伝説のニート、平成のアイドルと共に佐賀を救う 作:スピリタス3世
愛視点
舞々との感動的なライブから約1ヶ月が経ち、時は既に11月となっていた。
「だいぶ寒くなってきたね〜。」
「そうね。秋田の頃よりはだいぶマシだけど。」
「そりゃ秋田は寒すぎますよ〜。」
そんな中で、私たちはいつものようにミーティング室に集められていた。今日はいったい何の話をするんだろう。紅葉狩りとか?それともちょっと早いけど、雪まつりのイベント参加?本当に楽しみだ。
そんな事を思っていると………
「た〜まやぁぁぁぁ‼︎か〜ぎやぁぁぁぁぁぁ‼︎打ち上げ花火だぞぉぉぉぉ‼︎た〜まやぁぁぁぁ‼︎か〜ぎやぁぁぁぁ‼︎」
巽がめちゃくちゃ季節外れな事を言いながら入ってきた。
「アンタ今何月だと思ってんの⁉︎11月よ11月‼︎夏なんかとっくに終わったじゃない‼︎」
「はいざんね〜ん‼︎佐賀の花火は11月なんですぅ〜‼︎」
11月に花火⁉︎そんな事あるわけないでしょ‼︎秋も終盤、もうすぐ冬じゃない‼︎
「「「えっ………?」」」
佐賀出身の3人まで完全に混乱している。それみたことか‼︎11月に花火なんかやるわけないっつーの‼︎
「去年始まった、伊万里湾大花火ぃぃぃぃぃ‼︎」
「まだ2回目じゃないですか。」
「そんなんで佐賀の常識みたいに言われても困るわよ。」
佐賀の花火=11月が成り立つわけないじゃん‼︎奈々子も大概だけど、コイツも本当に無茶苦茶なんだから‼︎
「そんな超一大イベントで、フランシュシュがライブをすることになったんじゃぁぁぁぁい‼︎」
「「「おお………っ!」」」
そして、仕事といえばこれよね。花火大会でライブって中々ないから、本当に珍しい。そもそも花火の最中って音大きいし暗くて見えないし、普通やらないのに。もしかしたら、花火の前にやるのかな?
「花火の前にライブをドーンとやって、そして花火をドーンとやるんじゃーい‼︎」
「おお!それ派手でよかやな!」
「楽しそうですね!」
「風情がありんすなぁ。」
「リリィ花火大好き☆」
「がぁぁぁぁぁ!」
やっぱりそうよね。私たちのライブで盛り上げて、最高潮のところで花火を打ち上げる。これはやり甲斐があるわね‼︎おまけに仕事終わりに花火も楽しめるし!
「本番は2週間後‼︎それまでにきちんと仕上げておくんじゃい‼︎た〜まやぁぁぁぁぁぁ‼︎か〜ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
「「「「オー‼︎」」」」
「皆がんばれ〜!」
ということで、私たちは伊万里湾大花火に向けて準備を始めたのだった。
そして、迎えた花火大会当日。
「わ〜、皆の浴衣姿がばいや〜らしか!」
「ありがとう、さくらちゃん☆」
「さくらさんも可愛いですよ!」
「がぁぁぁぁぁぁ‼︎」
「これも姐さんの着付けのおかげだぜ!」
「喜んでもらえて何よりでありんす。」
今回はなんと、ライブ衣装に浴衣を採用している。どうやらフランシュシュでのトークイベントがメインらしく、曲は『光へ』と『TO MY DEAREST』のゆったりした2曲のみ。流石に浴衣姿+下駄ではあまりにも動きにくいからね。これは仕方ない。
「愛〜、浴衣可愛いよ〜!似合ってる〜!」
「ありがと、奈々子。」
ちなみに私はメンバーカラー通り、青い浴衣を着ている。他のメンバーもちゃんと浴衣を着ており、あの巽でさえ紺色の甚平と雰囲気に合わせている。のだが………
「で、なんでアンタは灰色のスウェットのままなのよ⁉︎」
奈々子だけはいつもの格好のままだった。しかも手にはちゃんと酒瓶。その見た目からは、ちっとも風情が感じられなかった。
「え〜、でもいそうじゃ〜ん?この格好で花火見にきて酒飲んでる人〜?」
「ただのズボラな人じゃない⁉︎というかアンタが皆の分の浴衣発注したんでしょ⁉︎」
「だってぇ〜、ボクはメンバーじゃないしぃ〜。」
「それ言ったらアイツはどうなのよ?」
「幸太郎はメンバーじゃないって一目で分かるじゃ〜ん。でもボクは違うでしょ〜?」
「まあ、そうか…………」
一応本人なりに考えていたのね。確かに、なんでアンタだけ踊らないのってなるか。それならいいけど………でも、奈々子の浴衣姿も見たかったなぁ。
「は〜い、ボクの勝ち〜♪何で負けたか、明日までに考えといて下さ〜い♪」
「うっざ………っ‼︎」
やっぱムカつくからいいや‼︎
会場に到着すると、そこは大勢の人で溢れかえっていた。
「わ〜、すごかね〜!」
「とても2年目の花火大会とは思えないですね。」
「これは将来佐賀の顔になりそう☆」
「あ〜ああ〜‼︎」
「ささささささ、寒い………」
「幸太郎〜、流石にこの時期に甚平はキツいでしょ〜。
「あ、ありがとうございます………」
佐賀にこんなに人がいたのかと思わせるくらいの圧倒的な賑わい。辺り一面お祭り騒ぎ。これぞ花火大会って感じだ。胸の高鳴りと共に懐かしさを感じる。よく小さい頃に大曲の花火大会行ってたし!
「花火といえば、隅田川の花火大会を思い出します!」
「私は大曲よ。本当に懐かし〜!」
「ボクはパチンコの演出かな〜。」
「何を思い出してんのよ⁉︎」
そういえば、その時に誓ったんだよね。あの花火よりも輝く、世界一のアイドルになるって。灯里に。そこから彼女も覚悟を決めてついてきたんだよね。ホント懐かしいなぁ。灯里、元気にしてるかな?
その後、私たちは大勢の人たちの前で、無事トークイベントとライブをこなした。お客さんは大盛り上がりで、とても楽しんでくれた。駅スタで一度失敗こそしたものの、着実に売れてきている。レベルが上がってきている。それを肌で感じられるのがとても嬉しかった。そしてなにより、お客さんが喜んでくれるのが最高に嬉しかった。
ライブ終了後、私たちは山の見える海岸沿いに陣取り、花火が打ち上がるのを楽しみにしていた。
「がば凄いのくるかな〜?」
「楽しみですね!」
「うっしゃぁぁぁぁ!気合い入れるぜぇぇぇぇ‼︎」
「気合い入れても見ることしかできねえよ☆」
「がぁぁぁぁぁぁ!」
「本当、賑やかでありんすなぁ。」
「褞袍、暖かい………」
「どんだけ寒かったのよ………」
皆が皆花火を心待ちにしている中、私は1人だけ居ないことに気がついた。奈々子だ。いつもならすぐ私をからかってくるのに、その気配が全然しなかった。この感じ、トイレにでも行ったのかな?なんならトイレで吐いてたりして………
「ちょっとお手洗いに行ってくる。」
「行ってらっしゃいませ。」
そう思い、私は席を立ち、皆の元を離れた。
こうして私は仮設トイレ目掛けて歩いたが、彼女を見つけることは出来なかった。行き違いだったのかな?それとも逆ナンでもしてるのかな?そう思ってしばらく辺りを眺めていると、河口の辺りに1人ちょこんと座っている人がいた。奈々子だ。花火なら皆と見そうなのに、何してるんだろう?気になった私は、彼女に近づいて話しかけた。
「ねえ奈々子、何してんの?もうすぐ花火始まるよ〜。」
「あ、愛⁉︎ど、どうしたのさ〜?」
珍しく彼女はびっくりした様子。いくら悪事がバレても悪びれもしなかった彼女の、とても珍しい反応だった。
「なんでそんなにビックリしてんのよ………?」
「いや〜、声かけられると思ってなくてさ〜。」
「何かあったの?」
「う〜んと………」
もしかして、1人になりたかった理由でもあるのかな?何か悩み事があるとか?そうじゃないと、皆から離れないだろうし。思わず心配してしまう………
「いや〜、あそこでボートレースやったらどうなるかな〜って思って♪」
いや、心配して損した‼︎ただの自分の趣味じゃん‼︎
「はぁ⁉︎それだけ⁉︎」
「そ〜だよ〜♪もしかして、ボクを心配してくれたの〜?」
「だって1人でこんなとこにいるって、アンタらしくないし‼︎」
「あはは〜♪愛ったら、優し〜♪」
「もう‼︎本当にアンタって人は………っ!」
ヒュ〜 ドンドン‼︎
そんな事思ってたら、花火が遂に始まった。
「お〜、始まったね〜。」
「そうね。」
「結構凄いじゃ〜ん、伊万里湾大花火ぃ〜!」
「私もこんなに綺麗だとは思わなかった。佐賀の花火もいいじゃん!」
「だね〜。」
空に輝く綺麗な閃光。暗闇を照らす大きな光。この眩しさに虜になったんだっけ。場所や種類は違えど、大曲を思い出す。ホント懐かしい。そうだ。あの時も、こうして2人で………
「すっごく輝いているね〜。」
その刹那、全ての点と点が繋がった。アンタ、やっぱそうよね。雪国生まれで同い年で、運動音痴の歌音痴で、甘ったるい声のボクっ娘で、料理上手で、そして何より世界で一番私を推してくれた人。趣味で分からなかったのは、私が生きてる時は未成年だったからだよね?見た目が変わっているのは、私が死んでから何かあったからよね?元ニートなのにマネージャーを一生懸命やってたのは、私を応援したかったからよね?そして、奈々子ってファンが居なかったのは、それが嘘の名前だからよね?
「ねえ………」
「何〜、愛〜?」
「アンタ、灯里よね?」
「えっ…………?なんで………」
なんでずっと黙ってたの?なんで嘘をついていたの?こんなに近くにいながら、どうして言ってくれなかったの?ねえ、教えてよ、灯里。
奈々子(灯里)視点
凄いなぁ、君は。これだけバレないように頑張ったのに、気づいちゃうんだもん。本当に、本当に凄いよ。伝説だよ。やっぱり君には、敵わないな〜。あの時からず〜っと、輝き続けてるんだもの。