伝説のニート、平成のアイドルと共に佐賀を救う 作:スピリタス3世
愛視点
ガタリンピックから1ヶ月半。私たちはクオリティを上げるために、日々練習に取り組んでいた。次の曲は私と純子のソロがメイン。しかもテンポが速く、フランシュシュの曲の中でも飛び抜けて難しかった。
「やっぱりちょっと遅れちゃうな。」
「……ごめんなさい。」
「大丈夫、私がフォローする。」
「ここは私の歌割りなのに………」
「テンポ速いしね。決めどころでバシッと決められるように、身体に叩き込んでいこう。」
そのため、もう1人のソロ担当である純子を始め、遅れるメンバーがかなり多かった。
「じゃあ、もう一回全体の流れ確認するから、皆は少し休んで見てて!」
「は〜い、お水です〜!愛〜、後で録画したやつも見せるよね〜?」
「うん、お願い!」
ちなみに、奈々子はここ最近普通にレッスンのサポートをしてくれている。特に最新のスマートフォンを使って動きを録画したり、音楽の再生や水の用意など、結構ちゃんとマネージャーとして働いてくれている印象だ。よく寝坊するけど。
しばらくすると、休憩時間になった。最近は奈々子がスマホで色々と見せてくれるので、色々と助かってる。
「ねえ奈々子、佐賀のアイドルイベントを見せてくれない?」
「いいよ〜!」
「履歴がパチンコとかボートレースって………」
「ギャンブルばっかやな、お前‼︎」
「それほどでも〜。」
「褒めてねえよ‼︎」
にしても、ホントすごい時代になったわよね。これじゃあパソコン要らないじゃない。手で簡単に持てるから、どこでも見られるし。しかも小さいのに、すぐ調べらるし。技術の進歩は凄まじいわね。
「とりあえず、気になったイベントから調べていこうか。」
「イベント?パチ屋の?」
「なわけないでしょ‼︎」
「それもそっか〜!」
そんな事を思いながら調べていると、
「おっ、サガロックってなん⁉︎面白そうやん‼︎」
サキがある記事に目を輝かせた。
「サキちゃん、ロック好きと〜?」
「おう!九州っつったら、明太ロックやろがい!」
「なんそれ?」
「お前、ぶっ殺すぞ‼︎」
「ホント口悪いな………」
「愛と一緒だ〜!」
「それはアンタが怠けてるからでしょ‼︎」
「最近はちゃんと働いてるのに〜!これは休職するしかないですな〜!」
「休むな‼︎」
調べながらサボろうとするニートはさておき、私はサガロックの記事を読むことにした。
「それはさておき………サガロックフェスティバルは、九州最大の野外ロックイベントよ。」
「マジか⁉︎アタシらも出ようぜ‼︎」
「まあ、大きな目標を立てることに文句はないけど………」
「きっと凄いね〜。目の前にこんなお客さんおったら〜!」
「リリィは舞台挨拶で慣れてるから全然平気!」
「ボクは労働に慣れてないからむ〜り〜!」
「アンタはそろそろ慣れなさいよ‼︎」
いきなり出るのは正直無理な話だ。今のクオリティでは足りないのは当然として、開催日までにこの舞台に立てるクオリティになるのすらもキツい。だからいずれの目標として設定するならいいかも。例えば今年は見に行くだけ見に行って、来年出る事を目指すとか。それが現実的かな?
「頑張って行こうよ!もっともっと練習すれば、いつか行けるよ!」
「そう簡単ではありません。これだけの会場でコンサートを開くには、当然それに伴う実力が必要なんです。希望的観測はやめて、謙虚に一歩一歩進むべきです。」
ただ、純子の通りやってたら何もせずに終わってしまう可能性がある。これだけ移り変わりの激しい時代には、ある程度のスピード感も必要になってくる。彼女の言いたいことも分かるけどね。
「分かるけど、昔と違ってそんなじっくりやってる余裕は無いの。まずは、とにかく多くの人に知ってもらわないと。奈々子が拡散してるSNSでも、そろそろ動画を挙げていかないとね。」
「SNS………?私たちのあのコンサートを広げているのですか……?」
「こんな感じで〜、よく見える瞬間だけ切り取ってるよ〜。」
「そう、ですか…………」
「元々私がいたグループだって、デビューから1年後には数万人の前でやってたんだから。」
「1年⁉︎それでお客さんは満足を⁉︎」
「最初から完璧なんて求めていたら、何もできない。むしろファンは私たちの成長過程を見守ってくれるし。育ててくれるの。」
「それって…………」
「ボクの成長過程も見守って………」
「そりゃもちろん、毎回全力でやるのが大前提だけどね。奈々子もよ。」
「うえ〜ん、愛がいじめる〜!」
「いじめてないでしょ!」
「がぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
誰が26歳ニートの成長過程なんか見たいのよ⁉︎アンタはとっとと年相応にしっかりしなさい‼︎
そんな事を思っていると…………
「おっ、アイアンフリルも出るじゃ〜ん!」
なんと私の古巣が特別ゲストで来ることが判明した。
「サガロック来るんだ〜!」
「やるじゃねえか、お前んとこ!」
そうか。生きていたら私もゲストでこっち来てたんだ………。生きていたら26歳。ちょうど奈々子と同じ年齢だな………。そんな事を思った日だった。
その後日、私たちはいつものようにミーティングをすることになった。
「皆の衆〜!あぁ〜ふら………」
「せからしい!さっさと始めろ!」
「はい!今日はお前らに、嬉しいニュースがありま〜す‼︎え〜なんとフランシュシュに〜、ファンが出来ましたぁぁぁ‼︎」
おっ。ようやくこのレベルになったのね。久々に出来たファンは、なんだか嬉しかった。
「ドライブイン鳥のCMと、ガタリンピックの動画がネットに上がって〜、更には奈々子が撮った写真も話題になり〜、ちょぉぉぉっぴり話題になってまぁぁぁぁす‼︎」
「ど〜だ〜!ボクのおかげだ〜!だからボーナスちょうだ〜い!」
「やるかボケェ、このバカニート‼︎お前に渡したら金の無駄にしかならんやんけぇぇぇぇぇ‼︎」
「そんな事ないのに〜!」
絶対パチンコかボートに溶かすだけ。うん、無駄ね無駄。それより仕事の話を聞かせて欲しいわ。
「それより今日は、ファンの皆と交流してもらいまぁぁぁぁす‼︎」
「交流〜?チェキ会のこと〜?」
「そうでぇぇぇぇす‼︎話が早くて助かるぞぉぉぉい‼︎」
チェキ会からやるんだ。意外。まずはミニライブと物販をやって欲しかったのに。まあいいか。とりあえずここでファンの人と交流するしかないでしょ!
「チェキ会………?」
「ファンの人と一緒に写真を撮るんだよ〜!」
「なるほど、ポラロイドでプロマイドする感じですね!」
「そうそ、う〜ん?」
あと、奈々子は昭和の機械分かんないんだね。最新の機械は分かるのに。もしかしてつい最近まで生きてたのかな?じゃないと、巽に教わるだけじゃ上手く扱えないと思うし。
「というわけで、お前らチェキチェキしてこぉぉぉぉぉい‼︎」
まあいいや。ということで、私たちはチェキ会の会場へと向かったのだった。
そして私たちは、最初にミニライブをした後、物販をした。そしてその数十分後に、チェキ会をすることになった。行った先では始めたてのアイドルとは思えないようなくらいの、多くの人が並んでいた〜。
「は〜い皆さ〜ん!メンバーごとに並んでくださ〜い!最初は奥から順に〜、0号と1号のペア、2号、3号となってま〜す!4号、5号、6号はまだで〜す!最後尾の人はお手数ですが〜、この最後尾プラカードを持ってくださ〜い!」
そして、珍しく奈々子が小さい身体を一生懸命に動かしながら走り回っていた。似合わぬスーツ姿に、似合う酒瓶………ってアイツ、また酒飲みながら仕事してんの⁉︎
「おっ、アル中の姉ちゃんじゃん!」
「まさかスタッフじゃったとはなぁ〜。」
「えへへ〜、お久しぶりです〜!お2人はどこに並ぶんですか〜?」
「俺は0号だな。」
「わしゃ1号じゃ!」
「お〜、いいですね〜!それじゃあこっちで〜す!」
「「ありがとさん!」」
「どもども〜!」
しかもファンに覚えられてるし‼︎アル中の姉ちゃんって何よ⁉︎完全にヤバい奴じゃない‼︎
「なんですか、これ?」
「ホントそれよね。普通酒飲んで動き回るスタッフなんかいないのに。」
「そうじゃなくて………私は今から何をすればいいんでしょうか?」
そんな事を思っていると、純子が戸惑い始めた。そういえばチェキ会知らないんだっけ。なら教えないとね。
「自分の列に並んでいる人たちと、一緒に写真を撮るの。」
「えっ⁉︎」
「それじゃあ、私も行ってくるわ。」
ということで、私は自分の列を捌くべく向かったのだった。
そしてファンの方々と交流し終えたところで、純子、ゆうぎり、リリィと交代することになった。本来なら7人同時がいいんだけど、スタッフが2人しかいないからね。イベントだけ別で派遣スタッフを呼ぶお金もないし。さてと、私は純子を呼びに行かないと。そんな事を思い、彼女の元へ向かったら…………
「嫌です‼︎私には出来ません!」
「ちょっと、4号〜!ほら〜、並んでるファンの方もいらっしゃるんだしぃ………」
「ステージの上からファンを魅了するのがアイドルです‼︎これのどこに、アイドルがあるんですか⁉︎」
そこではゴネる純子と、珍しく慌てた様子で宥める奈々子がいた。