伝説のニート、平成のアイドルと共に佐賀を救う 作:スピリタス3世
愛視点
私たちがホームレスになり、絶望していると………
「あれ、三子ちゃん?」
「マチコさん‼︎」
「どやんしたと?こやんかところで。」
なんと私のバイト先のマチコさんが通りがかった。
「それが、家ごと流されて………」
「後ろの家は三子ちゃん家?あらあら大変かね〜。お友達も揃ってまあ〜。ならカチオンおいでカチオン!避難所になっとるけ。」
「「「「ありがとうございます!」」」」
「ざーす‼︎」
しかも避難所まで教えてくれた。本当に助かった………
避難所に着くと、そこには沢山の人がいた。停電の影響で中は薄暗く、どこかどんよりした雰囲気だった。幸いショッピングモールなので、ひとまずの物資はあるけど………
「マジか………」
「随分と被害が大きいようですね。」
「指定の避難所まで被害に遭ったけん、皆ここ。参るばい、まったく。こやんか時こそ暗い顔したらいかんって、分かっとるばってん。中々、ねぇ…………」
避難所ですらやられたの?本当に大惨事じゃん。普段明るいマチコさんですら、どこか落ち込んでる様子。そりゃそうだろう。これだけの絶望的な災害なんて、そう無いし。
あまりにも人が多かったため、私たちは階段の上、屋上の手前にあるスペースに陣取ることになった。それでも座れる場所があるだけありがたい。
「悪かね。空いてる場所無くてこやんところで。」
「とんでもありません、助かりました!」
「ブルーシートまで分けていただいて、ありがとうございます。」
「ありがとうございま〜す☆」
「人気者やけん、逆によかかもしれんけどね〜。下に敷く段ボールとか毛布もあるけん、後で取りにおいで。」
「はい!ありがとうございます!」
そして、ここまで丁寧に対応してくれるマチコさんは本当にありがたい。自分も被災して大変な身なのに。思わず涙が出そうになった。
「それじゃあボクは、子供たちにパチンコ算を教えてきま〜す!」
そして引っ込んだ。
「アンタは余計なこと教えないでよ!」
「余計なことじゃないよ〜!将来復興した時に、いつでも打てるようにするのさ〜!」
「しなくていい!」
「あら、その子がいつも言ってた奈々子ちゃんかい?」
「いつも〜?」
「はい。本当に手がつけられないんです!」
「ちょっと〜、三子〜!もっとボクを褒めてよ〜♪」
「嫌で〜す♪」
「本当に仲が良かことやね〜!」
「「はいっ!」」
全く、相変わらずなんだから‼︎でも、灯里がいなければもっと暗くなっていたかも。マチコさんといい、灯里といい、フランシュシュの他のメンバーといい、心の温かい人がそばにいてくれるのは、本当にありがたいことだ。
その後、私は灯里やゆうぎり、そしてさくらと一緒に炊き出しを作るのを手伝った。
「奈々子ちゃん、アンタすっごい料理上手かね〜!」
「へっへ〜ん!なんせボクは三子の料理人でしたからね〜♪ちなみにボクの料理を食べた三子の音声がこちら!」
「ちょっと⁉︎勝手に再生しないで‼︎」
「本当に仲よかとね〜。」
「本当に、微笑ましいでありんす。」
「三子ちゃんと仲良いの、羨ましい!ずるいっちゃ!」
「一子⁉︎アンタは嫉妬しなくていいの‼︎」
にしても、料理ってホント大変ね。今回は災害用で凝ったものが作れないとはいえ、それでも下処理や野菜を切ったりなど、工程が多い。更に熱い鍋のそばで作業するのは疲れる。これを灯里はずっとやってたんだ。それも嫌な顔ひとつせず、私のために………
「奈々子。」
「ん、なぁ〜に?」
「今まで私のために作ってくれて、本当にありがとう!」
「へっ⁉︎あっ、ど〜も……///」
そして、ほんの時折見せる照れ顔が可愛らしい。
「あ〜っ、奈々子ちゃんが照れよる!」
「珍しいでありんすなぁ。」
「へ〜、アンタそんな顔するんだ〜!」
「うっ、うるさいな〜、もう!///」
「「「「「あはははは!」」」」」
そう思った日だった。
炊き出しの調理が終わると、私と灯里は元の待機場所に戻ってお喋りをしていた。
「あの時もこうしていれば良かったな〜。」
「あの時………?」
「東日本大震災。愛が死んだ3年後くらいにあったんだよね〜。東北の太平洋沖が震源の、ものすごい大きな地震。今回はその時に似ててさ〜。」
灯里はさっきから動揺した素振りを見せなかった。まあいつも通りではあるんだけど、まさか経験していたとは。しかも東日本って……っ‼︎嘘でしょ⁉︎
「えっ⁉︎そうだったの⁉︎秋田は大丈夫だった⁉︎」
「秋田は大丈夫だったよ〜。太平洋側が被害大きかったんだよね〜。ちなみにその時は東京にいたよ〜。」
「そうだったんだ。」
「で、その時にね〜。」
秋田は大丈夫だったけど………、岩手や宮城は大変だったのね。
「ボランティアの募集してたけど〜、ボクは愛の死後であんな感じだったからね〜。何もしなかったんだよ〜。」
「なるほど、そういうこと………」
「だから今回さ〜、少しでも何かできることないかな〜、って。あの時君がボクを助けてくれたみたいに〜。」
そして、人助けをしなかった事を後悔していた灯里。本当優しいね、アンタは。あの時以来、アンタは散々私に尽くしてくれたけどね。今度は私が尽くす番。そして、私がアイドルとして、人々に希望を与える番!
「そうね。私も何かやらないと!」
「だね〜!」
そう思って、私たちは皆がいるフロアに降りると…………
「スカパラッパッパッパッパッパディギディディギディイェ〜イ☆」
既にリリィが人助け、もといライブを始めていたのだった。
その後、私たちは時々ライブを始めた。特に子供たちを中心に、皆に元気になってもらいたいと思って。昼間は手伝いで、夜ご飯の前にちょっとライブして。そうやって皆に喜んでもらうことで、逆に私たちも励まされる。そんな日々だった。だが、そんな日も長くは続かなかった。
3・4日が経ったある日。私たちは誰もいない屋上で緊急ミーティングをしていた。
「メイク取れてきとると‼︎」
「厳しかな!」
段々と私たちのメイクが取れてきたのだ。そのせいで、マスクをつけることになる始末。これじゃあアイドル活動も出来ないし、昼間の手伝いも行けなくなる。はっきり言って、大ピンチだ。
「私たちも続けたいけど………」
「全然メイクが乗りませんね。」
「やっぱり、メイクは巽じゃないとダメなのかな☆」
さて、どうしたものか………。私たちが頭を悩ませていると………
「お〜、激アツ演出入った〜!これはいけるぞ〜!」
パチンコを打ちたすぎて幻覚を見ている灯里がトイレから戻ってきた。しかも手つきまで再現してる。何してんのよ、コイツ⁉︎完全に病気じゃない!
「灯里、夢見てないで現実見て!」
「あっ、愛〜!どしたの〜?」
「実はメイクが取れてきてて………」
「なるほど〜!」
にしても、えらい呑気ね。灯里だってゾンビメイクが取れてきてる頃なのに………
「じゃあボクがメイク塗り直すよ〜!」
って思ったら、すごい事を言い始めたんだけど⁉︎えっ、マジ⁉︎アンタ出来るの⁉︎
「えっ、本当に⁉︎」
「お前マジか⁉︎」
「灯里ちゃん、巽のメイクできると⁉︎」
「すっご〜い☆」
「前幸太郎がメンヘラって消えた時に思ったんだよ〜。ボクも出来るようになった方がいいって〜。それで幸太郎に教わって〜、やってみた〜!」
「ありがとうございます!」
「怪我の功名でありんすなぁ。」
「がぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
「作曲の方は無理だったけどね〜。ボク音痴だし〜。」
あの時か‼︎確かにあの後灯里にも相談したっけ。巽は生身の人間だから、病気にもなり得るし、最悪死ぬ可能性だってある。その時に誰もメイクや作曲が出来なかったら、その時点でフランシュシュの活動は終わってしまう。それでもう1人の裏方である、灯里がやってたのね!しかも灯里自身はメイクが全然崩れてない!流石‼︎
「ということで〜、せいれ〜つ!」
「「「「うっす!」」」」
ということで、私たちは彼女にメイクをしてもらったのだった。しかも出来はオッケー‼︎本当に助かっ………
「あっ、リリィはあっちの物陰で待ってて〜。ボクと2人きりで全身をやるから〜。」
「リリィ、この防犯ブザーを持っていきなさい。」
「安心しろ。変態はアタシらがちゃんとぶちのめすから。」
「がぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
「ありがとう、愛ちゃん、サキちゃん、たえちゃん☆」
「大丈夫〜!ただ医療的行為をするだけだから〜♪ドクター灯里にお任せあれ〜!」
「大丈夫なわけなかやろ‼︎」
「お酒飲みながら診察する医者は嫌です………」
ってない‼︎全くこのショタコンは‼︎いかがわしい事考えるな‼︎せっかくの元医者志望が台無しだし‼︎
その後、私たちはショタコンにメイクをしてもらった。その出来は完璧で、まるで本物の人間かのようだった。アンタ、ここまで習得したのね!やるじゃん‼︎
ちなみに私たちのメイクが終わった頃、
「待たせたな、お前た………ち?」
「あっ、幸太郎遅〜い!」
「あれっ、みんな、メイク………えっ?」
「ありがとね〜、教えてくれて〜。」
「おっ、おう…………」
「ぷっ………あはははははは!」
「「「「「はははははは!」」」」」
「がぁぁぁぁあ!」
「お前ら、笑うなぁぁぁぁぁぁ‼︎」
巽がやってきた。随分カッコつけようとしたみたいだけど、あえなく失敗した。その姿がなんか面白くて、思わず笑ってしまったのだった。
アニメ2期11話の愛の名シーンは、残念ながらカットになりました。巽不在のデメリットを知ってる灯里なら、メイク習得に励むようになるので。