伝説のニート、平成のアイドルと共に佐賀を救う   作:スピリタス3世

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第三十六話 史上最大のSAGA

  愛視点

 

 メイクが出来ずに落ち込んでた巽は、しばらくすると嘘のように戻った。そして、私たちはいつものようにミーティングの隊形に並んだ後、彼の話を聞いた。

 

「佐賀はこの状況だが、俺はリベンジを諦めていない。3月8日、予定通りにライブをやる。」

「本気で言ってるの………?」

 

 それはなんと、まさかのライブ決行。こんな状況でライブなんて、とてもやれると思えない。会場は壊れているかもしれないし、ファンは集まらないかもしれない。

 

「この状況だからこそやるべきだ。」

「皆の明るいライブで、災害の暗い雰囲気を吹っ飛ばすってことでしょ〜?」

「そうだ。」

「さっきやってたやつのでっかいバージョンだよ〜!」

「お前たちのライブを、大人たちが待っている。子供たちが待っている。お前たちはアイドルだ。ここにいる人々を笑顔にできたお前たちならば、必ずできる。」

 

 なるほど。昨日までの延長戦で、か。私たちが歌って踊ることで、佐賀のみんなを励ます。伝説のチャリティーライブね。

 

「ただし、万全な状態でライブをやることはできない。当日はリハをする余裕もないだろう。ぶっつけ本番になる。それでも………」

「それでも、それが佐賀の皆のためになるのなら、私たちは命ば懸けてやります。」

「もう死んでますけどね。」

「16日後の3月8日、10時に駅スタに集合しろ。俺はそれまでにできる事を全てやる。ゾンビィを尽くして天命を待つ。以上‼︎」

 

 いいじゃない、やるわよ!やってやろうじゃない‼︎そう奮起した私だった。

 

 

 

 それから1週間ほど経ち、3月1日になった。私たちは鳥栖に向けて歩きながら、時々練習をしていた。最初はもっと避難所にいるつもりだったけど、灯里が全部徒歩の可能性を想定し早めに出発。

 

 そして、今は天山*1を超えたあたりまできていた。そこでしばらく練習した後、それが終わった私は、奈々子や純子と一緒にドラム缶水風呂に入っていた。ちなみに灯里は最初リリィと入りたがってたが、私が強引に引き剥がして連れてきた。全く、正体バレて後悔するなら、もっと日頃の行いを正しなさいよ!昔からお調子者なところはあったけど‼︎

 

「どうですか〜、推しと入るお風呂は〜?」

「変なこと言わないでよ⁉︎この大事な時に‼︎///」

 

 だ・か・ら‼︎私を揶揄うな〜‼︎

 

「愛さんそうだったのですね。ありがとうございます!」

「う、うるさい‼︎///」

「私も愛さんのダンス、好きですよ!」

「耳元で歌ってあげると、喜ぶかもよ〜。」

「確かにそうですね!」

「だから変な事を言わないで‼︎というかアンタも私が推しでしょ‼︎」

「それがどうしたの〜?」

「ちょっとは照れなさいよ‼︎」

「む〜り〜♪」

 

 マジでムカつく‼︎私ばっかり恥ずかしい思いをしてるんだけど‼︎なんかイライラするから話題変えよう‼︎

 

「そういや、もう3月入ったね。」

「コンサートまで、あと1週間ですね。」

「ドキドキするね〜。」

 

 リベンジライブまであと1週間。とうとう目前に迫ってきた。

 

「でもすごくいい緊張感。ここ数日、皆集中出来てると思う。もしかしたら、今までで一番………っ!」

「私もそれを感じていました!」

「ボクも〜♪」

 

 私が経験してきた中で、一番のベストコンディションだと思う。アイアンフリル時代にも、ここまで良かったことはなかった気がする。

 

「ファンの皆にも、そしてアンタにも、いいものを見せられる気がする。」

「そう?それじゃあ期待してるよ〜!」

「お客さん、来てくれるといいですね!」

「だね!」

 

 だからあの日の続きを、アンタに見せてあげられるかも。そう思えた。

 

「それじゃあ、あとは2人でエッチなことでもしてて〜。じゃあね〜♪」

「アンタは何を言ってるのよ⁉︎このバカ‼︎///」

「いてて!あ〜、殴ったな〜?」

「むしろ私が抜けるべきでしょう⁉︎」

「それはそれでどういう意味よ⁉︎///」

「違うからね〜⁉︎///」

 

 やっぱ見せなくていいや。あと純子、アンタのことも殴っていいよね?そう思った日だった。

 

 

 

 

 その翌日、天山を超えた辺りからしばらく歩き、私たちは佐賀市内*2にあるラジオのスタジオまでやってきた。

 

「おい灯里‼︎今日は何曜日とや⁉︎」

「月曜だけど〜?」

「くっそ!ラジオ2回もすっぽかしちまった‼︎」

「いっぱい告知できたのにね☆」

「仕方ないでしょ。こんな状況だったし………」

 

 災害がなければ、今までに2回も宣伝できたのか。これはかなり痛い。ただ、今この状況でラジオ聞いてる人って、そんなにいない気もするし、仕方ないのかな。とりあえず、挨拶だけ済ませて………

 

「ちょっと待ってて〜!」

 

 そんな事を思ってたら、灯里が1人で中に入っていった。

 

「アイツ、どやんするとや?」

「さあ………?」

「お酒無いか探してるんですかね………?」

「盗人の真似事でありんすか。」

「流石に灯里ちゃんでもそんな事は…………ないと言い切れんと!」

「ダメじゃん☆」

「がぁぁぁぁぁ………」

 

 皆に心配される灯里。日頃の行いが見て取れる。でも、こういう時のアンタなら……

 

「みんな〜、中で放送してよ〜し!」

「「「「「えっ⁉︎」」」」」

 

 ちゃんとやってくれるよね‼︎

 

「なんでや⁉︎」

「この状況じゃあ〜、本来来るパーソナリティーも呼べないんだって〜。」

「だから枠が空いているのね。」

「そうで〜す!」

 

 確かにラジオ局としても、ニュースだけになるのはしんどいよね。そんな時に私たちが喋るのは、あったとしても都合いいのか!流石ねコイツ‼︎やる時はやるじゃない‼︎

 

「それと〜、お酒も貰っちゃいました〜♪」

「この状況で飲まないでね⁉︎」

「む〜り〜♪ずっと我慢してたんだも〜ん♪」グビグビ

「ちょっ、飲むの早すぎ‼︎」

「テメェゲロ吐いたらマジでぶっ殺すぞ⁉︎」

「置いていこ☆」

 

 酷い時は酷いけど。

 

 

 

 

 その後も、災害で荒れ果てた道中を歩きに歩き、遂に駅スタまで辿り着いた。予定より3日早い到着だ。

 

「ちょっと幸太郎探してくる〜!先にリハ始めてて〜!」

「は〜い!」

 

 3日間もここで練習できるのは、とてもありがたい。最近はまともな地面でできてなかったし。これも灯里の機転ね。ホント感謝‼︎

 

 

 

 

  

  幸太郎視点

 

 佐賀県庁での宣伝も終わり。一旦駅スタに戻り、機材の準備をしておくか…………

 

「おっはよ〜ございま〜す!」

 

 そんな事を思っていたら、気の抜けた声の挨拶が飛んできた。この感じ、奈々子もとい灯里だ。

 

「よく来たな。しかも3日前か。」

「そ〜だよ〜!流石に道の状況が分からなかったからね〜。言われた次の日には出発してたよ〜。」

「流石だな。生前もそんな感じで仕事していればよかったのに。」

「む〜り〜♪やりたくないことはやらない主義なので〜♪」

 

 どうやら最近は本名を名乗り始めた。なんでも、愛にバレたかららしい。凄まじい洞察力だな。偽名を名乗って、生前の面影も消し去っていたのに、日頃の言動から当てたなんて。俺もさくらにバレないようにしなければ。

 

「ちなみに、皆はもうリハしてるよ〜!行ってあげてね〜。」

「お前がしばらく一緒にいればいいのでは?」

「ちょっと県庁行くので〜!」

「県庁はもう行ってきた。ライブを決行させるために、知事を説得してきたばかりだ。」

「そ〜じゃなくて〜、ハザードマップ!ここまで歩いてきたし〜、県内の道路状況を報告しとこ〜かな〜って!」

「ファンが来やすいように、か。」

「そ〜だよ〜!」

 

 そして、推しのためならなんでもやる。全力を尽くす。そして、自分の生前でさえ捨てる。

 

「そうか。なら行ってこい。」

「ありがと〜♪」

 

 そんなお前の覚悟に、俺も応えないとな。3日後のリベンジライブで、フランシュシュを輝かせるためにも。

 

 

 

  愛視点

 

 駅スタに到着してから3日が経ち、遂に私たちはリベンジライブ当日を迎えた。

 

「いよいよだね〜。」

「そうね。私たちがやってきた事を出し尽くすだけよ。」

「なんかその言葉エロ〜い♪」

「エロいのはアンタだっつーの‼︎」

 

 灯里は全然緊張してない様子。本当にのんびりさんだ。今思えば、どんな大舞台でもいつも通りだったなぁ。おかげで私は全然緊張しなかった。ホント、アンタには助けられたね。

 

「灯里。」

「ん、何〜?」

「ありがと。」

「へっ⁉︎///」

「あっ、照れてる♪」

「て、照れてないって〜!愛〜、バカにしたな〜⁉︎///」

「してないしてない♪」

 

 アンタが隣にいなかったら、この災害でファンが来なくて不安になってたかもしれない。失敗を悪い事だと思っていなくとも、どこかで恐れてしまったかもしれない。でもアンタはずっと居てくれた。名前を変えてでも。だから今日は、精一杯頑張って、あの日の続きを見せなくちゃね!

*1
佐賀の中央付近。避難所が唐津で北の方、鳥栖がめちゃくちゃ東の方なので、半分くらいきたところ

*2
多分そうですよね?唐津じゃないですよね?




次回、遂に最終回です!お楽しみに!
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