新章開始です! なお、この章では『秋の選抜戦』がキッカケとなり、カムイのフルコースがいくつか決まる予定です。
第十九皿
地獄の宿泊研修を終えて夏が過ぎ、【秋の選抜戦】が近くなってきた頃、カムイは新しい料理に挑戦していた。
(下調理は終わった。後はこのまま『スチコン』に入れて暫く放置、その間にソース作り)
最新鋭の調理機器を使い、今までにない料理を作れるようになったカムイはすっかり最新機器による調理にハマっていた。
それはもう何日も遠月学園へと入り浸るほどで、『食材の声』を聞きながら料理を作りまくっている。
(ソースはアルコールを飛ばした『サマーウィスキー』と『酒ヤシの実』で作った甘めのソースがいい。
フォンは『出汁ペリカン』から出る出汁をベースにし、生のコーヒー豆を軽く焙煎してから水出ししたモノで微香をつける)
調理中の料理に合うソースを食材と対話しながら決めていくカムイ。その手つきは実に手慣れたもので、一切滞ることが無い。
「それでね、兄さん。今度の【選抜戦】、私とリョウくんも出場することになったの! だから私の試合の時は絶対に応援に来てね♪」
「……………………考えておく」
「お嬢、予選課題の料理の試作をしたいんですけど」
「なに言ってるのリョウくん、試作するよりも兄さんの料理を食べた方がよっぽどタメになるわよ!
あっ、それでね兄さん。予選課題の料理が『カレー』になったのよ、それでねそれでね♪」
しかしアリスはテーブルに頬杖をしながらカムイに話しかけ、その隣ではアリスの付き人である『黒木場リョウ』が気だるげな顔で物申している。
【食戟】を終えてからというもの、カムイはアリスの調理棟で最新機器を使わせてもらっているのだが、カムイが料理する時はアリスが必ず一緒にいる。
本当なら一人で静かに料理に専念したいところなのだが、ここはアリスの調理棟であり器材もアリスの物。そのためカムイとしてはアリスを無下に扱うことは出来ない。
幸いにもこうして話しかけてくるだけで調理の邪魔はしてこないし、作った料理を食べさせれば大人しくなるので、カムイは必要経費と割り切っている。
「ところで兄さん、今日はどんな料理「見つけたわ! やっぱりここにいたのね!!」もうっ! せっかく兄さんと二人きりだったのに、お邪魔虫が来ちゃったわ!」
「お嬢、俺もいるんですけど」
自分で無理やり連れてきたのに黒木場のことを勝手にフェードアウトするアリス。
カムイにどんな料理を作ろうとしているのか尋ねようとすると、勢いよくドアが開いてえりなが現れた! なお、傍らには当然ながら秘書である新戸もいる。
「GPSに反応があったから来てみれば……………………カムイくん! 学園にいるなら『必ず私に連絡して』って言ったわよね!? せっかく携帯を渡したんだから、ちゃんと使ってよ!!」
カムイの面倒はえりなが見ることになっているのだが、実際にカムイがえりなに連絡をしたのは片手で数えられる程度。えりなとしては自分が必要とされていないように思えて不満なのだ。
「? アリスが、『自分から連絡しておく』と、言っていた」
「なっ!?」
「あ~~~、確かに言ってましたね」
カムイが言っていることは事実である。アリスの調理棟に篭ることになるので、機器の使用許可を取ったカムイはえりなに連絡しようとした。
しかしそこでアリスが『えりなへの連絡が私がしておくわ♪』と言ったため、カムイ自身は連絡しなかったのである。
「「「…………………………………………」」」
「テヘッ♪ 忘れちゃった♪」
「アリスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!」
リョウ・えりな・新戸の視線がアリスに注がれると、アリスは悪戯がバレたかのように舌を出して誤魔化そうとする。
明らかにわざと連絡しなかったことが分かり、えりなは怒りの矛先をアリスへと向けた。
「ウソおっしゃい! 絶対にわざと連絡しなかったわね!」
「なによう! ここは私の調理棟で、アレは私の器材よ!! なら私が許可すればいいじゃない!!」
「そういう問題じゃないでしょう! カムイくんの面倒は私が見るようにとお爺様から言われているんだから!!」
「私だって兄さんの面倒を見るように言われているわ、【食戟】でそう決まったもの!」
「それは『私の手が離せない場合』に限っての話だったはずよ!!」
えりなとアリスは『カムイの面倒をどちらが優先的に見るか』ということで揉め始めた。
キャットファイトと言えなくも無いが、『恋の味』を知らない二人の言い争いは、どちらかと言うと『気に入った玩具を取り合う子ども』に近い。
「ハァ、今は調理中だと言うのに、毎度騒がしくしてすまないな」
「別に、気にしていない」
「そう言ってもらえると助かる……………………それにしても良い香りだな。今日はどんな料理を作っているんだ?」
「もうすぐ出来る」
主とは言え、他人が調理している隣で騒ぐのは料理人として見過ごすことが出来ない新戸は、主に代わりカムイへ謝る。
だがカムイは驚異的な集中力で、『食材の声』に耳を傾けながら調理を行なっている。
謂わば、【目の前の料理しか認識していない世界】で料理を作っているのだ。
そのため、たとえ隣で激しい銃撃戦をされたとしても、手元が狂ったり集中力を欠いたりすることは無いので、気にした様子は無かった。つくづく苦労人気質な新戸である。
その後、全員でカムイの料理を食べることでどうにか『えりな&アリス火山』の噴火を止めることに成功すると、そのタイミングで『スチコン』の調理が完了。
カムイが中から料理を取り出して『金の包丁』で切り分ける。最後に作っていた特製ソースをかけて料理は完成した。
「これは、『蓮根』ね。中の空洞に色々と詰めて輪切りにしたみたいね」
「穴ごとに別々の詰め物をしているわね。上にかけられている茶褐色のソースも蓮根のクリーム色と合わさって、コントラストが綺麗だわ♪」
「でも、どうして一人につき2枚ずつ切り分けているのでしょうか?」
「見た目は同じ、中の詰め物も同じみたいっスね」
先ほどまで言い争っていたアリスとえりなだが、カムイの料理が完成するとピタリと止める。喧嘩していても何だかんだで仲が良いのだろう。
また、カムイもカムイで何も言わずに全員へ作った料理を切り分けているところを見ると、この状況に順応してきたのかもしれない。
「この世の全ての食材に、感謝を込めて、『いただきます』」
「「「「いただきます」」」」
カムイから『食前の挨拶をしないと料理は食べさせない』と言われているため、カムイが合掌して一礼すると他の四人も同様の動作を行ってから料理を食べ始める。
「「「「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」
四人はカムイの料理を食べた瞬間、今まで味わったことの無い衝撃を受ける!! しかし、その感想は全く別々だった!!!
「っ~~~~! 何コレ!? 口の中に濃厚な旨味が広がった瞬間、淡雪のように溶けて無くなっちゃった!」
「なんて濃厚かつ軽い味わい! 食感はムースに近いけど、それよりもずっと軽いわ! こんな軽やかな食感は初めて!!!」
「あ、あまりの歯ごたえに最初はビックリしたが、慣れると噛むたびに脳へ快感が走る! まるで顎や歯が喜んでいるようだ!」
「蓮根のザクザクとした心地良い食感だけじゃなく、プリプリとした『鹿のアキレス腱』・ネッチリとした弾力の『カラスミ』・ブチブチとした噛みごたえの『金華ハム』・ムチムチした弾力の『馬肉』。色んな食材の歯ごたえを楽しめる料理ってわけか」
「「「「え?」」」」
えりなとアリスは『軽やかな食感』と言うが、新戸と黒木場は『歯ごたえのある食感』と言う。同じ料理を食べているのに真逆の感想が出てきたことに四人は顔を見合わせてしまった。
「『噛むたびに快感』って……………………緋沙子、この料理は噛む必要が無いくらいに柔らかいわよ?」
「い、いえ、えりな様。恐れながら、『ムースよりも柔らかい』というのはどういうことでしょうか?」
「リョウくん! 『色んな食感』ってどういうことよ!? この口に入れた瞬間に消えていく新食感が分からないの!!」
「お嬢こそ、『雪のように溶ける』って何のことっすか?」
互いのパートナーが正反対のことを言っていて、傍から見れば何を言っているのか全く分からないだろう。
だが三人の話を聞いていくうちに、えりなが『あること』に気づいた。
「っ、待って! もしかしたら!!」
周りの感想を聞いてえりなは残っている片方の料理を口に運ぶ。
ザクッッッ!!! シャクシャクシャク……………………ゴクン。
「え、えりな様!? 大丈夫ですか、もの凄い音が出ましたけど!?」
「今の音、まさかっ!?」
「お嬢、気を付けて噛んでくださいね」
あまりにも大きな音が鳴り、えりなの顎が外れたのかと新戸は心配してしまう。アリスもえりなの出した咀嚼音を聞いて何かに気づき、同じようにもう一つの方を食べる。
「っ、や、やっぱり! この二つの料理、『同じ食材』を使って真逆の『食感』を出しているんだわ!」
「っ~~~~! ホント、さっき私が食べたモノとは全然違う! アッチは濃厚な味が一瞬で無くなったけど、コッチは噛むごとに色んな食感と味が滲み出てくるわ!」
「た、確かに! こっちの方は『食感』と呼べるものが全く無い。口の中に入れた瞬間に溶けて消えていく!」
「雪って言うか、『霞』って感じだな。一瞬で消えていく霧みたいだ」
えりなとアリスが食べるのを見て、新戸と黒木場も残っているもう一つの料理を食べる。ここで全員が『何故カムイが別々に取り分けたのか』、その理由を理解した。
「使っている食材は『蓮根』『鹿のアキレス腱』『ボッタルガトンノ(マグロのカラスミ)』『金華ハム』『馬肉』『烏骨鶏の卵』ッスね」
「ええ。それらを別々に調理し、片方はムースよりも軽やかに。もう片方は食材の『食感』を最大限活かした料理に仕上げた。
それぞれの食材を同じ顎の力で嚙みきれるよう『破断強度』を調整してね」
「でも、この軽やかさはいったい……………………それにそれぞれの食材の『破断強度』を均一にするなんて」
「たぶん『凍結粉砕機』ね。蓮根を瞬間凍結してから攪拌させることで、きめ細かな状態にしたのよ。ソレを柔らかさの基準にして他の食材を調理していったんだわ」
えりなたちの言う通り、カムイは食材を統一した上で人が『快感』と感じるギリギリのレベルまで片方は柔らかく、片方は固く仕上げたのだ。
グルメ食材である『白雪レンコン』を、柔らかい方は凍結粉砕機に掛けムース状に。『鹿のアキレス腱』は油に漬け込み、揚げながらスープを加える『油泡 ユウバオ』という技法でトロトロにした。
『マグロのカラスミ』は裏ごししてネットリとした状態で使い、『金華ハム』は『ハニードラゴン』のハチミツで蒸し、『馬肉』はミンチにして柔らかく仕上げる。
そして『烏骨鶏の卵』はトロトロのスクランブルエッグ(レア)の状態に仕上げることで、食材の柔らかさを均一にしたら、蓮根の形をした型に入れて『スチコン』で蒸し固めたのだ。
一方の固い方は『白雪レンコン』をそのまま蒸し、『鹿のアキレス腱』は茹でて本来の弾力を強調。『マグロのカラスミ』は干して使い、『金華ハム』と『馬肉』は千切りにした。
そして『烏骨鶏の卵』は『皮蛋 ピータン』や『鹹蛋 シェンタン』にして食材の『食感』を活かしつつ、『破断強度』を均一にして『白雪レンコン』の穴に詰めたのだ。
「凄い! それぞれが素晴らしい料理でもあるのだけれど、二つを食べ比べることで初めて得られる『美味しさ』があるわ!!」
「上にかけられているソース! 砂糖を使わずフルーツを使ったお酒を使っているからか、奥深い甘さとコクで双方の料理に更なる魅力を付け加えているわ!
それに軽く火を通したコーヒー豆で作った水出しコーヒーで、ほのかに付いている香りもステキ♪」
「柔らかい方は濃厚な旨味と上品な甘さが混ざり溶け合い、無くなっていく! 儚げな味わいが胸を切なくさせる!!」
「固い方はソースの甘さが加わることで、より歯ごたえが際立ってくる。これだけの食感の対比を一皿で表現しやがるとは……………………!」
同じ食材を使いながらも、全く異なる食感の料理は『噛む楽しさ』だけではなく、上にかけられたソースの甘さによってより鮮明に食感の違いを際立たせていた。
『硬』と『軟』。二つの相反する食感は、料理の味そのものをブーストし単独で味わうよりも一層の満足感を食す者にもたらす!
「凄いわカムイくん! もう最新機器を使いこなしているばかりか、こんな独創的な料理まで作れるようになっているなんて!」
「フフン♪ 凄いでしょう? 兄さんったら私の説明を聞いて、すぐに機械の使い方を覚えちゃうんだから♪」
「何故アリスお嬢が威張るんだ?」
「お嬢だから」
カムイの料理を堪能した四人は改めて料理における『食感』の重要性を認識し、えりなは全く新しい料理に出会えて興奮。そこに何故かアリスが自分のことのようにマウントを取ってくる。
思うことはそれぞれ異なれど、カムイの料理を食べて今度は『食感』を如何に自分の料理に活かすかを考えだす。
ところが、新戸が何かを思い出したかのようにえりなへ尋ねた。
「えりな様。例の品評会についてはよろしいのですか、もう時間が迫ってきておりますが?」
「え……………………っ、そうだったわ! カムイくん、その料理を持って一緒に来てくれる!?」
新戸に言われてカムイを探していた理由を思い出したえりなは、新戸にカムイが作った料理を包ませ自身はカムイの手を引いてどこかへ連れていこうとする。
「ちょっと、えりな! 私の兄さんをどこへ連れていくつもりよ!」
「誰が『アナタの』ですか! カムイくんにはこれから『第零席』として、十傑の『定例品評会』に出てもらうのよ」
「『定例品評会』?」
「ああ、それはな」
カムイを連れていこうとするえりなをアリスが止めようとするとまたもや口論に発展。カムイも初めて聞く単語に疑問符を浮かべると言い争っている主に代わり、新戸が説明してくれる。
『定例品評会』というのは遠月十傑がそれぞれ一品ずつ料理を作り、互いに審査を行うという十傑限定の恒例行事の一つだ。
『遠月学園のトップに君臨する十傑たる者、いかなる場合でも研鑽を怠ってはいけない』という仙佐衛門の指示により、互いに料理を食べ比べすることで、より一層の精進に励めということらしい。
「それで、えりなお嬢がカムイを呼びに来たってわけか」
「そういうことだ。まぁ、カムイの料理はコレで大丈夫だろう。何せここまで『食感』を突き詰めた料理は他に無いからな。後はカムイが一緒に来てくれるかどうかなんだが」
黒木場の質問に料理を詰め終わった新戸が答えると、今度は心配そうにカムイを見る。カムイの性格を考えれば、『品評会』に出席することはないだろう。
ここにいるメンバーは学園の中でも比較的カムイと話すことが多く、カムイの性格もある程度理解していた。
まずカムイは基本的に『料理』………正確に言うと『食材』と『調理技術』以外には興味を示さない。
時たま何かの気まぐれで授業に出てくることはあるが、大概は学園外にいて、なかなか捕まらない。
また仮に学園に来たとしても授業や専用の調理棟ではなく、アリスの調理棟で最新鋭の機器を使い料理を作っている。
そのため『第零席』とは呼ばれていても、他の十傑のように書類仕事などで忙殺されることはない。
カムイはあくまで【人生のフルコースを完成させる】ことが第一優先であり、それ以外のことに興味は無く自ら動くこともない。
ただこれについては総帥である仙座衛門が認めているため、カムイが十傑としての仕事をやらなかったと言って、何かペナルティがあるわけではない。
だから新戸もカムイが品評会に参加することは無いと思っていた。
「行く」
「「「「ッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!」」」」
予想外の返答に新戸や黒木場だけではなく、口論を白熱させていた二人も言い争いを止めるほど驚く!
しかしカムイの性格を考えればこの反応は妥当と言えるだろう、またそのことはカムイ自身が理解していた。
(『興味が湧いた』とまでは言わないが、面倒だとは思わなかった。『食運』が働いているのか?)
カムイにとって自分らしからぬ行動を取る時は、大抵『食運』が働いていると思っている。
今回の品評会も本来であれば『興味が無い』と言って断るところなのだが、そうしなかったということは『食運』が働いていると判断した。
そしてカムイは『食運』に逆らうことは絶対にせず、流れに身を任せることにしている。
言わば【人生のフルコース】が『行動目的』なら、【食運】はコンパス…………『行動指針』なのだ。
「っ、ありがとうカムイくん! 他の方々は全員集まっているわ、早速行きましょう♪」
「ちょっと待ちなさいよ! 兄さんが行くなら私も行く!」
「お生憎様、この品評会に参加できるのは『十傑』だけよ。【一般生徒】であるアリスは大人しくしていなさい」
「なっ、そんなの認めないわ! って、待ちなさいえりな!! あ~~~ん、待ってよ兄さ~~~~ん!!」
カムイが承諾すると、えりなはアリスの言うことなど気にも留めずにカムイの腕へしがみつき引っ張っていく。
えりなの強引な行動はアリスを置き去りにし、新戸も急いでえりなの後を追う。
アリスの声は完全に無視。新戸も『シェルダーバッグ』ごとカムイの背中を押して、三人はアリスの調理棟を後にした。
見事カムイをアリスから奪還したえりなは、そのままカムイを『月天の間』まで連れていった。
『月天の間』は十傑同士の食戟などでしか解放されないため、仮にアリスが追って来てもガードマンに阻まれて中に入ることは出来ないだろう。
えりなに引っ張られてくるカムイの姿を見た十傑は、意外な人物の来訪に驚く。そして品評会用の料理を作る前に、新戸が持ってきたカムイの料理を全員で実食することにした。
「凄い! 同じ食材でありながら調理法を変えることで、ここまで正反対の『食感』を作り出すなんて!」
「うめえええええええええええええええ! 柔らかい方を食べると固い方を食べたくなるし、固い方を食べるとまた柔らかい方を食べたくなる! こりゃあ止まらないぜ♪」
「なるほどな、『食感』ってのはここまで味に影響を及ぼすものなのか。勉強になるぜ」
「この柔らかい食感、モモの作るスイーツに使えるかも。固い食感もスイーツのアクセントに必要だしね」
「霧のように消えていく柔らかさと大地の如き堅牢な歯ごたえ、これらを同じ食材で両立させるとはな」
「柔らかい方だけでは物足りない、固い方だけでは食べづらい。両方を食べることにより、『食感』を通して脳に快感を与える料理なのね」
「片方は口の中で溶けていく柔らかさを楽しみ、もう片方で『噛む』楽しさを味わう。何とも食べてて楽しい料理だ♪」
「う~~~わ! 鹿のアキレス腱って調理にメチャクチャ手間が掛かるのに、片方は『油泡 ユーバオ』でもう片方は『水泡 スイバオ』!? どんだけ世界の調理技術に精通してるのさ!!!」
「面白え、『食感』だけでこんなエンターテイメントを演出できるとはな。ますます欲しくなったぜ、カムイ!」
カムイの料理を食べた十傑メンバーは『食感の妙技』とも言える料理に大満足、まさしく既存の料理に当てはまらない全く新しい料理に出会えて興奮していた。
「フゥ、さて、と。カムイの料理を食べたことだし、今度は俺たちの番だな」
「そうだな。んで、誰からいくよ?」
「いつも通り下の席次からでいいんじゃねえか?」
「というと、叡山…………じゃなかった。今は薙切ちゃんからか」
カムイの料理がもたらす『食感』の奥深さを堪能した十傑たちは、本来の品評会の目的である自分たちの料理を作ろうとする。
使える調理スペースは限られている上、調理する姿も観察できるよう料理は一人ずつ作って全員で試食を行うこととなっている。
順番は席次が下の方から始めており、今までは第九席である叡山からのスタートだったのだが、今回は十席であるえりながいるため彼女からのスタートになる。
「分かりました、準備します」
実際の腕はともかく、席次が一番下であることは事実のためえりなは特に異論も無く調理台へと歩いていく。
しかしここで意外な人物から『待った』が掛かった。
「待て」
「カムイくん? どうかしたの?」
「試したいことがある」
「? 試したいこと?」
えりなを呼び止めたのはカムイだった。既に料理を出し終わっているカムイが調理台へと歩いていくのを見て、他の十傑メンバーも一様に首を傾げている。
「使う食材は、ここにあるので、全てか?」
「え、ええ。そうだけど……………………?」
「そうか。もしかして、作ろうとしているのは……………………」
カムイは並べられている食材と調味料を見て、えりながどんな料理を作ろうとしているのか推測する。カムイの予想を聞いて、えりなは目を大きく開くほどに驚いた。
「っ、どうして分かったの!? 今日初めて作る料理で、緋沙子ですら知らないはずなのに!」
カムイに自分が作ろうとしている料理を言い当てられて、えりなは驚愕した。いくら食材や調味料を見たからと言って、そこからどんな料理を作ろうとしているか見抜くなど並大抵のことではない。
ましてや、えりなが作ろうとしているのは新作料理。それを材料を見ただけで完璧に見通すなど、到底人間業ではない。だがカムイは驚いているえりなを他所に、『ある提案』をした。
「俺が手伝おう」
「えっ? 手伝うって………………………」
「俺が『スーシェフ』として、調理を手伝うということ」
カムイの言葉にえりなだけではなく、十傑メンバー全員が驚く! カムイがここまでやる気を見せただけではなく、自分から下に付いて『スーシェフ』になると言っているのだ。
【神域の料理人】であり、自分たちより遥か格上の『第零席』という称号を与えられた唯一の料理人。そんな男が自ら『手伝い』に回ることに十傑メンバーは思わず目と耳を疑ってしまう。
「え、えっと、いいの?」
「ん。俺じゃあ、不満か?」
「い、いいえ、そんなことないわ。それじゃあ、お願い、します/////////////////」
「ウィ、シェフ」
普段のプライドが高いえりなであれば『自分一人で十分だ』と言って断っていただろう。
だがせっかくのカムイからの申し出を断ることは出来ず、今までにないくらいの素直さで受け入れた。
またカムイがえりなの料理を見抜いていたというのも大きいのかもしれない。自身以外見たことが無い料理の概要を、食材を見ただけで見抜くのであればサポートも問題ないと判断したのだ。
「へぇ~~、カムイが薙切ちゃんのサポートをするのかぁ。ハハッ、こりゃあ意外だな♪」
「【神の舌】を持つ薙切が味を決め、【神域の料理人】であるカムイが調理を施す。いったいどんな料理になるんだ……………………!」
「カムイが自らサポートを務めようとするとは……………………とうとうえりな様のことを認めたのか!」
カムイの思惑が計りかねてはいるが、それでも【神の舌】と【神域の料理人】が組むという事実に新戸と十傑メンバーは興奮を隠せないでいる。
そして彼らはこの後思い知ることになる。カムイの恐ろしさは『料理を作る』に限ったことではないということを。
クロマグロのカラスミを鳥取県の境港から取り寄せたことがあったのですが、まぁお高いことお高いことwww
それを砕いてパスタに絡めて食べたのですが、メチャクチャ濃厚で美味かったです♪
【本日のグルメ食材】
サマーウイスキー・出汁ペリカン
【オリジナル食材】
白雪レンコン
それでは皆さん、次回で♪
感想・高評価もいただけると作者が喜び、励みになります!