バカと首席とFクラス   作:ちはやふる

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第5話 作戦会議

屋上に着いた俺たちは、円を作るようにして適当に地べたに座った。何故地べたなのかと言うと、この学校の屋上にはベンチなどの休憩できる施設が置いていない。故に、地べたに座るしかないのだ。ただ、屋上はきちんと清掃されており、ゴミなどは落ちていないので安心して座ることが出来る。

 

「よし、じゃあ作戦会議を始めるぞ。と言っても今日のことは特別話す内容はないんだがな」

 

白米をほおばりながら雄二が4人に向かって言い放つ。なら、何故俺たちを呼んだんだと言いたいところだが、雄二が無駄なことをするはずがない。そんなことを思っていると、隣にいる美波に雄二が質問をぶつけた。

 

「島田、突然質問して悪いが今お前の周りには誰がいる?」

「彼氏が1人と友人が3人いるわよ」

 

合ってる。合ってはいるんだがそう言うことじゃないんだ、美波。

 

「美波。合ってはいるが今は試召戦争のことについて話していたから、それと関係あることだと思うぞ」

「あ、そっか。じゃあ戦力的にどうかってこと?」

「少し省きすぎてしまったな、悪かった島田。俺が言いたかったのはそう言うことだ。自己紹介の時にも言ったと思うが、単科目が学年トップクラスの秀吉、ムッツリーニ、島田に学年首席の龍也、そんなやつらの中で代表となった俺も全力も尽くすつもりだ。さらにここにはいないが、歴史系だけは得意な明久もいる。これだけ個性的なメンバーが集まっているんだ、Dクラスに負けるはずないだろう?」

 

雄二の言うとおりだ。最底辺のFクラスのある1人が、1科目だけでもAクラス並みの点数がとれていること自体がおかしいのに、今年の2年には6人もいる。その内の2人、俺と雄二に至っては総合点で見てもAクラスの上位に位置している。もっとも、雄二の今回のテストに関しては、Fクラスの代表になるために点数を調整したため、全くあてにならないが。しかも今回はムッツリーニが、珍しく生物も出来たと言っていた。十中八九あの分野が出たからに違いない。正直これだけの戦力を所持しているのだから、Dクラス、いやCクラスとも互角に渡り合えるだろう。

 

「それなら何故、儂たちを屋上にまで呼んだのじゃ?作戦会議をする必要がないなら教室でもよかったじゃろうに」

「ああ、だから最初に言ったろ?『今日のことは』特別話す内容はないって。俺が話したいのは今日の試召戦争でDクラスに勝った後の話だ。もちろん今日のことも話すが、あくまでもおまけ程度だ。それと屋上に来た最大の理由は、あいつらに話の途中で変に勘違いされて騒がれるのが面倒だからだしな」

 

さらっとDクラスに勝つことが当然となっているところ、雄二は負ける気がしないのだろう。それに、Fクラスのメンバーなら途中の話だけを聞いて、あることないこと回りに適当に言いふらしそうだし雄二の判断は間違ってないはずだ。

 

「今日Dクラスに勝ったあとは2日後、つまり明後日にBクラスに宣戦布告するつもりだ」

「雄二よ、まさかAクラスは諦めたのかのう?」

「いや、そういう訳じゃない。俺たちの最終目標はAクラスということに変わりはない。BクラスはAクラス戦の際の交渉材料として使うつもりだ」

 

秀吉と美波はきょとんとした顔で、雄二を見ている。ムッツリーニは今の話で理解したのか、余裕そうな表情を浮かべている。

 

「まず前提として、今の俺たちがAクラスに試召戦争を仕掛けたところで確実に負ける」

 

当たり前だ。いくら俺たちが高得点をとっているからといっても、単科目、数科目じゃ意味がない。相手は最上位クラスのAクラスだ。得意不得意の教科があるとはいえ、ほとんどがBクラス以上の点数に違いない。

 

「だから俺はAクラスとは5vs5の代表戦を提案しようと思っている。これなら特定の教科の点数が高ければ、勝てる可能性があるからな」

 

雄二の言う通り、これなら勝てる可能性は充分にある。ムッツリーニを出すだけで1勝はほぼ出来ると言っていい。あとは残りの4人で2勝すればいいので、かなり現実的な作戦となる。ただ、この作戦にAクラスが承認してくれるかが問題だ。試召戦争のルール上、上位クラスは下位クラスからの宣戦布告を拒否することは出来ないが、対戦内容までも下位クラスの言う通りにする必要はない。では、どうやってこの提案に同意させるか、先ほど雄二が言っていた通りだ。

 

「ここでさっきのBクラスを使うってわけか」

「ああ。Fクラス戦直後にBクラスを攻めこますぞ、とでもいえば首を縦にふってくれるだろう」

 

いくらAクラスだからと言っても、成績上位陣の点数が削られるのは痛手なはずだ。大抵のやつならここで折れてくれるだろう。だが、雄二の話はまだ終わっていない。

 

「あくまでこれは単純なやつか、翔子が対応してくれた時だ。まあ、あいつならこんな回りくどいことしなくても、最初から俺の意見が通ると思うんだが」

 

確かに頑固なやつが相手だったら、俺たちの意見なんかガン無視されるだろうし、霧島なら雄二の意見は素直に聞いてくれそうだしな。

 

「…………何か手はあるのか?」

「ああ。お前ら聞いたことないか?最初にわざと大きな要求を提示して、断られたら本来する予定だった要求を提示するっていう手法で、所謂『ドア・イン・ザ・フェイス』ってやつだ」

 

ドア・イン・ザ・フェイス

心理学を応用したテクニックの1つで、例えば、会社で部長が部下に対して『この資料を明後日までにまとめておいてくれ』と頼んだとする。しかし、その部下は他の仕事で忙しく日程的に間に合いそうにない。それを部長に伝えたら『じゃあ1週間後でもいいよ』と返事を貰ったとしたら、どうだろう。ほとんどの人は『1週間後にまで日程を伸ばしてくれた』と思い、快く引き受けるに違いない。だが、実際にはそうではなく、部長の本来の目的は『1週間後』に資料をまとめてもらうことだ。

つまり、本来要求したい内容を、先に非現実的な要求をすることで低く見せ、要求を通りやすく手法のことである。

 

「で、最初の無理な提案は何にする気だ?」

「1vs1の代表戦だ。俺が出ると宣言するが、向こうからしてみれば本当か分からないし、龍也を出される可能性もあるからな」

「で、そこから5vs5に持っていく、と言うわけか。じゃあBクラスは交渉に必要ないんじゃないのか?」

「手持ちは多いに越したことはないから、持っておいて損はないだろ」

 

まあ、最終手段にはもってこいのものだしな。出来るだけ使わないでおきたいのだろう。

 

「これがこの時間に話したかったことの9割だ。残り1割は今日のことなんだが、Dクラス戦では龍也以外の3人には部隊長になって貰うつもりだ」

 

3人とも自分がなるとは思ってなかったらしく、『えっ?』と間抜けな声を出していた。

 

「そんなに驚くことはないだろ。秀吉には文系寄り、島田には理系寄り、ムッツリーニにはどちらも似たり寄ったりのやつを振り分ける。で、龍也と明久は俺の護衛だ」

 

かなり的確な振り分けだが、雄二の護衛となるとかなり暇だ。

 

「安心しろ、龍也。ずっと護衛なんて暇なことさせるつもりはないからな」

 

雄二には俺の心の声が聞こえるようだ。

 

「ある程度時間がたったら、お前と明久にも前線に出てもらうさ。その時に、生き残ってるやつの中から5、6人ほど俺の護衛につかせてくれ。流石に護衛が1人もいないと、万が一の不意討ちに対処できないからな」

 

どうやら最初の護衛は俺と明久の2人だけらしい。点数で負けてるなら、量を増やさないと太刀打ちできない時の場合のほうが多いからだな。

 

「部隊長の3人は時間をかけていいから主導権を握ってくれ。それと、お前と明久は前線にでたら戦死しないように暴れろ。Dクラスを一気に潰したいからな。あいつにはおれから伝えておく。最後になったが、これだけは言わせてくれ。俺たちのクラスは最強だ、絶対に勝てる!」

 

そう意気込むと同時に予鈴のチャイムがなる。俺達は持ってきた弁当を片付け、急いで屋上を後にした。

勝負だDクラス、下位クラスだからって舐めてかかると足元すくわれるぞ?

そんな独り言を呟きながら、俺は教室へと帰っていった。




おかしい
サブタイトルは初陣の予定だったのに
まさかここまで延びるとは……
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