カムイのサポートを受けた十傑メンバーの料理ですが、具体的な描写は省略します。
さすがに9人分の料理描写をいっぺんに書き出したら、文字数がえげつないことになりますし、何より私のキャパがオーバーしますのでwww
カムイのサポート能力を確かめるべく、十傑メンバーがそれぞれカムイのサポートを受けて料理を作ることとなった。
だが全員、すぐにその凄まじさを実感した!!!
(っ、凄い! 感覚が細胞の隅々まで冴え渡っていくのが分かる!! 本当に『食材の声』が聞こえてくるようだ、これがカムイの見ている景色なのか!!!)
(ハハ♪ コイツはスゲエ! 普段の調理風景とは桁違いだ、頭はクールなのに身体が燃えるように滾っていやがる!)
(味見をしなくても料理の状態が手に取るように分かる! これが薙切が言っていた『食材の声』を聞くってことか!? 料理に対する感覚が普段とは比べ物にならないほど鋭くなっている!!!)
(キャワ~~~~~~~♪ スゴイスゴイスゴイ! モモの作るスイーツが魔法にかかったみたいに、どんどん可愛くなっていってる! ここはモモだけの世界、モモはこの世界で一番可愛いお姫様♪)
(頭で考えるよりも早く身体が反応していく! これが『明鏡止水』の境地というものなのか!?)
(凄い、私の積み上げてきた技術が極限まで研ぎ澄まされていくのが分かる! もっと! もっと先の景色が見たい!)
(こんなに楽しく料理を作れるなんて思わなかった! まったく、こんな感覚を知ってしまったら……………………もう戻れないじゃないか♪)
(タッハッ♪ ヤベエヤベエヤベエ! どんどん俺の作る料理がグレードアップしていくじゃん!! ズルいなぁ、カムイちんは。いつもこんな状態で料理を作ってるんだからさ♪)
(おいおいおい、どんだけ金を生む気だよコイツは! 『究極の調理技術』に加えて『至高のサポート能力』だと?
コイツのサポートを受ければ、壁にぶつかっている料理人は更なる高みへと行けるってことじゃねえか!! こんな能力、プロならいくら金を積んでもおかしくねえぞ♪)
カムイのサポートを受けた十傑メンバーは、えりな同様に自身のポテンシャルを100%引き出す感覚に酔いしれていた。
自分の感覚が極限まで研ぎ澄まされ、脳がクリアになる快感は麻薬の比ではないだろう。
全員自分が作っている料理が過去最高の出来になることを食べずとも確信するが、やはりえりな同様に料理が完成すると倒れそうになる。
しかしカムイが予め『アース』を用意していたので、えりなの時のような騒ぎになることはない。
ただ、『アース』の味に驚いた十傑メンバーは、『どうやって作ったんだ!?』と別の意味で騒ぎになってしまった。
特に茜ヶ久保にいたっては『アース』の味にすっかり魅了され、食べ尽くす勢いで『アース』を食べまくった!
エネルギー補給用に用意していたのに全部食べられては堪らないので、抵抗する茜ヶ久保を司・竜胆・女木島・斎藤が四人がかりで引き剥がしに掛かるが、何故かビクともしない!
結局、十傑全員が必死になって何とか引き剥がせたほどに『アース』から離れようとしなかった茜ヶ久保。
あんな小さい身体のどこにあれほどのパワーがあるのかは、不思議を通り越して『人体の神秘』とも呼べるだろう…………………恐るべき甘味への執念である。
カムイのサポートを受けて出来た料理は言わずもがな、自分たちが今まで作ってきたものとは比較にならないほどの『美味さ』だった。
作った本人たちでさえ、あまりの美味さに鳥肌が立ったほどである。
その美味さと完成度はカムイが作った料理と同等とまではいかないまでも、限りなく近いと言えた。現にカムイは満足そうに出来上がった料理を食べている。
こうして十傑メンバーによる品評会は、過去最高の品が出揃うという異例の事態となった。
だが、問題はここからだった!
「カムイ、卒業したら俺のパートナーになってくれ! カムイとならどこまでも高みへと行ける!!」
「カムイ~~~、卒業したら一緒にアマゾンとかの秘境を巡ろうぜ♪ 世界には面白い食材がわんさかあるんだ!」
「頼むカムイ、俺と一緒に店を出そう! 俺はラーメン道を極めたい、そのためにはお前が必要なんだ!!」
「何言ってるのかな? カムくんはモモの『魔法使い』になるんだよ、もう決まってるんだから」
「カムイよ、たまにで良い。拙者の店で働いてくれぬか? おぬしならばいつでも歓迎だ!」
「あっ、じゃあ私の店にもお願い。無論、報酬は望む額を出すわ!」
「ふふふ♪ あの気難しい紀ノ國くんにまで気に入られるなんてね。カムイくん、キミは本当に面白いよ♪」
「え、カムイちん貸し出してくれんの!? じゃあ俺んところにも来てよ、一緒に中華を極めようぜえ♪」
「カムイよぉ、卒業したら俺と一緒に起業しようぜ。俺の経営能力とお前の料理が合わされば、『食』の世界を牛耳るのも夢じゃねえ!」
自分の実力を100%引き出せる快感を知った十傑メンバーによる、カムイ争奪戦が勃発した。
自分一人では至ることが出来ない『ゾーン』の領域に自由に出入りすることが出来るのだ。
これがスポーツであれば、間違いなくプロチームからのオファーが殺到するに違いない。
(なるほど、こんな味もあるのか。なかなか面白い発想だ)
カムイとしては自分がサポートすれば、この世界の料理人でも『美味しい』と感じられる料理が出来ると分かれば十分な収穫であったため、彼らの勧誘には特に興味を持ってはいない。
あくまで自分の目的は【人生のフルコース】を完成させることなのだから。
十傑メンバーは食べた料理の感想を放って、カムイを手に入れるために躍起になっている。
だが、カムイのサポートを受けて誰もが壁を超えられるわけではない。
カムイのサポートは言うなれば『非常に高性能な船で嵐を乗り越えようとする』ようなもの。
上手く乗りこなすことが出来れば、確かにその料理人は嵐を乗り越えて更なる高みの自分を知ることが出来るだろう。
しかし乗りこなすことが出来なければ、カムイのサポートは逆にその者に牙を剥き、荒れ狂う海へと投げ出されてしまう。
そして一度荒波に呑み込まれれば、二度と脱け出すことは出来ず『自分の料理』を見失い、料理人としての人生を終えることになる。
本来であれば長い年月をかけて地力を培うことで乗り越えるべき嵐を、カムイのサポートによって無理矢理突破しようとするのだから当然のことと言える。
そのためカムイのサポートの恩恵をフルに活かせるのは一流の料理人だけであり、この場にいる十傑メンバーはまさしく『一流』や『超一流』の素質を持っているということなのだろう。
そんなことなど露知らず、未だに言い争いをしている隣で料理を食べているカムイだったが、そんなカムイへ何故かえりながモジモジとしながら近づいてきた。
「あ、あの、カムイくん。そ、その、一つ、聞いてもいいかしら?」
「? 何だ」
「えっと、そのぉ……………………///////////////」
「えりな様、ファイトです! 幸平創真を出し抜くチャンスですよ!!」
自分から話しかけるも顔を真っ赤にしながら、両手を所在なさげに何度も組み直すえりな。その後ろで新戸がえりなの背中を押すべく応援をしている。
「わ、私の料理、美味しかった?//////////////」
いつもの凛とした雰囲気とは打って変わって、えりなは目を潤ませながら上目遣いでカムイに自分の料理の感想を求める。
思春期真っ只中な男子が見たら、そのギャップに悶えることは間違いないだろう。
「ん。『えりな』の料理は、美味しかった」
「ッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!」
そんな思春期の男心をくすぐるようなえりなの質問に、カムイは率直に感想を述べた。
カムイが自分で食材の旨味を活性化させたのだから、ある意味その感想は当然と言える。
ただ経緯はどうであれ、最終的な味の調整や仕上げはえりなが行ったのであれば、『えりなの料理が美味しい』という感想で間違いはないと思ったのだ。
「ホ、ホント?//////////////////」
「ん」
「ホントに、ホント?//////////////////」
「ん」
「っ~~~~~~~~~~//////////////////」グッ
えりなは念押しするかのように何度も確認し終えると、カムイに背を向けて思わずガッツポーズを取る。
(やったわ! ついにカムイくんが私の料理を『美味しい』って言ってくれた!
フフン♪ ざまあみなさい幸平くん、私の勝ちよ。今度会ったら思いっきり自慢してやるんだから♪)
「やりましたね、えりな様! おめでとうございます!」
「ええ♪ ありがとう、緋沙子!」
カムイが自分の料理を認めてくれたこともそうだが、幸平よりも先に『美味しい』と言われたことが、えりなの喜びに拍車を掛ける。
秘書である新戸も、まるで自分のことのように喜んでくれるので嬉しさは一層であった。
(しかも『えりな』って♪ 初めて名前を呼んでくれたわ! フフ、これでもうアリスに大きな顔はさせないだから♪)
そしてえりなは初めて自分の名前を呼ばれたことで、喜びが有頂天になる。
今まで一度も名前で呼ばれないばかりか、アリスに先を越されたえりなは心の中でずっと忸怩たる思いを抱えていた。
(でも、まだ足りないわ。今回の料理はカムイくんのサポートがあってこその仕上がり。カムイくん無しでも、このクオリティの料理を作れるようにならないと!)
喜ぶのも束の間、えりなはすぐに頭を切り替える。カムイのサポートによって自分にはまだまだ先があるということが分かった。
ならば次は自分自身の力で、その領域に至れるよう研鑽を積まなければならないと決心する。
「カムイくん、この後時間はあるかしら? 今の感覚をモノにするため、私の調理棟で特訓を「ちょっと待て、薙切!」っ、司先輩!?」
品評会は一応終わったので後は解散するだけ、そのためえりなはカムイを自分専用の調理棟へ連れていこうとする。
しかし『そうはさせない!』と司が割って入ってきた。もちろん司だけではなく、他のメンバーもえりなの抜け駆けを阻止しようとする。
「薙切だけにカムイを独占させるわけにはいかないな」
「そうそう、抜け駆けはダメだぜ♪」
「なっ!? 私は別に、抜け駆けなんて……………………ただ、カムイくんの面倒は私が見ることになっています。その中で私の調理を手伝ってもらおうとしただけです!」
「別に薙切が1人で見なくちゃいけないわけじゃないんだろ? 十傑メンバーで持ち回りでやれば、薙切の負担も軽くなるはずだ」
「何ならカムくんの面倒はモモだけで十分だよ? そうすればえりにゃんは自分の仕事に専念できるし、カムくんはモモだけの魔法使い♪ まさにwin-winだね」
「うぐっ! それはそうですが……………………とりあえず茜ヶ久保先輩、私がカムイくんの面倒を見るのを嫌がっているような言い方は止めてください!」
「まぁ茜ヶ久保ではないが、我々が交代でカムイの補佐をするのは悪くないな。そうすれば、全員が等しくカムイの恩恵を得られる」
「そうですね。私たち全員で掛け合えば、総帥も認めてくれるはずです」
「だったら、ボクの番の時は極星寮に来てもらおうかな。寮の皆も喜ぶと思うよ」
「勝手に話を進めないでくれます!?」
「諦めなって薙切ちゃ~ん。こんなスゴイ能力を知った以上、誰もカムイちんを放っておくことなんて出来ないって♪」
「ああ、料理人ならいくら金を積んでも惜しくはねえ。実際、俺はカムイに関して金に糸目をつけるつもりは無えからな」
「そ、そんな……………………………」
ただでさえ『神品』とも呼ぶべき料理を作り上げるセンスを持つカムイ。
それに加え料理人としてのポテンシャルを全開放させるサポート能力まで有しているとあれば、十傑メンバーでなくても欲しがるのは当然である。
そして十傑評議会で決定したことは、総帥である仙座衛門ですら覆すことは出来ない。
このままでは確実にカムイの世話役が十傑メンバーによる当番制となることに、えりなは危機感を覚えた。
「っ、カムイくん! 貴方からも何か言って……………………って、あら? カムイくんがいない。緋沙子、カムイくんはどこにいったの?」
「っ、いつの間に……………………申し訳ございません、えりな様! 私もカムイがいなくなったことに気づきませんでした!」
どうにかカムイを味方につけようとするえりなだったが、カムイはいつもの如く姿を眩ませてしまった。
慌ててGPSで位置を探ろうとするが、『裏のチャンネル』を通っているので反応は無い。
「仕方ない。とりあえず総帥のところに行って、カムイの世話係を十傑メンバーによる持ち回りにすることを伝えよう」
「ならシフト表は俺が組むぜ」
「却下よ。叡山が作ったら自分へ都合が良いように作るに決まってる」
「じゃあ、俺が公平になるように作ろう。どのシフトに入るかはクジで良いだろう、無論クジを引くのは俺が最後でいい」
「確かに女木島先輩なら間違いないですね」
カムイが不在により、本人の意思が確認できないのをいいことに話はどんどん進んでいく。
ついに(えりなを除く)十傑評議会として、カムイの世話係が当番制になることが決まってしまった。
「ちょっ、ちょっと待ってください! 私はまだ認めたわけでは……………………あ~~~~~~~~っ、もう! どうしてこうなるのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
十傑メンバーが揃って仙座衛門のところへ行こうとしているのを止めようとするえりな。しかしえりな以外のメンバーが全員合意しているため、誰も耳を貸そうとはしない。
もはや止める術が無いことを受け入れるしかないえりなは、悔しさのあまり叫び声を上げるが『月天の間』に悲しくこだまするだけであった。
その後、司たちは仙座衛門にカムイのサポート能力について報告し、カムイの世話役は十傑評議会での当番制とすることを上申。
カムイにそんな能力があるとは思わなかった仙座衛門だったが、十傑評議会で決まったことなら仕方ないと思い認可した。
えりなは仙座衛門が却下してくれるかもしれないという淡い期待を抱いていたが、当然そんなことは起こらない。
たちまち不機嫌になったえりなは、帰る途中で幸平と出くわし『カムイから美味しいと言われた』と自慢しまくった。無論、ただの腹いせである。
しかもカムイのサポートを受けた上での評価であることは教えず、ここぞとばかりにえりなは幸平へマウントを取る。
詳しい事情を知らない幸平は悔しがり、その顔を見てえりなは少しだけ留飲を下げることが出来たのであった。
こうして仙座衛門の許可が下りたことで、えりなはカムイの位置情報が分かるよう、他の十傑メンバーへ渋々GPSアプリを共有する。
これにより運頼みとはなるが、カムイが学園に来た日の当番がカムイに自分の料理研究に付き合ってもらうだけではなく、時には『グルメ食材』を使わせてもらうことさえあった。
なおクジ引きの結果、最初の当番は叡山が務めることに決まった。
さらには後日、運良く自分の当番の日にカムイが学園に来たので、カムイの心象を良くするべく最新鋭の機器や料理(カムイのサポート込み)でカムイをもてなした。
しかしそれは叡山の罠。叡山はカムイが料理に夢中になっている間に、こっそりカムイの『グルメケース』からいくつかのグルメ食材を、自身の研究のためくすねていたのだ。
後にこれが大きな波乱を呼ぶことを、この時は誰も知らない。
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自分がサポートすればこの世界の料理人でも『美味しい料理』が作れることが分かったカムイは、いつものごとく旅に出ていた。
これまたいつも通り『食運』に導かれるままの旅だったのだが、今回『食運』が導いたのは外国ではなく国内。
しかも『とある町の縁日』だったのだ。夏も真っ只中なこの時期の日本は『祭りシーズン』と呼べるだろう。
街道には屋台が立ち並び、行き交う人たちは焼きそばやフランクフルトなどのジャンクフードを思い思いに購入しては食べながら歩いている。
とは言っても所詮は祭りの屋台、『美食』などとは掛け離れているため到底『食運』が働くようなナニカがあるとは思えない。
カムイも出揃っている食べ物からは『食欲』が沸かず、適当に歩いていると一つの店が目に留まる。
パッと見は『りんご飴』の店なのだが、どうにも普通の『りんご飴』ではない。
そんな店の店主であろう人物が、腰を押さえながらうずくまっていた。
「ツツ、あ、いらっしゃい、お兄さん。すまないねぇ、あいにく腰をヤッちまってモノが出せないんだよ……………………」
「これは、何だ?」
「コレかい? コレは【りんごジュース飴】だよ。りんごジュースを凍らせて、りんご飴の要領で包んだんだ。
中がシャーベットになっててね。外はパリっと、中はシャリシャリ、もちろん舐めてもいい。見慣れないけど結構イケルんだぜ?アタタタタ」
カムイも『りんご飴』は知っているが、『りんごジュース』を凍らせて飴で包むということは見たことがない。
美味いマズイに関わらず、未知の食べ物という時点でカムイは興味が沸いた。
「俺が、作ろう」
「え、でも……………………」
「借りるぞ」
味を感じなくても食感や『食材の声』からどんな味かは理解できる。カムイは初めて見る食べ物に『食欲』ではなく『好奇心』が沸き、店主の代わりに『りんごジュース飴』を作り始めた!
(なるほど。飴を噛むと口の中に凍ってシャーベットになった部分と溶けてジュースになった部分が入ってくるわけか……………………使えるかもしれないな)
「その制服、アンタもしかして『遠月学園』の生徒かい?」
「一応」
「やっばりそうだったか、なら腕は確かだよな…………………じゃあすまないが、お願いできるかい?」
カムイが着ている制服から『遠月学園』の生徒だと推察した店主は、椅子に座って後ろからカムイの仕事ぷりを見ることにした。
素人ならともかく、日本一の料理学校の生徒なら少しぐらい任せてもいいと考えたのだろう。
店主の代わりにカムイが作り始めたことで状況は一変! カムイの調理によって活性化した旨味は、そのまま食欲へ直撃する香りへと変貌し行き交う人々を虜にした!!
虫が甘い蜜を求めるように、客たちは旨味が活性化したリンゴのフレグランスに引きつけられる!
店の前は瞬く間に行列が出来上がるも、カムイの超絶スピードによって片っ端から捌けていく。
そうして三十分も経つと材料が底を尽き、『リンゴジュース飴』は見事完売。店主は腰の痛みも忘れて大喜びしていた。
(果物の果汁を凍らせて飴で包む、シャーベットだと甘さと冷たさが強調されてドリンクの味が寝ぼけてしまう。
果物をジュースにしてから一旦凍らせる、そして飴を溶かさず中のジュースだけ溶かすことが出来れば……………………)
店主に別れを告げたカムイは、『リンゴジュース飴』を参考に思考を巡らせる。思い描くのは【人生のフルコース】の『ドリンク』。
『アイランドシェル』に戻ったカムイは夏の間、籠って試作を重ねることにした。
調理法が決まっても食材が決まらなければ意味が無い。また逆に食材が決まっても調理法が決まらなければ同様である。
カムイは【人生のフルコース】に相応しい一品を作るため試行錯誤を繰り返す。
なおカムイの姿が見えないということで十傑評議会の面々が明らかにモチベーションを落としてしまう事態となる。
また、『カムイの妹』を自称するアリスもカムイの行方が分からないまま帰省することとなり、終始不機嫌になってしまっていたとか。
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遠月学園の夏休みが終わりを迎えようとしており、帰省中だった生徒たちもちらほらと帰ってきている。
その頃カムイは相変わらず、『アイランドシェル』にてフルコースの『ドリンク』作りに励んでいた。
(『虹の実』をジュースにしたら、型に入れて『瞬間凍結器』を使い表面だけを凍らせる)
使う食材は『アイランドシェル』で栽培している『虹の実』。そして調理はカムイの技術に加えて、アリスの調理棟から持ってきた最新機器を使用。
なお器材についてはアリスが帰省して不在であったため、黙って借りてきてこっそり返す予定である。
(表面が凍って固まったら、『虹の実』の果汁を加えて作ったアメで手早く包む)
ここでカムイの超絶技術の出番、ボール状に固まった『虹の実』のジュースは表面が固まっているだけなので、手で十秒も触っていればたちまちに溶けてしまうだろう。
そして出来たばかりの水アメは、普通に触れば火傷をしてしまうほどの高熱のため、凍らせたジュースを瞬時に水あめで包み込み、一瞬で冷やさなければならないという『神業』が必要となる。
要領としては【アイスクリームの天ぷら】に近いだろう。しかしカムイが扱っているのは、表面だけを瞬間凍結させた『虹の実のジュースボール』。
ボールの膜が厚すぎるとシャーベットになってしまい、逆に薄すぎると水あめを纏わせた瞬間に割れてしまう。
『膜の厚さ』『水アメの量』『手際の良さ』、これらが完璧に揃わないと【水アメの中で氷は溶けてくれない】。
『食義』を会得したカムイですら失敗を繰り返し、この難題をクリアするのに夏休みのほとんどを費やしてしまった。
その上、カムイは水あめの厚さをミリ単位で調整し、『虹の実』のジュースボールを『虹の実入り水アメ』で包んだ。まさしくカムイだからこその調理法と言える。
水アメをボールに薄く纏わせたら、今度は『虹の実のジュース』をアリスのところから持ってきた『最新式炭酸メーカー』で高濃度の炭酸を混入させる。
そうして作った『虹の実ジュースのソーダ』に水アメを纏わせた『虹の実のキャンティボール』を入れれば完成!
【虹の実のキャンディボール入りソーダ】、カムイのフルコースの最後を飾る『ドリンク』である。
グラスに注がれた『虹の実のソーダ』は炭酸が立ち昇り、その中にある『虹の実のジュースボール』が結晶体のように輝く様は、南極の流氷を思わせる。
さらには蒸発した成分によって虹が出来ており、味だけではなく視覚でも食す者を楽しませてくれる逸品と言えた。
出来上がった『ドリンク』を飲むと、まずは高濃度の炭酸が口の中で弾ける!
その爽快感はグルメ食材の『メロウコーラ』にも引けを取らなかった!
次に口の中にはレモン数百個分に相当する酸味が一瞬にして炸裂! しかしすぐに完熟マンゴーに匹敵する甘さに変化し、次いで栗のような香ばしさに変わっていく。
喉を通る直前に桃のような甘さに変わり、喉を通りながらキウイのような爽やかさを堪能する。
胃に到達してからはメロンやスイカを丸ごと食べたような満足感に満たされた。
さらにジュースを飲むと口の中に残っていたキャンディボールが『パリンッ』と割れる。
口の中の温度とボール内の圧力の変化により、時間差で溶けたボール内の『虹の実のアイス』がジュースとなって流れてくる。
『虹の実』は温度によって味が変化するため、最初に飲んだものとは別の味に変わっていた。
また、飴の厚さもボールごとに変えているため、ジュースの味はボールごとに異なっている。
時間差で割れていくキャンディボールから流れ出すジュースは、最後の最後まで『虹の実』固有の味の変化を楽しむことが出来た。
「ハァ……………美味い、完成だ…………………!」
自分の作った『ドリンク』の完成度に満足したカムイ。遠月学園に来てから、これでフルコースの完成は2つ目になる。
現在は『スープ』『デザート』『ドリンク』が決定。フルコースの皿が順調に埋まっていくことに確かな手応えを感じたカムイは、遠月学園に来たのも悪くはなかったと思い始めていた。
そんなわけで、カムイのフルコースの『ドリンク』が完成しました。
ちなみにカムイのサポートですが、【サイバーフォーミュラ】の『凰牙(バイオコンピューターCS)』。【ガンダムW】の『ゼロシステム』や『エピオンシステム』をイメージしていただけると分かりやすいかもです♪
なお、カムイのサポート能力については、後々の話でもまた出てくることになりますので、今回はザックリとだけ書きました。
【本日のグルメ食材】
虹の実
それでは皆さん、次回で♪
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