伝説のニート、平成のアイドルと共に佐賀を救う   作:スピリタス3世

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今年もありがとうございました!よいお年を!


第三十一話 玉屋鍵屋喧屋SAGA

  愛視点

 

 舞々との感動的なライブから約1ヶ月が経ち、時は既に11月となっていた。

 

「だいぶ寒くなってきたね〜。」

「そうね。秋田の頃よりはだいぶマシだけど。」

「そりゃ秋田は寒すぎますよ〜。」

 

 そんな中で、私たちはいつものようにミーティング室に集められていた。今日はいったい何の話をするんだろう。紅葉狩りとか?それともちょっと早いけど、雪まつりのイベント参加?本当に楽しみだ。

 

 そんな事を思っていると………

 

「た〜まやぁぁぁぁ‼︎か〜ぎやぁぁぁぁぁぁ‼︎打ち上げ花火だぞぉぉぉぉ‼︎た〜まやぁぁぁぁ‼︎か〜ぎやぁぁぁぁ‼︎」

 

 巽がめちゃくちゃ季節外れな事を言いながら入ってきた。

 

「アンタ今何月だと思ってんの⁉︎11月よ11月‼︎夏なんかとっくに終わったじゃない‼︎」

「はいざんね〜ん‼︎佐賀の花火は11月なんですぅ〜‼︎」

 

 11月に花火⁉︎そんな事あるわけないでしょ‼︎秋も終盤、もうすぐ冬じゃない‼︎

 

「「「えっ………?」」」

 

 佐賀出身の3人まで完全に混乱している。それみたことか‼︎11月に花火なんかやるわけないっつーの‼︎

 

「去年始まった、伊万里湾大花火ぃぃぃぃぃ‼︎」

「まだ2回目じゃないですか。」

「そんなんで佐賀の常識みたいに言われても困るわよ。」

 

 佐賀の花火=11月が成り立つわけないじゃん‼︎奈々子も大概だけど、コイツも本当に無茶苦茶なんだから‼︎

 

「そんな超一大イベントで、フランシュシュがライブをすることになったんじゃぁぁぁぁい‼︎」

「「「おお………っ!」」」

 

 そして、仕事といえばこれよね。花火大会でライブって中々ないから、本当に珍しい。そもそも花火の最中って音大きいし暗くて見えないし、普通やらないのに。もしかしたら、花火の前にやるのかな?

 

「花火の前にライブをドーンとやって、そして花火をドーンとやるんじゃーい‼︎」

「おお!それ派手でよかやな!」

「楽しそうですね!」

「風情がありんすなぁ。」

「リリィ花火大好き☆」

「がぁぁぁぁぁ!」

 

 やっぱりそうよね。私たちのライブで盛り上げて、最高潮のところで花火を打ち上げる。これはやり甲斐があるわね‼︎おまけに仕事終わりに花火も楽しめるし!

 

「本番は2週間後‼︎それまでにきちんと仕上げておくんじゃい‼︎た〜まやぁぁぁぁぁぁ‼︎か〜ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

「「「「オー‼︎」」」」

「皆がんばれ〜!」

 

 ということで、私たちは伊万里湾大花火に向けて準備を始めたのだった。

 

 

 

 そして、迎えた花火大会当日。

 

「わ〜、皆の浴衣姿がばいや〜らしか!」

「ありがとう、さくらちゃん☆」

「さくらさんも可愛いですよ!」

「がぁぁぁぁぁぁ‼︎」

「これも姐さんの着付けのおかげだぜ!」

「喜んでもらえて何よりでありんす。」

 

 今回はなんと、ライブ衣装に浴衣を採用している。どうやらフランシュシュでのトークイベントがメインらしく、曲は『光へ』と『TO MY DEAREST』のゆったりした2曲のみ。流石に浴衣姿+下駄ではあまりにも動きにくいからね。これは仕方ない。

 

「愛〜、浴衣可愛いよ〜!似合ってる〜!」

「ありがと、奈々子。」

 

 ちなみに私はメンバーカラー通り、青い浴衣を着ている。他のメンバーもちゃんと浴衣を着ており、あの巽でさえ紺色の甚平と雰囲気に合わせている。のだが………

 

「で、なんでアンタは灰色のスウェットのままなのよ⁉︎」

 

 奈々子だけはいつもの格好のままだった。しかも手にはちゃんと酒瓶。その見た目からは、ちっとも風情が感じられなかった。

 

「え〜、でもいそうじゃ〜ん?この格好で花火見にきて酒飲んでる人〜?」

「ただのズボラな人じゃない⁉︎というかアンタが皆の分の浴衣発注したんでしょ⁉︎」

「だってぇ〜、ボクはメンバーじゃないしぃ〜。」

「それ言ったらアイツはどうなのよ?」

「幸太郎はメンバーじゃないって一目で分かるじゃ〜ん。でもボクは違うでしょ〜?」

「まあ、そうか…………」

 

 一応本人なりに考えていたのね。確かに、なんでアンタだけ踊らないのってなるか。それならいいけど………でも、奈々子の浴衣姿も見たかったなぁ。

 

「は〜い、ボクの勝ち〜♪何で負けたか、明日までに考えといて下さ〜い♪」

「うっざ………っ‼︎」

 

 やっぱムカつくからいいや‼︎

 

 

 

 

 会場に到着すると、そこは大勢の人で溢れかえっていた。

 

「わ〜、すごかね〜!」

「とても2年目の花火大会とは思えないですね。」

「これは将来佐賀の顔になりそう☆」

「あ〜ああ〜‼︎」

「ささささささ、寒い………」

「幸太郎〜、流石にこの時期に甚平はキツいでしょ〜。褞袍(どてら)あるから着な〜?」

「あ、ありがとうございます………」

 

 佐賀にこんなに人がいたのかと思わせるくらいの圧倒的な賑わい。辺り一面お祭り騒ぎ。これぞ花火大会って感じだ。胸の高鳴りと共に懐かしさを感じる。よく小さい頃に大曲の花火大会行ってたし!

 

「花火といえば、隅田川の花火大会を思い出します!」

「私は大曲よ。本当に懐かし〜!」

「ボクはパチンコの演出かな〜。」

「何を思い出してんのよ⁉︎」

 

 そういえば、その時に誓ったんだよね。あの花火よりも輝く、世界一のアイドルになるって。灯里に。そこから彼女も覚悟を決めてついてきたんだよね。ホント懐かしいなぁ。灯里、元気にしてるかな?

 

 その後、私たちは大勢の人たちの前で、無事トークイベントとライブをこなした。お客さんは大盛り上がりで、とても楽しんでくれた。駅スタで一度失敗こそしたものの、着実に売れてきている。レベルが上がってきている。それを肌で感じられるのがとても嬉しかった。そしてなにより、お客さんが喜んでくれるのが最高に嬉しかった。

 

 

 

 

 ライブ終了後、私たちは山の見える海岸沿いに陣取り、花火が打ち上がるのを楽しみにしていた。

 

「がば凄いのくるかな〜?」

「楽しみですね!」

「うっしゃぁぁぁぁ!気合い入れるぜぇぇぇぇ‼︎」

「気合い入れても見ることしかできねえよ☆」

「がぁぁぁぁぁぁ!」

「本当、賑やかでありんすなぁ。」

「褞袍、暖かい………」

「どんだけ寒かったのよ………」

 

 皆が皆花火を心待ちにしている中、私は1人だけ居ないことに気がついた。奈々子だ。いつもならすぐ私をからかってくるのに、その気配が全然しなかった。この感じ、トイレにでも行ったのかな?なんならトイレで吐いてたりして………

 

「ちょっとお手洗いに行ってくる。」

「行ってらっしゃいませ。」

 

 そう思い、私は席を立ち、皆の元を離れた。

 

 

 

 

 こうして私は仮設トイレ目掛けて歩いたが、彼女を見つけることは出来なかった。行き違いだったのかな?それとも逆ナンでもしてるのかな?そう思ってしばらく辺りを眺めていると、河口の辺りに1人ちょこんと座っている人がいた。奈々子だ。花火なら皆と見そうなのに、何してるんだろう?気になった私は、彼女に近づいて話しかけた。

 

「ねえ奈々子、何してんの?もうすぐ花火始まるよ〜。」

「あ、愛⁉︎ど、どうしたのさ〜?」

 

 珍しく彼女はびっくりした様子。いくら悪事がバレても悪びれもしなかった彼女の、とても珍しい反応だった。

 

「なんでそんなにビックリしてんのよ………?」

「いや〜、声かけられると思ってなくてさ〜。」

「何かあったの?」

「う〜んと………」

 

 もしかして、1人になりたかった理由でもあるのかな?何か悩み事があるとか?そうじゃないと、皆から離れないだろうし。思わず心配してしまう………

 

「いや〜、あそこでボートレースやったらどうなるかな〜って思って♪」

 

 いや、心配して損した‼︎ただの自分の趣味じゃん‼︎

 

「はぁ⁉︎それだけ⁉︎」

「そ〜だよ〜♪もしかして、ボクを心配してくれたの〜?」

「だって1人でこんなとこにいるって、アンタらしくないし‼︎」

「あはは〜♪愛ったら、優し〜♪」

「もう‼︎本当にアンタって人は………っ!」

 

 

 

ヒュ〜 ドンドン‼︎

 

 

 

 そんな事思ってたら、花火が遂に始まった。

 

「お〜、始まったね〜。」

「そうね。」

「結構凄いじゃ〜ん、伊万里湾大花火ぃ〜!」

「私もこんなに綺麗だとは思わなかった。佐賀の花火もいいじゃん!」

「だね〜。」

 

 空に輝く綺麗な閃光。暗闇を照らす大きな光。この眩しさに虜になったんだっけ。場所や種類は違えど、大曲を思い出す。ホント懐かしい。そうだ。あの時も、こうして2人で………

 

「すっごく輝いているね〜。」

 

 その刹那、全ての点と点が繋がった。アンタ、やっぱそうよね。雪国生まれで同い年で、運動音痴の歌音痴で、甘ったるい声のボクっ娘で、料理上手で、そして何より世界で一番私を推してくれた人。趣味で分からなかったのは、私が生きてる時は未成年だったからだよね?見た目が変わっているのは、私が死んでから何かあったからよね?元ニートなのにマネージャーを一生懸命やってたのは、私を応援したかったからよね?そして、奈々子ってファンが居なかったのは、それが嘘の名前だからよね?

 

「ねえ………」

「何〜、愛〜?」

「アンタ、灯里よね?」

「えっ…………?なんで………」

 

 なんでずっと黙ってたの?なんで嘘をついていたの?こんなに近くにいながら、どうして言ってくれなかったの?ねえ、教えてよ、灯里。

 

 

 

 

  奈々子(灯里)視点

 

 凄いなぁ、君は。これだけバレないように頑張ったのに、気づいちゃうんだもん。本当に、本当に凄いよ。伝説だよ。やっぱり君には、敵わないな〜。あの時からず〜っと、輝き続けてるんだもの。

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