伝説のニート、平成のアイドルと共に佐賀を救う 作:スピリタス3世
奈々子(灯里)視点
ボクはその後、謎の寂れた洋館で目を覚ました。
「ん〜?ここは〜、地獄?」
中はとても薄暗くて、今にもお化けとかが出てきそうな雰囲気だった。愛がいたら泣き叫んでただろうな。まあ、彼女はこんなところにいないだろうけど。
そんな事を思っていると………
「目を覚ましたようだな、棚橋灯里。」
赤いチョッキにサングラス、そして黒のベストを肩掛けしている変な男が声をかけてきた。後の幸太郎である。どうやらボクはこの男にお持ち帰りされたらしい。だとすると………ボク、死ぬのに失敗した?
「えっと………ボクを助けちゃいました〜?」
「違う。お前は既に死んでいる。」
そういうわけではないみたい。じゃあ、あれが地獄の閻魔様?にしては格好が訳わからなすぎるし、地獄の刑罰のための施設も見当たらない。これは一体どういうこと……?
「えっと………はい?あの〜、よく分かんないんですけど〜?」
「お前はゾンビィとなって蘇った。そして佐賀を救うため、アイドルとなる‼︎」
ゾンビとして蘇った?佐賀でアイドル?本当に何もかもが意味不明だった。でも鏡をチラリとみる感じ………青白い肌に赤い目、そして首の縄跡と、ちゃんとゾンビになっているみたいだった。ちなみに目の前の人間は違うみたいだが………まあどうでもいいや。
「む〜り〜。ボク26年ずぅ〜っとニートでしたよ〜?運動も歌も音痴だし〜。第一ゾンビがアイドルになって佐賀を救う〜?もしかしてあなた〜、酔ってます〜?」
「俺は酔ってなどいない………ってニート⁉︎嘘だろ、お前伝説のニートじゃったんかい⁉︎なんかアイドルっぽい見た目してる女の子が自殺したと思ってたからゾンビィにしたけど、違うんかい‼︎」
「勝手にゾンビにしないでくれます〜?ボクは正直ゾンビになってまで生きながらえたくないんです〜。だからとっとと殺してくださ〜い。」
「そういう訳にもいかない。俺は最高のメンバーを既に集めているんだ。」
「じゃあ、その人たちとやってくださ〜い。」
「いいや、このメンバーを聞いても何もせずにいられるか?源さくら、伝説の特攻隊長、二階堂サキ。伝説の……」
愛の居ない世界で人生を再開させられたところで、また苦痛が始まるだけ。なんならゾンビだから、人間時代より死ににくくなっている。ホントどうしたものか………
「平成のアイドル、水野愛。伝説の………」
そんな事を思っていたら、幸太郎に変な事を言われた。愛が、いる?この場に?嘘………でしょ⁉︎
「愛⁉︎愛いるの⁉︎」
「えっ⁉︎あ、ああ。そうだが………。まだゾンビィになってから、目覚めてはいないようだがな。」
「どこ⁉︎見せて‼︎」
「わ、分かった。お、お前が言うなら紹介しよう………」
愛がゾンビになってここにいる。それだけでも訳がわからなくなりそうだった。もう二度と会えないと思っていたから。死後は君は天国で、ボクは地獄だと思っていたから。だから、にわかには信じられなかった。
「ほ、ほら、連れてきたぞ………」
「うぅぅぅぅぅぅぅ。」
だが、幸太郎が連れてきたのは本物だった。意識こそないけれど、本当に愛だった。ボクが会いたいと願っていたキミだった。
「あ、愛………っ‼︎」
「まだ意識は戻ってないぞ。」
「それは分かってる‼︎」
「う、うぅ………」
そうして抱きしめた彼女は、体温こそ無くなっていたけれど、本当に昔と変わらなかった。一緒に過ごした頃の思い出が蘇ってきて、本当に泣きそうだった。
「なんと、伝説のニートが伝説の平成のアイドルの知り合いだったとはな。」
だが、幸太郎に言われてはっとした。そうだ、ボクは君が死んでから、本当に酷い人生を送ってきた。男に寄生し、酒とタバコとギャンブルにのめり込み、一切働こうとしなかった。君の死を引きずって、無駄な時間を過ごしてしまった。
友達がこんなになったって聞いたら、さぞ君はショックを受けるだろうね。もしかしたら自分が死んだ事を悪く思っちゃうかもしれない。だとしたら………決めた。
「決めた。ボクは今から巽奈々子になる。」
「は?えっと、それは………?」
「ボクはアイドルじゃなくて、マネージャーをするよ。ボクは見たいんだ。水野愛が再びアイドルとして輝くのを。」
「…………そうか。それならよろしく頼む。」
ボクは棚橋灯里であることを隠し通す。君がまたアイドルとして輝くために、君に余計な事を考えさせない。君にとって大切な友達だから、綺麗な思い出のまま浄化させる。それが君のためになるから………
そう信じていたのに、遂に正体がバレてしまった。自分の過去が恥ずかしいというより、愛がショックを受けないか。愛のパフォーマンスが低下しないか。それがとても不安だった。
「えっ………?なんで………?」
「アンタの言動、料理の味、その他諸々。アンタがどれだけ私のことバカだと思ってるか知らないけど、あれだけ一緒に過ごしたんだもん。分かるでしょ。」
「そ、そっか〜。はは………。どう、がっかりした〜?君の大切な友達は、こんなになっちゃいました………。ご、ごめんね………。愛が嫌なら、ボクは居なくなるよ………」
ボクがいることで君の足枷になるなら、ボクは消えるしかない。ボクは君が輝くために頑張るのだもの。ボクが居ない方が君が輝けるなら、それまで………
「バカなの⁉︎勝手に消えないでよ‼︎」
そう言ったボクの手を、泣き叫びながら愛が掴んだ。
「えっ………」
「確かに、こんな酒飲みでパチンカスでぐーたらなニートになってて、がっかりしたよ‼︎」
「なら………」
でも、こんなボクなんかが………
「でもアンタはずっと支えてくれたじゃん‼︎美味しいご飯も作って、私たちの宣伝もして、時には嫌われ役も勝って、ファンとの関係も保ってくれて‼︎それが本当に助かったのよ‼︎」
「えっ…………」
愛………。そこまで思っててくれたの………?こんなボクのことを、そこまで………っ!
「私を世界一輝くアイドルにするんじゃなかったの⁉︎自分勝手なこと言って、居なくなろうとしないでよ‼︎アンタはいっつもそう‼︎すぐ自分のことを下げるんだから‼︎いい加減にして‼︎どれだけ私がアンタに会いたかったか分かってんの⁉︎私はアンタと一緒がいいの‼︎これからはずっと私の隣にいてもらうから‼︎いい⁉︎分かった⁉︎拒否権はないからね‼︎」
ずっと隣にいてほしい。ずっと隣で支えてほしい。そんな事を君から言われるなんて、思ってもいなかった。仲間想いな君だけど、ここまでだとはとても思ってなかった。あぁ、ボクは本当に大馬鹿だなぁ。
「あ、愛………っ‼︎ありがとう………。必ず君を輝かせるから‼︎絶対‼︎」
「うん‼︎そばで見ててよね‼︎」
そんな事を思いながら、ボクは泣き叫び、愛と抱き合った。
愛視点
灯里。アンタはいつも昔から自信なさそうだった。いつもどこか自分なんてと言って、ずっと卑下していた。でも私は本当にアンタに助けられたのよ。どんなに辛くても、帰ったら家で美味しいご飯を作って待っててくれる。悩みがあったら聞いてくれて、いいアドバイスもくれる。時にはキツく叱って、私を正してくれる。陽だまりによく似ている、優しい温もり。そんなアンタにどれだけ会いたかったことか………っ!
見た目も変わって、アル中でヤニカスでギャンブル中毒になっちゃったけど、それでも芯は変わっていなかった。ずっと私のことを支えてくれた。それに、これだけ好き勝手やっておいて、今更逃げようなんて許さないんだからね?一生私を支えてよね?そう思いながら、私は灯里と抱き合った。
しばらくして落ち着くと、私たちは皆の元に戻った。
「皆、お疲れ。」
「花火、すごかったね〜。」
あの頃とは変わったけど、変わらないところもある。それはアイドルとしての信念と、私を支えてくれる大切な友達の存在だ‼︎これからもずっと、皆と、そして灯里と一緒に確かめよう。この先に広がる未来を。全てが今ここから、始まる………っ‼︎
「お手洗いでこんな時間まで何してたんですか⁉︎」
「だ、だいぶ長かったっちゃね///」
「テメェら、まさかおっ始めとったとか⁉︎」
「破廉恥です!」
は?コイツらは何を言ってるの⁉︎
「破廉恥なのはアンタたちよ⁉︎///」
「ち、違うからね〜!///」
「でも奈々子の奴、照れとるぞ。」
「初めて見たと!」
「これは女の顔です!破廉恥です‼︎」
「ゆぎり〜ん、何も聞こえないよ〜☆」
「リリィはんは聞かなくていいでありんす。」
「がぁぁぁぁ、あ?」
「褞袍、暖かい………」
「「だから違うって言ってるでしょ‼︎///」」
ということで、なぜか私と灯里がデキてると勘違いされた花火大会だった。
ということで、オリジナルの過去編は終了です!最後は2期10話の後半から(前半部は最初の駅スタライブ前と最中なので、第二十話に集約)リベンジライブまで!お楽しみに!