたなんて言わないでよ!別にそんなんじゃないから!
後日、アイアンフリルがテレビで私たちをライバル宣言した。嘘でしょ⁉︎まさかのライバル宣言‼︎そんな事ってある⁉︎私を勧誘できなかった腹いせじゃないよね⁉︎
「これは燃えるやつですな〜。」
「いや、ホントびっくりよ!」
それはともかく、このおかげで私たちの名前が更に全国に広まったのだった。これでもっと有名になれば、灯里とも会えるかも。そう思った日だった。