伝説のニート、平成のアイドルと共に佐賀を救う 作:スピリタス3世
愛視点
メイクが出来ずに落ち込んでた巽は、しばらくすると嘘のように戻った。そして、私たちはいつものようにミーティングの隊形に並んだ後、彼の話を聞いた。
「佐賀はこの状況だが、俺はリベンジを諦めていない。3月8日、予定通りにライブをやる。」
「本気で言ってるの………?」
それはなんと、まさかのライブ決行。こんな状況でライブなんて、とてもやれると思えない。会場は壊れているかもしれないし、ファンは集まらないかもしれない。
「この状況だからこそやるべきだ。」
「皆の明るいライブで、災害の暗い雰囲気を吹っ飛ばすってことでしょ〜?」
「そうだ。」
「さっきやってたやつのでっかいバージョンだよ〜!」
「お前たちのライブを、大人たちが待っている。子供たちが待っている。お前たちはアイドルだ。ここにいる人々を笑顔にできたお前たちならば、必ずできる。」
なるほど。昨日までの延長戦で、か。私たちが歌って踊ることで、佐賀のみんなを励ます。伝説のチャリティーライブね。
「ただし、万全な状態でライブをやることはできない。当日はリハをする余裕もないだろう。ぶっつけ本番になる。それでも………」
「それでも、それが佐賀の皆のためになるのなら、私たちは命ば懸けてやります。」
「もう死んでますけどね。」
「16日後の3月8日、10時に駅スタに集合しろ。俺はそれまでにできる事を全てやる。ゾンビィを尽くして天命を待つ。以上‼︎」
いいじゃない、やるわよ!やってやろうじゃない‼︎そう奮起した私だった。
それから1週間ほど経ち、3月1日になった。私たちは鳥栖に向けて歩きながら、時々練習をしていた。最初はもっと避難所にいるつもりだったけど、灯里が全部徒歩の可能性を想定し早めに出発。
そして、今は天山*1を超えたあたりまできていた。そこでしばらく練習した後、それが終わった私は、奈々子や純子と一緒にドラム缶水風呂に入っていた。ちなみに灯里は最初リリィと入りたがってたが、私が強引に引き剥がして連れてきた。全く、正体バレて後悔するなら、もっと日頃の行いを正しなさいよ!昔からお調子者なところはあったけど‼︎
「どうですか〜、推しと入るお風呂は〜?」
「変なこと言わないでよ⁉︎この大事な時に‼︎///」
だ・か・ら‼︎私を揶揄うな〜‼︎
「愛さんそうだったのですね。ありがとうございます!」
「う、うるさい‼︎///」
「私も愛さんのダンス、好きですよ!」
「耳元で歌ってあげると、喜ぶかもよ〜。」
「確かにそうですね!」
「だから変な事を言わないで‼︎というかアンタも私が推しでしょ‼︎」
「それがどうしたの〜?」
「ちょっとは照れなさいよ‼︎」
「む〜り〜♪」
マジでムカつく‼︎私ばっかり恥ずかしい思いをしてるんだけど‼︎なんかイライラするから話題変えよう‼︎
「そういや、もう3月入ったね。」
「コンサートまで、あと1週間ですね。」
「ドキドキするね〜。」
リベンジライブまであと1週間。とうとう目前に迫ってきた。
「でもすごくいい緊張感。ここ数日、皆集中出来てると思う。もしかしたら、今までで一番………っ!」
「私もそれを感じていました!」
「ボクも〜♪」
私が経験してきた中で、一番のベストコンディションだと思う。アイアンフリル時代にも、ここまで良かったことはなかった気がする。
「ファンの皆にも、そしてアンタにも、いいものを見せられる気がする。」
「そう?それじゃあ期待してるよ〜!」
「お客さん、来てくれるといいですね!」
「だね!」
だからあの日の続きを、アンタに見せてあげられるかも。そう思えた。
「それじゃあ、あとは2人でエッチなことでもしてて〜。じゃあね〜♪」
「アンタは何を言ってるのよ⁉︎このバカ‼︎///」
「いてて!あ〜、殴ったな〜?」
「むしろ私が抜けるべきでしょう⁉︎」
「それはそれでどういう意味よ⁉︎///」
「違うからね〜⁉︎///」
やっぱ見せなくていいや。あと純子、アンタのことも殴っていいよね?そう思った日だった。
その翌日、天山を超えた辺りからしばらく歩き、私たちは佐賀市内*2にあるラジオのスタジオまでやってきた。
「おい灯里‼︎今日は何曜日とや⁉︎」
「月曜だけど〜?」
「くっそ!ラジオ2回もすっぽかしちまった‼︎」
「いっぱい告知できたのにね☆」
「仕方ないでしょ。こんな状況だったし………」
災害がなければ、今までに2回も宣伝できたのか。これはかなり痛い。ただ、今この状況でラジオ聞いてる人って、そんなにいない気もするし、仕方ないのかな。とりあえず、挨拶だけ済ませて………
「ちょっと待ってて〜!」
そんな事を思ってたら、灯里が1人で中に入っていった。
「アイツ、どやんするとや?」
「さあ………?」
「お酒無いか探してるんですかね………?」
「盗人の真似事でありんすか。」
「流石に灯里ちゃんでもそんな事は…………ないと言い切れんと!」
「ダメじゃん☆」
「がぁぁぁぁぁ………」
皆に心配される灯里。日頃の行いが見て取れる。でも、こういう時のアンタなら……
「みんな〜、中で放送してよ〜し!」
「「「「「えっ⁉︎」」」」」
ちゃんとやってくれるよね‼︎
「なんでや⁉︎」
「この状況じゃあ〜、本来来るパーソナリティーも呼べないんだって〜。」
「だから枠が空いているのね。」
「そうで〜す!」
確かにラジオ局としても、ニュースだけになるのはしんどいよね。そんな時に私たちが喋るのは、あったとしても都合いいのか!流石ねコイツ‼︎やる時はやるじゃない‼︎
「それと〜、お酒も貰っちゃいました〜♪」
「この状況で飲まないでね⁉︎」
「む〜り〜♪ずっと我慢してたんだも〜ん♪」グビグビ
「ちょっ、飲むの早すぎ‼︎」
「テメェゲロ吐いたらマジでぶっ殺すぞ⁉︎」
「置いていこ☆」
酷い時は酷いけど。
その後も、災害で荒れ果てた道中を歩きに歩き、遂に駅スタまで辿り着いた。予定より3日早い到着だ。
「ちょっと幸太郎探してくる〜!先にリハ始めてて〜!」
「は〜い!」
3日間もここで練習できるのは、とてもありがたい。最近はまともな地面でできてなかったし。これも灯里の機転ね。ホント感謝‼︎
幸太郎視点
佐賀県庁での宣伝も終わり。一旦駅スタに戻り、機材の準備をしておくか…………
「おっはよ〜ございま〜す!」
そんな事を思っていたら、気の抜けた声の挨拶が飛んできた。この感じ、奈々子もとい灯里だ。
「よく来たな。しかも3日前か。」
「そ〜だよ〜!流石に道の状況が分からなかったからね〜。言われた次の日には出発してたよ〜。」
「流石だな。生前もそんな感じで仕事していればよかったのに。」
「む〜り〜♪やりたくないことはやらない主義なので〜♪」
どうやら最近は本名を名乗り始めた。なんでも、愛にバレたかららしい。凄まじい洞察力だな。偽名を名乗って、生前の面影も消し去っていたのに、日頃の言動から当てたなんて。俺もさくらにバレないようにしなければ。
「ちなみに、皆はもうリハしてるよ〜!行ってあげてね〜。」
「お前がしばらく一緒にいればいいのでは?」
「ちょっと県庁行くので〜!」
「県庁はもう行ってきた。ライブを決行させるために、知事を説得してきたばかりだ。」
「そ〜じゃなくて〜、ハザードマップ!ここまで歩いてきたし〜、県内の道路状況を報告しとこ〜かな〜って!」
「ファンが来やすいように、か。」
「そ〜だよ〜!」
そして、推しのためならなんでもやる。全力を尽くす。そして、自分の生前でさえ捨てる。
「そうか。なら行ってこい。」
「ありがと〜♪」
そんなお前の覚悟に、俺も応えないとな。3日後のリベンジライブで、フランシュシュを輝かせるためにも。
愛視点
駅スタに到着してから3日が経ち、遂に私たちはリベンジライブ当日を迎えた。
「いよいよだね〜。」
「そうね。私たちがやってきた事を出し尽くすだけよ。」
「なんかその言葉エロ〜い♪」
「エロいのはアンタだっつーの‼︎」
灯里は全然緊張してない様子。本当にのんびりさんだ。今思えば、どんな大舞台でもいつも通りだったなぁ。おかげで私は全然緊張しなかった。ホント、アンタには助けられたね。
「灯里。」
「ん、何〜?」
「ありがと。」
「へっ⁉︎///」
「あっ、照れてる♪」
「て、照れてないって〜!愛〜、バカにしたな〜⁉︎///」
「してないしてない♪」
アンタが隣にいなかったら、この災害でファンが来なくて不安になってたかもしれない。失敗を悪い事だと思っていなくとも、どこかで恐れてしまったかもしれない。でもアンタはずっと居てくれた。名前を変えてでも。だから今日は、精一杯頑張って、あの日の続きを見せなくちゃね!
次回、遂に最終回です!お楽しみに!