伝説のニート、平成のアイドルと共に佐賀を救う   作:スピリタス3世

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第三十四話 ゾンビたちはどう復讐するのかSAGA

  愛視点

 

 伊万里湾花火大会の翌日、私は灯里と2人きりで話していた。

 

「よかったの?他の皆にアンタの過去話さなくて。」

 

 ちなみに他の皆には本名と、私と同棲してた友達ってことだけ伝えてある。私と出会う前や私の死後は伏せたままだ。

 

「話すと変な感じになっちゃうからね〜。今のポジションのが美味しいし〜。」

「まあ、アンタがいいならいいけど………」

「この雰囲気のが、愛のパフォーマンスだってよくなるでしょ〜♪」

「そうなんだ。アンタが言うなら信じるよ‼︎」

「ありがと〜!」

 

 半ば鬱病のような、自暴自棄だった過去。それを私のためなら必要ないと切り捨てた。どれだけ私に尽くすつもりよ。そこまでされたら、私だって覚悟が決まるじゃない!

 

「それじゃあ〜、頑張っていきましょ〜!」

「オー!」

 

 この親友と共に、アイドルの頂点に立ってやるんだから!

 

 

 

 

 それから数ヶ月が経った頃。私たちは2月の半ばにいつものミーティング室で、いつものように椅子に座って待っていた。すると………

 

「おはようございます。」

 

 何故かびしょ濡れではだけた巽が後から入ってきた。コイツ何してるの?

 

「どやんしたとですか?」

「気にするな。」

「あったかくしな〜?風邪ひくよ〜。」

「大丈夫だ。」

「うん、大丈夫じゃないね〜。タオル取ってくるから、先始めてて〜。」

「…………」

「いや、何か言えよ。」

 

 心配になった灯里がドライヤーとタオルを取りに行った。本当にコイツ大丈夫なのよね?ゾンビと違って人間は風邪引くんだよ?分かってる、そこんとこ?それに、さっきからずっと黙って………

 

「1年前、俺は間違えた。」

 

 いや、喋ったと思ったらそれ⁉︎1年前って確か駅スタを決めたあたりだけど………。まあ、確かにあれは間違ってたし。

 

「去年の3月8日、駅スタでのライブを強行したのは完全に俺のミスだ。すまなかった。」

 

 そう言って、巽は今更頭を下げて謝ってきた。本当に今更過ぎない?1年経ってまで言うことなのかな?それか、もしや………

 

「それを取り返すため、来月3月8日、駅スタでリベンジライブを行う。」

 

 やっぱりそれ………っ‼︎流石にまだ3万人はキツいって‼︎

 

「ちょっ………‼︎」

「ただし‼︎」

 

 ちょっと‼︎私の発言止めないでよ‼︎少しくらい言わせて‼︎

 

「前のように勢いや、己の慢心で事を進めはしない。」

 

 そう思っていたけれど、巽の冷静な目つきを見てやめた。コイツ、本気ね。しかもいけると確信している。

 

「フランシュシュはこの1年で、見事に復活を果たした。アルバムや、グッズの売り上げも、浜ノ浦や蕨野の棚田のようにドンドン上がっている。そして何より、お前たち自身が成長した。」

 

 確かに、この1年でとても成長した気がする。なんならゾンビとして復活してから約2年、死んだのに成長している気がする。最初はニートにバカにされた腹いせに始めたフランシュシュ。でもそこから成長した。だからこそ、雷を打たれたあの時から、再び前に進めると思っている。

 

「それでも尚、駅スタは手強いだろう。現在、リベンジライブに向けた様々な宣伝プロジェクトを計画している。俺と奈々子……いや、灯里の全てを懸け、やれることは全部やる。そして、フランシュシュをより大きな伝説にするために、あの失敗をサクセスストーリーに組み込む。」

「だから、3月8日………」

 

 そして、前の駅スタでの失敗からちょうど1年。そういうことね。ちょうど1年経って、失敗を乗り越えるのね。更に私的には更に前の駅スタライブの落雷から12年。灯里が言ってた、また子年が帰ってきたと。干支が一回りし、巡ってきたこのライブ。

 

「いいか‼︎今から始まる戦いは、佐賀史上最も偉大な事件として、歴史に刻まれることになる。例えこの佐賀が過酷な運命の果てに絶望の闇に飲みこまれようとも、お前たちはそこに光り輝く存在になるのだ‼︎お前たちは、この俺が佐賀を救うために選び抜き、甦らせたゾンビィだ‼︎お前たちフランシュシュが成し遂げるリベンジは、この佐賀の大いなる叛逆の狼煙だぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 いいじゃない‼︎やってやるわ‼︎見てなさ………

 

「はっくしょん‼︎」

 

 って今そこでくしゃみ‼︎タイミング悪過ぎ‼︎締まらないでしょ、これじゃ‼︎

 

「ほ〜ら言わんこっちゃな〜い。は〜い、こっち向いて〜。とりあえずこれで身体拭いて〜、髪を乾かすよ〜。」

「あ、ありがとうございます………」

「終わったら着替えてきてね〜。」

 

 そんな事を思っていたら、灯里が帰ってきた。その姿は完全に巽のお母さんだ。私もこうして世話してもらったっけ。今は私の方が世話してる気がするけど。

 

「ということで〜、皆、頑張ろうね〜!」

「テメェいいとこだけ持ってきやがったな。」

「なんかゆるゆるだね〜☆」

「でも、らしいでありんす。」

「がぁぁぁぁぁ!」

「なんかお姉さんみたいですね。」

「珍しく、ね。」

「愛ったら、ひど〜い!」

 

 それはさておき、いよいよリベンジの時が来た。1年前のようにはいかない。そして………灯里、アンタに見せてあげる。あの日雷で中断された、夢物語の続きを‼︎

 

 

 

 

 そう意気込んで、私たちは日々練習に励んだ。だが、ここで思わぬ事態が発生した。

 

「未曾有の大雨…………」

「なんかすごいことになってるね〜。」

 

 九州地方全体でとんでもない大雨が降り始めたのだった。更には雨どころか暴風まで吹き始め、まるでそれは季節外れの台風だった。古びた屋敷が軋み、道路を濁流が流れていく。これ、ちゃんとライブが出来るのかな………?

 

「秋田じゃホワイトアウトはあっても、台風はほとんどなかったからね〜。こんなのは初めてだよ〜。」

「ホントね。大雪は慣れっこなのに、大雨は全然………」

 

 そう思った次の瞬間…………屋敷の電気が消えた。

 

「へっ⁉︎えっ、ちょっ、ちょっと⁉︎」

「愛〜、大丈夫だよ〜。ボクが隣にいるからね〜。」

 

 暗い、怖い、何も見えない………。嫌だよ………。灯里、ずっとそばにいて………

 

「とりあえず、この停電は長そうだね〜。もう夜だし、寝よっか〜。」

「そ、そうね………」

「大丈夫〜、ボクも隣にいるよ〜!皆も一緒だし〜!」

「そ、そうね………」

 

 とりあえず、一緒に寝てくれるみたい。良かった。本当に良かった………

 

 

 

 

 翌朝、私は………

 

「皆、起きて!外見て!」

 

 さくらの叫び声で目覚めた。彼女の焦りっぷり、一体何が起きたの?慌てて外を見ると………そこには、異様なまでに広がる大海原が映っていた。

 

「えっ………何、これ………?」

「これは驚きんしたなぁ。」

「洪水だね〜。これ全部お酒なのかな〜?」

「そんなわけないでしょ‼︎」

 

 灯里は間違って雨水飲まない……よね?大丈夫だよね?

 

「それにしてもこれ、どこ行くの⁉︎」

「帰れるんでしょうか………?」

「落ち着けって‼︎沈んだって死にはしねえよ………多分。」

「無人島に着くのかな?そして冒険したり☆」

「ゾンビがサバイバルか!それよかな、ちんちく!」

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

「とりあえず、何があっても大丈夫なように、メイクだけしとこ……」

「メイク道具と撥水スプレーも忘れずに〜。」

 

 完全に大災害が起きてるじゃん‼︎この大きな屋敷が大雨で流されたってこと⁉︎しかもここがどこだか分からない。大丈夫なの、これ⁉︎とりあえず、助けを呼ぶためにもメイクをしないと………

 

 

 

 しばらくすると、私たちが乗った屋敷はある場所に漂着した。

 

「浜崎海岸………」

「無人島じゃなくて佐賀だったね☆」

「しかもかなり近かね。」

 

 良かった、そんなには遠くに行ってないみたい。これならなんとか………

 

「あん、あん、わぉ〜ん‼︎」

 

 そんな事を思っていたら、ロメロが吠え始めた。

 

「どうしたの⁉︎」

 

 そして次の瞬間………

 

 

 

がっしゃぁぁぁぁぁん‼︎

 

 

 

 

 私の屋敷は音を立てて崩れたのだった。

 

「「「「えっ…………?」」」」

「リリィたちのお家、無くなっちゃった☆」

「ホームレスか〜。懐かし〜!」

「懐かしがるな‼︎」

「あぁ………衣装とか、幸太郎さんの楽器とかあったとに………」

「どやんす〜⁉︎」

「さて、とんでもないことになりんしたなぁ。」

「凄いことだらけで逆に動じなくなってきたよ☆」

「がぁぁぁ………」

「私もです………」

「幸太郎は電話繋がらないっぽ〜い。」

「マジでどうするのよ⁉︎」

 

 しかもアイツは昨日からどこか出かけたっきり⁉︎せっかくリベンジライブに向けて意気込んでたのに、とんだ試練がやってきてしまったのだった。

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