伝説のニート、平成のアイドルと共に佐賀を救う   作:スピリタス3世

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あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!

あと、愛の両親の秋田弁がめちゃくちゃ下手ですいません。また、他のメンツは訛ってない設定です。


第三十二話 愛と灯里のBeginning AKITA

  奈々子(灯里)視点

 

 ボクの家には、優秀なお姉さんがいた。勉強も運動もなんでも出来て、その上モデルのようなすらっとした容姿。運動音痴でチビな地味メガネのボクとは、まるで正反対だった。

 

「おっかさん、見てくれよ!芽衣*1がまた一番だぞ!」

「本当に!凄いわね〜、芽衣は!」

「パパ、ママ‼︎ありがとう♪」

「だな‼︎それに比べて灯里は………」

「なんでこうなっちゃったのかしら………」

「ごめんなさい………」

 

 そんな事だから当然両親は姉を可愛がり、周囲の人も彼女を気に入った。反面ボクは何につけても姉と比較され、劣等生の烙印を押され続けてきた。そんな中で、唯一ボクに普通に接してくれる子がいた。

 

「ねえ灯里!ペットがかりやらない?」

「ペットがかり……?いいや。ボク、どうせできないし………」

「そんなことないって!やってみよう!わたしもいっしょにやるよ!」

「ありがとう………」

 

 水野愛。小学1年生のクラスでたまたま隣になった女の子。すごく頑張り屋さんで、とても可愛らしい子。クラスでも人気があった彼女が、こんな根暗なボクに普通に接してくれる、なんなら仲良くしてくれるのがとても嬉しかった。

 

 そして、いつしかボクは愛の家で遊ぶようになってた。元々自分の家族と仲が悪かったこともあり、愛の家の方が居心地良かった。そして、よく逃げるようにして愛の家に行ってたなぁ。

 

「ね〜ね〜、愛〜!テレビつけていい〜?」

「いいよ!何か見たいのあるの?」

「何もな〜い!」

「うそでしょ⁉︎」

「ホントで〜す!なんか見たくなるときってあるよね〜!」

「まあ、分かるけど………」

 

 そうしてある日、たまたまつけたテレビ。そこには………

 

「若くして亡くなった、伝説のアイドル〜?」

「こんのじゅんこ?私この人知らない。」

「ボクも〜。」

「あ〜、紺野純子ね!おっかさんが若い頃に有名だったアイドルだべさ!すんごいめんこい*2の‼︎」

「そ〜なんだ。すごい人なんだね〜!」

 

 純子の特番が映されていた。自分たちが生まれる前に活躍したアイドルで、たった19歳で死んでしまった人。愛のお母さんの話っぷりからするに、相当凄い人だったのだろう。現に初めて見たボクでさえ、彼女の歌で魅了する力に驚いたもの。だがボク以上に、彼女に惹かれた人がいた。

 

「すごい………っ!これがアイドル‼︎」

 

 愛だった。純子のライブシーンを見て、完全に虜になったようだった。食い入るようにテレビを見つめ、彼女が作り出す世界に胸を高鳴らせているのが、第三者のボクでもすぐに分かった。

 

「こら、愛‼︎そんなに近くでテレビを見たらダメだべさ‼︎なまはげに食われちまうよ‼︎」

「ごめん、お母さん!離れたから許して!」

「それでいいんだべ!」

「愛〜、もしかしてハマった〜?」

「うんっ!私もあの人みたいに、アイドルになりたい‼︎」

 

 そして、そのハマり具合は想像以上だった。今まで見たことのない目の輝き方と、テンションの上がり方。今この瞬間に自分の夢を見つけたと言っても過言ではなかった。

 

「そっか〜。愛ならきっと上手くいくよ〜!」

「本当⁉︎ありがとう、灯里!」

 

 そういう君の夢が叶うといいな。最初はまだそう思うだけだった。

 

 

 

 だが次第に、ボク自身の思いも変わっていった。暗い自宅と人生。友達も碌にいない。そんな中で、段々と君の存在が大きくなってきた。こんなボクに差し込んでくれる唯一の光。ボクにとって君は、紛れもないアイドルだった。

 

 そして忘れもしない、愛の家族と一緒に大曲の花火を見に行った日。

 

「灯里〜、見て〜!花火すごいんだけど!」

「すっごい輝いてるね〜!た〜まや〜!」

「か〜ぎや〜、って、どんな言い方よ……」

「それほどでも〜♪」

「ほめてない!」

 

 花火をバックに笑う君は、本当に綺麗だった。大曲の煌びやかな幾千万もの花火でさえバックダンサーにしてしまうような、そんな圧倒的な輝きを彼女は放っていた。その景色を見た瞬間、ボクは確信した。

 

「そういえば、愛、前にアイドルになりたいって言ってたよね〜?」

「うん、そうだよ!」

「今の愛、すっごく輝いてる。後ろの花火なんかよりも。」

「ホント………?」

「うん。」

 

 君は伝説のアイドルになる。ボクだけじゃない、色んな人の心の支えになれる。そして、そんな存在に君はなりたがっている。ならばボクのやることは、一つ‼︎

 

「だからボクが、君を伝説のアイドルにする。誰もが名前を聞いて驚くような、皆の心を照らすアイドルに必ずする。だから君は絶対に…………アイドルになって‼︎」

「ホント⁉︎灯里、ありがとう‼︎嬉しいよ………っ!私決めた!どの花火よりも輝く、伝説のアイドルになる‼︎」

「うん‼︎ボクがそうする‼︎誰よりも輝かせる‼︎」

 

 この身を投げ捨ててでも全力で愛をサポートする。これから先待ち受けるであろう困難を、君と一緒に乗り越える。君が胸を張って高く遠く舞い上がれるように、ボクが土台になってみせる。これがボクを照らしてくれた君への、些細なお礼さ!

 

 その日からボクは愛の家へ通い、料理*3や掃除など、家事の練習をした。愛はいずれ上京するかもしれないから。その時のためにボクが出来るのは、同じ家に住んで彼女の暮らしを支えることだ。 

 

 そして、愛は中学生に上がる前に、アイアンフリルのオーディションに受かった。それは今度、東京で始動するグループだった。だからボクは、愛と一緒に2人で上京した。

 

「お父さん、お母さん。ボク愛と一緒に東京行ってくる。」

「あっそ。」

「お父さん達は一銭も出さないからな?」

「別にいいよ。お姉ちゃんにお金使ってあげて。」

「言われなくてもそうするつもりよ。」

 

 幸いボクの家族はすんなり送り出してくれた。元々出来損ないのボクに金をかけたくなかったのだろう。それがお互いにとって、とても都合が良かった。

 

 

 

 

 そしていよいよ上京の日。東京へ向かう新幹線の中で、ボクたちは東京という街並みに圧倒されていた。

 

「ちょっとちょっと、灯里見て⁉︎ビル凄くない⁉︎」

「だよね〜⁉︎秋田にはこんなとこなかったよ〜⁉︎」

「私たちがホントちっちゃく見えるね……」

「だいじょ〜ぶ!愛はおっきくなるから!」

「ホント?」

「現に態度もおっきいし〜♪」

「はぁ⁉︎バカにしてんの⁉︎」

「してないしてない〜♪」

「してるでしょ‼︎」

 

 そして、そんな都会の喧騒の中で同棲を始めた。6畳1間の小さい部屋。ボクと君とのBeginning(ビギニング)に相応しい、そんな場所だった。

 

 その日からボクは愛にご飯を作り、家を掃除し、愛がレッスンで行けない分学校に通い、愛が帰ってきたら勉強を教えた。また自分でも勉強をし、医者になって愛を健康面で支えることを誓った。それがアイアンフリルの運営的には助かったのか、ボクを特別にライブの観客席に入れてくれるようになった。だからボクは客席と家の両方で、愛を応援し続けた。

 

「ねえ灯里、聞いてよ‼︎」

「どしたの〜、愛〜?」

「今日自主練中にマネージャーが休めってうるさく言ってきたんだけど‼︎こっちは練習してるのにさ‼︎」

「それは休まなきゃダメだよ〜。」

「はぁ⁉︎なんでよ⁉︎」

「人間の集中力はね、長く続かなくて〜、かくかくしかじかで〜。」

「そ、そうなんだ………」

「休むのも仕事のうちさ〜♪ボクが君の休める環境を作るから、安心して!」

「ありがとう、灯里!」

 

 2人で過ごす時間。それが楽しかった。また君が大きくなっていく姿を間近で見れるのが、ボクにとってとても嬉しかった。このまま伝説のアイドルになるんじゃないか。そう確信していた。だが、その予想は無理矢理外されてしまった。

 

 

 

 

 忘れもしない佐賀駅スタライブの日。ステージ中央に出て高く手を上げた君を、忌々しい雷が貫いた。

 

「えっ…………?」

 

 それはあまりにも一瞬だった。あれだけ輝かしかった君は一瞬で黒焦げになり、伝説のアイドルへの道は途絶えてしまった。

 

「愛………愛⁉︎だ、大丈夫………っ⁉︎い、今看病するから‼︎」

「灯里ちゃん、避難して!危ないから!」

「で、でも………っ!」

「早く!」

「あ、愛ぃぃぃぃぃぃぃ‼︎」

 

 すぐに愛の元へ駆け寄ろうとしたが、スタッフに阻まれできなかった。あれだけ君を伝説のアイドルにするって言ったのに。これからだって時に。この身を投げ捨ててでも支えるって言ったのに。ボクが代わりに雷を受けられれば、どれだけ良かったことか。さよならも言えず、君との別れを受け入れることも出来ず、ボクはただただ只管(ひたすら)号泣するだけだった。

 

 

 

 

 愛が亡くなってから初の定期テスト。ボクは学年で一番を取った。

 

「ただいま〜!ねえ、愛〜、聞いて〜!ボク1位取ったんだ〜!医学部にも行けそうだって〜!」

 

 そう言って帰宅するも、何の言葉も返ってこなかった。

 

「あははは………。そうだよね………。もう君は居ないもんね………」

 

 どれだけ頑張っても、もう君の輝く姿を見ることはできない。何をしようとも、もう君は何も返してくれない。あの時雷を代わりに受けられたら。あの時天気が悪いから中止しようと言えていれば。後悔してからではもう遅い。今更何をしたところで、君が笑ってくれることもない。

 

「ん………親から電話…………?」

『ねえ、灯里。』

『どしたの、お母さん………?』

『愛が死んだけど、アンタはどうすんの?こっち帰ってくんの?それとも東京に留まるの?お母さんたちも忙しいんだから、さっさと決めて。』

 

 そう思うと、人生がどうでも良くなってきた。

 

『帰るよ。』

『そう。じゃあ、高校はどこにする?』

『行かない。』

『はぁ⁉︎アンタ何言ってんの⁉︎今時中卒じゃ働けないって‼︎』

『じゃあ働かなくていい。ボクは一生無職でいいから。』

『ふざけんじゃないわよ‼︎穀潰しは帰ってくるな‼︎この出来損ないが‼︎』ガチャ

 

 そうしてボクは生涯無職宣言をし、親から絶縁された。愛の両親からはとても心配されたけど、今更帰る気も生きる気も起きなかった。だからボクは家具だけ思い出になると思い、愛の実家に送り返し、家を出てホームレスになった。これからどうしよう。働く気力も無いし、このまま死んでもいいかな。

 

「ねえねえ、お姉ちゃん!可愛いじゃん!今からちょっとご飯とかどう?」

「ボク?いいですよ……」

「っしゃあ‼︎」

 

 そう思った矢先、男にナンパされてしばらく寄生することになった。

 

 

 

 だけど、こんな状態じゃあ男は到底満足しなかった。見限られては捨てられ、またナンパされるの繰り返し。最初の彼氏の趣味でピアスにして髪を染め短くし、コンタクトにした。2人目の彼氏の趣味でギャンブルを覚えてからは、よくホームレス時代にオールインをするようになった。このまま全部失ったら楽だったのに。そういう時に限って大勝ちし、ボクは無駄に生きながらえた。

 

 そうして3人目の彼氏の趣味で酒を覚え、4人目の彼氏の趣味でタバコを覚えた。酒やタバコは味が美味しかったのもあるけど、愛がいない現実を忘れたような気になれたのが、ハマった最大の理由だった。だから段々と手放せなくなり、働きもしないのに飲むように。最終的に5人目の彼氏から捨てられたところで、2018年となった。

 

「愛が死んだのが2008年。もう今年で10年か………」

 

 人に寄生し、何かを成すこともなく、ただただ無駄に彷徨い続けた。その姿はまるでゾンビのようだった。こんな事やるくらいなら、本当に死ねばいいのに。その気力すらなかったボクは、ふとあることを思いついた。

 

「佐賀、行ってみるか…………」

 

 愛の死んだ場所、佐賀の訪問。そう思って調べてみると、ちょうど佐賀の唐津にボートレース場があると分かった。これでオールインして、負けたら死のう。でもどうせ勝つんだろうな。そう思いながら、君の眠る街を訪れた。

 

 そして舟券を握り締め、運命の結果は……………

 

「外れ…………か。」

 

 敗北。ようやく全財産を失った。そして、これでこの無駄な人生に終止符を打つことが出来た。もう君の居ない苦しみを味わわなくて済む。それが何より嬉しいというか、ホッとしたことだった。

 

「さようなら…………」

 

 こうしてボクは、鏡山で首を吊って死んだ。

*1
奈々子(灯里)の姉

*2
可愛い

*3
男に養ってもらうために覚えた、は灯里がついた嘘。正体をバレなくするため。




棚橋灯里のプロフィールです。

・棚橋灯里(たなはしあかり)
性別 女
年齢 享年26歳
身長 149cm
体重 38kg
生年月日 1991年7月23日
没年月日 2018年2月2日(仏滅)
出身 秋田県角館町(現:仙北市)
髪型 黒髪ロング
眼鏡 丸い黒縁メガネ
スリーサイズ 84:50:83(E)
趣味 愛への推し活→晩酌 パチスロ ボートレース
好きな食べ物 稲庭うどん→酒 塩辛
嫌いな食べ物 野菜
好きな色 緑
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