田所の成長を描くため、料理の点数は原作よりも上がっています。予選の点数は、後の展開には大して影響は与えないと判断しました。
久しぶりに大量のグルメ食材を登場させました。貝類って、種類が多ければ多いほど煮込んだ際のエキスが堪りませんよね!
アリスの試食審査も終えて次が午前の部の最後、田所恵の番となった。
『さあ、これで全ての料理が出揃い「待て」っ、な、何でしょうかカムイさん!?』
「まだ1人、残っている」
『え…………あっ! し、失礼いたしました! 次が最後となります、どうぞ!』
(くそっ! あまりにも存在感が無いから見落としちまってたぜ!)
しかし影の薄さから司会者は完全に田所のことを忘れてしまい、そのまま午前の部を終えようとしたところをカムイが止めにかかる。
このまま終わられては、カムイとしても田所本人としても堪ったものではないだろう。
「来たぞ、恵の番だ!」
「「「「恵ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」」」」
司会者に促され、田所はおずおずと審査員&カムイの前に1つずつ鍋を置いていこうとすると、今度は大漁旗を掲げた屈強な漁師集団が大声で田所の名を叫んだ。
「み、みんな! なしてここにいるんだべえ!?」
「恵の晴れ舞台って聞いたからのう! 今日の漁は若い衆に任せて応援に来たんじゃあ!」
どうやら彼らは田所の身内で、地元から来た応援団らしい。厳つい強面の漁師たちと親しげに話す田所を見て、田所をバカにしていた生徒たちは呆気に取られてしまった。
「あ、『アンコウのどぶ汁カレー』です。どうぞお召し上がりください……………!」
「ほう、『どぶ汁』かいな! しかもカレー風味に仕立てるとは何とも珍しい!」
地元から来た心強い応援団に背中を押された田所、作った料理は【どぶ汁 (どぶじる)】。
茨城県北部から福島県南部の太平洋沿岸地域に伝わる漁師料理で、アンコウ鍋の一つでもある。
作り方としては、まず鍋に他の具材を入れる前に生のアンコウの肝を入れて火を通す。
肝はヘラでオレンジ色になるまで溶かして、ペースト状にするのがポイント。
次いでアンコウの身と白菜・大根・ネギなどの野菜を大量に加え、最後に味噌で味を整えて完成。
アンコウの身は水分が非常に多く、野菜と合わせて煮立てれば割り下や酒などを加えずとも充分な量のスープと化す。
このように作り方自体はシンプルなのだが、実際に作ろうとすると中々に難しい。
当然ながら、まず生のアンコウを使用するため、新鮮なアンコウを用意しなければならない。
さらにアンコウは水分の出方や肝の脂の乗り具合が個体ごとに異なることから、美味しく作るには慣れた人でなければ作れない。
しかも1回作るだけで20分以上付きっきりとなるので、大衆向けに用意することも困難なのだ。
「ほわぁ~~~。さっきの料理と違い、これまた何とも心が休まる味やなぁ~~~~♪」
「普通のどぶ汁は味噌仕立てにするのだが、そこにスパイスを効かせてカレー風味に仕上げたのか」
「旨味たっぷりのアンコウから出た水分のおかげで、『どぶ汁』と『カレー』が見事に結びついています♪」
「あ、ありがとうございます! アンコウも野菜も、私の地元で採れたものを揃えました。
少しでも私の地元の『味』を感じてくれたら嬉しいです…………!」
田所が使った食材は『アンコウ』のみならず、『小菊南瓜』『立川牛蒡』『赤筋大根』など地元で採れた野菜をサイドに据えていた。
同じ気候・同じ土地から採れた食材を数多く使うことで初めて得られる『味』がある…………即ち『一体感』!
田所の【どぶ汁カレー】は、まさに生まれ育った故郷によって育まれた味であり、それは田所の武器である『ホスピタリティ』を存分に発揮する結果となった。
(単に地元の食材で統一しただけでは、これほどの一体感は出ない。食材たちが喜び、旨味も活性化している。
田所が食材に選ばれた…………いや、食材たちが『田所のために』自ら旨味を強めたんだ)
地元の食材をふんだんに使い、最高の形にするべく田所が尽力したことで、食材たちは田所のために旨味を最大限発揮できるよう奮起。
その結果、合宿の時よりも格段に旨味を活性化させたばかりか、『食材』たちのことを想いながら調理していたため、合宿の時よりも味をまとめることが出来ていた。
カムイは食べずとも、目の前の料理は間違いなく自分に味を感じさせるほどの完成度であると理解する。
「この世すべての食材に、感謝を込めて、『いただきます』」
『食材』と『料理人』、二つの想いがシンクロした田所の料理にカムイは敬意を表した。
合掌および一礼をするカムイを見て、田所だけじゃなく審査員や観客たちもこれには驚愕!
だが姿勢や佇まいを正して料理を食べる姿から、カムイが田所の料理に『食材』と『料理人』への感謝をしていることが明らかだった!!!
あの【神域の料理人】が畏まって食べるほどの料理とはどれほどのモノなのか、来賓客は田所に注目する。
また生徒たちは、自分たちが落ちこぼれのレッテルを貼った田所がカムイに認められたという事実に顔をしかめていた。
(これが『どぶ汁』というものか、初めて食べる『味』だ。それに田所の心遣いも感じる、これが『田所の味』なのか…………うん、悪くない)
カムイは具材を一つ一つ噛み締めて食べることで、料理の味を楽しむと共に『田所の味』も楽しむ。
そうして汁一滴残すことなく『どぶ汁』を完食し、田所がどういう料理人なのかを理解した。
「『ごちそうさまでした』」
「あ、うん、お、粗末様でした。えっと、その、どうかな、カムイくん。私の料理、ちゃんと味を感じた?」
(まだ調理技術に拙さはある、味も薄い。しかしそれはこれからいくらでも向上させることが出来る問題だ)
単純な調理技術は間違いなく自分や四宮はおろか、十傑たちにも届いていないだろう。
だがそれでもカムイのサポート無しにここまで食材に選ばれ、旨味を活性化させることに成功した料理人は他にいない。
そのことを考えれば、調理技術の未熟さは些末な問題であり、田所は自分の期待に応えてくれたと言える。
故にカムイは今感じている気持ちを率直に伝えた。
「田所恵」
「っ、は、はい!」
「見事だ、成長したな。腕が上達したら、また食べさせてくれ」
「っ、っ~~~~~~~! うん、うん! わたし、もっともっと頑張るね♪」
【神域の料理人】と呼ばれ、『第零席』という天上の存在に自分の味が認められたことに涙ぐむ田所だったが、すぐに花が咲いたような笑顔を浮かべる。
実際、カムイがここまで誰かの料理を評価することは無かった。あの四宮の料理を食べた時でさえ、これほどの感想は出ていなかった。
そしてカムイの評価に田所以上に驚いたのが周りの者たちだ。
数多のプロが作る料理ですら興味を示さなかった【神域の料理人】が味を認めたばかりか、自ら『食べたい』と関心を見せたのだ。
カムイの反応を見て、来賓客も田所に興味と関心を寄せる。しかしその一方で、生徒たちの反応は様々だった。
田所を嫌う者たちは相変わらずだが、極星寮の面々は涙ぐむほど喜んでいる。
また十傑メンバーは『田所恵』という人物を強く記憶するとともに、『どうしてこれほどの料理人が今まで表に出てこなかったのか』と不思議に思っていた。
そうして出た田所の点数は……………『94点』! アリスには届かないものの見事二位に入るほどの高得点であり、本選出場の資格を得る。
これにより午前の部の本選出場者が以下のように決まった。
1位 薙切アリス 95点
2位 田所恵 94点
3位 新戸緋沙子 93点
4位 タクミ・アルディーニ 92点
この四名の中で田所は順位こそ二位ではあるものの、アリスの料理はどちらかと言うと『味』よりも『目新しさ』『意外性』『話題性』で加点されていた。
しかし田所は『どぶ汁』という昔ながらに親しまれる料理の『味そのもの』を高めた点数であり、カムイからの評価は間違いなく四人中最高の評価を獲得したと言える。
秘めたる実力がありながらも、アガリ症のために力が出せず、『落ちこぼれ』のレッテルを貼られ、蔑まれた日々。
仲間や家族に心配をかけまいと気丈に振る舞いながらも、影では人知れず涙を流した日々。
けれどそんな苦境にあっても歯を食いしばりながら耐え、この大舞台にて世界最高峰の料理人に自分の味が認められた。
『田所恵』という名の花が今ようやく開き、『結果』という名の実が結んだ瞬間である。
しかし当の田所本人は本選出場の資格を得たことよりも、カムイに『自分の味』『地元の味』が認められたことが嬉しく、応援に来てくれた地元の漁師団と一緒に喜び、笑い合ったのだった。
午前の部が無事?に終わり、本選出場者のうち四名が決まったというところで、午前の部のメインイベントとも言うべき、カムイの『特別模範調理』が行われようとしていた。
「ついに食べられるのね、カムイくんのカレーが♪」
「いやぁ、この日を夢にも見よったで! どんなカレーが出てくるか楽しみやなぁ♪」
「【神域の料理人】が生み出す神域の料理! 私の創作意欲が刺激される、何としても本にしなくては!」
先ほどまでの選抜戦の空気から一変し、会場中がカムイの作る料理に注目していた。
今回カムイのカレーが提供されるのは『審査員』『出場選手』『十傑メンバー』『VIP客』のみであり、一般生徒や一般客は食べることが出来ない。
また、このイベントは午前と午後の両方で行われるため、午前の料理を午後の選手は食べられないし、その逆も然りである。
出場選手も自分たちとカムイの料理にはどれほどの差があるのか気になっており、会場中の視線がカムイに集まる……………そしてカムイの調理が始まった。
「ほう、様々な貝類が揃えられている。しかも見たことが無い品種ばかりだ。つまり今回作るのは『貝カレー』ということか」
「そのようですな。しかし『貝』を使ったカレーとなると意外に難しい。はてさて、どのように仕上げるか気になりますな♪」
「それにしても、アレはただの貝ではないですね。アレは…………『乾貨 かんか』か!」
カムイが取り出したグルメ食材は『泡美』『ホタテンダーロイン』『スモークハマグリ』『エスカルアゴ』など色とりどりの貝類だったが、それらは全て『乾貨』にされていた。
『乾貨 かんか』とは、魚介類を干して乾燥させた中国独特の保存食である。高級食材で知られる『フカヒレ』もその一つ。
しかも単に保存するだけが目的ではなく、乾燥させた状態から戻すことにより、生のままでは味わえない複雑な旨味とコクが生まれるのだ。
『グルメ食材は新鮮であるほど良い』という元の世界の常識とは真逆の考え。
だが実際にグルメ食材を乾貨にすることで、間違いなく旨味とコクが増したことをカムイはこの世界に来てから学んでいた。
そんなグルメ食材の乾貨たちを、カムイは『エメラルドワイン』で種類ごとに蒸していく。
「おお! アレが噂に聞く【神域の料理人】の『庖丁式』! なんと見事な!」
「それにこの甘美で蠱惑的な香り! こんな香りは初めてだ!」
「貝をワインで蒸す、つまりは『ワイン蒸し』ね。ワインもかなり良いモノを使っていると見たわ!!!」
「『乾貨』を『ワイン蒸し』で戻すとは! しかも汁一滴出さない完璧な『戻し』。
まさに中華とフランスの調理技術のミクスチャー、想像しただけでヨダレが止まらん!!」
【ワイン蒸し】。食材をワインで蒸す調理法で、主に白ワインを使って貝類やエビ・カニに用いられることが多い。
食材の風味が引き立つのが特徴で、肉や魚にも応用が効く幅広い調理法と言える。
貝類をワインで蒸して乾燥状態から戻す。しかも旨味エキスが溢れないよう、すんでのところで止める神業を披露し、次いでデンプンを抜いた『ポークポテト』を蒸かして柔らかくする。
十分に柔らかくなったら、『黄金小麦』の小麦粉と各種スパイスを混ぜて練り上げ『ニョッキ』にする。
『ニョッキ』が出来上がったタイミングで、作っておいたワイン蒸しの蓋を開けると……………会場中に食欲のスイッチを連打する香りが広がった!
「ふわぁ~~~~♪ 良い香りだべぇ、どうやったらこんな香りになるんだろぉ?」
「この香り、ワインだけの香りじゃないな。貝類からの旨味エキスも含まれていて、なんて芳醇な香りなんだ……………!」
「これほど香り高いワイン蒸しは初めてだ! あのワインはいったい………!?」
「さっすが兄さん♪ あのワイン蒸しを今度はカレー風味に仕上げるのね!」
カムイが作った極上の『ワイン蒸し』、会場の誰もがこの『ワイン蒸し』をメインにカレーを作ると思っていた。
ガリガリガリィッッ、ギュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!
しかし会場の全員がカムイの行動に目を疑う! なんとカムイは誰もがヨダレを垂らすほど魅了されていた『ワイン蒸し』を、あろうことかミキサーにかけてペースト状にしてしまったのだ!!!
「なっ!? どういうことや、せっかくあれほどの『ワイン蒸し』を作ったっていうのに……………!」
「アレをカレー風味に仕上げるだけでも極上の美味となるはずだ、それなのに何故…………!?」
「あの『ワイン蒸し』がメインではなかったと言うの!? じゃあメインはいったい……………」
誰もがカムイの行動の意味を図りかねているが、それでもカムイは周りの雑音に耳を貸さずに調理を進めていく。
カムイの目に映るのは眼前の料理のみ、耳に聞こえるのは調理する音と『食材の声』のみなのだ。
ミキサーによってペーストにした『ワイン蒸し』を裏ごしして滑らかにし、独自に配合したスパイスを入れて香味と色を出すことでソースにする。
次に『脳ウニ』や『黄柑ウニ』などのウニ類の身を、黒くなるまで『モルス油』で揚げてムール貝の形に整える。
その後『グルメケース』から、泥抜きして『とある水』に浸しておいた『ハム貝』『クリームール貝』『松茸貝』『虹あさり』などの貝類を再び取り出して包丁で開いていく。
先ほどの乾貨とは違い、今度は生のままの貝たちを手元が見えないほどのスピードで開き、取り出した貝の身に『ニョッキ』を埋め込む。
瞬く間に埋め込み終わると、すぐさま揚げたウニの身で象った『貝殻モドキ』に入れ、ソースで煮込んでいく。
まったりと濃厚でコクのあるソースの香りが会場に充満し、ここに来てようやく全員がカムイの行動の意味を理解した。
「っ、そうか! さっきの『ワイン蒸し』は具材ではなく、『カレーソース』にするためだったのね!」
「ああ、カレーは基本『煮込み料理』。そしてその旨味は具材から染み出たものだが、貝類だと話が変わってくるからな」
えりなと司の言う通り、『煮込み料理』の煮汁の旨味は中にある具材から出たもの。
それが『煮込み料理』の特徴なのだが、魚介類を使う場合は単に煮込むだけでは『美味しい煮込み料理』にはならない。
何故なら野菜や肉類であれば、煮込めば煮込むほど柔らかくなり味わいも深くなるが、魚介類は煮込みすぎると身質が変化する。
魚なら身はグズグズになってしまうし、貝類であれば固くなってしまう。
かと言って煮込み時間が短ければ、今度は旨味が煮汁に染み出ないのでコクが物足りなくなる。
そのため魚介類を煮込む場合は、『具以外の食材』で煮汁にコクを出さなくてはいけない。
そこでカムイは、その役割に乾貨で作った『貝のワイン蒸しのペースト』を選んだ。
乾貨によって熟成された様々な貝類の旨味を『エメラルドワイン』でまとめあげてペーストにし、それをベースにカレーソースを作り上げたのだ。
「なんて規格外の調理法なんや! これが【神域の料理人】のセンスか!!!」
「あれだけ沢山あった貝類の熟成された旨味が内包したカレーソース、間違いなく我々が食べたことの無いほど美味に違いない!」
「ああ♪ たまらないわ、カムイくん! 絶対に私のモノにしてみせるんだから!」
もはや一秒たりとも待ちきれないと言わんばかりに興奮する会場。誰もがカムイの作る料理を見て食欲を剥き出しにしており……………ついに料理が完成した。
「出来たぞ」
カムイが人数分の料理を作り終えると、係員がそれぞれ運んでいく。当然ながら運ぶ途中で係員がヨダレを滝のように流していたことは言うまでもない。
そうして審査員と選手たちにはカムイが取り分け、係員が来賓客へ料理を運び終えると、カムイはいつも通りに佇まいを正す。
「この世すべての食材に、感謝を込めて、『いただきます』」
「「「「「いただきます」」」」」
全員がカムイに倣って合唱と一礼をし、ナイフとフォークで『貝殻モドキ』に埋め込まれている『ニョッキ』を食べる。
その旨味の広さと深さはまさしく『海』そのもの! 貝の持つ旨味とコクに、全員が吞み込まれた!!!!
「う、うんまああああああああああああああああああああ!!! なんやこのとんでもない美味さは!?
『貝』という名の旨味が荒波の如く押し寄せてくる! しかもその強さは照りつける太陽によって熟成されとるばかりか、そのコクは深海のように深い!!!」
「豪快な調理であったが、実際は途轍もないバランスの上に成り立っている!
ソースに使用した乾貨の種類や分量、『貝殻』にしたウニの分量、貝ごとに埋め込んだニョッキの味わいと分量! どれか一つでも間違えば、たちまち崩壊してしまう繊細な料理だ!」
「日本は四方が海に囲まれていることで、豊富な魚介類に恵まれています! 海の幸だけで構成されたこのカレーは、まさに日本ならではのカレーと言えるでしょう♪」
「ん~~~~~♪ 熟成された濃厚な貝の味! その旨味をたっぷり染み込んだニョッキ! ニョッキの中に入ってる新鮮な貝の歯ごたえと上品でコクのある美味しさ!
貝だけでこんな極上の絶品に仕上げるなんて、流石は兄さんね♪」
「ニョッキにはソースの味を染み込ませているが、中身の貝には行き渡っていない。
敢えて貝にはソースの味を染み込ませないことで、熟成ソースの乾貨と新鮮な具材の貝が見事に調和している! ここまで繊細な調理が人間に可能なのか!?」
「黒くなるまで揚げたウニで作った『貝殻』が実に香ばしい、しかも柑橘系の清涼感あるスパイスが混ぜられている。
この舌休めのおかげで、濃厚な味に疲れた舌を爽やかさと香ばしさが新しくしてくれる! なんて完成度なんだ!!」
「お、おいひい~~~! こんなに貝の旨味が溢れてくる料理、初めてだべぇ~~~♪」
「う~~~~ん♪ ソースの味が染み込んでいながらも、ニョッキの持つ素朴な甘さは程よく残してる。これはスゴイね!」
「っ~~~~! これが『第零席』の料理ってワケかい……………確かに私とは次元が違うね」
「お、お、お、美味しい~~~~~~~~! スパイシーな貝味の濃厚ソース、モチモチのニョッキ、香ばしさ抜群のウニ、プリップリで旨味がタップリの新鮮な貝! こんな美味しい貝カレー、食べたこと無いよ〜〜〜!!!」
カムイのカレーを食べた誰もが大絶賛し、猛烈な勢いで食べている。
乾貨にした様々な貝の熟成された旨味が一つになったカレーソースと、敢えてソースの味を染み込ませなかった具材である新鮮な貝類の旨味が極上の対比を生み出し、皆の食べる勢いは一向に衰えることが無い!
(確かに美味しい! こんな濃厚な貝料理、食べたことが無い! でもそれだけじゃない。
この僅かに感じる『渋味』、これがこの料理の土台となって貝やスパイスの味をより明確にしている! この『渋味』はいったい…………?)
しかし誰もがカムイのカレーに夢中になっている中で、『神の舌』を持つえりなだけはこの料理の『核心』とも言うべき『隠し味』に気づいていた。
けれどあまりにも微妙な隠し味のため、流石のえりなでもその正体まで見抜くことは出来なかった。
やがてカムイの作ったカレーを全員が食べ終わり、天上美味の貝カレーを堪能した面々は一人残らず恍惚な表情を浮かべている。
もし審査員が午後も同じメンバーで続投するようなら、午後の選手の料理はまったく口をつけないだろう。カムイのカレーはそれほどまでに満足感を与える逸品だった。
カムイの『特別模範調理』が終わったことで選手と審査員たちは退場、1時間のインターバルを空けた後に午後の部がスタートする。
前半の激闘とカムイの料理を見て、午後のメンバーはやる気と気力を漲らせていた。
「おめでとう、恵! まさか、あのカムイくんに認められるなんて思わなかったわ!」
「う、うん、ありがとう、私も夢みたい♪ でも悠姫ちゃんが…………」
「気にしないで、恵! それだけ恵の料理が凄かったってことなんだから。こうなったら本選では恵を思いっきり応援しちゃう♪」
「よぉタクミ、本選出場おめでとさん。俺も負けてられねえな♪」
「当たり前だ、幸平。キミとは本選で決着をつけなくてはいけないのだからな。必ず勝ち上がって来いよ」
「おうよ♪ イサミは残念だったなぁ、でも良い料理だったぜ。今度俺にも作ってくれよ!」
「うん、いいよ~~~~」
「緋沙子、お疲れ様。本選出場おめでとう、私も主として鼻が高いわ。それから…………アリス、アナタにはハナシがあります」
「あ、ありがとうございます、えりな様! 感無量です! ただ、どうして目の輝きが無くなってるのでしょうか?」
「フフフ♪ あらあら、いくら私に先を越されたからってそんなに睨むことないじゃない♪」
「っ、そう、いい度胸ね……………殺「お、落ち着いてください、えりな様! お気を確かに!」 離して緋沙子! この女だけは許すわけにはいかないの!!」
仲間や友人たちが出場者を労うも、一部では乱闘騒ぎになろうとしている。
だがいつまでも賑やかではいられない。周りの者は仲間であり友人であり、何より『ライバル』でもあるのだから。
午後の部には幸平や他の極星寮メンバーが集まっているほか、アリスの付き人である黒木場リョウ。
そして今大会の優勝候補で、スパイスの扱いなら一年生筆頭とも呼べる葉山アキラが出る激戦区。
【秋の選抜戦】。午前の部の熱を引き継いだまま、午後の部が開幕する。
『カタツムリ(エスカルゴ)』や『ナメクジ』って、実は貝の仲間だったんですね!
『貝カレー』を調べてたら、スパイスやカレー粉で炒めた『エスカルゴ料理』が出てきたのでビックリしました。
なお、カタツムリやエスカルゴを食べる場合は、2〜3日絶食させて糞やら何やらを全部排出させる必要があるそうです…………大変ですね。
【本日のグルメ食材】
ハム貝・ホタテンダーロイン・スモークハマグリ・エスカルアゴ・エメラルドワイン・ポークポテト・脳ウニ・黄柑ウニ・モルス油・松茸貝・虹あさり
【オリジナル食材】
クリームール貝
それでは皆さん、次回で♪
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