ガチャの景品でTSしてもドスケベの親友に堕とされたくない   作:ハーメルンに性嗜好を歪められた被害者

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 なぜ笑わないんだい。彼のメス堕ちは滑稽だよ。




その12 ポロリがあるよっ!←ネタバレ(前編)

 

 気が付くと、僕は真っ白な空間にいた。

 

 アレだ、あの……ネット小説でよくある、転生する前に神様に会う場所みたいな……。

 神聖さや非日常を端的に醸すためなのか、単に背景の描写を煩わしく思ったんだか分からないあの、真っ白な空間。

 

 ここは一体どこなんだ……? 僕はキャミソールに半パンの、いかにも夏の寝巻きという感じの風貌で、もしこのまま異世界に飛ばされたりなんかしたら、一発で痴女扱いされそうなんだけれど。

 

『痴女扱いされたいくせに』

 

 はぁっ!? だ、誰がそんなこと!? というか今の声はどこから!?

 

『あぁ、そっか。誰でもいい訳じゃなくて、アキに言われるのがいいんだよね』

 

 ち、違っ……!? というか、なんで今アキの名前が出てくるんだよ!

 

 この声は一体何なんだ……!? なんでアキのことを知っているんだ。というか、この場所自体が何なんだ……?

 

『ほら、こっち』

 

 体が反応するのに任せて振り向くと、そこには僕と全く同じ顔や髪型、体付きをした女の子が立っていた。

 

 だ、誰だ……こいつ……?

 

 今の僕にそっくりだけど、僕は一人っ子だから姉や妹なんていないし、もしいたとしても、ここまでの美少女ではなかっただろう。というとナルシストみたいだが、事実なので仕方ない。

 

 本当にそっくりだ。鏡で見る僕と何も変わらない。違うところがあるとすれば、まるで創作に出てくる天使のように、白くて長いワンピースを着ていることだろうか。

 

『ボクはキミだよ』

 

 は? どういう意味だ?

 

 確かに瓜二つだが、雰囲気が違う。僕はこんなに女の子っぽい身振りではない。

 いや、他人から見た己の評価など、聞いてみなければ判別のしようもないが、しかし僕の主観から言えば、おそらく似ているのは見た目だけ……のはずだ。

 

『つまりね? ボクは……』

 

 そこの〝ボク〟を名乗る女は、僕の慌てふためく顔がおかしくて仕方がないのか、維持の悪い笑顔を浮かべながら、含みありげに俯いた。

 

 

 

『ボクは泣くまでアキに性的にイジメられながら、ぐちょぐちょ汗だく全裸中出しベロチューラブラブS◯Xをしたがっている、もう一人のキミだよ』

 

 

 

 あ?

 

 なんて?

 

『もう一度言うよ、ボクはアキに――――』

 

 ま、待てっ!!! やめろ!! 今のは聞き返した訳じゃない!!

 

『なんだよ。ボクはキミが――――』

 

 言うな!! それ以上何も言うな! 僕にその愚かしい寝言を聞かせるのはやめろ!!

 

 く、くそ……僕と同じような顔をして、何と卑猥な言葉を……! はっ、恥を知れ! 知識としては知っていても口語で使ってはいけない言葉が世の中にはあるんだぞ!

 

『ふふふ、キミがそういう態度だから、ボクが生まれたんだよ』

 

 は、はぁ……? 何を言っているんだ? こいつが生まれた原因が僕?

 

『ボクはね、キミが心の中で抑圧している、キミの〝メス〟の部分だよ』

 

 め、メスの部分……? は……はっ! 何を言い出すかと思えば、僕は男だ!

 後から玉突き事故みたいな寸法で女になってしまったが、だとしても精神は変わらない!

 

『それが残念……いや嬉しいことに、変わっているんだよ。とっくの昔にね』

 

 う、嘘だ! だってまだ僕は普通に女の子にドキドキするし、普通の女の子なら激怒するセクハラをアキにされても、そんなに嫌悪感はないぞ……?

 

『単にキミがアキにぞっこんだからだろ』

 

 なんでさっきからずっとアキの名前が出てくるんだよ! あいつは関係ないだろ!

 

『やれやれ……まだ認められないのか』

 

 当たり前だ! 僕が……あ、アキにぞっこんとか、そんなのはお前が勝手に言っているだけじゃないか!

 

『もうアキに100%余すところなく女の子にされちゃったのに、キミがどうしても認めようとしないから、その歪みでボクが生まれたんだ』

 

 ゆ、歪み……? 流石に歪みが強すぎるのではないか? 

 だってこいつさっき長文でなんて言った。ぐちょぐちょとか、ナメクジの蠕動する音みたいなオノマトペが出てきていたぞ。

 

『だからそう言ったじゃないか。ボクは泣くまでアキに性的にイジメられながら、ぐちょぐちょ汗だく全裸中出しベロチューラブラブS◯Xをしたがっている、もう一人のキミだ』

 

 黙れ!! 聞き返したつもりは全くない。正気を疑ったんだ。その悍ましい文言を二度もほざくな。僕の見た目をして。

 というか全文が酷すぎて、一部を伏せ字にしたところであんまり意味はなくないか? どこをとっても恥ずかしい文字列だったぞ。

 

 というか!! さっきから黙って聞いていれば、勝手なことばかり言いやがって!

 

『口挟みまくってるじゃないか』

 

 うるさい! 口には出してない!! 心の中で思っていることをなぜかお前が察知しているだけだろ! 僕はずっと無言だ!

 

『それこそが証拠さ。隠してもムダだよ。ボクにはキミの心が丸分かりなの。キミがアキに体を触られる度、性的に悦んでいることもね』

 

 ぐ、ぐぐ……で、でも! 本当に僕の心の中を読めていたとしても、お前が嘘をついていない証明にはならないぞ!!

 

『いやいやキミ、この前の緊急ミッションの時なんかすごかったじゃないか。初めてなのに、何度もチューされて、下が洪水みたいに――――』

 

 うわああぁぁ待て待て待て何を口走ろうとしているんだっ!!

 

『あの日の服はロングスカートでよかったね。膝丈だったらバレてたよ。まぁアキなら喜んでたかもね。キミも本当は見られたかったんじゃないか?』

 

 見られたい訳あるかっ!! …………じゃなくてそんな事実はない!! ぼっ、僕は別に、アキとチューしたくらいで、ししっ、し、下が洪水とかっ……! なってないぞ!!

 

『また体に触ってもらえるようになってからは激しいよね。1日1回だったのが、朝と夜の2回になっちゃって』

 

 な、何の話だ……? 1日……?

 

『何とぼけてるのさ。そんなの決まってるじゃないか。キミの日課のオナ――――』

 

 もう黙れっ!! お願いだから!!

 

 だっ、大体! 僕だって中身は健全な男子高校生だぞっ!? こ、こんな体になってしまって、我慢できるはずないじゃないか!!

 

『語るに落ちたね』

 

 うるさいっ!

 

『キミが悪いんだよ。さっさと認めてアキに告白すればいいのに』

 

 告白って……! 違うって言ってるだろ! 僕はアキに恋愛感情なんかない! ましてやメスになるとか……! 人をバカにするのも大概にしろっ!

 

『アキだったらおっぱい揉ませてる間ならどんな契約書にでもサインしてくれるでしょ』

 

 それは……否定しかねる。おっぱい揉ませてあげる代わりにお金出せって言ったら、喜んで財布を取り出しそうだもんな……。

 

 い、いやだから! 僕はアキのことなんか全然なんとも思ってないの!! ただの仲のいい友達!!

 

『何でもいいからさ。さっさと気持ちに決着をつけて、ボクを消してくれ。うんざりなんだ。毎日毎日アキの名前を連呼して、自分でおっぱい揉みながらシャワーをアソ――――』

 

 死ねっ!!!

 

 頼まれなくたって消してやる!!!

 

 この変態!! 嘘つき!! 嘘つき変態天使モドキ!!

 

『変態はキミだろ。ボクの言葉は全部キミの頭の中から出てきた言葉だぞ。ド変態むっつり全身わいせつ女』

 

 だからうるさいってば!! というか僕はそんなこと全く――――!!

 

 

「でっ……!」

 

 壁際のタンスに頭をぶつけた。

 

「ん……? 朝、じゃない、まだ、夜……?」

 

 どうやら僕は夢を見ていたようだ。目が覚めてよかった。内容はあまり覚えていないが、とにかく不愉快だった感覚はある。

 

 深夜の3時。もしかして、明日の海水浴が楽しみで眠りが浅くなっているのだろうか。

 

「…………寝よ」

 

 寝不足で熱射の下を歩くのはよくない。二度寝しよう。自然に目が覚めた訳ではないので、寝ようと思えばまだ眠れる。

 

 その日の夢にはアキが出てきた。いつもみたいに詭弁で僕を丸め込んで、お尻を撫でられる夢。最初に見た夢よりはマシだと思う。

 

 

 

「タオルよし、着替えよし、浮き輪よし……!」

 

 朝の6時。もうすぐ出発時間だ。1時間も早く起きてしまった僕は、念のためシャワーを浴びて汗の匂いを消し、昨日の夜に詰めた荷物を再度確認していた。

 

 日焼け止めも制汗剤も絆創膏も入れた。一応熱中症対策に、手持ち扇風機を僕とアキの分で2つと、保冷剤(ケーキに付いてたやつ)を適当に何個か。それから大体役に立つビニール袋。

 これだけあれば、現地で物がなくて困ることはほぼないだろう。レジャーシートはアキが持っていくと言っていたし、

 

「あ、小銭入れも……」

 

 財布はロッカーに入れておきたいし、浜辺でお金を使うところなどないので、海の家で少し買うくらいの額を持ち歩ければいい。

 これはジッパー付きポリ袋でいいや。防水出来る袋ならなんでも。

 

「あ、あとは……」

 

 水着も鞄に入っている。アキが選んでくれたハイネックの上衣と、横で結ぶタイプの下衣のビキニ。

 下衣の結び方は、ネットで検索しながら実際に履いてみて散々練習した。

 世の中には結び目が解けてもショーツの形を維持する紐のビキニもあるらしいが、これは解けるとちゃんと分かれる。だから、結び目は硬くしないといけない。

 

「これと、あとは……げっ……」

 

 僕の視界の端に、アキが通販で買った白い競泳水着が落ちていた。

 

「…………」

 

 白……と言うべきかも怪しい。生春巻きみたいなスッケスケの競泳水着。乳輪の色が透けるレベルのヤツ。

 

 しかも小さい。

 

「パッツパツなんだよな、これ……」

 

 実は渡されてから、一度だけ風呂場で試着をしてみた。どんな素材かは知らないが、水をかけられた訳でもないのにスケスケで、裸同然だった。なんで破れないんだろう。

 アダルトビデオでしか着ている姿を見たことがないヤツだ。試しにシャワーを浴びてみたら、全部見えた。恋人や夫婦でもないと見せてはいけないところが、全部。人前でこれは絶対ダメだ。

 

「変態め…………」

 

 露出狂ならもらって喜びそうだ。こんなものを僕に着せたいと思っているのか、あいつは……。

 

 これはナシ。これは持っていかない。そもそもアキが事前に選んでくれたヤツがオシャレでかわいいし。い、いや……かわいいとかは別にどうでもいいけど、布も多いし。

 

「…………」

 

 い、一応持っていくか……何があるか分からないし……一応、一応だ。なるべく奥のほうに入れとこ。ふざけたアキが荷物を漁ってきた時にバレないように。

 

 着るつもりは毛頭ない。ないけど……あ、アキ次第……いやいや、絶対着ない、こんなもの。

 

 ふ、二人きりなら、まだしも…………♡

 

 

 ブーーーッ!!!

 

 

「わっ!」

 

 び、びっくりした。外のインターホンが鳴らされたのか。

 

「フミー! 起きてるかー」

「おっ、起きてるー! ちょっと待ってね!」

 

 荷物を入れたスポーツリュックを背負い、僕は急いでビーサンを足に引っかけた。

 

「はよーっす。準備できたか?」

 

 膝丈よりは少し長い程度の半ズボンを着たアキが、デカいボストンバッグを肩にかけて片手を上げた。虫取り大好き少年が成長したらこんな風になりそうだ。

 

「おはよ。できたよ。できた……けど……」

「ん? 何?」

「荷物多くない?」

 

 修学旅行とかで使う大きさの旅行鞄だ。普段手ぶらでどこへでも行くアキにしては、大荷物ではなかろうか。

 

「ああ。これな。まあ楽しみにしとけよ」

「ん? 何? 何が入ってるの?」

「海用の遊び道具買ってきた。あっち着いたら見せてやるよ」

 

 何を持っていくつもりなのだろうか。彼のことだ。またトンチキなものを出してこなければいいが。

 

「も、持つの手伝おうか?」

「大丈夫。それより、もう行けるか?」

「うん」

 

 ここから電車で2時間以上かかる。少し早めだけど、もう出発してもいいだろう。

 

「楽しみだね。海」

「おお!」

 

 去年よりはいい思い出になるはずだ。ナンパとかするつもりないし。今の僕は男でもないし。

 

 

 

 電車で2時間と少し。3度以上の乗り換えをして、僕らは横浜までやってきた。

 

「よし! こんなもんか」

 

 なるべく人の少ない場所を選び、僕らはブルーシートを砂浜の上に敷いた。両端に適当な重りを置いて、その上に二人で座り込んだ。

 

「はー。更衣室死ぬほど混んでたな」

「みんな考えることは同じなんでしょ」

 

 バラックのような脱衣所では、着替えている他の人との距離が近く、周りの視線が痛かった。女の人の中にまで僕の体をジロジロ見てくるヤツがいるとは思わなかった。

 しかも、さらにその中の何人かの視線には、敵意すらこもっていたので恐れ入る。そんなに欲しければ、こんな贅肉分けてあげたいところだ。

 

「よし、じゃあ早速……」

「海入る?」

「その前に、日焼け止め塗ってやろうか!」

 

 いつの間にか僕の鞄から日焼け止めを取り出していたらしいアキは、ワキワキと手を開閉させながら、ニヤニヤと冗談めいた声でそう言った。

 

「え、えー……アキだけ塗れば?」

「オレはラッシュガード着てるし。つか、日焼けしてもいいよ。別に美肌とか気にしてねーし、痛くならねーし」

 

 アキは半袖の黒いラッシュガードを着ており、体に張り付いているためか、ボルダリングで鍛えた逞しい胸筋が強調されていた。なんかカッコよくてズルい。どおりで力で敵わない訳だ。

 

「お前だって日焼けしたら困るだろ? 去年とか日焼けが痛すぎて泣いてたじゃねーか」

「泣いてない!」

 

 別にいいんだけど、下心丸出しなのがムカつくんだよなぁ。

 何より、出る前に塗ってきたし、カーディガンも羽織っているので、そう何度も塗る必要はないのだけれど……。

 

 でも、何度でも塗るべきか。こういうのは。アキの言う通り、赤くなったら困るのは僕だし。

 

「じゃ、じゃあ、お願い」

「へへへ! 任せとけ!」

 

 多少不安もあるが、僕はとりあえずカーディガンを脱いで、シートの上にうつ伏せになった。

 

「ブラの紐解くぞー」

「えぇっ!? い、いやいいよ、そこまでしなくてさぁ! 布の上から塗れば!」

「それじゃしっかり塗れないだろ?」

「ちょっ、勝手に……」

 

 突然胸の支えられるような感覚が解放され、視界の左右下あたりにぱさりと布が垂れ落ちてきた。

 今、僕の上衣はかろうじで首にかかっているだけの状態で、これでは起き上がれない。

 

「観念しろ。ブラジャー外れた状態じゃ逃げられないだろ」

「うー……じゃあ早くしろ!」

 

 びちゃびちゃと手に日焼け止めを馴染ませる音が後ろから聞こえてくる。結構な量を出しているようだが、背中だけでいいのになぜ?

 

「ひやっ!」

「エロい声出ちゃったな」

「うるさい! 触るなら触るって言え!」

 

 何の予告もなしに、突然背中に冷たい感覚がしたので、少しびっくりしてしまっただけだ。

 

 背中にアキの両手を感じる。10本の指がうなじ辺りから、腰の紐近くまでを行ったり来たりして、体に日焼け止めが馴染んでいく。

 

「んっ……」

「お? どーした?」

「なんっ、でも……」

 

 アキの手が脇の近くを通った。それから降りていって、胸の付け根辺りを通り、脇腹を掴まれる。

 滑らかな蠕動が僕の体の側面で何度も繰り返され、日常では感じ得ない感覚に、体がゾワゾワしてきた。

 

「うわっ……! ちょ、どこ……!」

「ここもちゃんと塗っとかないとな」

 

 アキの手が、うつぶせになった潰れた僕の胸のほうにまで侵入してきた。シートと胸の間に指が入り、ずるっ、と5本の指が胸の上がの付け根から下乳までを撫でつけた。

 

「そんっ……! な、いらない……!」

「フミのスケベな色した乳首が日焼けで黒ずんだら大変だからな」

「バカっ……! やめ……!」

 

 もはやアキの手は背中など完全に無視して、僕の胸を鷲掴みにし、乳房の先端を何度も手のひらで往来した。

 

「ん、はぁっ……♡ も、いい、よ……! いつまで、そこばっか……♡」

「お前が先っぽ固くしてるのが悪い。塗りにくいんだよ」

 

 変なことを言うなっ! 誰が、固くしてなんか……! はぁっ♡ 

 

 やめっ♡ 摘むなぁっ♡

 

「しっかり谷間のとこまで塗り込まないと。着てても紫外線貫通するらしいからな」

「なんっ♡ なんでもっ、いいから……♡ 早くしてっ……♡」

 

 脇とか胸とかばっかりっ……♡  もう、息苦しくて、辛いから、やめてっ……♡

 

「足ピンするなよ。よくないぞそれ」

「ゔゔぅー……♡ してないっ……♡」

 

 結局、胸と胸の間も、下乳の裏側もきっちり撫で回されて、海に入る前から大いに体力を奪われた。

 

「よし。じゃ、腕にも塗るぞ」

「はぁーっ♡ はっ、はぁーっ……♡」

「トロ顔晒してないで起きろって」

「バカ……ブラ、付け直せっ……!」

「あー。そうだった」

 

 アキは素直に横に垂れた布を持ち上げて、背中側で3対の紐をしっかりと結んだ。

 器用なヤツだ。変な体勢のまま付け直させたのに、胸の収まりが悪くなっていない。だからといっていくらでも外していい訳ではないけれど。

 

「指の間まで塗ってやるからな。気持ちいい?」

「んっ……♡ ちょっと、はっ……」

「整体師に騙された美女が受けるエロマッサージみたいだよな」

「うる、さいっ……♡」

 

 脇と肩から、手の先、指の一本一本にまで日焼け止めを塗りこんでいく。

 僕よりずっと力の出るアキの手に撫でられていると、自分で体をマッサージするのでは得られない多幸感があった。

 

「よし、じゃあ次は下だな。またうつ伏せになれよ。この紐取るぞ」

「だぁーーっやめろ!! それはいいからっ!」

 

 こいつ人前で下の前まで触る気かっ!! ライフセーバーがずっとこっち睨んでるぞ!!

 

 

 

 結局下の水着は取られなかったものの、全身をほぼ余すところなく撫で回されて、僕はもう疲労困憊になっていた。

 

「浮き輪膨らんだぞ」

「あー、ありがと……」

 

 浮き輪に空気を入れる気力もなかったので、アキに代わってもらったが、その時間もさして休憩にはならなかった。

 肺活量の違いなのか、僕が事前に膨らませた時よりずっと早く形にしてしまった。今度からアキにやってもらおう。

 

「ほら浮き輪持って! 行くぞ!」

「ちょ、ちょっと、あんまり奥まで連れてかないでよ! 僕、泳げないから!」

「知ってるよ! 練習するぞ!」

 

 う、うわわ! 引っ張るな!

 

「うおー! 冷てっ……ぬるっ! おい! 温いぞ!」

「え? あぁ、ホントだ。浅瀬だからかな」

 

 波打ち際に走って飛び込んだアキは、まだふくらはぎまでしか浸からない位置で既に騒ぎ始めていた。

 

「おぉー! こっち涼しいぞフミ! こっちまで来てみろよ!」

「だっ、だから、泳げないって……!」

「ほら、手掴め! こっちこっち!」

 

 あっ……!

 

 アキの手が僕の手を掴み、そのまま僕と目を合わせたまま、彼は後ろ向きに泳ぎ始めた。

 

「ほら! ほらっ! な!?」

「ほ、ホントだ。ここ、冷たいね」

 

 確かに水の中は冷たい。冷たいが……。

 

 か、顔が熱い……日射のせいか。僕は既に足が付かないところまで来て、水は適度に冷えているのに、顔も、体も熱い……。

 

「よし、じゃあこの辺で練習すっか!」

「あっ、ま、待って!」

 

 今は浮き輪に掴まって安定しているが、足が付かないのは怖い。

 もし腕をつるなどして、浮き輪から体が離れてしまったらと思うと、素直に楽しめない。

 

「あ、そっか……この辺り、フミは足付かないのか」

 

 アキは必死に浮き輪に掴まる僕を見てすぐに察したらしく、少しテンションを落として浅いほうに戻ろうとした。

 

「悪い。少し引きかえそう」

「い、いいよ! いいから……」

 

 僕は、繋がったままのアキの手を握り返した。

 

「掴まって、いい……?」

 

 足が付かないのは確かに怖い。

 怖いけど……でも、アキがいるから。アキが離さないでいてくれたら、怖くない……から……。

 

「……分かった。絶対離さない」

 

 

 

 僕は浮き輪に体を通したまま、アキに両手を引かれながら、バタ足の練習をしていた。

 

「いいぞー。そうそう」

「お、泳げてるっ……? アキが、引っ張ってくれてる……じゃ、なくてっ……?」

「大丈夫だって。お前の力で進んでるよ」

「ほ、ホントっ……!?」

 

 自分ではとにかく足を動かすのに必死で、あまり実感はないが、どうやら進んでいるらしい。

 脇目の景色の変わり様からして、小さな子供が陸を歩くよりも遅いが、自分の力で進んでいるというのが何より嬉しかった。

 

「男の時より泳げてないか?」

 

 自分でもそう思う。筋肉も体力も半減以下になり、もっと苦戦するものかと思っていたが、むしろ少し体が軽い。

 海は塩分のおかげでプールより浮きやすいと聞いたことがあるが、そのおかげだろうか?

 

「そーいや、脂肪が多いと浮きやすいらしいな」

「…………何が言いたいの」

「胸とケツについてるデカい浮袋のおかげか?」

「このセクハラ大王っ!!」

 

 絶対言うと思った!! そういう方面にしか物事を考えられないのか!

 というか、男の時よりずっと力もスタミナもなくなっているし、胸や尻はそれと差し引きゼロだろ。素直に泳ぎが上手くなっているのだと喜ばせてくれよ。

 

 

 それから僕達は、アキが持ってきた遊び道具を振り回してはしゃぎ倒した。

 

「うなれ俺のウォーターブラスター! フミのパンツ脱がせ!」

「ひゃっ……! ちょ、紐狙うな!」

 

 百均の小さな水鉄砲で撃ち合ったり、

 

「すごい! これ、海の中見えるよ! バケツの底が透明になってる!」

「水中スコープって言うらしいぞ」

 

 底が透明な素材でできたバケツのようなものを水に入れて、普段は見ることができない海の中を見回したり、

 

「よしっ……! 捕まえたぞ! ほら! 見ろよフミ! サワガニ!」

「すご! ちっちゃくてかわいい!」

 

 水辺の生き物を観察して、体力の限り海を満喫した。

 

「ふぅーっ……めちゃくちゃはしゃいだな」

「へへ。ありがとね。色々用意してくれて」

 

 トンチキなもの、なんて疑って悪かった。水中スコープ、覚えておこう。

 海の中の自分の足下を見るだけでも、波打ち際とは違う風情の砂が見られて面白かったが、小さな魚や貝らしきものまで見つけることができた。

 

「一旦シートのほう戻るか。昼だし」

「え、もうそんな時間になるの!」

「早いよな。ほら、見ろよ」

 

 アキの防水腕時計(準備がいい!)には、確かに12時を少し過ぎた時刻が表示されていた。

 周りを見回してみると、まだ海の中にも人は残っているものの、半数は引き上げて、昼食や休憩の時間にしているようだ。

 

「なんか買って食うか。さっき屋台みてーなところで売ってたフランクフルト食いてー」

「かき氷あった?」

「あったぞ」

 

 水の中にいたおかげで涼しかったが、ずっと動き回っていたためか、体の芯は熱い。何か冷えるものを口にしたかった。

 

「つか、オレはしゃぎすぎてねみー……昨日楽しみでさ、眠れなかったんだよな」

「へへ。分かる。実は僕も」

 

 僕らも一旦休憩にしよう。まだまだ遊ぶ時間はあるし、疲れが取れたらさっきの水中スコープでもう一回――――

 

 …………あれ?

 

「どうしたフミ? 戻んねーの?」

「あ、ちょ、ちょっと待って」

 

 僕は浮き輪の内側に片手を突っ込んで、自分の下半身を触ってみた。

 

 ない。あるべき布の感触が、どこにもない。

 

 な、ない!! ないぞっ!! 水着がっ、し、下の水着がないっ!!

 

「ど、どうしよ……!!」

「な、何だよ。どうした? 足つったか?」

 

 は、こ、これ、アキにバレたりしたら何て言われるか……!

 い、いや、違うか……隠しててもいいことなんかない。それに、水を上がれない以上、僕に頼れるのはアキしか……!

 

「あ、あの……アキ」

「どーした? おんぶすっか?」

「水着、と、取れちゃった……!」

 

 アキは、一瞬だけ呆けたような表情を浮かべると、慌てたように顔面を蒼白にして、続いて何か思い付いたかのように血色を取り戻した。

 

「あ、アキ……?」

 

 そして、彼は僕の問いかけを無視して、息を吸い込んで水中に潜った。

 

「え、ちょ、あ、アキ!? 何を……!」

 

 潜って水着を探し始めてくれたのか? い、いや、それにしては首も体も全く動いてないぞ……というかさっきから僕のほうだけ見て固まって……。

 

 ま、まさか、こいつ……!

 

「ホントじゃねーか!」

「見るなっ! 見ないでぇ!!」

 

 念のため手で隠していてよかった。この調子だと、そのうち全身でアキに見られていないところがなくなるぞ。

 

 






 
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