ガチャの景品でTSしてもドスケベの親友に堕とされたくない   作:ハーメルンに性嗜好を歪められた被害者

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その8 ピンチに続くピンチ

 

 

 朝から、僕はかつてない窮地に立たされていた。

 

「フミくんは言いました。『いくらでも触らせてあげる』と」

 

 立って腕組みをしたまま見下ろしてくるアキの視線から逃げ、己の身を抱きしめて守りながら、僕は極力声が上擦らないようにシラを切った。

 

「い、言ったっけ? そんなこと」

「言った。絶対言った。絶対に聞き漏らしていない」

 

 くそ……やっぱり忘れていなかったか。

 

 まだ着替え途中だったので、今の僕は寝巻きのままだ。この格好じゃ外に逃げて誤魔化すこともできない。

 

 ガンガン扉を叩いてきて、朝から何事かと思い招き入れてみれば、昨日の僕の失言をしっかりと覚えていやがった。

 あんなの恐喝みたいなものだろ。約束しないと公共の場で胸を揉み続けるぞ、という、一種の脅しのようなものじゃないか。

 

「つまりだよ? もうこれからは、いつでもどこでも触りたいだけ触り放題ってことだよな」

「何でそうなるんだよっ!」

 

 こ、こいつ! 人の弱みにつけ込んで、とんでもない要求を通すつもりだっ!

 アキのことだ。学校でも遊びに出かけている時でも容赦なく揉みしだくつもりだろう。あるいは海で水着になった時なんかは……考えたくない。なぜかまんざらでもなさそうな水着の僕が頭に浮かんだ。アキの脳内イメージが僕にまで侵食してきている。

 

「んんー? オレはお前の口から聞いたんだけどなぁ? 『いくらでも触らせてあげる』って、自分でそう言ってたよなぁ?」

「う、ううっ……」

 

 昨日の自分が憎い。慌てていたとはいえ、とんでもないことを口走ってしまった。

 でも仕方ないじゃないか。そうでも言わなければ、あんな人前で、胸を揉まれているのに抵抗しない変態女だと思われる。ただ下の子供が怪我をしないように我慢していただけなのに。

 

「こんなデケぇ乳を、ずっと好き放題できるのかぁ。家の中でも、学校でも、他の男子が見てる前でも」

「そんなっ、ダメに決まって……!」

「ほーん。でも聞いたからなぁ。『いくらでも触らせてあげる』ってさぁ」

 

 へたり込んで立ち上がれない僕の耳元まで跪いて、アキはネチネチと昨日の僕の失言を繰り返してきた。

 

「まぁでもね? 流石のオレもね? そこまで鬼じゃねーよ? 電車の中でいきなり胸揉みまくる羞恥プレイとかしようと思ったけどね?」

「バーカ! ふざけんな! だから女子にキモがられるんだぞ!」

「それを言うなよ! 気にしてんだぞ……」

 

 気にしてるヤツは教室で唐突にヌーディストビーチに行きたいとか言い出さない。一緒にいた僕まで恥ずかしかったんだぞ。

 

「それはいいとしてだ。猶予はやる。1時間。今から1時間経ったらもう効力発動するから」

「い、いいい1時間!!? 無理無理!」

 

 短い短い短い! そ、そんな短い時間で心を決められるものか!

 

「じゃあどんくらい待てばいいんだよ」

「い、一週間……」

 

 それだけあったら、渋々、仕方なく、誠に遺憾ながら、なんとか気分の整理も付くかもしれない。やっぱそれでも無理かも。

 

「ダメ。じゃあ今揉む」

 

 ぐわっ、と、アキの手が伸びてきた。すんでところで腕を使って防御しながら、僕は慌てて言い換えた。

 

「わっ、分かった! 3日でいいから! 3日でいいから待って!」

「ダメです。そうやって有耶無耶にするつもりなら甘いぞ」

 

 くそ。バレてる。時間が経てば忘れてくれるかなぁ作戦は失敗か……!

 

「うぅ……じゃあ、せめて、夕方まで、それまでには何とか、準備するから……」

 

 それにしたって早すぎるけど、1時間よりはマシだ。そんなに早く決心が付く訳ない。ちょっと前まで普通に男だったのに、急にそんなことされても、頭が追いつかない。

 

「その代わり、一回だけ!! 一回だけだからな!」

「一回って何が?」

 

 こいつ……! わざと言わせようとして……!

 

「だから……お、おっぱいを、揉ませてあげるのが!」

「おっぱいって言うのが恥ずいんだろ。ホントにむっつりだな」

 

 分かってるなら言わせるな! あああ、顔が熱くて仕方ない。なんでこいつは恥ずかしげもなく人前で言えるんだ。言い慣れてるからか。

 

「自分の乳揉ませる準備って、なんか倒錯的でエロいな」

「君のせいだろうが君のっ!!」

 

 

 

 悶々とした気分のまま課題を進め、昼食を作り、また課題。時々アキとゲームをして息抜きをして……などとやっている間に、時刻は5時近くになっていた。

 

「なぁ、アキ。そろそろ夕方じゃないか?」

「ま、まだ! 5時半から!」

「ほーん……」

 

 今日一日、ずっと変な気分だった。突発的にではなく、この後、アキに自ら胸を揉ませるんだと分かっていながら、普通に過ごすことはできなかった。

 課題も、彼に比べると進みが遅い。それに、料理をしている時もいつもより注意が散漫になって、人差し指の端を少し切ってしまった。

 

 アキは懸賞に出すつもりのないナンプレで遊んでいた。いつも通りだ。態度には全く違いがない。

 それがまたムカつくのだ。僕にあんな提案をしておいて、自分は平常心を保っているのが、心の底からムカついて仕方ない。

 

 ぼ、僕は……全然冷静じゃいられないのに。このあと自分から胸を揉ませるって自覚していながら、平常でいられる訳がない。

 

「ん? どした?」

「べ、別に。何でも」

 

 僕の視線に気が付いて、アキは鉛筆を置いた。いつもの、見慣れた朗らかな顔だった。彼の後ろにあるガチャボックスの光沢に反射した僕の顔は、真っ赤になっているというのに。

 

「さて……5時半になった訳だけど」

「え、あ……も、もうっ……!?」

 

 アキに言われてスマホを点灯させると、待ち受けには確かに5時30分の表記が出ていた。時間ぴったりだ。

 

「約束だぞ」

「…………」

「黙ってるとチューするぞ」

「分かった!! 分かったよもう!!」

 

 全然心の準備なんかできてない。できてないけど、これ以上ごねたら、じゃあやっぱり一生揉み放題とか言いそうだから、我慢するしか、ないかなぁ……。

 

「じゃあ……その…………」

 

 う、ううう。なんで自分から、こっ、こんなことしなくちゃいけないんだ……!

 

「はいっ……!」

 

 目を瞑って胸を張る。もうどうにでもなれだ。僕も男だ。こうなったら腹を括って、約束を果たすしかない……!

 

「目瞑って胸突き出すのエッロ」

「早くしろっ!」

 

 変なこと言うな!! 黙ってやりたいことやったらさっさとどけ!!

 

「分かった分かった。もう我慢できないんだもんな。早く触って欲しいよな」

「もうそれでいいから、早く……!」

 

 そうじゃないと、折角決心して力を入れているのに、緊張ではち切れる……!

 

「な、なんで後ろに……!」

「こっちのほうがホールド感があるだろ」

 

 目を瞑っていたので、感覚がするまで分からなかったが、いつの間にか回り込んでいたアキに後ろから抱きしめられた。

 僕の小さくなった体は彼の腕の中にすっぽりと収まり、身動きが取れない。

 

 しかも、腕が太くて、すごく……♡

 

「震えてるぞ。緊張してるんだな」

「いいか、ら……! はやく、しろぉ……!」

 

 なぜか尻に当てられた両手が、腰の周りを撫でまわしながら、シャツをめくって侵入してきた。

 Tシャツの中に硬い手が入り込んでくる。ゴツゴツした感触が不必要に体を下から撫で回すと、ブラのホックの位置で止まり、留め具から伸びる部分を引っ張った。

 

「は、外していいなんて言って……!」

「ブラじゃなくて、おっぱいを揉ませてくれるんだろ?」

「それ、屁理屈……!」

 

 器用にもシャツの中でアキが外したブラが、ぱさ、と僕の足下に落ちる。拾いたいが……拾うと、出る。胸が。半脱ぎのシャツから。

 

「すべすべだ……」

 

 アキの手が僕の乳房に触れる。そのまま開閉するのではなく、まさぐるようにして全体を撫で始めた。

 

 

ランク5

・(r)異性に直接胸を触らせる Success!

 

 

 お節介にも、頭の中で機械的な通知がわざわざ鳴り響く。というか、これがリトライできるミッションなのかよ!? こんなの二度もやらせる訳ないだろ!?

 

「マジでデカいな……クラスの女子の誰よりもデカいぞ」

「比較とかいいから! は、早くして!」

「そんなに揉んでほしいのか?」

「ちがっ……! はっ、早く終わらせろって!」

「欲しがりだな」

「ちょ、んん……!!」

 

 アキの指が開閉する。感触を確かめるように、何度も撫で付けながら、鷲掴みにしても手に収まらない僕の胸を、何度も……。

 

「ちょっ、ちょっと……そんなに……!」

「手が離れるまでは一回だから」

「何、それ……! ズルい……!」

 

 ほ、ホントに揉まれてる……僕の、お、おっぱいが……直に……!

 

「ん、ん……あっ……♡」

 

 やばいっ……♡ それやばいっ、から……♡

 

「アキ、だ、め……♡」

 

 身じろぎをして抜け出そうとするが、力が強くて出られない。しかも、僕の体を拘束するだけの力であって、僕が痛くならない程度に抑えている。

 というか、そんな風にコントロールできる範疇の力で、なお僕を抜け出せないようにできるほど、力の差があるということ……。

 

「かわいいよ、フミ」

「あっ……!?」

 

 胸を揉む手を休めないまま、耳元で囁く声がした。適度に低くて、聞き慣れた、安心感と緊張感が絶妙な塩梅の声。

 

「かわいい」

 

 頭の中で何度も、アキの声が反響する。ただ単に「かわいい」と言われているだけなのに、全身が熱くなって、汗が止まらない……!

 

「かわいいな」

「やめ、それ……!」

「フミ、かわいいぞ」

「かわ、もっ、それ言うっ、なぁ……♡」

 

 なんか、変に、変になる……! おかしくなるから!! あ、頭が、じわっ、てっ……♡

 

「かわいい」

 

 いっそ、乱暴にしてくれたほうがいいのに、なんかこいつ、触り方が、うま……♡

 

「ふあっ……!?」

 

 ちょ、ちょっと! そこは……♡

 

「フミ、もしかしてこれ……」

 

 あ、ま、待って……♡

 

 揉んでいいとは言ったけど、こ、こすっていいなんて……!

 

「はぁっ、ん……♡ 爪、やめ……♡」

「口では嫌がってても、体は正直だな。腰が引けてるぞ」

 

 セクシービデオの男優みたいな声を出すな! 耳元で囁くな! というか低い声で変な演技をするな!!

 

「心臓の音すごいな。ドクドク聞こえてくるぞ」

「こ、怖いんだよ……! 必死すぎて!」

「必死に逃げてるのはお前だろ? 逃げないと女の子にされちゃうもんな」

「ちが、違う……! 違うっ、てぇ……♡」

 

 さっきから、さ、先っぽばっかり……あっ、ち、力が抜けて、ただでさえ、筋力差がすごいのに、これ、じゃ…………♡

 

「はっ♡ はぁっ♡ イゃっ♡」

 

 ダメ、なのに……もっ……♡ ぁっ、と……♡

 

「ホントは男なのに、先っぽ爪でいじめられて嬉しそうだな」

「そ、んな、こと……! はっ♡」

「気付いてるか、フミ、お前自分から胸突き出してるぞ。もっと触って、って。ほら」

 

 やめてっ♡ やぁっ♡ 足、ガクガクってなってるから、も、ホントに……♡

 

「口では男だって言うけど、とんだエロ女――――」

もおおぉーー!! やめろォーーッ!!

 

 僕はたまたまアキが片付け忘れて、そこら辺に置きっぱなしにしていた「鉄パイプ 殴打用」を取って、思い切り真横に振り抜いた。

 

 

 

「はぁーっ……はぁーっ♡」

 

 僕はシャツ越しに両胸を手で隠しながら、撃退したアキを見下ろして睨み付けた。

 

「このドスケベめ。反省しろ!!」

 

 この鉄パイプ、撲殺に便利なんて書いてあったがとんでもない。

 むしろ峰打ちに便利なシロモノで、うまいこと甚大な怪我にはならないように手加減しながら、勝手にアキをボコボコにしてくれた。

 

 最悪だ……流されて、なんか、すごい変な声を出してしまった。しかも、アキの前で。

 体の上から下まで、日中の外に出た時のように汗だくだった。それに、下着も……あああもう!! 早く風呂入って着替えたい!!

 

「だっ、だってフミが、い、いくらでも揉んでいいって」

「限度があるだろ限度が!!」

 

 ブラジャーを勝手に外していいとは言っていないし、そもそも、お礼に揉ませてあげる、とかじゃなくて、無理やり約束を取り付けられただけだ。

 

「で、でもフミお前、オレに揉まれて物欲しそうな顔してた――――」

「殴られ足りないか!!」

 

 バカ!! 誰が! 物欲しそうな顔なんか! してるかっ!!

 

「つーかブラ返せよ!! なんでアキが持ってるの!!」

 

 アキが僕のスポブラを掴んでいるせいで、さっさと部屋に逃げて着替えることもできない。というか、人のブラジャーを握って離さないってどういう神経なの?

 

「いや、なんかいい匂いだなぁって」

 

 アキはそう言うと、自らの顔をブラジャーの内側に埋めた。

 

「うわああぁやめろバカっ!!!」

 

 即座に取り返し、アキを蹴り飛ばす。布団の上に尻餅をついた彼は、名残惜しそうな目で僕のブラを見てきた。

 

「しょっ……! 正気ッ!? 今何した!? 何した今!?」

「ブラの匂い嗅いだ」

「説明しろって言ってるんじゃなくて!!」

「すっごいエロい匂いがしました」

「感想を言えとも言ってない!!」

 

 キモいキモいキモいッ!! 下着の匂いを嗅ぐって、どんな変態だよ!! 

 

 それにしても、ど、どんな匂いが出ているのだろう。

 僕の付けていたブラジャーから……え、エロい匂いって……あとで僕も嗅いでみよう。エッチな目的ではなく、た、体臭を確認するために!!

 

 嗅ぐと分かるほどの匂いがしているというのか? それはなんか、すごく嫌だ。昨日も暑くて汗がすごかったし、制汗剤買おうかな……。

 

「で、付けないの?」

 

 アキが僕のブラを見ながら、まるで心️の底からの疑問ですみたいな顔をしてそう尋ねてきた。

 

「じゃあこっち見ないでよ」

 

 後ろを向いて、シャツを少し上げると、すかさずアキが回り込んできた。

 

「…………」

 

 もう一度後ろを向く。そして回り込んでくるアキ。

 

「覗くなっ!!」

「お願い! 一回だけ!! 一回だけでいいから見せて!!」

「嫌だ!!」

 

 こいつ本当に見境なしか! 今日で警察のお世話になってもいいとか考えている訳じゃないだろうな。

 

「いいじゃん!! 男同士じゃん!! オレら普通に一緒にスーパー銭湯とか行くじゃん!!」

「全然! 状況が違うだろ!」

 

 あの時は僕の体も男だったし、というかこんなにがっつり着替えを覗いてきたりしなかっただろ! 目が血走ってて怖いんだよ!

 

「なんでだよ! 別にいいだろ……あ、もしかしてさぁ」

「な、何」

 

 得心がいった、みたいな顔をして、アキが拳で自分の手のひらを叩いた。こういう時は大体トンチンカンなことをほざく。

 

 

「ホントに心まで女の子になっちゃったか?」

 

 

 は、は、は、

 

「はあああぁっーーー!? な、なななってないけど!? 何を、いい言い出してるだよ君はっ!?」

「だってさっきから反応がエロいんだもん」

「だもんとか言うのやめろ!! 女の子になんかなってない!! 僕は、男!!」

「ホントかぁ……?」

 

 何度も言わせるな! 僕は男で、男だから別に見られたって問題ない!!

 も、問題ないけど……え、絵面の問題だ。今は身体的には女の子になっているから、それをおいそれと見せるというのは、倫理的にどうなんだということだ!!

 それに、本物のおっぱいなんかアキが見てしまった日には、刺激が強すぎて倒れてしまうかもしれない!!

 

 そっ、そう! そうだよ! これはアキのためでもある。

 童貞を拗らせてしまったアキに、そんなものを見せたら、彼の精神によくない問題が起きるかもしれないから、だから、これは僕の優しさなのだ。

 

「まぁ分かったよ。あ、でも最後にブラジャー見せて……うわ、汗の形エッッッ」

「勝手に見るな!!」

 

 

ランク5

・異性に付けていたブラジャーを見せる Success!

 

 

 なんだそのキモすぎるミッションは!? 

 

 い、今なの!? あ、これは、あれか。僕が持ってる状態で見せるということなのか。

 

 じゃなくて!! 何を冷静に分析しようとしているんだ僕は!?

 

 というかこれ、どうにかして通知切れないの!? なぜ自覚していることをわざわざ通知されて、二度も羞恥心を煽られなければいけないのか。

 

「ぁ痛っ」

 

 頭上からチャリンチャリンと、コインが3枚落ちてくる。

 ランク5のミッションを二つも一気にこなしたおかげ(せい)で、一瞬にしてレベルが20に到達したようだ。

 

 う、嬉しいような、屈辱的な……レベルが上がるほど、僕が男に(というかアキに)いいようにされているということだ。

 そう思うと、まるでレベルの上昇が、あたかも僕自身が女に変わっていくまでのレベルのように見えて…………。

 

 

「なんで今コインが出てくるんだ?」

 

 

 へ?

 

「いや、へ? じゃなくてさ。なんで今コイン出たんだ? 今の、フミのほうのコインだよな?」

 

 あ。

 

 やっ、

 

 やばいやばいやばいっ!!

 

 そうだった、忘れてた! ば、バレる! このままでは、僕のあの恥ずかしすぎるミッション群がアキにバレてしまう!!

 ど、どうする!? こんな決定的な瞬間、なんて言い訳すればいいんだ!? 今起きた出来事なんか、胸を揉ませたこととブラジャーを見せたことだけだぞ!?

 

 とにかく、何とかして誤魔化さないと!

 

「なぁ、フミ、もしかしてお前のミッションってオレの違うのか?」

「ちちち違わないよ!? い、一緒一緒! 人助けだよ人助け!」

 

 アキの目はほぼ確信に近いような疑いを光らせていた。そして、すごくイタズラめいている。こういう時、僕はいつも酷い目に遭ってきた。

 

「乳揉まれてヨガるのが人助け?」

「ヨガ……ってなんか……!」

「ヨガってただろ。オレのフィンガーテクで目の奥ハートにしてたじゃん」

「童貞がテクとか言うな!!」

 

 へ、変な言い方をするな! アキの手が冷たかったから、び、びっくりしただけだ!

 つーか目の奥がハートになる人間なんていないだろ!! エロ本の読み過ぎでキモい幻覚を見ているだけだっ!!

 

「というか、そ、そうじゃなくて! モテない男にいい思いさせてやってるんだから、人助けだろ!」

「また言いやがって。気にしてるんだぞ!」

 

 気にしてるヤツがあんな真っ向から乳揉ませろとか生で見せろとか言ってくるか!!

 

「なんか怪しいな。オレと同じってんならミッション欄見せてみろよ」

「い、いや!? 同じなんだから見せる必要なくない!?」

「本当に同じなら見せられるだろ?」

 

 同じじゃないから見せられないんだよ……! あれを見られたら、僕の貞操が危うい。まだ女の子とそういうことをしたこともないのに、アキばっかり楽しませて……!

 

「だ、ダメ!! 別に見せる必要ないし! たまたまコインが変な時に出てきただけ!」

 

 やっぱりダメだ。絶対に見せられない。あんなもの……!

 

「なぁ、隠し事しないでくれよ」

 

 突然、アキの表情に影が多くなった。

 

「え……」

 

 こんなに悲しそうなアキの顔、初めて見た。いつも笑顔でいるのに、なんか嫌だな……。

 

「オレ、心配なんだ。ホントはお前だけ、オレよりずっと辛い無理難題をさせられてるかもしれないって思うと」

「い、いや、そんな……!」

 

 アキは僕の肩に手を置いて、努めて優しい声色でそう言った。まるで、病床の子供に声をかけるみたいに、静かな声で。

 

「頼りないかもしれないけどさ、オレ、親友を助けたいんだ。いつも振り回してるしさ」

「そんなこと……!」

 

 振り回されているだなんて思ってない! むしろ僕だって、アキがいてくれて楽しいんだ!

 だから、そ、そんな顔しないで……。

 

「なんでも力になるからさ、頼むよ。見せてくれないか?」

 

 ち、違う。僕が卑怯だった。アキは本気で僕のことを心配してくれているのに、彼の人格を疑って、エロいことしか考えてないヤツみたいに……!!

 

「分かった…………」

 

 そうだ。アキはいつだって僕のことを助けてくれた。それを疑うなんて、僕は最低だ……。

 

 

 

 ここまで隠し通してきたミッション欄を見せるのには抵抗があった。

 しかし、アキにこれ以上悲しい思いをさせるくらいなら……そう思って、僕は光学スクリーンをアキの前に表示した。

 

「あの……そ、そういうこと、なんだけど」

「……異性に胸を揉ませる」

 

 アキはミッションのいくつかを声に出して読み上げていた。

 

 うう、は、恥ずかしいけど、我慢だ……! だってアキは僕のことを心配して、確認したがっていただけなのだから。

 そんなに深刻ではないということを、しっかり分かってもらわなければ。

 

「尻を揉ませる……とか、キスするとかねぇ」

「ご、ごめん……は、恥ずかしくて、隠してただけなんだ。アキを信用してないとかじゃなくて」

「分かってる分かってる。ありがとな」

 

 よ、よかった……! アキの表情はいつもの笑顔に戻っていた。

 

 朗らかで、はっきりとした白い歯で、そして不躾に僕の肢体を視線で舐め回す……

 

 

 ん?

 

 

「ほおおぉ〜。なるほどねぇ」

「な、なるほどっ……て?」

「なぁ、フミ!」

 

 アキはこれ以上ないというほどいい笑顔で、僕の頭に手を乗せた。目を三日月のように細くしながら。

 

「これからオレが、()()()()お前のミッション手伝ってやるからな!」

 

 そういうと、アキは僕の許可もなしに、まだブラを付けていない僕の胸をシャツ越しに鷲掴みにしてきた。

 

 

Extra!

・(r)クリア済みミッションをもう一度クリアする(2/3)※獲得経験値は半減

 

(異性に服越しに胸を触らせる)

 

 

 ピコーン、と、頭の中で通知音が鳴り響いた。

 

 

「これからよろしくな、フミ()()()

 

 しっ、しまったっ!! 罠だっ!!!

 

 





おまけ あの時アキが考えていたこと

 大学生の男に掴まれているフミを引っ張り、引き剥がす。白い細腕は柔らかく、少し力を入れただけで痛めてしまいそうだった。

「ご、ごめん……僕」
「平気か? 強く掴まれてたけど」
「え? う、うん」

 フミはうん、と言っているが、やはり肩を痛そうにしている。
 まとわりつかれ、逃げようとしても無理やり押さえ付けられたのだろう。

「そっか」

 強がるフミの手を取って、オレはその柔肌を一頻り眺めた。すると、こんなにひ弱になってしまった親友に対する仕打ちに、沸々と憤りが強くなっていく。

 あいつら、オレの友達に……。

 そう思うと、これ以上フミを奴らの視界に入れるのも不愉快だった。オレはほとんど無意識に、フミを抱き寄せていた。

「えっ、ちょ!?」
「もう大丈夫だ」

 もう大丈夫。

 もう二度と、絶対にオレがフミに手出しはさせなうわあああおっぱいでけえぇッーー!!

 お、おっぱいでかッ!! なんだこれデカすぎるだろ! しかも柔らかッ!! ふわふわおっぱいドエッッッッ!!!

 俺の胸の下くらいでぎゅっと潰れたおっぱいが、フミの呼吸に合わせて上下している。これはもう心のパイズリでは???
 しかもフミの荒んだ呼気が、オレの胸に当たっていて、生暖かい感触が触れては失せるのを繰り返していた。

 これはヤバい。マジでムスコが屹立する。オレの精神力が尽きた時、フミの腹にオレの暴れん坊が突き当たる。

「へ、へーきだっ、て……! もう……!」
「無理するな。震えてるぞ」

 オレはこのおっぱいの感触を失いたくない一心で、ぶっちゃけ適当なことを言ってさらにフミを抱き寄せた。

 腰細えぇぇ!! ケツ柔けぇッ!!!

 まずい、背水の陣だったか! エロすぎてあと10数秒で俺のナイトランスがスタンバイモードから戦闘モードへ移行するッ……!

「え……」

 うおおおおお! ふ、フミの手がオレの背中のほうに! ち、近過ぎるッ!! うわ、何だこの甘い匂い! シャンプー変えた? サキュバスなんちゃらみたいなエロいヤツに変えた?

「あ、あの、ありが……! と……」

 フミはオレの顔を見上げながら、頬を真っ赤にして、困り眉でそう言った。エッッロい顔するな。擦り付けるぞ。

 いやこれマジで、もうちょっと顔が低かったらご奉仕させてるみたいだな…………。

 うッ…………!!!


 その日の夜、オレのムスコは激しく荒れ狂った。ティッシュ箱を一つ空にして、ようやく朝日と共にまどろみが訪れた。
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