連続投稿2話目です。駆け足気味ですが、メインの舞台は【食戟のソーマ】の世界ですので、【トリコ】の世界は今話で終わりとなります。
『アナザ』の旨味が『魂の世界』を満たし『食霊の門』が壊れたことで、『タイムゼロ』へ行くことは出来なくなった。
しかし小松たちも完璧に調理した『アナザ』を持ち帰り無事に帰還。また、千代は『魂の世界』で死んだ息子と再会し、ようやく過去を振り切れた顔つきになっていた。
現実世界へ戻ってきたカムイは、街から離れた山の麓にある洞窟で1人佇んでいた。目の前にはボロボロの枝を十字に結んだだけの小さな墓、どれくらい放置されていたのかも分からない。
だが、ここが自分と妹が暮らしていた場所であったことは思い出せた。未だ自分の名前も、妹の名前も思い出せてはいないが…………………それでも妹と交わした『約束』は思い出せた。
『自分のフルコースを腹いっぱい食べさせてあげる』…………………カムイは何故自分がここまで『人生のフルコース』を完成させようとしていたのかをようやく理解した。
魂の交換を繰り返してまで醜く『生』にしがみついてきた。思い出も、人格も、名前も、最愛の妹のことさえも…………………全てを忘れてしまっていた。
それでも…………………たった一つの『約束』だけは、忘れることが出来なかった。いつか死後の世界で妹と出会えた時に、『約束』を果たすため。
カムイは大粒の涙を流しながら妹と過ごした日々を振り返り、自身の『フルコース』である『デザート』を置いた。
空白だらけの自分のフルコースだが、正真正銘の『人生のフルコース』の一品だ。
そうしてカムイが『デザート』を置いてその場を後にしようとすると
『おいしいね、おにいちゃん♪』
「ッッッッッッッ!!!!」
突然聞こえた妹の声に、カムイはガバッといきおいよく振り返る!!
そこには死んだはずの妹が、カムイのデザートを美味しそうに食べていた!!!
気のせいかと思い目をゴシゴシと擦ってもう一度見るも…………………そこには妹の姿は無い。デザートも食べられた形跡は無く、そのままであった。
気のせいだったと思い帰ろうとするが………………なんと目の前に『魂の世界』で出会った『アナザの子ども』がふよふよと漂っていた!!!
『アナザの子ども』は『ビリオンバード』のように自分の頭をスリスリと擦りつけてくる。触れた感触が無いあたり、この子は『食霊』なのだろう。
カムイのことを気に入って、どうやら魂だけ現世まで追いかけてきたようだ。
触れられないながらもカムイは『アナザの子ども』の頭を撫でて考える。
(アナザを使えば、現世からフルコースの味を妹へ届けられるかもしれない)
カムイは『アナザ』を自身のフルコースの『オードブル』に入れることを決めた。
しかしまだ完ぺきではない。アカシアのフルコースの中でも随一の旨味を誇る『アナザ』、それを『オードブル』として調理するならば並みはずれた調理法が必要となる。
小松や『神の料理人 フローゼ』が見つけたのは『魚料理』としての調理法。ならば、『アナザ』を『オードブル』として成立させるだけの調理法を新しく見つけなければならない。
カムイは食材だけではなく、新しい調理法を手に入れるべく旅を続けることにした。
(たとえ世界の果てだろうが、別の宇宙だろうが、異なる世界だろうが…………………必ず見つけてみせる!!!)
自分の過去の一部を思い出したカムイは自分の進むべき道がハッキリと見えた。それに『アナザ』は【遠い日の記憶】を呼び起こすことが出来る。
つまり『アナザ』を今以上に美味しく調理することが出来れば、忘れてしまった残りの記憶を取り戻せるとカムイは考えたのだ。
『自分の行く道は過去が教えてくれる』。かつて二郎から言われたことをようやく理解したカムイは、『アナザの子ども』の食霊を連れて小松たちの下へと向かう。
『アナザの子ども』の食霊を見て驚く小松たちを他所に、カムイはこの街の職人たちから自分専用に頼んでいた『金の調理器具』一式を受け取る。
かつて一龍に連れ出してもらった時とは違う決意を胸に………………カムイは再び生まれ故郷を旅立った。
ジジや小松たちと一緒に『ブルーグリル』を後にしたカムイ一行。ジジの案内で各エリアを回り、サニー&ライブベアラー、ゼブラ&ブランチ、ココ&タイランの順で合流。
無事に手に入れたアカシアのフルコースと共にトリコ&スタージュンが待つ【エリア2 始まりの大陸】へと向かう。
ほとんどのメンバーはアカシアのフルコースを無事に持ち帰るため『人間界』へと戻り、サニー・ゼブラ・ココ・小松・ジジ・カムイの六人が【エリア2】を歩いていると『グルメ日食』が起こる!
そのタイミングで無事にトリコ&スタージュンと合流。周囲がどんどんと暗くなっていく中、ジジの『ワープキッチン』の中でアカシアのフルコースを全員で食べることにした。
『GOD』以外の完璧に調理されたフルコースを食べて、全員がその超絶美味に浸る。
そうして実食した結果、サニーは『アース』を、『ゼブラ』は『アナザ』を、ココは『アトム』をフルコースに入れることを決めた。
また、トリコは【エリア8】のゴールドラビリンスで見つけた缶詰から出てきた『オウガイ』をフルコースの『魚料理』にすることとした。
なお、ゼブラはカムイが先んじて『アナザ』をフルコースに入れていることに少々腹を立てたが、先に手に入れたのはカムイたちであったため渋々受け入れることにした。
アカシアのフルコースを堪能したトリコたちだったが、暫くして食材の王である『GOD』が出現する!!!
人間大の無数のオタマジャクシが地上から現れて、空に集まっていく……………………誕生したのは、なんと巨大なカエルだった!
所々に地球を思わせるような模様が入っていて、一見するととても食材には見えない。
しかしその見た目とは裏腹に、その圧倒的な存在感がこの場にいる全員の食欲をかき立てる!
その証拠にトリコたちが宿している『グルメ細胞の悪魔』たちが『「GOD」を食したい』と荒ぶっていた。
だが『GOD』の魅力はそれだけに留まらなかった! なんと地球上の生物たちが『GOD』の存在感に魅了され、一斉に集まって来たのだ!!
そして自身へ向かってくる生物たちを『GOD』が長い舌を使って次々に捕食していく!!!
その過程で小松、そして隣にいたカムイまでもが『GOD』の舌に捕まり体内へ取り込まれてしまった!!!
小松はともかくカムイまで捕まってしまったことに驚愕するトリコたち。自分たちと同等の実力者であるカムイですら成す術無く取り込まれた事実に、全員が危機感を覚える。
だが……………実際は『そう』ではなかった。『GOD』が自分と小松に向かって舌を伸ばした瞬間、カムイは小松を連れて躱すことが出来たのだ……………………けれど、カムイは自ら『GOD』に捕まることを選んだ!
何故そうするべきだったのかはカムイ自身にも分かっていない。ただここまで旅をしてきたことで鍛えられてきた『直観』と数多の食材に出会ってきた『食運』が自身に呼びかけたのだ。
『避けてはいけない』
『これは捕食ではなく、自分を迎え入れてくれているのだ』
また小松が近くにいたことも大きな要因だった。
小松の才能は、あの他人に無関心なカムイですら認めている。特に食材に好かれ受け入れられる才能、『食運』は自分を凌駕している。
これまでの旅の中で小松が食材から拒絶されたことなど一度も無かった。だからこそカムイは小松を助けることはせず、一緒に『GOD』へ取り込まれる道を選んだのだ。
気づくとカムイは、小松と一緒に不思議な世界へとやってきていた。
見渡す限りに広がる数多の生物たち、見たことも無い食材もたくさんある。全ての生き物たちが捕食されることも無く共存する世界……………………まさに『食材の楽園』とでも呼ぶべき場所だった。
生い茂る草木、咲き誇る花々、虫たちは飛び交い、鳥は歌うように鳴き、様々な動物たちが寄り添う。
これ以上のものは無いとさえ思うほどの穏やかに暮らせる平和な世界。外の世界の喧騒を知っているものからすれば、いつまでもこの空気に浸っていたいと思うだろう。
しかし小松とカムイは確信していた…………………『この世界に長く留まってはいけない』『この世界を受け入れてはいけない』と。
二人の直感は当たっていた。『GOD』は捉えた生物をすぐに消化したりはしない。自分が体内に生み出した世界へ閉じ込め、永住させることで『捕食』し自らの一部とするのだ。
言ってみれば、食した食材が身体の一部となっても尚、ほぼ無限にエネルギーを与えてくれる【食没】に近い。
つまり二人が見ているこの光景も『GOD』が生み出したものであり、もし二人がこの世界を受け入れようものならそのまま『GOD』の一部となってしまっていた。
『GOD』が生み出した幻に惑わされず、二人が歩いていくと…………………天へとそびえ立つ柱を見つけた。二本の柱が交差している形は『DNA』の構造を思わせる。
よく見ると柱は見たことも無い食材によって形成されていた。奇妙な柱に吸い寄せられるかのように小松とカムイが柱に触れると……………………柱の『捌き方』が頭に流れ込んできた!!!
いきなり脳裏に浮かぶイメージに戸惑いながらも別の場所に触れると、また別の『捌き方』が流れ込んでくる。見たことも聞いたことも無い食材……………………しかし何故か『捌き方』だけは理解できた。
二人は食材たちが語りかけてきてくれるのだと気づき、『これが「GOD」の調理法なのだ』と理解する。二人は『食材の声』に従って柱を形成している食材たちを順番に捌いていった。
やがて地面が見えなくなるほどの高さまで柱を登っていくと、途中で『大竹』と『中梅』という小松の同期と合流した。
どうやら二人も『GOD』に取り込まれ、別ルートからここまでやってきたらしい。
小松がカムイのことを紹介し、腕の立つ料理人が増えたことを喜ぶ大竹と中梅。四人は『GOD』の調理を再開し、再び天を目指す。
料理人が四人になったことで調理のスピードもアップ。次々と食材を捌いていく。
そして………………………とうとう天井へと到達。『GOD』の調理が完了した!!!
『GOD』の調理が完了すると『GOD』の体内が鳴動し、四人は天井に呑み込まれると………………………四人は『GOD』の口元へと運ばれていた。
地上を見ると戦いを終えたトリコたちが手を振っている。四人は地上に下りてトリコたちと合流した。
互いの無事と『GOD』の調理完了を喜び合う中…………………カムイは近くで座っていた見慣れない生物へ近づいていった。
どうやら目の前にいる生物がアカシアに宿っていた『グルメ細胞の悪魔 ネオ』らしい、ジジの話では数多の宇宙を食い荒らしまくった食欲の化身だとか。
しかしカムイの目にはそんなとんでもない化け物とは映らず、三虎同様に『空腹に苦しむ子ども』というイメージだった。
そして妹のことを思い出してからは、カムイは『飢えに苦しむ者』に対しては珍しく感情を見せるようになった。
カムイは調理して来た『GOD』の一部をネオに差し出す。
「…………………一緒に食べるか?」
カムイの言葉にネオは生まれて初めて食べ物を与えられ、『一緒にご飯を食べる』という経験を味わう。それは今まで感じたことが無いほどの満足感を与えてくれた。
それからしばらくして、カムイはトリコとリンの結婚式に出席。小松・中梅・大竹が作るトリコのフルコースを味わう。
サニーたちからは『一緒に調理しないのか?』と尋ねられもしたが、カムイとしてはあの三人が作る料理の方が気になったため食べることを優先した。
それに結婚式の最中、会場の片隅に置かれた小さなちゃぶ台…………………そこには幽霊となったアカシアのファミリーが仲良く食事を楽しんでいた。
無論、その中には自分の恩人である一龍と師匠の1人である二郎もいる。
二人と目が合うと互いに軽く微笑む…………………カムイもまた、久しぶりに家族と味わう『みんなと食べる食事』にお腹だけではなく心まで満たされていた。
その後、カムイは当初の目的であった『人生のフルコース』を完成させるための旅を再開する。
宇宙にもまだ見ぬ食材や調理法があることを知ったカムイは、『グルメ研究所』と『IGO』に協力してもらい専用の『キャンピングモンスター』を用意してもらった。
一龍の秘蔵っ子であり、トリコたちと共に世界を救った1人の頼みとあらば両機関とも協力は惜しまなかった。
カムイには『ジャイアントシェル』の子どもを改良した『アイランドシェル』、北海道ほどの大きさを誇る超大型のキャンピングモンスターが送られた。
陸・海・空だけではなく宇宙空間まで航行可能であり、中はグルメ建築家の『スマイル』によって設計された充実した居住空間と調理施設が完備。
また、様々な『金の調理器具』や様々な調味料が取り揃えられており、料理を作るのに全く不便がなかった。
そして何より…………………『エリア6』から肉体ごと連れてきた本物の『トリトン(アナザの子ども)』をはじめとする、『IGO』が品種改良した【アカシアのフルコース】がもたらす旨味が『アイランドシェル』全体を満たしている。
それにより『虹の実』や『BBコーン』などの数多くの食材が実っているうえ、『赤毛豚』や『リーガルマンモス』に『ガララワニ』など多種多様な生物たちが生態系を成していた。
本来であれば家畜に適さない猛獣たちもたくさんいるが、ここの猛獣たちは全てカムイの強さに服従している。
そのため縄張りを巡って争うことも無ければ、アカシアのフルコースたちがもたらす旨味により、猛獣たちは呼吸するだけで必要な栄養を摂取することが出来る。
これにより飢えることがないので、エサを取り合うこともない。まさにカムイ専用の『ビオトープ』とも言える巨大な庭となっていた。
必要な時に必要な食材がいつでも手に入る準備をしたカムイは、宇宙へと旅立つ。
しかし地球から宇宙へ探索範囲を広げたカムイは、いつの間にか『地球らしき』場所へ戻って来ていた。
宇宙を旅していたカムイだったがある日、超巨大な扉に出くわしたのだ。
『アイランドシェル』よりも遥かに巨大な扉、中に何があるのか気になり入ってみると………………………………目の前には故郷である地球があった!!!
しかし地球に降り立って見ると、ここが自分が知っている地球ではなく、よく似た『地球らしき』惑星であることが分かった。
それというのも、この惑星の食材には……………………味が無いのだ。正確に言えば、『旨味』はある。ただ、あまりにも薄すぎるのだ。
カムイの超人的な味覚をもってしても、かろうじて感じられるかどうかというレベル。物によっては粘土のように全く感じないものさえある。
こんなことは自分が生まれ育った星では無かったため、カムイはこの星が『地球によく似た惑星』と結論付けた。
とりあえず『アイランドシェル』は人の目につかないよう深海の奥深くに隠し、カムイは『オウガイ』の貝殻を加工して作った『シェルダーバッグ』を背負い地上を探索することにした。
『オウガイ』の中は無限に続いていると感じるほどの亜空間となっている。その貝殻を『IGO』が加工して作ったのが『シェルダーバッグ』だ。
中にはカムイ自慢の『金の調理器具』や食材を保存した大小さまざまな『グルメケース』や調味料が入っている。
バッグに手を入れれば自分が欲しいものが簡単に取り出せる上に、際限なく物を入れることが出来るため、この『シェルダーバッグ』をカムイはとても重宝している。
自分の『食運』に導かれるまま歩くこと数時間、カムイは果樹園で実っているリンゴを見つけた。作業をしている人に頼んで、1つ分けてもらったリンゴをかじってみるも、やはり味はしない。
そこでカムイは『金の包丁』を使い、『活性切り』でリンゴを切ってみることにした。
『活性切り』は『蘇生切り』を応用したカムイ独自の技術で、切ることで食材の旨味を最大限まで増幅することが出来る。
さらに新種の旨味成分で構成された『金の調理器具』を使えば、その旨味成分が微量ではあるが食材に染み渡る。
『金の調理器具』と『活性切り』、この二つを使って調理されたリンゴを食べてみると……………………カムイは確かに『味』を感じることが出来た!!!
もちろん『グルメ界』の食材ほどではないが、それでもカムイが『美味しい』と思えるぐらいまでには味のクオリティが上がっている。
少なくとも先ほどよりは別次元へと味が昇華している。それに何より……………………この味はカムイが今まで味わったことの無いものであった!
それもそのはず。『活性切り』と『金の調理器具』によって調理されたことで、リンゴは己の魅力を限界以上に引き出すことが出来たのだ。
そのことに感謝したリンゴは、カムイのために自身の全てを出し切って『旨味』を絞り出す。
それによりカムイが認めるほどの味わいとなったのだ。そして、『それ』こそが食材に好かれるということでもある。
料理人が食材に認められることで、初めて到達できる領域。小松はこの才能がズバ抜けており、彼が食材に近づくだけで食材が喜びのあまり色めいて旨味が増す。
小松ほどではないにしても、カムイもまた『調理』によって食材に好かれる稀有な才能の持ち主だった。
リンゴを食べてピクリとも動かないカムイを見て、作業員たちも気になり調理されたリンゴを分けてもらう……………………しかしリンゴを口に含んだ瞬間、全員が腰を抜かして放心状態になってしまった!!!
自分たちが育てたリンゴ、味も当然知り尽くしている。なのに今食べたリンゴの味は、これまで感じたことのない旨味を舌に叩きつけてきたのだ。
周りにいる全員が放心状態という末期的な状況の中、カムイは全く別のことを考えていた。
(っ…………………ここなら、見つかるかもしれない!!!)
この惑星には『未知の味』がある。そして『未知の味』を食す人間がいるのならば、『未知の調理技術』があるはず…………………カムイはそう考えたのだ。
腰を抜かしている作業員たちを置いて、カムイはこの惑星を隅々まで探索することを決める。
『未知の味』『未知の調理技術』、その全てを調べつくし…………………………『人生のフルコース』を完成させるために。
それからカムイは、アカシアのフルコースの『肉料理 ニュース』を食べたことで会得した『ワープロード』を駆使して、世界中を周った。
『ワープロード』は外の世界とは時間の流れが違う亜空間、通称『裏の世界』を作り出すことで長距離を短時間で移動してしまう技術だ。
この『ワープロード』を使えば、地球の裏側であっても数分程度で移動することが出来る。
ここでカムイが世界中を旅する中で行ったことを軽く列挙してみよう。
・貧困地域でも栽培可能な野菜や果物で料理を作る。カムイの作った料理を食べて感激した貧困民は、野菜や果物の苗を分けてもらい栽培。
貧困地域は瞬く間に食物が実るとして早変わり。飢えに苦しむ民が激減した。
・カムイが訪れた土地、そこは様々な勢力が争う紛争地域だった。そんな紛争地域のど真ん中で料理を作るカムイ。
その姿を見た軍人たちが機関銃を近づけて立ち去るように言うが、カムイは一切食事を止めることはしない。
やがて軍人たちはカムイが食べている料理が気になり分けてもらう。カムイの料理を食べた軍人たちは、そのあまりの美味さに『命の尊さ』を思い出す。
軍人たちは司令官にもカムイの料理を持っていき、料理を食べた司令官は敵対勢力たちにもカムイの料理を持っていく。
争っていた勢力のリーダーたちもカムイの料理に感動し、互いに争うことを止めた。長い間内乱が絶えなかった国から、紛争が無くなったことで人々は歓喜に震えたのであった。
このように『美食神アカシア』のような偉業を行ってきたカムイ。
無論、彼自身にはそんな自覚は全く無く、貧困地域で食べ物を恵んだのも『飢え』に苦しむ彼らが妹と重なって見えたからに過ぎない。
食物の苗を渡したのも『アイランドシェル』で栽培できる量が限られているため、代わりに栽培してくれるなら越したことはないと思ったからだ。
紛争地域で料理を振る舞ったのも、その国の調理技術が知りたかったから付き合っただけの話であって、本人は『国を救おう』などという気持ちは全く無かった。
カムイの頭にあるのは常に『未知の食材と調理法』を見つけ出し、『人生のフルコース』を完成させること。ただそれだけである。
ただ周りの人たちは、救世主さながらの偉業を行っても何一つ見返りを求めることなく立ち去るカムイを神聖視していた。
自分達ではどうしようもない苦しみから救ってくれたのだから、当然と言えば当然なのかもしれない。
しかしカムイが行ったことは、決して良いことばかりではない。
カムイの噂を聞きつけた大富豪・大企業たちがカムイを囲み、あるいは利用しようと画策することもあった。
だが、そんな者たちに捕まるカムイではない。屈強なSPや傭兵たちが無理矢理カムイを連れていこうとしても、カムイはいつの間にか霧のように消えてしまう。
または、凄まじい威圧によって全員気絶させれてしまい全く捕まえることが出来ない。
それもそのはず。『裏のチャンネル』を通れるカムイを見つけることは不可能。
ましてや『グルメ界』の猛獣たちすら捕獲できるカムイの戦闘力の前では、この世界の人間の強さなど赤子と大して変わらない。
そのため、カムイとしては鬱陶しいと思いつつも別に脅威ではなかったため、取り囲まれても威圧して気絶させるに留めておいた。
また、カムイを別の意味で狙った者がいる。それは…………………料理人だ。
カムイの持つ見たことの無い調理技術を是非ともモノにしようと、彼に料理を作らせた料理人が多数いた。
カムイ自身も彼らの調理技術に興味があったため、雇われることはしなかったものの自分の作った料理を食べさせたりしていた。
一見すると互いの目的が合致しているため、問題無いように見える。しかし……………………彼らは全員、後悔することとなった。
何故ならカムイの調理技術は、彼らでは到底模倣できるものではなく、逆にカムイの料理を真似ようとしたことで『自分の味』を見失い挫折。
自ら料理人としての人生に幕を閉じ、店を閉めることとなったのであった……………………。
さらに食品産業の者はカムイを雇おうと懸命に探すが、『裏のチャンネル』を通り世界各地に出没するカムイを捉えることは出来ない。
むしろ探せば探すほど赤字となり、カムイの料理をもう一度食べたいと思い探した結果、財産を全て溶かしてしまう者まで現れる始末。
こうしてカムイ自身は単純に『人生のフルコース』を完成させるために旅をしているだけなのだが、周りが勝手に救われたり破滅したりしていくという何とも奇妙な結果となってしまっているのである。
もちろんカムイは周りが救われようが破滅しようが、全く興味は無い。
そんな神出鬼没に現れては関わる者に良くも悪くも多大な影響を与えるカムイ……………………彼がもたらすのは貧しい者への『祝福』か、それとも富める者への『破滅』か、あるいはその両方か。
神のように気まぐれで、神のような所業で人々に『祝福』と『破滅』を振りまくカムイのことを、やがて人々はこう呼ぶようになる。
≪神域の料理人≫、と………………………………
第二話にして早くもタイトルを回収しましたwww
まぁ、勿体ぶって長引かせることでもありませんので。
次回からは【食戟のソーマ】の世界が舞台となります。
第三話は4/6 18:00投稿予定です。