スタジエール中はグルメ食材は出さない予定です。流石にTPOに合わなさすぎますからwww
カムイが四宮の店にスタジエールとしてやってきて数日の後、『SHINO’S TOKYO』は無事プレオープンの日を迎えた。
『プレオープン』とは、正式な営業開始(グランドオープン)の前に運営やオペレーションを確認するための試験的な営業である。
英語では「pre-opening」と呼ばれ、「プレ」は「〜の前に」という意味。店舗やサービスの体制、スタッフ教育、動線やサービスの改善点を事前に把握することが主な目的となる。
「オハヨウ、カムイ! 頼んでおいたことはやってクレタ?」
「ん、ジャガイモの皮むき・エビの下処理・ウニの下ごしらえ、全部終わった」
「ワオ! スゴイ、食材が輝いているように見えるヨ! こんな状態の食材なんてハジメテ!」
「カムイ、ソースに使うブイヨンの仕込みは終わったか?」
「ん、味見よろしく」
「ん? ずいぶんと色が無いな。どれどれ………っ、こ、これは、なんて深い味とコクなんだ!
これだけで十分スープとして使えるぞ! 食材も調味料も言った通りのものを使っているはずなのに、いったいどうやって!?」
「作り直すか?」
「い、いや、これでいい。ソースの味の調整はこちらで行う」
スタジエールということで見習いのような下働きを任されたカムイ。しかしこの手の雑務は修行時代にひたすらやらされてきたことなので、全く問題無かった。
それどころか、カムイが食材の下処理などを行うことで食材の旨味が活性化するため、シェフにとっては最高の状態で食材を扱うことが出来るのだ。
むしろ店からすれば、これからの雑務は全てカムイに任せたいぐらいである。
「全員、揃ったな。間もなく最初のお客様が来られる、配置につけ。カムイ、お前は全体のサポートに回れ」
「「Oui、Chef!」」
「ウィ シェフ」
四宮の言葉に全員が同時に返事をする。フランス料理の厨房において、シェフの言葉は絶対遵守。
一切の意見や反論は許されず、発することが出来るのは『Oui、Chef』の一言のみ。
アベルもリュシも四宮に言われるまでもなく既に配置についている。カムイはプレオープンで出されるルセットを確認、あらゆるケースにおける調理手順を一瞬で想定した。
やがて最初の客が来店してくる。
その瞬間、四宮・アベル・リュシの三人はかつてない感覚に襲われた!!!
(っ、何だ、この感覚は………!?)
(まるで身体の隅々まで自分の感覚が行き渡っているようだ! 目の前の料理の状態も、見ただけで手に取るように分かる!!!)
(頭が氷のように冷たくなってるケド、身体がマグマのように滾っテル!!!)
調理が始まると三人の脳が活性化し、感覚が極限まで研ぎ澄まされる! 今まで感じたことの無い感覚に戸惑うも、三人ともすぐにその理由を把握した!!
(カムイ!? この感覚の原因はコイツか!!!)
(ミルポワの仕上げ、食材の下ごしらえ、なんてスピードでこなしているんだ!?)
(デモ、肝心なのはソコじゃない! 必要な時ニ、必要な食材や調味料がベストなタイミングで手元にクル!! 目の前の調理以外のことを考える必要ガ無イ!!!)
あまりのスピードに、もはや残像しか見えないカムイを見て三人は驚愕した。
あまりにも速く、あまりにも正確な調理技術。そのうえ自分たちが求めているサポートが一秒の狂いも無く、自分たちの求めているタイミングで来るのだ。
いつぞやの十傑メンバーのように、今の三人は思考から『無駄』が一切省かれ脳や感覚のリミッターが外れた状態。
この店の厨房はまさに、目の前の料理にのみ没頭できる最高の空間と化したのだ。
(分かる、分かるぞ! 食材たちが何を求めているのか、どうすればもっと美味くなるのか。
食材たちが放つ輝きを見れば全てが分かる! これが『食材の声』を聞くということなのか!!!)
(ハハ♪ スゴイスゴイスゴイ! 今のワタシ、過去最高に高まってるヨ! 今ならどんな料理だって作れる自信がアル!!!)
カムイのサポートを受けて三人は最高の仕事をこなしていく。四宮とリュシは自分の知らなかった『自身の可能性』を知ることが出来たことに大興奮、パリにある本店以上の料理を仕上げていった。
それはアベルも同じなのだが…………しかしアベルの心の中は興奮以上に焦燥感に駆られていた。
(っ~~~~~! 不愉快だ………確かに過去最高の仕事が出来ている、今までにないほど絶好調な自分を感じる。
だがこれらは全て『カムイ』のサポートによるもの! それが気に入らない!)
アベルはカムイの『至高の料理センス』のみならず『究極のサポート能力』を目の当たりにし、消し去ったハズの嫉妬心が顔を出し始めていた。
自分がここまで来るまでには、それこそ血の滲むような努力をしてきた。
それを(見た目だけ)自分よりも年下、しかも学生であるカムイに軽々と超えられてしまったのだ。アベルにとっては親の仇のように憎らしい存在に思えるだろう。
しかもそんな人物を他のメンバーはおろか、自分の憧れる四宮ですら受け入れている状況。アベルの中で憎悪にも似た嫉妬が、小さな『淀み』として生まれていく。
しかしこの感覚を研ぎ澄まされた極限の空間の中では、そんな小さな『淀み』ですら致命的となる。
コツン、グラッ!
(…………あ……………)
『ここ』は全員の感覚が研ぎ澄まされ、料理にのみ没頭できる空間。逆に言えば、『料理以外のモノ』を受け入れない空間でもある。
アベルの抱いた『淀み』は、まるで真っ白なキャンバスに極小の黒インクを垂らすようなもの。
僅かなシミですら全体の景観をブチ壊しにしてしまうように、周りとのリズムがズレたアベルは、カムイがベストなタイミングで置いた『調味料の入った瓶』を取り損ねてしまった。
いくら感覚が冴え渡っていても、反射神経までが速くなったわけではない。
けれど研ぎ澄まされた感覚により脳の回転が速くなったことで、これから何が起こるのかが否が応でも分かってしまった。
(このまま瓶が地面に落ちれば、間違いなく瓶は割れて中身が全部ぶちまけられる。そうなれば…………!)
厨房にいるスタッフはカムイを入れて四名しかいない。その上で全ての客にベストなタイミングで料理を提供できるよう心がけている。
全てが緻密な計算の上で成り立っている状況、それはまさに全員が一本のレールに沿うが如く、各々の作業に従事している状態だ。
そんな中で突発的なトラブル………『割れた瓶や中身の掃除』という作業が急遽入ってきてしまえば、全ての調理がストップしてしまう。
調理が止まれば当然、客への料理の提供も遅れる。そして既に店は満席状態。
それら客全員の料理提供の順番を一から再計算し始めたら、オペレーションが狂いだしてホールは大混乱に陥るだろう。そうなれば四宮の初の海外出店に影を落とすことは間違いない。
アベルは活性化した脳がもたらす思考回路によって、最悪の未来を想像してしまう。
しかしもう止める術が無い、瓶はビデオのコマ送りのようにスローモーションで落ちていく。
パシッ、トン
「ッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!」
しかし瓶は地面に落ちる瞬間に浮き上がり、独りでに台へと戻ってきた!
不可思議な現象にアベルが驚き顔を上げると、『不自然』にこちらへ背中を向けたカムイの姿があった。
(っ…………カムイが、拾ってくれたのか?)
調理手順から考えるに、運よくカムイが自分の近くを通ることはありえない。
つまりカムイは自分の作業を中断して瓶を拾いに来てくれたと言うことだ。
まるで『瞬間移動』したようなスピードだったが、当のカムイはミスをしたアベルを一瞥することなく、自分の作業に没頭していく。
なおカムイが間に合ったのは、咄嗟に『ワープキッチン』を使って瓶の周りの時間の進みを緩めたからである。
(ッ~~~~~! 何をやっているんだ、俺は!!! 俺は『料理人』で四宮さんの片腕!
そしてここは四宮さんの店! ならば店のため、余計なことを考えず自分のやるべきことをしろ!!!)
何も言わずに調理を進めるカムイを見て、『自分が今、何をすべきなのか』を再認識するアベル。
頭をブンブンと振って気持ちを切り替え、カムイがもたらした『世界』を今度こそ受け入れた。
未だカムイへの嫉妬心は完全に拭い去れてはいない、しかし自分は『料理人』である。
『料理人』が厨房で考えるべきは『料理』についてのみ、他の一切は厨房を出てから考えるべき。
カムイがもたらした『世界』において、更なる自分の可能性に手ごたえを感じながら、アベルの『嫉妬心』はいつしか『対抗心』と『向上心』へと変わっていった。
こうしてトラブルはあったものの、カムイのサポートによって三人の潜在能力が全開放された料理を食べて客は全員大満足!
やがて最後の客も退店し、プレオープン初日の営業が終了した。
「っ~~~~~! プッハァッ! もうヤバイ、ワタシ立ってられナイ!!!」
「っ、お、俺も、だ。全身疲労で、家に帰れそうに、ない…………!」
「だ、大丈夫、二人とも? 物凄い汗だけど……………」
煌びやかなホールとは裏腹に、厨房は死屍累々と化していた。
普段使わない筋肉を使えば即座に筋肉痛になるように、普段はリミッターによって抑えられている力を開放すれば、体力ゼロの全身疲労になることは当然である。
しかしそれでもえりなのように気絶しないあたり、やはりプロなのだろう。現場で培ってきた経験や体力は学生のソレとは比べ物にならない。
けれど厨房にうずくまり、台の助けが無ければ立つことすらもままならない状態であることから、二人とも今日は店に泊まることを覚悟している。
ところが、疲労状態の自分たちの食欲を強烈に刺激する香りが漂ってきた!
「ん、賄い作った。掃除も終わった。後は食べて着替えて、帰るだけ」
「ッ、カムイ~~~、アリガトウ~~~~♪」
「っ、い、いつの間に!?」
「自分の作業と並行して、作っていた」
「あの厨房の忙しさの中で………さっすが【神域の料理人】、要領の良さも一級品ね。私も食べていい?」
「コクン」
料理を受け取ると、皿から漂ってくる香りに三人とも頬を綻ばせる。
人間の身体は必要としている栄養素、即ち『旨味』をより美味しく感じるように出来ている。
カムイの料理から発せられる香りに含まれている『旨味』は、疲労困憊状態の二人の身体を食べることなく癒し、心身を満たしていた。
「この世すべての食材に、感謝を込めて、『いただきます』」
「「「いただきます」」」
もはや通例となってしまった食前の合掌と一礼を済ませ、カムイの作った料理を一口含む。
三人は身体の細部に至るまで、生気が吹き込まれるような感覚を覚えた!!!
「お、美味しい! アハハ、何コレ。美味しすぎて涙が出てクルヨ…………!」
「つ、疲れた身体に染み渡っていく慈味! まるで乾いた砂が水を思いっきり吸収していくみたいに、旨味が身体を隅々まで潤していく…………!」
「具材は牛・豚・鶏・羊の内臓、それに『野菜のプディング』ね。そして擦り下ろしたジャガイモとビーツに豆乳を合わせたスープ。
残りものだけでここまでの味わいを作れるなんて感動だわ!」
カムイは肉の代わりに内臓の残りを丁寧に下処理して臭みを抜き、余った白ワインでフランベすることで香りとコクを深めた。
さらに野菜クズやマッシュルームをペーストにし、貝殻や肉の脂身で取った出汁を何度も濾して澄んだスープにする。
次に炒めた小麦粉・野菜ペースト・牛乳を混ぜて作った『野菜プディング』と擦り下ろした『ジャガイモ』と『ビーツ』を加えて煮込む。
仕上げとしてクミン・カイエンペッパー・ジンジャーパウダーなどの疲労回復効果のあるスパイスやハーブを使うことで、高いリフレッシュ&デトックス効果を加えたのである。
「ン~~~~♪ 美味しくて染み渡る味! それに『野菜プディング』の甘みで疲れも吹っ飛んダヨ♪」
「さっきまで感じていた疲労感や倦怠感が無くなった、この料理にそこまでの効果があるのか…………!」
「味わいはリトアニア発祥の『シャルティバルシチェイ』に似てるわね、疲れ切った身体に『内臓が持つ栄養』がよく効くわ。
これは『同種同食』の考えね、まさにヨーロッパと中国薬膳のミクスチャーだわ♪」
「ん、これは『バイタルレシピ』。中国料理の、『医食同源』の考えを元にした、『食事を環境とした』身体づくり用の料理」
疲労困憊状態だった二人だけではなく、ずっとホールで働いていたウェイもカムイの料理を食べてすっかり回復した。三人ともカムイの料理が持つ効能の高さに舌を巻いている。
人間に限らず、生物の肉体構造は環境によって決定する。例えば哺乳類は寒い地域だと体温維持のために体格が大きくなりやすい。
一方で暑い地域では熱を体内に籠もらせないようにするため、体格が小さくなりやすい。
このように生物の肉体は環境によって作られる。カムイが作った『バイタルレシピ』とは、『食事もまた環境の一部』と捉えて身体づくりを補助する料理群なのだ。
なお【シャルティバルシチェ】とは、鮮やかなピンク色が特徴の伝統的な冷製ビーツスープで、リトアニアを中心に東欧で親しまれている。
ビーツと乳製品が混ざり合うことで生まれる鮮やかで美しいピンク色は「世界一美しいスープ」と呼ばれており、火を使わずに作ることで野菜と発酵乳の栄養がたっぷり詰まっていることから、別名『飲むサラダ』と称されている。
本来は冷たい状態で提供されるスープだが、今回カムイは温かいスープに仕上げたので『ボルシチ』に近い。
「なるほど。『食事も環境である』か、言い得て妙だな。だからこそ、アレだけの疲労回復効果があったわけか」
「っ、四宮シェフ、今までどちらに?」
三人がカムイの料理によって疲れを癒していると、四宮が厨房に戻ってきた。
しかし四宮もカムイのサポートを受けていたはずなのに、アベルやリュシに比べて疲れている様子は微塵も無かった。
「ホールの最終チェックをしていた。ホールも裏手も、全てカムイが掃除を終わらせたからな」
「厨房だけじゃなく、ホールまで…………」
「し、四宮さんは大丈夫なんですか? 全く疲れていないように見えますけど?」
「俺はお前たちよりも先にカムイの料理を食べたんだよ。オーナーの俺がヘトヘトじゃあ恰好つかないだろ」
「確かに汗だくの状態じゃあ、取材もお客様のお見送りも出来ませんよね」
「そういうことだ。お前たちもカムイの料理を食べたんなら、もう回復しただろ。全員ホールへ来い、ミーティングだ」
「「「Oui、Chef」」」
「ウィ、シェフ」
どうやら四宮がピンピンしているのは、一足先にカムイの料理を食べて回復していたからだようだ。
抜け目が無いと言うべきか。この年でオーナーを務めるあたり、この要領の良さは流石と言える。
「全員、今日はご苦労だった。だが……まずアベル、今日はカムイに救われたな。
持ち直したから何も言わなかったが、あのままだったらお前でも店から叩き出してたぞ」
「っ、Oui、Chef…………申し訳ありません。カムイもありがとう、今日は助かった」
「ん、気にしなくていい」
【『料理人』たる者、現場ではどんなミスも許されない】、かつて四宮が田所へ言った言葉だ。
あの時とは違い、ここは『合宿所』ではなく『現場』。ましてやアベルは『学生』ではなく『プロ』である。
自分で言った以上、例え相手が自分の片腕たる人物であっても四宮は許すつもりはない。
ただ宿泊研修前の四宮であれば、瓶を落とした時点でアベルをクビにしていただろう。
そう考えると、今の四宮は若干……ほんの少しだけ丸くなったと言えるかもしれない。
「次に客の反応だ。客からの感想を聞く限り、最高の評価を得たと言えるだろう。だが同時に【最悪の結果】とも言える。何故だか分かるか?」
「っ、プレオープンで【本店を超える料理】を出してしまったから、ですか?」
「その通りだ。この『SHINO’S TOKYO』で、しかもプレオープンで本店を超えるクオリティの料理を作ってしまった。それ自体はいい。だが問題は、その『理由』だ」
来店した客全員を満足させた、客からの評価も最高。しかし全員素直に喜ぶことはできず、四宮に言われると同時にカムイの方へ目を向けた。
「お前たちの考えている通り、今日の料理は【カムイのサポートあってこそ】の味だ。
だがカムイはあくまで『スタジエール』、プレオープン終了と同時にいなくなる。
このままではグランドオープンで客から、『プレオープンの時の方が美味かった』なんて感想をもらうことになるだろう」
「「「………………………………」」」
「当然、そんな評価なんか受ければ海外出店は大失敗。『SHINO’S TOKYO』はオープン早々、閉店せざるを得なくなる」
四宮の話を聞いてスタッフ一同は表情に影を落としてしまう。『店の味が落ちた』、料理人にとってコレほど屈辱的な客からの反応は無いだろう。
そしてこのままでは、そんな評価を受けることは間違いないことを全員が確信していた。
「なら、やることは一つだ! カムイがいなくても今日の味を出せるようになるぞ! グランドオープンまでにだ!!」
気落ちしているスタッフたちに四宮が活を入れる! あまりにも無理難題過ぎる四宮の言葉にアベルとリュシは耳を疑ってしまった。
カムイのサポート無しに自分の潜在能力を開放させる、そんなことが出来れば紛れもなく『超人』である。
「こんなことはカムイを受け入れた時から想定済みだ。やらなきゃ俺たちは店を閉めて『料理人』であることを辞めなきゃいけなくなる。
なら『やる』だけだ!! そうだろう、お前ら!!!」
「「「ッ、Oui、Chef!!!」」」
「フッ、そういうわけだ。カムイ、明日もこの調子で頼むぞ」
「明日も『同じ』で、いいのか?」
「ん? どういう意味だ?」
スタッフたちに檄を飛ばした四宮がカムイの方を向くと、カムイは逆に四宮へ質問を投げかける。
カムイの言っている意味が理解できない四宮は、カムイに詳しい理由を尋ねた。
カムイのサポートは『直観』………即ち『経験』から思考を省略することで、最適な行動を反射レベルで取っている。
そのため相手のことを知れば知るほど、経験が増せば増すほどサポートの『精度』がどんどん上がっていくのだ。
つまりサポートをする相手の情報量が多ければ多いほど、サポートの質は上がっていくということ。
そしてそれは、カムイのサポートは日を追うごとに成長していくことを意味している。
この話を聞いて、アベルたちは背筋が凍るような思いがした!!!
ただでさえ今日はカムイのサポートに追いついていくので精一杯だったのだ。
それなのに明日……いや、明日以降はそのサポートの精度がどんどん上がっていくというのだ。
このままでは自分たちの方がカムイのサポートに追いつかず、パンクしてしまうのは明白。
そればかりか自分たちの仕事がカムイに侵食されてしまい、自分たちはカムイの意のままに操られてしまう。
この調子なら、プレオープンの間にカムイはアベルたちの仕事量を追い抜き、彼らは『料理人としての自分』を見失ってしまうだろう。
アベルたちは、これまで数多の料理人を廃業に追い込んできたカムイの恐ろしさを改めて実感したのだった。
当然ながら、カムイにアベルたちを『潰す』意図は無い。四宮たちが望めば、カムイもある程度セーブしてくれるだろう…………だが四宮は不敵に笑った。
「ふっ、そうか。なら明日からも『全力』で仕事をしろ。俺の店で『手抜き』仕事なんざしたら叩き出すぞ」
「ん。ウィ、シェフ」
四宮の言葉にカムイは頷き、アベルたちは目を開いて驚く!
ただでさえ抜かされないよう精一杯だったカムイのサポート、しかしその勢いは日を追うごとに苛烈になっていく。
だと言うのに、四宮は明日からも『全力でやれ』と言っているのだ。一瞬気が触れてしまったのかと思ったアベルたちに、四宮がギロリと目を向ける。
「聞いての通りだ、カムイは今もなお成長し続けている。そんなコイツに抜かされないためには、俺たちもカムイ以上のスピードで成長……いや、『進化』する必要がある!」
「「……………………………………」」
「お前たちもプロの端くれなら、これを機に自分の壁を乗り越えてみせろ!
幸い、そのための『きっかけ』がこうしているわけだしな!! カムイに呑み込まれるような愚図は、この店に居場所は無いと思え!!!」
「「「っ、Oui、Chef!!!」」」
四宮の言葉を聞いて、アベルたちはヒヨっていた自分に活を入れた!
カムイのサポートは確かに破格である。
しかし、だからといって、このまま自分たちが『料理人』ではなくなってしまうことを素直に受け入れられるはずもない。
カムイへの恐怖は『闘志』に変わり、今を生きる料理人のプライドに懸けて、必ずやカムイのサポートを利用して更なる高みへと至ってみせると心に決めるアベルたち。
その目には揺るがない意思と燃え盛る炎が宿っていた!!!
こうして『SHINO’S TOKYO』は最高のスタートを切るも、従業員たちにとっては波乱万丈な幕開けとなったのであった。
【ONE PIECE】の『バイタルレシピ』は個人的に凄く気に入ってるので、出してみました。
この【食事は環境】【環境が生物の在り方を決める】が後々に出てきます。
特にイワさんが言っていた『世界中の人間が毎日ミルクを飲めば、戦争が無くなる』理論はヤバいですね。
そんなことをやろうとすれば、戦争が無くなる前に牛さんが絶滅するんじゃないかと思ったのは私だけではないはず。
また十傑はカムイのサポートに目が眩んでますが、プライドの高い四宮はカムイのサポートを『壁を越えるためのきっかけ』ぐらいにしか思わないと判断しました。
それでは皆さん、次回で♪
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