神域の料理人が往く食戟のソーマ   作:あさやん&あさやん

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ど、どうにか15種類の料理を書き切りました……………燃え尽きたぜ、真っ白によぉ。おかげで文字数がえらいことになりましたwww

そんな『ヤムチャしやがって』により疲労困憊となった作者ですが、定期投稿は意地でも崩しませんのでご安心ください♪




第二十九皿(後編)

 

 

 

 八戦目を終えて、ここからは折り返し。午前の部は田所が最後であったため、九戦目以降は午後の部の選手が作った料理のアレンジとなる。

 

 

 

 次にカムイが作ったのはグルメ食材の『ゴールドシュリンプ』を使った【エビカレー】。

 

 これだけなら特に驚くことではないのだが、観客が何より目を引いたのは……………大量の『ゴールドシュリンプ』を用意していたことだった!

 

 その量は金色の光を放つ『ゴールドシュリンプ』の輝きだけで目が眩むほどである!

 

 

 まずは大量の『ゴールドシュリンプの殻』とスパイスを『モルス油』で煮だして、『スパイシーエビ油』を作った。

 

 そのあと殻を剥いた『ゴールドシュリンプの身』を金の包丁の背で叩き、荒く刻んだ『クワイ』を混ぜて作った『つみれ(エビしんじょ)』を『スパイシーエビ油』で揚げる。

 

 比較的小さいサイズの『ゴールドシュリンプ』を選んでいたため、『つみれ』にして食べ応えを出す狙いなのだろう。

 

 そして残った『スパイシーエビ油』に『七味酒』と『サマーウィスキー』『エナジーヘネスィー』、さらにスパイスを追加で投入。

 世にも珍しい金色に輝く【ゴールドシュリンプのアメリケーヌソース】が出来た!

 

 その【アメリケーヌソース】に『エビのつみれ』を入れて煮込み、トロみが出てきたところで百尾分の『ゴールドシュリンプのミソ』を加えた!!!

 

 

 そう、カムイが大量の『ゴールドシュリンプ』を用意したのは『エビミソ』を取るためだったのだ。

 

 『エビミソ』は料理に強烈な味とコクを与える、しかしエビ1尾から取れる『エビミソ』の量はごく僅か。そのため大量の『ゴールドシュリンプ』が必要だったのだ。

 

 そうして出来上がったエビ百尾分の旨味を内包した『エビカレー』を食べた審査員たちは『食欲の獣』と化し、退学者たちの料理は一口だけ食べて後は見向きもしない。

 

 退学者たちも自分が作った料理のことなど忘れ、只々カムイが作ったカレーを貪り、最後にはあまりの美味さに気絶してしまった。

 

 なお、この料理の基となった料理を作った黒木場は会場にいなかったため、アリスが後で持っていくことになった。

 

 

 

 とうとう100人目となる勝負、ここまでくると150人抜きは時間の問題としか思えなかった。

 

 次に作る料理は水戸が作った【東坡肉(トンポーロウ)丼】をアレンジした【咖哩魯肉飯 カレー風ルーロウハン】

 

 【魯肉飯 ルーロウハン】は台湾発祥の料理で、甘辛く煮込んだ豚肉をご飯の上に乗せたものである。

 細かく刻んだ豚バラ肉を、しょうゆ・砂糖・八角・生姜などで甘辛く煮込んで作るため『東坡肉 トンポーロー』と類似点は多い。

 

 

 カムイが使う豚肉はグルメ食材の『生姜豚』を熟成させたもの。さらに通常はバラ肉を使うところを『頬肉』を選択した。

 『頬肉』は『バラ肉』より脂は少ないが、その代わりキメ細かで柔らかな肉質と、その肉の繊維から溢れる肉汁が特徴の部位である。

 

 しかしカムイは『豚の脂の旨さ』も余さず味わえるよう、使う油に『コロンナータ』というラードを溶かしたものを使用した。

 

 

 【コロンナータ】はイタリアのトスカーナ州北西部にある集落で作られるラードで、その歴史は2000年以上と非常に古く、かのミケランジェロも愛したと言われている。

 

 地元の特産品である大理石で作った箱の中に豚の脂身部分・粗塩・黒胡椒・ローズマリーなどの香草やスパイスを詰め、箱の中で熟成させて作られる。

 大理石に含まれる炭酸カルシウムが脂身の旨味を濃厚にするのだが、その熟成期間は最低でも半年。長いモノでは五年以上かけるとのこと。

 

 もちろん今回使用する【コロンナータ】はカムイが『生姜豚』の脂身から作り、スパイスやハーブと合わせて熟成させた特製である。

 

 

 カムイは甘辛く煮込んだ頬肉をサイコロ状に切り、米はシメジなどのキノコ類と一緒に入れ、『マジックスパイスウォーター』を使い土鍋で『カレーピラフ』を作る。

 

 さらにキウイ・レモン・玉ねぎ・ほうれん草を『藤椒』などの柑橘系香辛料と『コロンナータ』で作ったスパイスオイルに漬けたピクルスを用意する。

 

 丼に『カレーピラフ』をよそい、カレー風味のタレをかけたら頬肉とピクルスを盛り付ける。

 そしてもう一度タレをかけたら蓋をすると、『蒸し器』で1分半ほど蒸し上げて完成。

 

 柔らかくキメ細かい『生姜豚の熟成頬肉』にスパイスの風味が染み込み、『カレーピラフ』のまろやかな辛味・甘味・渋味・苦味が合わさることで旨味が爆発!

 

 強烈な旨味によって疲れた舌は各種ピクルスによって新しくなり、食べれば食べるほど食欲のスイッチを連打してくる!!!

 

 

「頬肉はバラ肉と違って肉質が細かいから、旨味が濃い上に複雑で深い! それにこのナッツのようなフレグランス、肉の味わいを深めるため熟成させやがったな!!

 熟成頬肉の旨味と『コロンナータ』の濃厚で香り高い脂の美味さが溶け合って、舌がとろけちまいそうだ!!

 けどそれだけじゃねえ、『肉』『米』『タレ』『ピクルス』に使った別々のスパイスの風味が絡み合って、より一層のコクを生み出してる!」

 

 

 カムイの料理を食べて水戸は自分が『丼の本質』を理解していなかったことに気づく。

 

 水戸は得意の肉をカレーにどう活かすかを考えていた。さらにライスとカレーを使い、どうやって具である『肉』を引き立てるかに重きを置いた。

 

 しかし、それは大きな間違いである。

 

 そもそも【丼の主役】は具でもなければ米でもない、『具』『米』『タレ』の三要素すべてが主役なのだ。

 謂わば三つの要素を正三角形のように等しく尖らせた上で、最後に『丼』という丸で囲い込むようなもの。

 

 そうすることで『具を食べると美味い』『米を食べても美味い』、『タレが染み込んだ具と米を同時に食べればもっと美味い!』という味の爆発力を持った【本物の丼】となる。

 

 しかし水戸は『具』を主役とし、『米』『タレ』を脇役に据えてしまった。

 そのため『具』『米』『タレ』はそれぞれ美味しいものの、全体としての一体感が無く味に爆発力が生まれなかったのだ。

 

 しかも水戸は丼の『蓋』を【ただ置いただけ】であった。

 

 恐らく『丼だから蓋を置く』という考えであったのだろう。しかし『丼の蓋』には重要な意味がある。

 

 丼に『蓋』をして少し時間を置くことで、具材とタレの旨味が米に染み込み、その米を『蓋』によって密閉されたことで籠もった熱気がふっくらとさせることで、『味の一体感』が増すのだ。

 

 そして『蓋』によって閉じ込められていた『旨味が一体化した香気』が丼の『蓋』を取ることで爆発、一気に食す者の食欲を引きずり出し魅了する。

 

 これは一流店の『うな丼』や『天丼』で用いられている手法であり、カムイはより短時間でより熱々でより一体感を増すよう『蒸し器』で蒸していた。

 

 何気ないこの一手間こそが、『丼』の完成度を最高まで高めるのだ。

 

 

「くぅっ、最後に蓋をして蒸したことで『具』『米』『タレ』の一体感が増した旨味!!

 そうか、【丼】の本質は『具』でもなければ『米』でもない。『具』『タレ』『米』の一体感が生み出す【味の爆発力】だったんだ!!!」

 

 『具』『タレ』『米』が調和した味の相乗効果によって生み出される【味の爆発力】は、当然のごとく退学者たちの料理を跡形も無く蹴散らした。

 

 

 続く30人をカムイは【カレー風納豆あんかけチャーハン】【黒いポタージュうどん】【スモークサーモンのビリヤーニ】で悉く撃破した。

 

 

 【カレー風納豆あんかけチャーハン】。

 

 一般的に納豆に使われる『黄大豆』ではなく、よりネットリとしたコクのある『黒大豆』を納豆にし、グルメ食材の『チーズ白菜』で作ったキムチを細かく刻んだものと混ぜる。

 

 さらに混ぜる途中で、『エクストラヴァージンオイル』を加えて風味と旨味を立てた。

 

 『ルウ』は熟成されたコクを持つ『黒豆の豆板醤』をベースに『マジックスパイスウオーター』と『醤油麹』にスパイスを加え、さらに『オクラ』でトロミを出す。

 

 そして『マジックスパイスウオーター』で炊いたライスを『ネギ油』と『スパイスオイル』で炒めた『スパイシー葱チャーハン』にルウを乗せた料理だ。

 

 納豆と醤油麴、そしてオクラによるネットリとした粘り気がトロミをつけていることから、アメリカ南部発祥の『ガンボ』に近い一品とも言える。

 

 

 【黒いポタージュうどん】。うどんはグルメ食材である『岩じゃが』から作る『豪雪うどん』に『イカスミ』と『黒豆』と各種スパイスを練り込んで作った。

 

 スープは『岩じゃが』を擦り下ろしたモノに『ナスのピューレ』『黒にんにくの擦り下ろし』『黒ゴマのペースト』を加えて、ヴィシソワーズ風の黒いスープにする。

 

 スパイスは『ケシの実』『麻の実』を中心にしたシーズニングスパイスで風味付け。

 さらにうどんの一部をスパイス油で揚げて容器を作り、その中に麺とスープを注ぐ。

 

 トッピングに『マジックスパイスウオーター』に『黒酢』を混ぜて作った『スパイス卵のポーチドエッグ』を乗せれば完成。

 

 

 丸井が作った『白いポタージュうどん』に対し、カムイは真逆の『スープ』も『麺』も真っ黒な料理を作ったのだった。

 

 スパイスの風味漂う『うどん』はイカスミと黒豆のコクに加えて、シコシコとした弾力で力強い。

 スープも炭火で焼いたナス・焙煎した黒ニンニク・黒ゴマのペーストによりコクと旨味がタップリ!

 

 しかも『七味唐辛子』にも使われている『ケシの実』と『麻の実』の麻薬さながらの風味が、スープのしつこさを消して食す者を虜にする。

 

 そこにトッピングである『スパイス卵のポーチドエッグ』を割れば、鮮烈なスパイスの香り漂う黄身によって更なる旨味が顔を見せた。

 

 

 【スモークサーモンのビリヤーニ】。グルメ食材の『ストライプサーモン』をリンゴではなく、シナモンの木で燻製にし旨味を凝縮させたカレーである。

 

 『スモークサーモン』や『鮭節』で知られるように『鮭(サーモン)』と燻製の相性は抜群。

 

 まずカムイは『ストライプサーモン』から作った『サーモンオイル』にスパイスの香りを移した後で燻製にし、『スモークオイル』にした。

 

 『スモークオイル』は脂そのものを燻製にすることで脂のくどさやアク、今回であれば鮭特有の生臭さも打ち消し、燻製香が脂の美味さを何倍にも高める技法である。

 

 そうして出来た『スモークオイル』でキノコや鮭の切り身を炒め、『バスマティライス』と一緒に『鮭節の出汁』を加えて土鍋で炊き上げ『ライス』を作る。

 

 『ルウ』は『スモークサーモンのスパイシーサワークリームソース』。

 

 スモークした『ストライプサーモン』の身を裏ごししてペーストにしたら、エストラゴンなどの清涼感のあるハーブやスパイスを加える。

 最後にサワークリームと合わせてカレー風味のクリームソースに仕上げたのだ。

 

 『燻製』と『カレー』。主張の強い調理法を『鮭(サーモン)』という食材が橋渡しとなって結びつくだけでなく、相乗効果を発揮して『鮭(サーモン)』という存在をより一層輝かせる。

 元々『鮭』に限らず、『白身魚』は『カレー』という調理法と相性が良いのだから。

 

 

 伊武崎は味のまとめ役に『燻製した藻塩』を使っていたが、カムイはスパイスそのものと相性の良い『油』…………しかも『スモークオイル』を使ったばかりか、『サーモンオイル』によって味の一体感を更に演出していた。

 

 そんな『燻製』と『スパイス』が混然一体となったカレーを一口頬張れば、『鮭(サーモン)』の旨味とスパイスの鋭い風味が二段構えの香りと美味さとなって、脳を揺さぶり襲いかかってくる!

 

 

「お、美味しい〜〜〜〜〜♪ 納豆に醤油麹だけじゃなく、豆板醤といった異なる手法で熟成された豆の旨味で脳が痺れちゃう!

 さらにネギの香りが鮮烈なチャーハンが、納豆の美味しさを何倍にも引き立てているわ!!!」

 

「っ、『スパイス卵』の鮮烈な風味だけじゃない! スープに使われているナス・黒ニンニク・黒ゴマの鮮やかなコクが、これまた旨味とコクがタップリの『豪雪うどん』と合わさって、濃厚極まりない旨味の渦へと引きずり込んでいく!!

 ジャガイモをメインに据えながら、なんて暴力的なまでの旨味とコクなんだ! 僕の料理とは次元が違う!!!」

 

「っ、チィ、『シナモンの木』で鮭やオイルを燻製にしたことで、穏やかな甘い香りが料理のしっかりとした土台になっていやがる!

 そればかりか、『燻製』と元々相性の良い『サーモン』を選ぶあたりも抜かりがねえ!!

 燻製の香りとスパイスの香りが『食材』と完璧に調和すると、ここまで相乗効果を発揮するのか!!!」

 

 

 榊は『発酵した大豆の旨味』、丸井は『ジャガイモのコク』、伊武崎は『スパイスと燻製の香り』が料理の根幹を成していた。

 

 しかしカムイはその考えを踏襲し、さらに相性の良い物を合わせることで、それらの旨味をより一層高めたのだ。

 そこにカムイ自身の調理技術やグルメ食材が加われば、その美味さはもはや別次元の料理となる。

 

 三人はカムイと自分たちのレベルの違いを骨の髄まで思い知らされ、退学者たちはそのレベルの違いに絶望し膝を屈した。

 

 

 いよいよ残すはあと20人。どう見ても結果は火を見るよりも明らかであるはずなのに、退学者たちは尚も悪あがきを見せる。

 

 

 「まだだーーーーー!!! まだ終わってねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 「そ、そうだ! コイツも130人と戦って、さすがにもうヘトヘトだろ…………!」

 

 「体力も集中力も切れてる今なら、私たちにだって勝てるチャンスがあるわ!!!」

 

 「この時を待ってたわ! これで勝って、今までの負けを全部チャラにしてやる!!!」

 

 どうやら残りの者たちはカムイの体力切れを狙っていたようだ。

 確かにルールでは149人が負けても最後の1人が勝てば今までの黒星が無くなり、退学者側の勝利となる。

 

 もっとも、『疲れたから料理のクオリティが下がる』という【可愛げ】がカムイにあればの話ではあるが。

 

 そしてそのことを誰よりも知っているのは、完全に観戦モードで呑気にカムイの『三不粘 サンプーチャン』を食べている十傑メンバーだった。

 

 

「うめーーーーー!!! シュワシュワの炭酸が卵やフルーツの甘味と同時に味わえるなんて初めての味わいだぜぇ♪

 それにしても…………なぁおい聞いたか、今の? 『今なら自分たちでもカムイに勝てる』だってよ♪」

 

「ホントですね、指を跳ね返すような弾力なのに餅のようによく伸びる。舌を包み込む快感は一種の『官能』だわ。

 まぁ、良い作戦だとは思いますよ? 『作戦そのもの』は、ですが」

 

「単純な甘味じゃねえ。桃、栗、柿なんかの秋の味覚がジンワリと顔を出してきやがる。

 全く未知の味わいと新食感、売り方を考えればコレだけで一財産築き上げられるぞ。

 ああ、悪くはねえ考えだ。『実現不可能』だという点に目をつぶればな」

 

「ん〜〜♪ 中国に行った時に一度だけ食べたことあるけど、このはち切れそうな弾力・ツヤ・張りはまさに『三不粘』そのもの!!

 だけど爽快感抜群の炭酸と強烈な甘味、コクのある深い旨味に舌を包むネットリ感とホロホロ食感は、まったく新しい美味さだよ♪

 ハッ! バカだね〜〜、そんなんで勝てると思ってるんだから。ホンット雑魚ってのはどこまでもお気楽だよ」

 

「見た目はシャボン玉のように透き通っているのに、中身は甘味と旨味のエキスが詰まっている。

 舌を包み込むネットリとした舌触りは『快感そのもの』、どうすればこんな料理が作れるんだろう?

 よっぽど動揺してるんだろうね。カムイくんが息一つ乱してないことにすら、まるで気づいていないんだから」

 

「なんとも面妖な料理よ。まるで生きているような弾力と張りであるのに、ひとたび口に含めば未知の味わいの虜になってしまう魅力に溢れている。

 まったく大した男だ。百人以上の料理人をねじ伏せていながら、顔色一つ変えずに平然としているとはな」

 

「この透明さは何を使ってるんだろ? 『吉野葛』や『水飴』じゃこんなに透き通ったりはしない。

 後でカムくんにジックリ聞かないと…………疲れて体力と集中力が切れるのを待つ? 消耗させれば自分たちでも倒せる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「ヌル過ぎるだろ」」」」

 

 

 

 『シャボン鳥の卵』と『大トロ大豆のデンプン』によってまとめあげられた『シャボンフルーツ』の甘さと炭酸、『スプナッシュ』の秋の旨味を内包する【カムイ式 三不粘(サンプーチャン)】。

 

 十傑メンバーは未知の新食感スイーツを堪能した感想を会話の前半に持っていきながら、後半は退学者たちを可哀想なモノを見る目を向ける。

 

 ただ、そのあまりの認識の甘さに蔑む声が揃ってしまった。

 

 

「アイツら、自分たちが『ナニ』と戦ってるのか分かってないだろ。相手は俺らが束になっても大敗を喫した、正真正銘の『怪物』だぞ」

 

「そんなマトモな方法で勝てれば苦労は無いさ。『第零席』の称号はそれだけ『規格外な実力者の証』なんだからな。

 ましてや世界が【神域の料理人】と称する男に、その程度の小細工が通用するはずがない」

 

 【神域の料理人】という人智を超えた存在を、人間の尺度で考えている時点で勝算など皆無である。

 

 退学者たちには想像すら出来ないだろう…………相手がかつて1つの世界の消滅を、1つの料理で救った料理人の1人であるということを。

 

 

 最後は葉山と幸平のカレーのアレンジ。葉山の料理のアレンジは【クエのパイカレー】、幸平の料理のアレンジは【スパイス卵のカレー風トマトリゾット】である。

 

 

 【クエのパイカレー】はハタ科の魚で50キロ以上ある『クエ(別名はアラ)』の唇・目玉・カマ下の部分のみを使用した贅沢極まりない逸品。

 

 まずは焼いたクエの骨をぶつ切りにして『エアアクアのマジックスパイスウオーター』で出汁を取り、さらにスパイスを加えて煮詰めてカレーにする。

 

 具材となる唇・目玉・カマ下の肉は『七味酒』で軽く酒蒸しにしてから、カレーに入れて『七味ハーブ』を細かく刻んだものを振りかける。

 

 葉山はカップの容器にカレーを入れてパイ包みにしていたが、カムイは容器もスパイスを混ぜ込み、更には『逆さ折り』で香ばしさをアップさせた『カレーパイ』を作った。

 

 『逆さ折りカレーパイ』の中に『クエのカレー』を入れてオーブンではなく、タンドールで焼き上げる。

 タンドールが放つ炭火の遠赤外線効果により、カレーとカレーが染み込んだパイ部分が乳化し旨味が限界突破。

 

 しかもパイはカレーの染み出しを防ぐべく9回折ることで3の9乗(19863層)の厚さを実現、『逆さ折り』と『遠赤外線効果』によって香ばしさも限界突破。

 

 最高の食材を卓越した調理技術によって、旨味と香ばしさの上限を破壊し累乗的に高めたのが【クエのパイカレー】なのだ。

 

 

 【スパイス卵のカレー風トマトリゾット】は、これまでのカレーとは異なり『甘いカレー』である。

 幸平のカレーは『卵』『マンゴー』『ハチミツ』『牛』『リゾット』の五つが味の柱となっていた。

 

 そこでカムイはその五つの要素を最大限発揮するべく、シナモンやカルダモンを中心とした甘く清涼感ある風味のカレー……謂わば『デザートカレー』とも呼ぶべき、新しいカレーを作りあげた。

 

 

 まず『リゾット』は『極楽米』を炒めてスパイスの香りを移した『モルス油』でコーティング。

 『ネオトマト』のペーストと一緒に『マジックスパイスウオーター』から作った『白毛シンデレラ牛のフォン』で炊いてから『カレールウ』を入れる。

 

 『ルウ』はタマネギ・かぼちゃ・アボガド・完熟マンゴーに加え、グルメ食材の『カロリーバナナ』『サンシャインオレンジ』『レベル100のビックリアップル』・『ネオトマト』・『ゴールドにんじん』を擦り下ろし、ココナッツミルク・ピーナッツペースト・カッデッージュチーズ・『ミルクジラ製生クリーム』『ハニードラゴンのハチミツ』『熱を加えたドドリアンボム』をベースにスパイスを効かせたものである。

 

 リゾットを包むオムレツは『スパイス卵』を黄身と白身に分けて裏ごし、白身を泡立てたものに黄身・『バニラにんにくのすりおろし』・『ミルクジラ製生クリーム』を加えて作った『スパイシースフレオムレツ』。

 

 オムレツでリゾットを包んだら『ミルクジラ製生クリーム』と『スパイス卵』に、エストラゴン・タマリンド・ソレルを中心とするハーブやスパイスを入れて作った『ソースシャンティ風カレーソース』をかけて完成。

 

 

 

「ト、トロトロになった目玉やアラの旨味が舌の上で爆発する! カレーに溶け出しているクエの濃厚な旨味も堪らない!!

 タンドールでカレーを焼くなんて考えつかなかった! パイにカレーが染み込んでいる部分を食べると旨味と香ばしさが渾然一体となって格別の味だ!!!

 特に『逆さ折りカレーパイ』、パイ特有のサクサクした香ばしい食感は俺の作ったナンでは決して出せない…………!」

 

「なんて甘くてコクのある美味さだ! スパイスの辛さと香り、トマトの酸味、フルーツの甘さが一体となってリゾットの旨味を爆発させてやがる!

 そのうえアツアツトロトロのオムレツと冷たくて濃厚なクリームソース!

 真逆の温度がこんなにスパイスの風味を異なる形で際立たせるのかよ!?」

 

 

 【クエのパイカレー】は葉山の作った料理よりも魚の美味さだけではなく、『器の香ばしさ』と『包んだものとカレーが合わさった美味さ』においても遥か上を行っていた。

 

 また葉山はタンドールではなくオーブンで仕上げたことでカムイの料理とは焼き上がりで決定的にかつ圧倒的な差が出来てしまったのだ。

 

 

 【スパイス卵のカレー風トマトリゾット】は旨味の基盤を『フルーツの甘さ』に統一することで、『米』『カレー』『卵』『牛』『ソース』の味が全て調和し相乗効果を発揮していた。

 そのため味だけではなく『一体感』でも幸平のカレーとは一線を画すものとなっている。

 

 『卵』と『フルーツ』の相性の良さは言うに及ばず、『米』と『フルーツ』を合わせて作る『リゾット』はメジャーである。

 

 また『牛肉の時雨煮』で知られるように『牛の旨味』は『甘味』と相性が良く、ハンバーグやビーフシチューでお馴染みの『デミグラスソース』は『牛の旨味』と『トマトの酸味』の結晶。

 

 つまりカムイの【スパイス卵のカレー風トマトリゾット】は『辛さが甘みを伴った旨味を引き立てる』という規格外のカレーながらも蓋を開ければ、全ての食材が相乗効果を発揮するよう作られていたのだ。

 

 『食材の声』を無視し、単純に旨味を足し合わせただけの幸平のカレーとは比べるべくも無い。そしてそのことは食べている幸平本人が一番痛感していた。

 

 

 

 

 

 こうして150名いた退学者たちは全員カムイのカレーを食べて、その圧倒的な旨味を前に完膚なきまで打ちのめされ、茫然自失のまま学園を後にする。

 

 この日以降、彼らが『食の世界』に関わることは無かったという。

 

 150人の若き料理人を再起不能にする…………その惨状はかつて『修羅』と呼ばれた男がもたらした光景よりも遥かに凄惨なモノであり、明らかな格下相手でも一切の容赦をしない姿は『神』の如き冷酷さを実感させる。

 

 また、選手たちは自分のカレーの考えをそのままに遥か高次元の料理へと昇華させたカムイに戦慄と恐怖を覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、それ以上に闘志を燃やしていた!!!

 

 

『料理を作るならここまで踏み込んでみろ』

 

『俺に認められたいなら、このぐらいの料理を作れ』

 

『俺と戦うならこれ以上の料理で挑んで来い』

 

 

 カムイがテーマを敢えて『カレー』にし、自分たちの料理を進化させた料理を作ったという行為が、そのような言葉なき挑戦状に思えたのだ。

 

 無論カムイにそのようなつもりはなく、ただ選手たちのカレーを食べて『自分ならこうする』と思ったから作っただけに過ぎない。

 

 

 

 カムイに挑戦できるのは選抜に優勝した一人のみ。選手たちの優勝にかける熱き思いは最高潮に達したのだった!!!

 

 

 






ってなわけで、ここしばらく『グルメ食材』を使ってなかったので、その分を今話で暴れさせました。

早く本戦に話を進めるためとあまりにも長いと読みづらいと思い、急遽今回のみ連続投稿としました。

【本日のグルメ食材】
『ゴールドシュリンプ』『七味酒』『サマーウィスキー』『エナジーヘネスィー』『生姜豚』『チーズ白菜』『岩じゃが』『ストライプサーモン』
『白毛シンデレラ牛』『カロリーバナナ』『サンシャインオレンジ』『ビックリアップル』『ゴールドにんじん』『ハニードラゴンのハチミツ』『バニラにんにく』『ミルクジラ製生クリーム』

それでは皆さん、次回で♪
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