【宿泊研修】編ですが、少し寄り道しています。次回からはちゃんと遠月リゾートが舞台となります。
(さて、何を作るか)
ようやく開放されたカムイだが、いつの間にか料理を作ることとなっており、どのような料理を作ればいいか考え込んでいた。
食材は『シェルダーバッグ』に入っている、しかし元々料理を作る気は無かったため何を作るか頭を悩ませているのだ。
(……………………スープか。そういえば、最近『アレ』を作れるようになったんだよな。
でもただ作るのも何だし、せっかくだからこの間知った『あの食材』も合わせてみるか)
カムイは黒板に書かれている『講義内容』を見て、スープを作ることを決めた。
しかし同じ料理を何度も作るのが好きではないカムイは、つい最近知った『ある食材』と合わせることにする。
「ッ……………………………………………」
作る料理も決まり、必要になりそうな食材を『シェルダーバッグ』から取り出していくカムイ。
しかし途中で『あること』に気づき、動きが止まってしまった。
淀みなく動いていたカムイがバッグの中を覗きながら固まっているのを見て、不審に思った司が話しかけてくる。
「? どうしたんだカムイ。もしかして、食材が足りないのか?」
「コクン」
「っ、それは大変だ! すぐに用意しよう、何が必要なんだ?」
「小麦粉。出来れば、香りと味が穏やかな、強力粉が欲しい」
「『香りと味が穏やかな強力粉』か………………………なら『ユメチカラ』だな! すぐに用意する、待っていてくれ!」
この場で誰よりもカムイの料理に魅了されている司は急いで食材を取りに行く。
遠月学園のトップ『遠月十傑』、その第一席すらもパシリのように扱ってしまうカムイを見て生徒たちは唖然としていた。
強力粉以外の食材は全て揃っているため、必要な食材を並べていくのだが………………………その量が凄まじかった。
「おいおいおい、どんだけの食材を使う気なんだよ………………………」
「ざっと見て、数千種類はありそうだな。どう見てもあのバッグには入りきらないだろう」
「しかもどれも見たことの無い食材ばっかりだぜ♪」
「それに、どれも美味しそう♪ジュル」
「待たせたなカムイ! って、おわ! 凄い数の食材だな、しかも見たことの無い食材ばかりだ♪」
あまりの数の食材に竜胆たちが呆気に取られていると司が戻ってきた。
当然、司もカムイが用意した食材が所狭しと並べられているのを見て驚くも、それ以上に見たことの無い食材の方が気になっていた。
明らかにバッグの許容量を超えている量の食材を見て周りの生徒たちも『夢でも見ているのか!?』と思っている中、カムイは用意した食材を猛スピードで調理していく!
『ハム貝』や『コンソメマグマ』、『パズルプランクトン』などをはじめとする『グルメ界』の食材たち。
周りの生徒たちはどんな味か分からなくても、無意識に食欲を搔き立てられることから、それが極上の美味なる食材であることを本能的に理解していた。
一通り食材の下ごしらえを終えたら、司から受け取った小麦粉で生地を練り始める。
『金のボウル』に小麦粉とドライイースト、そして『エアアクア』を入れて箸で掻き混ぜていく。
いつぞや紀ノ国との食戟で見せたように、生地ごと螺旋を描くように混ぜているため、生地はみるみる内に練り上がっていく。
あっという間の出来事に十傑メンバーも目を大きく開いていた。
「っ、スゲえな。手を使わずに箸だけで生地を練り上げちまった………………………」
「生地が螺旋を描きながら練りあがっていく様は、まさに『妖術』、いや『神業』と呼ぶべきか」
「凄い! 『ユメチカラ』はタンパク質が多いから、手で練るのにもかなりの力を必要とするのに、何て技術だ!」
「練りあがった生地は寝かせて、別の食材を調理し始めたな。ってことは、あの生地は発酵させてるのか?」
「うん、発酵させることで生地の中にグルテンが形成されていく。でも『ユメチカラ』を使っているから、かなり固いパンになるんじゃないかな?」
『ワープダイニング』・『ワープキッチン』を駆使して膨大な食材の下処理・仕込みを終えたら、骨・野菜・魚介類のスープに分ける。
『エアアクア』の水を張った『金の大鍋』に入れて、それぞれ別々に火にかける。さらに鍋へ『七味酒』『エメラルドワイン』などの酒類も入れて再び煮込む。
こまめにアクを掬っては濾すを何度も繰り返していき、三つのスープをひとまとめにしたら、また濾す。
その工程をひたすらに続けていき…………………………やがて空気のように透明なスープを出来上がった。
「速え、アレほどあった食材が瞬く間に無くなっちまった…………………」
「それにあの透明なスープ、まるで何も入っていないように見えるほどに透明で美しい」
「だがあのスープの中には、あれだけあった食材の旨味が全て凝縮されているんだ。こんな料理見たことも無い!」
「くっはぁーーーーーーーー! メチャクチャ良い匂いがしてくるぜ♪ 一口だけでも飲ませてくれねえかな?」
「無数にあった食材の旨味を集めたスープ………………………ジュル、考えただけでヨダレが止まらない!」
透明なスープに『おしり塩』『あられこしょう』『ゴマ栗』『七味ハーブ』などの調味料を加えて煮込んでいく間に、生地の発酵が終わった。
しかし十傑メンバーや他の生徒たちは、出来上がった生地の形状に驚く。
「おい、あの生地、さっきまでの3倍ぐらいに膨らんでねえか?」
「女木島もそう見えるか? やはり拙者の見間違いではなかったようだな」
「しかもまだ膨らんでいっている、なんて膨張率だ!」
「使ったのは小麦粉と水だけだった。そうなると、秘密は『捏ね方』か?」
司・小林・女木島・斎藤がどんどん膨らんでいく生地に驚愕していると、茜ヶ久保だけはカムイが何をやったのかに気づいた。
「竜胆の言った通りだよ」
「ん? どういう意味だよ、モモ。カムイはいったい何をやったんだ?」
「カムくん、生地の『ガス抜き』をしてなかった」
「『ガス抜き』を?」
『ガス抜き』とは、生地が発酵していく中で発生した空気を生地全体に広げるパン作りの工程の一つである。
生地を台に叩きつけたりなどすることで生地の中の空気が細かく広がり、より大きく生地が膨らむのだ。
「でもよぉ、モモ。『ガス抜き』をしていないなら、なおさら生地は膨らみにくくなるんじゃねえのか?」
「カムくんは『ガス抜き』をしない代わりに、掻き混ぜる時に生地の中へ細かい気泡を、ハチの巣のように作ったんだと思う」
「細かい気泡をハチの巣のように………………………そうか! それで『ガス抜き』するよりも遥かに均一に、かつ満遍なく生地の中に空気が行き渡って、生地があんなに膨らんだのか!!!」
「うん。普通ならありえないけど、『ガス抜き』をしないであんなに生地が膨らむなんて、それ以外考えられない」
茜ヶ久保と司の推測通り、カムイは生地を箸で混ぜる際に生地内部の気泡が均等に行きわたるよう練り込んだのだ。
そうすることで、『ガス抜き』よりも最大限に生地を膨らませることに成功したのである。
当然ながら、生地内部の気泡など目に見えるわけはないので完全な感覚頼り。しかしカムイは『食材の声』が聞こえるため、この難題をクリアするのにワケは無かった。
「信じられねえ。あの生地、最初の10倍ぐらいの大きさになっていやがる」
「うむ、見たところカムイの作ろうとしているのは『スープ』だな。そうすると、あの生地はバケット用のパンにするのか?」
「あんなに膨らんだ生地でパンを焼いたら、どれだけフカフカになるんだろう♪」
気泡が均一化され最大限に膨らんだ最高の生地、この場にいる誰もがあの生地でパンを作るつもりだと考えた。
しかしカムイは驚くべき行動に出る!
ジャーーーーーーーーー!!!!
「「「「「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」
カムイの行動にこの場にいる全員が言葉を失った! それもそのはず、カムイはなんと生地を水で洗って小麦粉を落としているのだ!!
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? せっかくあんな最高の生地を作ったって言うのに、何でカムイはそれを自分でダメにしてんだ!?」
竜胆が大声で叫ぶのも無理はない、他の者も声には出さないが同じ気持ちであった。
しかしカムイは周りの目など気にすることなく小麦粉を洗い流し、後に残った『白いガム』のようなものを集めて一つにしていく。
「アレは…………………『グルテン』だな。小麦粉を洗い流したことで、生地の中で形成されていた『グルテン』のみが出てきたんだ」
「あんなに大量のグルテンが作られてるなんて、やっぱりそれだけあの生地の膨張率が良かったってことだね」
パン生地を『家』に例えた場合、小麦粉は外壁や内壁となる。
そしてグルテンはまさに『支柱』にあたる。そのため生地が良く練り込まれていればいるほど、大量のグルテンを形成することが出来るのだ。
カムイは一つにまとめたグルテンを箸に巻き付け、伸ばしながらガスバーナーで炙り始めた。
伸ばしては炙って畳み、また伸ばしては炙って畳むを繰り返していく。その姿はまるで一種の『舞い』を思わせるようだ。
「……………………キレイ♪」
「ああ、たおやかな手練が実に美しい…………………」
「女木島よ、アレは『麺』………………………なのか?」
「確かに、ありゃあどちらかと言うと『麺打ち』に近いよなぁ」
司と茜ヶ久保がカムイの調理に見惚れ、斎藤と小林がラーメン職人である女木島に尋ねる。
女木島もカムイの調理に『麺』へ通じるものを感じたが、いずれの『麵打ち』の技法にも該当しない。
しかしカムイの調理する姿から、女木島のラーメン職人としての勘に引っ掛かるものがあった。
「小麦粉を使わずグルテンのみで麺を作る………………………………そうか、『麺筋』か!!!」
「『麵筋』? あの『車麩』の材料の?」
「ああ、間違いねえ。一度作った生地からグルテンのみを取り出したのがその証拠だ。それならカムイがグルテンの元となるタンパク質が多い強力粉を必要としたのも納得できる」
女木島の言う通り、カムイが強力粉を求めたのは小麦粉ではなく、生地を形成した際に出来る『グルテン』を必要としたからである。
そして最高の状態に練り上げた生地から出来た大量のグルテンを使い、『麵筋』を作るのが目的だったのだ。
「でもよぉ女木島、何でわざわざ『麵筋』にする必要があるんだ? フツーにあの生地から麺を作るんじゃダメなのか?」
「それは恐らく、カムイが作ろうとしているのは『麺料理』ではなく『スープ料理』だからだ。
『麵筋』ってのは味も匂いも無えが、フカヒレみたいに味をよく吸うからな。あのスープの旨味を『麵筋』に吸収させるつもりなんだろう」
女木島の言葉にカムイの料理の完成形が見え始めた十傑メンバー。
つまりカムイは具材が一切入っていない透明なスープの具材に『麵筋』を使おうとしているのだ。
まったく未知の料理、この場にいる者がどんな味かも想像できないでいる。そんな中、カムイが調理の仕上げに入った!
熱で固くなった『麵筋』を『金の包丁』で麺のように切り出していき、土鍋に移したスープに投入。そして土鍋ごと蒸し器で蒸し始めた。
「土鍋を丸ごと蒸し器に入れて蒸す、か。やはり『麺筋』にスープの味を吸わせるつもりだな」
「鍋を直接火にかけるんじゃなく、蒸すことで鍋の中の温度は一定以上上がらない。かつ均一に熱を通すことが出来る」
「それに土鍋は火の当たりが柔らかいから、熱の通し具合を調節しやすい」
「あの食材への労わりようは司みたいだな♪」
「ジュル、もうそろそろだよね? モモの口の中がヨダレでいっぱいなんだけど」
カムイが鍋ごと蒸し始めたことで調理の終わりを予感する生徒たちだったが、茜ヶ久保だけではなく他の生徒も全員ヨダレを垂らしている。
『ワープダイニング』で蒸し時間を早めていき、いよいよ完成となったその時、カムイは素早く土鍋の蓋を開けて『金色の液体』を少し鍋の中に入れた!
そして空かさず鍋に蓋をして再度蒸していく。
「何だ、今の液体? 早過ぎて見えなかったが、金色に輝いていたような………………………それにこの香り、僅かながらも旨味がハッキリと見えるようだ!」
「なぁカムイ~~~~、まだ出来ないのかぁ? 皆ヨダレで口周りが大変なことになっているぞ~~~。モモなんてヨダレを垂らし過ぎて今にも脱水症状になりそうだ!」
「ッ、ゴシゴシ、そこまで垂らしてない///////////」
「いや、ヨダレを拭きすぎて袖のあたりがベトベトになっているぞ?」
「ああ、ちょっと心配するレベルだ…………………」
カムイが入れた金色のスープの正体、それはアカシアのフルコースのスープである『ペア』であった。
IGOによって品種改良された『ペア』は性転換こそしないが、漂ってくる旨味だけでお腹を満たし体力を回復させる旨味は健在だ。
そんな『ペア』を少量とはいえ、使用したことで漂う香りはこの場にいる全員の食欲にトドメを刺した。
「………………………出来たぞ」
『ペア』を入れて再度蒸した土鍋を2つテーブル中央に置く、片方はもちろんカムイが自分で食べる用にである。
「ようやくか。いったいどんな料理になっているんだろう」
「待ちくたびれたぜ~~~! 早く食べようぜ♪」
「俺としてはスープもそうだが、あの『麵筋』が気になるな」
「早く!早く! カムくん早く開けて!」
「鬼が出るか蛇が出るか、というのは失礼か。まさに『神が出るか仏が出るか』、そんな高揚感を覚える」
カムイの料理に十傑メンバーだけではなく周りの生徒たちも今か今かと待ちわびている。
噂に聞く【神域の料理人】の料理、また十傑メンバーを全員倒した時の料理のインパクトは未だ記憶に新しい。
生徒たちも『一度でいいから食べてみたい』と切望していたカムイの料理が目の前にあるのだ。
周りの視線が土鍋に集中している中でカムイが蓋を開けると
パアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!
かぐわしい香りと共に美しい『旨味』のオーロラが立ち昇った!!!!
「こ、これは………………………なんて美しいんだ!」
「スッゲえ、スッゲえ、スッゲえ! 旨味のオーロラだ! アハッ、こんなの初めて見た♪」
「これがカムイの料理の真骨頂ってことか」
「はわあああああああああああああああああああああああ!!! キャ、キャワイイよ~~~~~~~~~♪」
「この神々しさ、我らと戦った時は全く本気ではなかったということか」
見たことも無い美しいオーロラは全員の目を奪い、可視化されたほどの芳醇な旨味は食欲を激しく駆り立てた。
チリィン
カムイが自分の分を皿に盛りつけると美しい鈴の音のような音が鳴り響く。
香りを鼻で楽しみ、美しさを目で楽しみ、音を耳で楽しみ、温かさを肌で楽しみ、そして味を楽しむ。
これほど美しい料理がこの世にあったのかと全員が感動しながら、口に入れるその瞬間を待ち焦がれた。
十傑メンバーの提案で、カムイの手により全員の皿へそれぞれスープが盛られた。
各々で皿によそうことになったら、間違いなく血みどろの奪い合いになることは明白だったからだ。
やがてスープが全員へと行き渡り、カムイが合掌する。
「この世のすべての食材に感謝を込めて、『いただきます』」
「「「「「いただきます」」」」」
カムイの所作を見て全員が同じように合掌する。この世のモノとは思えないほど美しい料理を前に、『謹んで食べなければならない』と強く思ったのだ。
スプーンを持つ手を震わせながら、恐る恐る口へと運んでいく。
全員が凄まじい旨味の渦へと呑み込まれた!!!!
「す、凄い! なんて深いコク、なんて芳醇な美味さ!! まるで旨味が何億年と紡がれた分厚い地層のように重なっているみたいだ!!!」
「うんめえええええええええええええええええ!!! あまりにも味が強烈すぎて思わず噛んじまったぜ♪」
「く、口に入れた瞬間に口角が緩んじまう、味を感じる前に脳が美味さを認識しちまってる!」
「ふ、ふにゃああああああああああああ! この美味しさ、体がトロけちゃうよ~~~~~~~~♪」
「夜空のように広く、海のように深い味…………………………これはもはや人間業ではない! まさかカムイは『美食の神』とでも言うのか!?」
グルメ界の食材を中心にカムイの五感と『食運』によって厳選された食材たち。
その旨味が余すことなく溶けだした『カムイ式センチュリースープ』の美味さは、自分たちがこれまで食べてきた料理とは別次元の美味さを誇っていた。
元々『センチュリースープ』はアイスヘルにある『グルメショーウインドウ』で冷凍保存されていた食材たちの旨味が溶けだしたものだ。
そして太古の料理人たちが食材の保管に使っていたのが『グルメショーウインドウ』である。
しかし長きに渡り食材のエキスが抽出されていった結果、『グルメショーウインドウ』は寿命を迎えた。
それを調理によって小松が現代に復活させたのが『センチュリースープ』であり、カムイの師匠である節乃も自分なりの『センチュリースープ』を作ろうとしている。
謂わば『センチュリースープ』とは料理人のセンスと経験の結晶とも呼ぶべき料理である。
カムイもまた現代に生きる料理人として、自分なりの『センチュリースープ』を完成させようと試行錯誤をしていた。
そうしてつい最近になってようやく、カムイは『旨味のオーロラ』を発する『センチュリースープ』を完成させたのだ!!!
しかしカムイの『センチュリースープ』の工夫はこれだけではなかった。
ズルズルズル
カムイが麺のような具材を啜っているのを見て、スープの味に酔いしれていた十傑や生徒たちがハッとする。
スプーンではなく箸で皿の底を探ってみると、春雨を太くしたような透明な『麺』が出てきた。
カムイのように麺にスープを絡めて啜り、麺を噛み締める。
すると、さらなる快感が脳髄に押し寄せてくる!!!!!
「これは………………………噛み締めるとスープの味がどんどんと口の中に広がってくる! 噛むことで脳の快楽中枢が刺激されているんだ!!」
「最初はあまりの美味さに思わず噛んじまった! けどこの麺を噛むことで口の中にジュワジュワと染み込んだスープが出てきて、『噛む楽しさ』まで味わえるってことか♪」
司と竜胆がスープの美味さに『麺』による噛む快感までも与えたことに気づく。
周りの生徒たちも一心不乱にスープの味が染み込んだ麺を噛み締めていると、女木島が『麺』の正体に気づいた。
「この透明な麺はさっき作っていた『麺筋』……………………そうか、カムイが『麵筋』を使った理由はコレか!」
「どういうことだ女木島?」
「さっきも言ったが、麵筋は味をよく吸う。その特性を利用してスープの味を染み込ませると同時に、この料理へ『食感』をプラスしたんだ!」
「なるほど。だがカムイは何故わざわざ『麵筋』を使ったんだ?
味がよく染み込み、食感をプラスさせるならフカヒレや大根とかでも良かったはずだ」
「いや、ここまで極まった料理だと、僅かな『臭み』だけで全てが崩壊してしまう。
フカヒレや春雨ではどうしても乾物臭さが出てしまうし、大根では『食感』が物足りない」
「そういうことだ。だからこそ、カムイは無味無臭の『麵筋』を使って食感だけをプラスしたんだ! 凄え料理だ!」
三人の言う通り、ただでさえ完成された『センチュリースープ』。
カムイはそれに『食感』を加えるべく、最近知った『車麩』の材料である『麵筋』を具として使うことを思いついたのだ。
カムイの読み通り、『麵筋』によって芳醇な旨味を持つ『センチュリースープ』には『食感』という新たな魅力が加わった。
これにより食する者に『噛む快感』を与え、より一層の快楽をもたらす料理へと昇華したのである。
(やはり『麵筋』の発見とセンチュリースープが作れるようになったのは関係があったか。もしこの麵筋を『金色小麦』で作れれば…………………………!)
カムイが『麵筋』を知ったのとセンチュリースープが完成したのはほぼ同時期であった。
そこからセンチュリースープに『麺筋』を合わせることを思いついたのだが、それは『食材の声』の導き……………………『食運』によるものなのかもしれない。
いずれにしても今日の料理から、カムイは『麵筋』を超特殊調理食材である『金色小麦』で作れば、【人生のフルコース】の一皿が決まることを確信した。
「お願いだカムイ! このスープの作り方を……………………あれ? カムイがいない」
「ホントだ、いつの間にいなくなったんだ?」
「俺たちが食うのに夢中になっている間にいなくなったみたいだな」
「まさしく神出鬼没、今度はいつ会えることやら」
「そんな~~~~~、まだ『逆さ折り』教わってないのに~~~~」
『思い立ったが吉日、その日以降は全て凶日』。かつての仲間『トリコ』が言ったように、カムイは【人生のフルコース】の一つを埋めるべく『ワープキッチン』を使い、急いで『アイランドシェル』へと帰っていた。
カムイには聞きたいことが沢山あった十傑メンバーだったが、カムイの料理を食べられたことで今回は良しとし納得した。
また、カムイの料理は本日の講義内容とも合致していたこともあり、生徒たちが味に関するレポートを作成するということでその場は解散となった。
なお生徒たちが解散しようとするところで、千俵姉妹が息を切らせながら到着。
しかしカムイが既にいないどころか、カムイの料理を食べた上にもう残っていないことを知り大激怒。
しかも生徒がスマホで撮ったスープからオーロラが出る画像を見て、意地でもカムイを選抜に出させるよう関連企業やスポンサーに働きかけるのであった。
というわけで、カムイの『センチュリースープ』回でした。
『センチュリースープ』はトリコのフルコースと被ると思いましたが、作る人によって食材や味が異なるのであればOKとしました。
本日のグルメ食材
『ハム貝』『コンソメマグマ』『パズルプランクトン』『エアアクア』『七味酒』『エメラルドワイン』『ペア』『金色小麦』