伝説のニート、平成のアイドルと共に佐賀を救う 作:スピリタス3世
幸太郎視点
佐賀駅前ゲリラライブの後、俺はハニトラをしていた奈々子を迎えに行った。せっかく時間稼ぎしてくれたからな。いくらゾンビィとはいえ、自力で帰れって言うのも酷だろう。
「あっ、幸太郎〜!ちょうどいいところに〜!」
「お前、パチンコしてたのか。警察と飲んでたんじゃなかったのか。」
「うん〜!あのおじさん呼び出し入って、交番まで戻っちゃった〜。」
「そうか。まあお前が無事ならよかった。」
「それが無事じゃないんだよ〜。」
「は?」
無事じゃなかった………?あの警察とはすぐに別れたのに?待てよ?ここはパチンコ屋。もしかして…………
「パチンコでお金溶かしちゃって〜。ボク、帰れなかったんだよね〜。」
やはりか‼︎この女、持ってた金を全部パチンコに突っ込んで負けたのか!なんて事をしてくれたんだ‼︎
「お、お、お前‼︎ふざけるなよ!お、お金を溶かすって………」
「大丈夫〜、ボクのお金*1だから〜‼︎」
「大丈夫じゃないやろがい‼︎それはフランシュシュの活動資金だ‼︎くそっ、早く乗れ、そして働け‼︎このすっとこどっこいが‼︎」
「え〜、幸太郎厳し〜!」
決めた。コイツには絶対に財布を渡さない。少なくともフランシュシュの会計絡みは俺がやらなくてはならない。例えどれだけ疲れていようとも。そう決意した日だった。
車で唐津まで戻ってる途中、俺は話しかけられた。
「幸太郎〜、どうしたらボクにお金くれるの〜?」
その内容はあまりにも下らなかった。
「働け。馬車馬のように。ゾンビィだから出来るだろ?」
「そんなの無理〜!ボクは伝説のニートだもん。厳しいって〜!」
「あのな、金は働いて増やすものだ。決してギャンブルで増やすものではない。」
「そんな事ないと思うけどな〜。」
どうやらコイツにとって、金を増やす方法はギャンブルだけらしい。全く常識のなってない奴だ。あとで愛に教育でもさせよう。アイツならきちんと導いてくれるはずだ。
「………っ、そうだ!」
そんな事を思ってると、奈々子が何か閃いた様子だった。コイツは何を言い出すんだ…………?
「ボクとデートしたらお金くれる?」
本当に何を言い出すんだ⁉︎
「馬鹿な事言うな‼︎そんなものに興味はない‼︎」
「ホントに〜?」
「本当だ‼︎」
「そうか!幸太郎はさくらの事が好きだもんね〜。ボクじゃないもんね〜。」
「そそそそ、そういうわけではない‼︎///」
この女め、人のことからかいやがって‼︎それに俺はさくらとデートするために、ゾンビィにして復活させたわけじゃない‼︎これだけは100%断言できる‼︎絶対に‼︎
「でも〜、皆思ってると思うよ〜?名字が同じで〜、歳も近い男女〜。おまけに2人でプロデューサー。これもう夫婦みたいじゃない?」
「それはお前が勝手に『巽奈々子』を名乗っとるからやろが〜い‼︎」
「『巽幸太郎』だって偽名だからよくな〜い?」
「それは………その、あれじゃい。芸能人に倣ったんじゃい。」
「嘘つき〜。さくらにバレたくないからなのに〜。」
「うっ、うるさい‼︎このバカゾンビィ‼︎///」
というか、さくらのことちっとも話してないのに、なんで分かったんだ⁉︎女の勘か⁉︎ああもう、普段だらしないくせに、なんでこんな時だけ鋭いんだよ‼︎
「つーか、お前だって別に俺と付き合いたいから、じゃないだろが〜い‼︎」
「それはまあ、そうだね〜。」
「愛のファン、だっけか。」
「そうだよ〜。水野愛がいるアイドルグループは必ず成功する。ボクはこの賭けに全額ベットしたいだけなのさ〜。」
「ホント変わってるな、貴様。」
「幸太郎こそ〜!」
まあ、俺たちは似たもの同士なのかもな。さくらの夢を叶えたい俺と、愛の成功を全力で信じる彼女。そんな2人で、今後もこのフランシュシュを支えていこうと思った。
愛視点
私たちは嬉野温泉で、サガンシップZを開発した久中製薬に営業をすることになった。具体的には、社員旅行の宴会でライブを披露する。そこでタイアップを獲得して、知名度向上と活動資金の獲得を目論みるのだ。そして、いよいよ私たちはその舞台、嬉野温泉にやってきた。
「お前らは出番まで練習してろ。わしゃ観光じゃぁぁぁぁぁぁい‼︎」
のだが、巽が私たちをホテルに置いてどこかへ消えてしまった。もしかして観光と言いつつ挨拶回りかな?でもそれなら奈々子を連れてくだろうし………
「さ〜て、アタシらはどやんする?」
「どやんするって?」
「はぁ?お前マジですぐやる気じゃなかよな?」
「練習せんと!」
「するさ後で‼︎なんでグラサンと奈々子だけ好き勝手やりおっつかって話だろ‼︎」
「いかんって‼︎」
「えっ、ボクも?」
「そりゃそうやろ‼︎」
「気のせいだって〜!」
「あぁん?ぶっ殺すぞ?」
「ええ…………」
それはさておき、私たちは本番前。だから巽のことなんか無視して、今すぐにでも練習に入るべき。正直私もさくらの意見に賛成だ。ただ…………
「そりゃそうと、うちらほっとんど屋敷の中でレッスンしよるとぞ?そんで今こうやって、嬉野来とんやぞ?」
「はい、リリィも散歩したい☆」
「はい、ちんちくりん来た〜!」
「ちんちくりんじゃないもん!リリィだもん!」
「僅かでしたら、ええんやありませんか?わっちもこの時代の街、見せて下さんし。」
「がぁぁぁぁ‼︎」
「たまには息抜きもいいよね〜。」
「アンタは毎日が息抜きでしょうが‼︎」
「愛、純子もいいよな?」
「あまり気乗りはしませんが………皆さんがいいなら……」
他のみんなは観光したがってる。この状態でレッスンしても微妙だろう。ここは私も純子に合わせて、参加することにするか………
「いいわよ。ただし終わりの時間を決めてメリハリをつける方がいいわ。例えばライブが18:00〜だから………2時間前の16:00にはレッスンを始めるとか。」
「おお〜、それよかとね、愛ちゃん!」
「よしっ、じゃあそうすっか!」
「はい!」
「ですね。」
「オー☆」
「おぉぉぉぉぉ!」
ただ、ダラダラと観光してライブの時間ギリギリはナシ。あくまで仕事として来てるんだから、それに向けての調整を踏まえた上で、こうするのがいいだろう。
「さすが愛〜、凄いね〜!」
「これくらい普通よ。じゃないとアイドルとして上手くいかないんだから。」
「そうですね。半端なものを見せるわけにはいきませんから。」
「そ〜だね〜!それじゃあ皆さん、メリハリをしっかりつけて〜、観光にしゅっぱ〜つ!」
「「「「「オー!」」」」」
「なんでアンタが仕切ってんのよ……」
「マネージャーっぽくやってみた!」ドヤァ
「アンタそういえばマネージャーだったわね。穀潰しかと思ってた。」
「え〜、愛ひど〜い!」
ということで、私たちは嬉野温泉のプチ観光に出た。
嬉野温泉の地を歩くこと数十分………
「純子ちゃん純子ちゃん!このナマズ、美肌健康シワ退散だって〜!水かけて〜、って書いとるよ〜!」
「………かけましょう‼︎」
私と同じく乗り気じゃなかったはずの純子が、気がついたらノリノリで観光してた。なんか裏切られたような気分だ。
「ねぇ愛〜、純子ノリノリだね〜!」
「そうね。」
「愛ももっとテンション上げよ〜!ほらほら〜!」
ちなみに、私の隣にはいつものようにニートがいた。頭ひとつ分小さい身体に甘ったるい声。それでいながら黄緑髪にピアス、更にはスタイルのいい身体と、大人と子供が混じってるような不思議な雰囲気の彼女は、今日もどこかゆったりとしていた。
「隣に活動資金溶かしたバカがいなければ、もっと上がったかもね。」
「そんな〜、ちょっとツイてなかっただけじゃ〜ん!」
「だったら早い段階で止めなさいよ‼︎」
「だって増えると思ったんだも〜ん!」
「そんなわけないでしょ‼︎」
今までに会ったことのない、未知の人種と出会っているのに、どこか懐かしさを感じる独特の雰囲気。そんな彼女の体たらくに、段々と慣れてきてしまった自分が怖かった。
「それはさておき〜、愛は張り詰めすぎ〜!もうちょっとリラックスリラックス〜!」
「アンタはリラックスし過ぎよ‼︎」
「褒めても何も出ないよ〜!」
「褒めてないっつーの‼︎」
でもまあ、ちょっと張り詰めがちな自分の気を、いい意味で緩めてくれる。それがいい気分転換になって、より良い練習、そしてより良いパフォーマンスにつながってる気がする。それに、なんでか知らないけど人の懐に上手く入ってくる。だからか、不真面目でだらしない人なのに、隣にいて苛立つことはあっても居心地が悪くなることがない。なんとも不思議な彼女だ。
「愛ちゃん〜!奈々子ちゃ〜ん!こっちに足湯あると〜!」
「一緒に入っか!ニートと世話係!」
「世話係じゃないっつーの‼︎」
「ボクもニートじゃないよ〜!」
「それは違う‼︎」
そんなことを思いながら、嬉野温泉を観光したのだった。