ガチャの景品でTSしてもドスケベの親友に堕とされたくない   作:ハーメルンに性嗜好を歪められた被害者

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おまけその1 服がかわいそう

※高3夏

「フミの服ってかわいそうだよな」
「は?」

 今からデートだというその瞬間に、アキが突然僕の服を指差して、そんなことを言い出した。
 彼女の服をして第一声が「かわいい」でなかったことに関しては、この際不問にするとしよう。もしかしたら似合っていない場合もあるし、そういう時は指摘してもらわないと自分では気付けない。

 しかし何だって? 服がかわいそう? 果たしてどういう意図で言ったのかは知らないが、侮辱でアクロバットを表現したかったという訳ではないらしい。

「だってほら……」

 彼は僕の胸を指差した。

「そんなにTシャツが引っ張られててさ。サイズの大きいヤツ買えよ」
「デカいやつ着ると太って見えるんだよ!」

 ワンピースだって、なるべくウエストが詰まったものを着るか、胸のほうを多少潰して太っていないように見せているんだぞ。

「いいだろ。別に太って見られても。元は男だろ」
「男でもデブだと思われるのは嫌だろ……」

 こいつ僕が元男だからって、何を言ってもいいとか思っていないだろうな。


その2 バレンタイン

※高3冬

「はい。チョコ」
「うおお、人生で2つ目だ!!」

 バレンタインデーなる奇祭とは全く無縁の人生を送っていた僕が、まさか贈る側になるとは思いもよらなかったが、これはこれで悪くない。

「例によってハート型です。ラブ」
「やったぜ」
「しかも手作り。嬉しいでしょ」
「最高。ありがとう。マジで感謝」

 なんだそのリーヨとか続きそうな言い方。

 手作りするかに関しては、正直なところギリギリまで迷っていた。
 というのも、どう考えても既製品のほうが見た目も味もいいので、人に渡すならそのほうがいいのではないか、と悩んでいたのだ。

 結局アキに直接聞いたら、絶対に手作りがいいとのことだったので、素人技ながら苦心して作ってみたという訳。

「去年は市販だったからなー」
「絶対そっちのほうがいいと思うんだけど……」
「気持ちだよ気持ち。ロマンが大事だろ」

 それもそうか。僕もまだ男だったとして、彼女が頑張って手作りしてくれた、となれば狂喜乱舞するかもしれない。

「マジで嬉しいわ。開けていいか?」
「いいけどあんまりハードル上げないで。それっぽいものが作れてて偉い! くらいで見て」

 チョコなんて板のものを湯煎で溶かし、固め直しただけのものだし、パウダーで隠して誤魔化しているだけで、ココアバターが分離して白くなった跡が残っている。
 複数個作って、一番マシなものを持ってきただけで、僕としては全然納得がいっていない。

「おおー! すげ! ココアパウダーとか振ってあるのかよ! オシャレだな!」
「そ、そう……? でもさ、その……ちょっと形悪いでしょ」

 型と量が合わず、冷却した時に少し横に膨らんでしまった。

「丸くてかわいいぞ」
「そうかな……チョコペンで書いたメッセージも、鉛筆で書いたみたいで雰囲気ないし……」

 女の子っぽい丸文字とか、小洒落た筆記体の英字などを書ければよかったのだが、結局失敗を恐れて「好きです。」と、何の捻りもない文を書いてしまった。
 しかも、チョコペンに慣れていないことが丸分かりの角ばった汚い字。

「真剣な気持ちが伝わってくる。ちょっと不器用な言い方なのがかわいいしな」
「……あ、味も、ムラがあって美味しくないかも」

 バターが分離してしまったこともそうだが、湯煎で少し風味が飛んでしまった。
 溶かしたものがミルクチョコであったことも災いして、チョコらしさが損なわれてしまったかもしれない。

「うまいじゃん。クドくなくていいぞ。これ湯煎とはいえ1から作ったんだろ? すげーな!」

 ……………。
 
「〜〜〜〜っ♡」
「どっ、どうした!? 何だ、急に飛びついてきたりして、危ないだろ!
「好き。大好き。ちゅーしよ♡」
「お、おお。いいけど……オレ今そんなにいいこと言ったか……?」




後日談

 

 大学1年生の11月。僕はかつてないピンチに見舞われていた。

 

「あ〜〜……終わんない」

 

 1ヶ月後に迫った提出期限と、規定の文字数まで1万文字足りない書き途中の論文を見ながら、僕はため息を吐いた。

 

 

 

 1年前。アキの志望する国立大学に、一緒に通いたいという一心で勉強に励み、何とか倍率が低めの学科に引っかかった。

 学部学科こそ違うものの、高校の頃から借りているアパートを退去することなく、大学生という破格のモラトリアムと、電車で15分圏内の通学強者としての立場を得た訳である。

 

「おっす。今日もジメジメ引きこもってるな。早くゼミ論終わらせろよ」

「うるさいよ」

 

 アキは合鍵を使って、呼び鈴もなしに勝手に部屋に入ってくると、着ていたダウンジャケットを窓枠にかけ、勝手に冷蔵庫からアップルジュースを取り出した。

 

「今日サークルの日じゃなかったの」

「なんか先輩がサークルの女子に二股かけてたとか何とかで、ずっと揉めてんだよ。しょーもないから抜けてきた」

「あー、遂にそんな感じに……」

 

 アキと僕は同じボルダリングサークルに参加している。アキの提案で。

 それというのも、もしも僕が他のサークルの新歓で、悪い先輩に変なものを飲まされ、自分の目の届かないところで乱暴をされたらよくないから、とかいう理由らしい。

 

「サークル退会して、通ってたジムに戻る?」

「出戻りって言われるぞ……まあでも、そのほうがまだマシかもな。うちのサークル、出会い目的しかいねーし」

 

 実際半年以上前のサークル新歓でも、

 

『フミちゃんって言うんだ。かわいいねぇ』

 

 変な先輩に最初から下の名前まで呼ばれたり、

 

『前からボルダリングやってたんだ。ちゃんと筋肉もあるし、向いてるよ君』

 

 体格のいい先輩に肩を何度も触られたり、

 

『チャット交換しようよ! ね! オレこの大学で同級生の知り合い少ないからさ! お願い! 単位の情報とか教え合おうよ!』

 

 はしゃいでいた新入生に執拗に連絡先を聞かれたりしたので、アキの懸念はあながち杞憂でもなかったのだろう。

 結局新歓で騒いでいた先輩ほど、あまりサークル活動には来ず、たまに恋愛目的で目当ての人が来るだけのヤツが多かった。

 

「でも、抜けたら浜北先輩に悪いしな……オレ達くらいだろ。1年でやる気あるヤツ」

「遠征の時も結局、全学年合わせても参加者10人いかなかったもんね」

 

 新歓はいい炙り出しだったかもしれない。あの場で穏やかにしていた先輩方は、熱心にアドバイスをしてくれる。

 その一番熱心な先輩も、研究室が忙しくて最近はあまり来れていない。まるで壊れたラジオみたいに「有機はやめとけ」と科学科の後輩に言い続けている。

 

 そういう訳で、あれから酒絡みの会は全て断っている。未成年だからというのもあるが、大学で新たに友人を見つけなければならないほど、交友や単位には困っていない。

 

「はー……さみ。みかんくれ」

「どーぞ……って、言う前に食べてるし」

「こたつ最高だわ……」

「買えば? 一人用とかあるらしいよ」

「フミの部屋でいいしなぁ」

 

 暖房を目当てに溜まり場にされているような気もするが、僕に文句は言えない。

 なぜなら、自室のエアコンの効きが悪いので、夏は僕がそれをする立場だから。

 

 高校生の頃よりさらにお互いの部屋への出入りが多くなった僕らは、二人分の歯ブラシや着替えなどがどちらの部屋にもあり、もはや半同棲の様相を呈している。

 ちなみに敷き布団は一つ。生活費を少しでも節約するためであって、抱き合って寝たいからではないのだ。偶然毎日見つめ合いながら寝ているだけなのだ。

 

「ちょ、蹴らないでよ」

「仕方ねーだろ。狭いんだから」

「入っていいから足伸ばさないで」

「へいへい」

 

 アキは僕の反対側に座って、こたつ布団を広げて足を入れてきた。ひやっとした空気が布団の中に入ってくる。

 突然の冷感に集中力を乱されながらも、僕は少しずつゼミ論の文字数を増やしていく。

 

「ゼミ選び失敗したな」

「うるさいなぁ〜」

 

 まさか基礎ゼミで論文まで書かされるとは思わなかった。

 あとから聞いたことだが、僕の選んだ鮎川ゼミはハズレで有名らしい。もっとしっかりコミュニティに参加して、色々情報を集めておけばよかった。

 

「なんかいいよなぁー。論文。大学生、って感じがするよな」

「なんにもよくないよ」

「法学部なんか卒論ない代わりにテストで塩漬けだぞ。勉強ダルい。期末もう来月かよ」

 

 そういう時期だから、僕も論文に四苦八苦しているというのだ。

 

 アキは当然のように天板の半分を陣取って、そこに教材とノートを広げると、まるで受験生の頃と同じようにカリカリシャーペンを動かし始めた。

 

「やっぱり法学部ってみんな弁護士とか検事目指してるの?」

「それ101回聞かれたわ。そんな訳ない」

 

 この質問に「裁判官になるの」が入っていないところも、以前に聞かれた100回分と同じらしい。

 

「お前こそ哲学者にならねーだろ」

「まーね。でもそういう人いるよ。数人だけ」

「どんなゼミ入ってるんだよ。オレの友達でそんなヤツ聞いたことないぞ」

 

 どうやら弊大学の哲学科のゼミは、女子の比率が圧倒的に多い。僕だって社会的および生理学的な意味では女子に該当するはずなのに、非常に肩身が狭い。

 だってみんなキラキラしてて彼氏のスペックとか都心のほうでの大人っぽい性体験みたいなのを戦わせあっているから。一皮剥けば陰キャ男子の僕に付け入る隙はない。

 

「つかそんな薄着で寒くねーの。今月で一番寒い日らしいぞ。今日」

「こたつ入ってるし」

「足だけだろ。上は半袖じゃねーか」

 

 それに昨日からずっと家にこもって、パソコンの前で唸っているだけなので、今月で最も冷たいとかいうその外気に触れていない。

 上が半袖でも、腹を冷やさなければ全身もそこまで冷えないだろう。家の中でまで格好を気にしたくないというのもある。

 

「その格好で外出るなよ」

「出る訳ない」

「お前ほぼ下着で外歩いたことあるだろ」

「あれはアキがっ……! というか夏だし!」

 

 ほぼ下着で外をどうこうの話は、僕の意思ではなく、アキの趣味に付き合わされただけだ。

 野外を経験したいとか言い出して、僕がどれだけ恥ずかしかったことか。

 

「フミもノリノリだっただろ。お前人に見られそうになるの好きじゃん」

「全然好きじゃないっての! それはアキのほうだろ!

「オレのこと『ご主人様』とか呼んでたくせに」

「呼ばせたんだろ!」

「自分から敬語使ってたのにか?」

「う、うるさい!」

 

 首輪とか、おもちゃ付けさせたまま外を歩かせるとか、付き合ってあげるのは僕くらいだぞ。

 あんまりエロ漫画の知識に憧れるな。それを僕に試そうとするな。いやいいけどさ。流石に外でこういうことをするのは警察のお世話になりそうだぞ。

 

「そんなに変か?」

「変だね。外ですぐキスとかしてくるし」

 

 駅で久しぶりに会った遠距離カップルのモノマネをしようとか、突然意味の分からないことを言い出したかと思えば、ホントに人のいる駅構内で唇を合わせてきた。

 あの時は顔から火が出るかと思ったものだ。しかも同じサークルの先輩に見られ、一瞬にして大学に噂が広まった。

 

「でもいつも嬉しそうにしてるじゃん」

「してないってば! 妄想するな!」

「じゃあなんで振り払わないんだ? むしろいつも自分から『もっと』とか言うだろ」

「………う、うるさいってば! スケベ!」

 

 高校の頃は僕ばかり熱っぽいものかと思っていたが、蓋を開けてみればこれだ。僕が恥ずかしがる姿を見て楽しんでいるのだ、こいつは。

 

「ほーん、そんなこと言うんだ。ほーん」

「な、なんだよ」

 

 アキの目や口の端がだらしなく垂れた。何かよくないことを考えている時の目だ。

 

「これでもか?」

「え? これでもっ……てぇ……!?」

 

 アキは手をこたつの中に入れると、僕の両足首を掴んできた。

 

「な、何するの!」

「別に? 何もしてないけど?」

「してるじゃん! 離せよ!」

「離す? 何も掴んでないぞ」

 

 白々しいことを……! 足を引っ張られたら、体勢がおかしくなってキーボードに入力がしにくいじゃないか。

 

「ちょ、アキ! 勉強しなくていいの!?」

「してるよ。嫌になるほどしてるんだ。今日くらいいいじゃん」

「昨日も同じこと言ってたぞ!」

 

 試験が近くてヤバい、というのも昨日聞いた。だというのに連日僕の部屋に来て、こたつに入って僕にちょっかいを出してくる。

 

「もう! 前期それで追試になってただろ!」

「ええい、思い出させるな! 小うるさいヤツにはこうだっ!」

「えっ、ちょっ……どこ!」

 

 アキの足が伸びてきて、僕の足と足の間に入り込んできた。

 

「お、おい!」

「お? 何だ? 虫でもいたか?」

「ホントに虫みたいに叩いてやろうか……!」

 

 アキはあくまでもシラを切るつもりらしい。性格の悪い笑顔を浮かべている。

 

「あれ、なんかこたつの中になんかあるぞ。何だこれ。行き止まりか?」

「ちょ、押すなっ……!」

「押す? ん? 何が?」

「も、集中できなっ……あっ♡」

「おいおい何だ今の声。フミ、お前こたつの下で何してるんだよ」

「このっ……! あ、ちょ、擦っちゃ……♡」

「昼間っからそんな顔するなよ」

 

 誰のせいだと思って……!

 

「ほ、ホントに怒るぞっ……!」

「えぇー? 何がだ? 身に覚えのないことで怒られてもなぁ」

「スケベ野郎……!」

「お前のほうがスケベな顔してるぞ」

 

 ぐにぐにと股ぐらを踏みつける力が、強弱を繰り返す。

 こたつがごそごそ震えているのに、布団のせいで視覚的には何も見えないのが、むしろ中で起こっていることを想像させられた。

 

「おい、いきなり突っ伏してどうした? 体調悪いならゼミ論あとにしろよ」

「う、うるさいっ……♡ このっ……♡」

「お? 折角心配してやってんのに」

「はぁっ♡ やっ、そこは……♡」

 

 付き合ってから2年あまり、散々彼に嬲られてきた体が、今までの経験を思い出して勝手に悦び始める。

 

「何だ? こんな昼間から発情してんのか?」

「はぁっ……はっ、はぁ……♡」

 

 もう……僕……。

 

「はあ……はっ……♡」

「お、おい、どうしたフミ……? 急にこたつ出て立ち上がって」

 

 あ、アキが悪いんだ……まだ昼間なのに、こんなことをするから……!

 

「お、おい! ちょっとしたイタズラだろ! オレ勉強しないとだし……!」

「アキのほうからこんなことしておいて……」

 

 僕はシャツに手をかけながら、アキの太ももの上に乗った。

 

「反省しろっ♡」

 

 

 

 すっかり夕方も通り越した午後6時半。こたつの上には進捗の変わらないゼミ論が映ったパソコンと、1ページも進んでいないノートが残されていた。

 

「ヤりすぎ……」

 

 僕は下半身の違和感から立つことができず、乱れた服の上に落ちているティッシュ塊をゴミ箱に投げ入れた。

 散々好き勝手された反動か、腹の底から痙攣のような震えがする。アキがかけてくれたタオルケットが、素肌に多少感触が悪い。自分だけ服を脱がないで、ズルいぞ。

 

「フミのせいだぞ。オレは勉強したいって言ったのに、お前が押し倒してくるから」

「君が先にちょっかい出してきたんだろ」

 

 声を張り上げる力もなく、僕は彼の腕に包まれたまま、何とか抗議の声明だけは出しておいた。

 

「今からゼミ論とか……無理。疲れた……」

「体力ねーな。高校の時の5キロ走、お前オレよりタイム早かっただろ」

「男だった時でしょそれ。女子は2キロ走だし」

 

 ボルダリングの上達とともに体力の増えたアキと同じペースで考えないでほしい。今日1日はもう何もやる気がしない。

 

「オレ達が昔嫌ってたタイプの大学生になりつつあるよな」

「そのうち酒とかパチンコにハマったり?」

「酒はありそうで怖いな……」

 

 飲酒とギャンブルと、どれほど爛れた恋愛をしているか自慢ばかりのカブれた大学生。

 そういう人種を一番嫌っていたはずなのに、人に語らないまでも、内容だけはそうなりつつあるかもしれない。

 

「ダメになってもいいよ。僕の前でだけなら」

「本気でダメになりそうだ……ママ」

「はいはい」

 

 高校時代のアキは、なんだかんだ言って自分が前を歩く! という感覚で、僕に対しても弱みを見せたがらなかった。

 だから、少しずつ僕にも弱音を吐き出してくれるようになった時は嬉しかった。多少なりとも癒しになってあげたかったから。

 

「は〜……試験怖ぇよ。落としたら来年も同じ講義受けさせられるんだぞ……」

「そうなったら僕も一緒に受けてあげる。他学部の履修単位の枠で取ればいいし」

「やめてくれ……もう最悪落としてもいいかなって思っちゃうからそれ……」

 

 ここで「落としてしまおう」とまでは言わないところが、彼が本当は真面目な性格であるということの裏打ちだ。

 だからこそ、僕の前では強がりをやめて、恐怖や苦しみを吐き出してもいい。僕は多分ずっと、アキのカッコ悪いところを見たかったのだと思う。かわいいから。

 

「欠点を見せてくれるほうが嬉しいよ」

「でもお前、男でも女でも、ワンナイトとかセフレとか言ってるヤツ嫌いじゃん」

「それは話が違う」

 

 弱みを見せてくれるのが嬉しいと言っているだけで、操の足りない考えや裏切り行為を容認するという意味ではない。

 

「オレは違うからな! 成人にもなって人数自慢とか火遊びの体験談とか、単なる理性の薄さを自慢するようなバカとは違うぞ!」

 

 僕は別に誰がどういう恋愛関係になろうが咎めるつもりもないが、何を深読みしたのか、アキは自分自身にあてはめてそんなことを言い出した。

 

「知ってるよ。真剣だからって言うんでしょ」

「そこの違いは大事だろ。オレは真剣だからな」

「分かってるってば。聞いたからね」

 

 本当に分かっている。だってこの前も、お互いの親族に挨拶に行ったんだ。真剣にお付き合いをしております。と。

 

 アキの家族へのご挨拶については、大した問題はなかった。アキのお姉さんとは顔見知りだし、お父さんも言葉数が多く、接しやすい方だったのを覚えている。

 

 大変だったのは僕の両親。母さんは僕らがどこまで()()()のかとか、孫はいつ見せてくれるのかとか聞いてくるし。

 父さんは、僕が生まれてから一度も見たこの時のない表情で男泣きをして、アキの肩をバシバシ叩きながら「娘を頼む」とか言うし。

 

 どれだけ恥ずかしかったことか。あの人達、僕らが将来必ず結婚すると思っているらしいのだ。

 

 う、思い出すと……今からでも顔が赤くなる。

 

「あの時はごめんね……」

「気にしてねーって」

 

 と、アキは言ってくれるものの、内心では重責を感じているはずだ。未成年で、社会や新たな交流に触れられる身分だ。まだ何の責任をも負わされるべき立場ではない。

 アキに浮気心などあるはずもないが、だとしても交際している相手の親に「よろしく頼む」と言われたら、どんな気持ちであれ身を引き締められる。

 

 そして何より、僕のことを負担に思ってほしくはない。ただでさえ普通の女じゃないせいで、普通の恋愛とは勝手が違うというのに。

 

 だから、アキには――――。

 

「それより、反対されなくてよかったよ。まんざら嘘でもないしな」

「え?」

 

 僕の両親に手土産をいっぱい持たされて、アキは最後に「娘さんは任せてください」と言った。

 

 あの時は、号泣する父の醸す空気に合わせてくれたのかと思っていたけれど……。

 

「……な、なんだよ。そんな目を丸くするな」

 

 先のことは知らないが、とかカッコ付けたことを考えていた昔のことを思い出した。

 

 あれ全部撤回。分かってしまった。完全に将来のビジョンが見えた。

 

「子供は2人がいいな」

「気が早すぎるわ!」

 

 





 ここまでお付き合いいただきありがとうございます。

 もう後日談だけなのに投稿が遅れてしまった言い訳としては……自分で終了タイミングを決定したクセに、多少の寂しさを感じておりました。
 連載投稿につきましては、寛大な読者様、ユーモアに富むコメント等に恵まれ、日々楽しく投稿を続けることができました。重ねてお礼申し上げます。

 今後の展望と致しましては、何か思いつき次第、このような後日談を掲載させていただきたく存じます。時期等は未定ですので、長い目でお待ちいただければ幸いです。

 また、本日より新作を執筆いたしますので、よろしければそちらもご確認いただけると幸いです。以下にリンクを記載します。

【実質魔法少女】金髪褐色TSサキュバスの淫紋解消研究 
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