神域の料理人が往く食戟のソーマ   作:あさやん&あさやん

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今話はカムイの料理(描写)はありません。話の進行上、これからもそんな回がちょくちょく出てくると思いますが、ご了承願います。




第十七皿

 

 

 

 

「では続いて、田所くんの料理の審査に入る」

 

 

 

 カムイが四宮のために料理を作るというハプニングがあったものの、本来の主旨である田所の料理の試食審査が行われる。

 

 田所&幸平が作ったのは【虹のテリーヌ】。七種類の食材をそれぞれパテにして七層に分け、スダチとハーブの二色ソースを添えた料理である。

 

 四宮が田所を不合格にした課題料理は【九種の野菜のテリーヌ】だっただけに、これには卒業生たちも面を食らってしまう。

 

 

「ほう、俺のルセット。【九種の野菜のテリーヌ】に真っ向から挑んでくるか……………………良い度胸だな」

 

「そ、そんな、私はただ……………………『私の料理』を皆さんに見てもらいたくて……………………」

 

 田所としては四宮のルセットにケチをつける気は毛頭無いのだろうが、四宮から見れば自分の料理に真っ向勝負を仕掛けれられた思いであり不敵に笑う。

 

 

「……………………オールスパイス」

 

「あ、うん。凄いねカムイくん、食べないでも分かるなんて!」

 

『オールスパイス』。フトモモ科の植物の果実から作られる香辛料で、シナモン・ナツメグ・クローブの香りを併せ持つ香辛料である。

 主にジャマイカが原産で、料理やお菓子作りに幅広く使用されている。

 

 

「ふぅん、鶏レバーのパテの臭み抜きに使ったみたいね」

 

「は、はい。でも、それだけじゃなくて……………………先輩たちは今日、たくさんの料理を食べていますよね? オールスパイスには消化促進の作用もありますから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「少しでも、お腹に優しい料理を作りたいと思って/////////////////////」

 

 

 

 

 田所の言葉に四宮をはじめとする卒業生たちが驚く。田所の言う通り、卒業生たちは生徒たちが出した大量の料理を試食していた。

 たとえ一口ずつであったとしても、何十人という生徒が作れば胃腸には相当な負担となる。

 

「うっ、うっ、うぅぅぅぅぅ! やっぱり恵ちゃんは最高ですぅ!!」

 

「ああ、ボクたちの目は正しかったヨウダネ!!」

 

 田所に個人的な感情を抱いている乾とドナートは別として、田所の心遣いには他の審査員も心を動かされていた。

 勝負の最中、しかも自分の退学が懸かっている中でそこまで食べる者のことを気遣えるのだから無理はないだろう。

 

 

「美味しい〜〜〜♪ スダチの甘酸っぱいソースとシソを中心にしたグリーンハーブソースの清涼感がテリーヌによく合いますぅ♪」

 

「ん。ジャガイモ・ズッキーニ・ニンジンなどで七層のパテを作り、各野菜が活かされるようどれも丁寧な仕事をしている」

 

「パテが7つもあるカラ、2種類のソースと合わせて14種類モノ組み合わせを楽しめマース♪」

 

「四宮が課題に出した【九種の野菜のテリーヌ】は新鮮な野菜の活きた美味さを味わう料理だったが、この料理は保存食特有の熟した味を楽しむ料理。

 同じ野菜のテリーヌでありながら、『新鮮なる美味』と『熟成による旨味』という全く異なる切り口で野菜にアプローチしている」

 

 卒業生たちは田所の【虹のテリーヌ】を美味しそうに食べ、それを見た田所は自分の味が卒業生たちに認められたことに涙ぐむ。

 

 

「心に染み渡る味、恵ちゃんの優しさが伝わってくるようです♪」

 

「ああ、四宮サンが『野菜料理(レギュム)の魔術師』だとスレバ、恵チャンは野菜の恵みをささやかに与えてクレル……………………『野菜料理(レギュム)のコロポックル』」

 

「いいえ、違います! 恵ちゃんは私に幸せを運んでくれる……………………『野菜料理(レギュム)の座敷童子』です!」

 

「いや、或いは雪深き土地から野菜の恵みを届けにやってきた……………………『野菜料理(レギュム)の雪ん子』!」

 

 

「何で妖怪系ばっかりなの?」

 

 

 何故か味ではなく全く関係ない部分で審査員たちが言い合いを始めるという珍事が発生、予想外の光景に田所は呆気に取られてしまう。

 

 

「…………………………………………」

 

「え、えっと、どうかな、カムイくん。私の料理、ちゃんと味を感じる?」

 

 

(食材に選ばれたことで、旨味は微弱だが活性化している。だが……………………)

 

 気を持ち直して涙を拭いつつ、田所はそのまま黙々と食べているカムイに感想を求めた。

 卒業生たちよりも格上、【神域の料理人】に自分の味を認められるかどうかは、ある意味で今までのどの試験よりも緊張する思いだろう。

 

「未熟」

 

「え?」

 

 ドキドキしながら感想を待つ田所に告げられたのは、『美味しい』でも『不味い』でもない。

 また先日の授業のように『薄すぎる』というわけでもない……………………ただ『未熟』の一言だった。

 

 

「あの、それってどういう「言葉通りの意味だ、田所」っ、四宮シェフ!?」

 

「お前はまだ『学生』、経験が圧倒的に浅い。だから俺たちのような高いレベルでの調理が出来ていない。

 『火入れの甘さ』『パテの繋ぎの拙さ』、その他にもまだある。お前の料理の味のブレ具合は、食べていない俺でも分かるぐらいだ」

 

「「「「…………………………………」」」」

 

「っ、そ、そんな……………………!」

 

 カムイの言葉の意味を探ろうとすると、四宮が代わりに説明してくれる。

 

 

 『未熟』、まさにその一言に全てが集約されていた。料理に限らず、『技術』とは『経験の積み重ね』に他ならない。

 

 『プロ』の四宮と『学生』の田所では経験において大きく差がある。それが結果的に味へと現れており、料理の完成度を落としていることを、田所は審査員が無言になっている様子から理解した。

 

 

 

 

「それでは評決に移る。手元に持っているコイン、これが票となる。どちらの料理が上だったか、双方の前にある皿の上に置いてくれ。

 なお、今回は純粋な『味』だけではなく『田所くんの可能性』を加味した上での判断をするように」

 

 両者の料理の試食審査が終わり、いよいよ評決に入る。審査員である卒業生たちが順番にコインを置いていく……………………その結果、カムイ以外の票はこのように分かれた。

 

 

水原:四宮

乾:田所

ドナート:田所

関守:四宮

 

 

 意外にも現在2:2というイーブンの状況、『田所の可能性』という点を考慮したとはいえ、この結果は十分な快挙と言える。(2名ほど個人的感情が入った可能性が高いが)

 

 いずれにしても、勝負の行方はカムイの票に委ねられた。部屋にいる全員が固唾を呑んで見守る中、カムイが歩き出す。

 

 

 

「………………………………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベキッ! トンッ、トンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「ッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!」」」」」

 

 

 

 

 カムイの取った行動に全員が驚愕する。なんとカムイは…………………………コインを二つに割って、双方の皿の上に置いたのだ!

 

 

「……………………カムイ、これはどういう意味だ?」

 

「可能性」

 

 全員がカムイの意図を計りかねる中で堂島が代表して尋ねると、カムイはぶっきらぼうに一言だけ答える。次いで四宮・田所の二人にも告げた。

 

 

「もっと『食材』と真摯に向き合え。そうすれば『食材の声』が、聞こえるはずだ」

 

「「!!!!!!!!!!!!!!!!!」」

 

 

 そう言うとカムイは部屋から出ていった。部屋に残されたメンバーはどうしたものかと戸惑っているが、四宮と田所はカムイの言ったことを反芻している。

 

 

「『食材』と真摯に向き合え、か。フッ、アイツらしいな」

 

「食材の、声」

 

 

「ふっ、なるほど。【神域の料理人】から見れば、二人の料理の『味』に大差は無い。また『可能性』という点においても、四宮と田所くんは『互角』と判断したわけか」

 

「ふふ♪ 『未熟』ということは、裏を返せば『まだまだ美味しくなる余地がある』とも捉えられますからね」

 

「つまり四宮もまだまだ『未熟』ということ「おいコラ」」

 

「この勝負は『田所くんの可能性を見る』勝負であったが……………………」

 

「彼ハ四宮さんの『可能性』モ見ていたということデスネ♪」

 

 

「つーーか、硬貨を素手で真っ二つに割るってどんな力してんだ?」

 

 カムイの言葉でもはやこの勝負の答えは出ているようなものだった。しかし念のため、堂島は四宮にもダメ押しで確認をする。

 

 

「田所くんの料理は『拙くも心に響く』、そんな料理であった。また、田所くんは退学が懸かったこの状況であっても、食べる者を見ようとした。

 そして、そんな田所くんの可能性をカムイは認めた。どうだ、四宮。これでもまだ田所くんは料理人として『不合格』だと思うか?」

 

「……………………ふぅ~~~~、いいですよ。曲がりなりにも俺の『看板料理 スペシャリテ』と競ったわけですからね。田所の『不合格』は取り消します」

 

「っ、ホ、ホントですか「ただし!」 っ!」

 

 

「今回お前がミスを犯したという事実は変わらない。前にも言ったが、俺たち料理人にとって『ミス』はそのまま『人の命』に関わる場合もある……………………そのことを決して忘れるな」

 

「っ、は、はい!!!」

 

「うわぁ、素直じゃないですねアバババババババババ!!!!!!」

 

 四宮なりに『プロ』として注意喚起したつもりなのだが、そのことを乾に揶揄われて毎度の如くアイアンクローをお見舞いする。

 二人のやり取りに田所が呆気に取られていると、今度は堂島が近づいてくる。

 

 

「四宮の言う通りだ。キミもいずれ『プロ』になるのであれば、現場でのミスは【絶対に許されない】と言うことを肝に命じておいてくれ」

 

「は、はい!」

 

「そして、キミの料理からは『ホスピタリティ』。食べる者を真にもてなそうという思いが見て取れた。

 ここにある票は、キミの『未来』への投資でもある。その強力な武器を遠月で磨いていってくれ」

 

「っ~~~、はい! 堂島シェフ、四宮シェフ、そして皆さん……………………本当に、ありがとうございました!!!」

 

 田所の料理は『味』において四宮には遠く及ばないまでも、『料理人としての可能性』は十分示したということで『不合格』は取り消しとなった。

 

 また四宮もカムイの本領が発揮された料理を食べて、自分にはまだまだ成長の余地……………………『可能性』があるということに更なる情熱を燃やす。

 

 しかし二人がそんな己の『可能性』を再認識している傍らで……………………幸平は拳を固く握りしめていた。

 

 

(っ〜〜〜〜〜! 勝てなかった、四宮先輩の『看板料理 スペシャリテ』に!! カムイは四宮先輩の料理を上回る品を作ったってのに……………………ちきしょう!!!)

 

 

 この場でただ一人、幸平だけが本気で四宮に『味』においても勝つつもりだった。しかし結果は、ハンデを貰っての引き分け。

 

 しかもカムイは四宮自身が、『自分よりも上だ』とハッキリ認めるほどの料理を作っていた。その事実に幸平は、心の底から悔しさを感じる。

 

 その後、田所と幸平は部屋へと戻るも当然ながら心配していた極星寮の仲間たちに捕まり事情を説明。皆で田所の無事を喜び合い、徹夜で騒ぎまくった。

 

 

 

 

 一方のカムイはというと、部屋を出ていってからというもの、月を眺めながら四宮と田所の料理について考えを巡らせていた。

 

 

(田所恵、幸平とはまた違う才能を持っていたのは確定だ。もしちゃんとした調理技術を会得することが出来れば……………………そして四宮小次郎、彼が作った料理は実に興味深い)

 

 

 二人の料理を食べて新しい発見をしたカムイは『食運』は二人の料理を食べさせるために、自分をこの場所へ導いたと理解した。

 さらにカムイは四宮の料理から、【人生のフルコース】のヒントを得る。

 

(『米』を野菜と捉える料理。季節ごとに、土地や国ごとに姿を変える料理か……………………俺のフルコースに使えるかもしれない)

 

 自分には無かった発想の料理を味わい、カムイはフルコースの皿が決まるのも近いと確信にも似た予感を得るのだった。

 

 

 

 そうして田所&幸平と四宮の【食戟】から次の日、『食運』が導いた理由も分かったということで、カムイは遠月リゾートを去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わけではなく、何故かまだ合宿に参加していた。

 

 

『この世界の料理人の味を知る』

『可能性を秘めた料理人との邂逅』

『フルコースの手がかりを掴む』

 

 

 既に目的は果たしているように思えるのだが、カムイはここから去ろうとは思わなかったのだ。

 そのため、カムイは『食運』がまだ自分に何かを伝えたいことがあると考え、もうしばらく留まることにした。

 

 そして昨日と同じく試験の課題を全て最高評価で合格。そしてその夜、生徒たちは大宴会場へと集められる。

 

 だがそのタイミングで仙座衛門と宗衛、さらにはレオノーラとベルタ&シーラがカムイを尋ねてやって来た。

 

 

「カムイよ、よくぞこの合宿に参加してくれた」

「カムイくん、キミに大事な話がある」

 

「カムイくん! 探しましタヨ、いつの間にかいなくなっていたので心配シマシタ!」

「カムイ兄さま、見つけた~~~!」

「カムイ兄さま、また料理作って!」

 

 

 遠月の重鎮たちが一斉にやってきたことで合宿場は騒然となる。

 

 生徒たちも何事かとやってきて現場は混乱。ただカムイは何故ベルタとシーラから『兄』呼ばわりされているかで混乱していた。

 

「父上、まずは私から」

 

「うむ、仕方ないな」

 

 だがそんな慌しい中でも周りを気にすることが無い仙座衛門と宗衛、まずは宗衛の方がカムイの前に出て話を切り出そうとする。

 

 

「こうしてちゃんと話すのは初めてだな。私は薙切宗衛、レオノーラの夫だ。先日は話も聞かずに非礼を働いたことをお詫びする……………………本当にすまなかった」

 

「別に、気にしていない」

 

「そうか……………………ありがとう。それで相談なんだが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カムイくん、私の息子にならないか?」

 

 

「「「「ッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!」」」」

 

 

 宗衛の言葉に周りの者たちは一斉に驚く。国内屈指の財閥である【遠月グループ】、その本家である薙切家への養子縁組の話がいきなり目の前で勃発したのだ。

 

 

「勝手ながらキミのことは調べさせてもらったよ。驚いたことにキミには戸籍はおろか国籍すら見つからなかった。

 察するにキミは『戦災孤児』なんじゃないかな? キミさえ良ければ我が家に「待て宗衛!」っ、どうされました父上」

 

「『どうされた』も何も無い。そんな話、儂は一度も聞いてはおらんぞ! カムイを『薙切インターナショナル』に迎え入れるという話ではなかったのか!?」

 

「ええ、ですから私とレオノーラの養子になれば『家族』として『薙切インターナショナル』を盛り立てることが出来ましょう。

 無論レオノーラもこの件には賛成していますし、天涯孤独な彼にも『家族』が出来る。まさに一石二鳥です」

 

「うぬぅぅぅぅぅぅ、小癪なマネを……………………父である儂をたばかるとはっ!」

 

「私は『薙切インターナショナル』における外部との契約・交渉・折衝関係を一手に任されています。これぐらいの搦め手は造作もありません」

 

 

 あまりにも寝耳に水な話であったため仙座衛門が宗衛に仔細を問いただすと、宗衛は悪びれも無く答える。

 

 『部下』ではなく『家族』として迎え入れられれば、よりカムイの恩恵を受けられることは間違いないだろう。

 また、仙座衛門が同じようにカムイを『養子』に迎えようとしても、生い先短い自分ではカムイの行く末を最後まで見届けられないかもしれない。

 

 よって『養子縁組』という点では、家族全員が『薙切インターナショナル』へ在籍している宗衛の方が有利と言える。

 

「フフフ♪ ナッさんとは『息子が欲しい』という話を何度かしていマシタガ、ついに念願が叶いマシタ♪ カムイくん、今日から私のことは『お母さん』と読んでクダサイ♪」

 

「カムイ兄さま、ベルタをいっぱい可愛がってね♪」

「シーラのことも可愛がって~~~~♪」

 

 驚天動地のような事態にカムイはまったく付いて行けず、思考がフリーズしている。

 しかしそれでも話はどんどんと進んでいき、いつの間にか自分には妹だけではなく『父と母』まで出来てしまった。

 

 

(いったい、何が起こっているんだ?)

 

 

 どんな生き方をしたら自分に突如、親と妹が出来るのだろうか。

 

 カムイでなくても『どうしてこうなったのか?』と問いたくなるだろう。

 ただ周りの者たち。特に男子生徒は愛くるしい女の子に甘えられているカムイを見て、怒りと憎しみを滾らせている。

 

 カムイも『養子縁組』については全く理解できていないため、とりあえず何とか理解できた自分へ抱きついている二人の姉妹の頭を適当に撫でて状況を整理しようとする。

 

 

 

 

「あら? お母様にお父様、それにベルタとシーラまで。みんな揃ってどうなさったのです?」

 

 息子が出来た(と思い込んでいる)ことに喜ぶレオノーラと頭を撫でられて喜んでいるベルタとシーラにカムイが囲まれていると、人込みを掻き分けて銀髪ショートヘアの女の子が出てきた。

 

 彼女は『薙切アリス』、宗衛とレオノーラの娘でえりなとは従妹同士にあたる。

 

 

「おやアリス、元気にしていマシタカ?」

 

「ええ、モチロン♪ お母様たちはいつ日本に来ましたの?」

 

「昨晩デスヨ。本当はもっと早く来たかったんデスケド、悪天候でこちらへの到着が遅れてしまったのデス。おかげでナッさんたちを待たせてしまいマシタ」

 

 本来なら仙座衛門と宗衛の二人だけで来ることになっていたのだが、レオノーラたちもカムイに会いたがっていたため、妻と娘に甘い宗衛は急遽三人も呼び寄せた。

 

(受けるかどうかは別として)カムイを養子にするのならレオノーラも立ち会うのは当然の判断であったが、悪天候に見舞われて飛行機の到着が遅延。

 

 仙座衛門たちもレオノーラの到着を待ってから向かう予定だったため、こうして遠月リゾートへの到着が遅れてしまったのだ。

 

 

「まぁ、それは大変でしたのね。それで、どうして『遠月リゾート』へいらしたのです?」

 

「フフフ♪ 喜んでクダサイ、アリス。実はカムイくんがウチの息子になるんデスヨ♪」

 

「なっ!?」

 

 実の母親からいきなりの『養子縁組』発言、普段はゴーイング・マイウェイ・マイペースなアリスもこれには驚きを隠せない。

 

 実の息子が出来たのならともかく、どこの誰とも知らない同年代の男性を養子にすると言われれば当然の反応である。

 ましてや思春期真っ只中の女子高生ならば嫌悪感を抱いてもおかしくはない。

 

 

「お父様、それは本当なのですか!?」

 

「ああ、まだ彼からの返事は貰えていないがな。だが今の彼には身寄りが無い、そこで彼の後見人として我々が『家族』になろうという話になったんだ。

 それに『家族』になれば、彼の知識と技術の恩恵を『薙切インターナショナル』は最大限に受けられる。皆が幸せになれる、最高の話だと思わないか?」

 

 どう見ても前半建前、後半本音な言い分ではある。しかし世の中には未だに政略結婚に近いことをしている金持ちや財閥があるのだから、宗衛の言い分も財閥の御曹司であれば珍しくない考えなのだろう。

 

 

「お母様、本気なのですか!? 私に何の相談も無く、カムイくんを養子に迎えるなんて……………………!」

 

「Oh、勝手に決めてゴメンナサイ。でもカムイくんは無口ではアリマスガ、とっても良い子デスヨ? アリスともきっと仲良くなれると思いマス」

 

「っ~~~~~~~!」

 

 法律上は子どもの同意が無くても親の同意だけで『養子縁組』は可能だ。国籍や戸籍についても『遠月』の力があれば取得は可能だろう。

 

 ましてや【神域の料理人】を囲い込むことが出来るのであれば、政府は喜んでカムイのために戸籍を用意するに違いない。

 

 ただそれはあくまで手続き上の話、感情的や道徳的な観点から言えば実の子どもに相談をして然るべきである。それはアリスも同じことで、普段のワガママっぷりがこのタイミングで弾けた!

 

 

「認めない……………………カムイくん、私と【食戟】をなさい! アナタが勝ったら我が家の一員として認めます。

 けれど私が勝ったらアナタは私の『付き人』になりなさい!! そしてアナタの持つ知識と技術の全てを『薙切インターナショナル』に捧げるのよ!!!」

 

 アリスは『ビシッ!』という効果音が聞こえてきそうなぐらいに勢いよくカムイへ指を差す。しかし当のカムイは全くと言っていいほど興味を示していない。

 

 そしてそんなカムイのことなど構わず、アリスは話を続けようとする。

 

 

「そうと決まれば早速、「待ちなさい、アリス」っ、お、お爺様!?」

 

「【食戟】は双方の合意があって初めて成り立つモノ。ましてや今は『宿泊研修』の真っ最中、カムイとの【食戟】は『宿泊研修』が終わってからにしなさい」

 

「っ~~~~~! カムイくん、宿泊研修が終わったら私と【食戟】よ!! 逃げたら絶対に許さないんだから!!!」

 

 ここに来てようやくまともな意見が仙座衛門から出され、アリスは『憤懣やる方無い』と言わんばかりにプンスカ怒りながら去っていく。

 

 

 

「堂島よ、カムイのここまでの成績はどうなっている」

 

「はい。いずれの試験でも最高の評価を獲得、途中参加にも関わらず全生徒の中でダントツのトップです」

 

「ふむ、流石だな。であれば、これ以上の試験はカムイにとって時間の無駄でしかない。次の試験は何だ?」

 

「はい、ちょうど今から生徒たちにその話をするところでした。次の試験は【ホテル関係者とその家族のために200食提供すること】。

 テーマは『卵』がメインとなる料理、提供はビュッフェ形式。試験開始は明朝の6時です」

 

 

「「「「「ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!」」」」」

 

 

 堂島の言葉にほとんどの生徒の背筋が凍る。現在、夜の10時過ぎ……………………つまり約8時間後に200食分の料理を提供しなければならないのだ。

 

 しかも既定の料理を作る夕食時とは違い、ホテルのビュッフェ形式ということは料理としてのクオリティと新鮮な驚きも求められる。

 そんな料理を200食分作れと言うのだから、生徒たちが戦々恐々となるのも無理はない。

 

 

「よし、ではカムイには最低でも500食以上を提供させよ。それをもってカムイの宿泊研修は終了だ」

 

「承知しました、ですが恐らく問題ないでしょう。既にカムイは夕食時に1000食近い数を提供しています」

 

「なに、もはや形式上の試験。本当なら1000食でも足りないぐらいだ」

 

「なるほど、確かに……………………諸君、聞いての通りだ。試験開始は明朝6時、それまでの時間は好きに使ってくれ。試作については各厨房を開放している」

 

 カムイの処遇については明朝の試験を終えてから決めると言うことで仙座衛門たちは合意し、堂島と一緒にホールを後にする。

 

 それから数拍の間を置いて、生徒たちは一斉に駆け出した!

 

 試験開始までは8時間弱、『200食を達成できる料理』の試作と『試験を乗り越えられるだけの体力の確保』の休息を考えればゆっくりなどしていられない。

 

 生徒たちは我先にと中央ホールを出て、大ホールの厨房へと向かっていく。

 

 

 

 ただカムイだけは未だに『養子縁組』やら『妹モドキ』やら『食戟』やらで頭が大混乱。

 

 しかも本人のことなのに本人の意思が全く介入していないという事態のため、その場から一歩も動けないでいた。

 

 

 






全く関係の無いことですが………………………………ベルタ&シーラちゃんたちから『お兄ちゃん♪』と呼ばれたい!!! と、書いているうちに思ってしまいましたwww

それでは皆さん、次回で♪
感想・高評価もいただけると作者が喜び、励みになります!

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