「魔法カード、<蛮勇突撃>を発動する」
「通りません。瞬間魔法<反応解呪>で無効化」
よし、順調に対処は出来ている。
ここまでの流れで相手はほぼ純正のバーサーカーニバルで間違いないだろう。
相手がこの後どういう風に回してくるか予測できるし、あとは上手くマスカン決めれば問題ないはずだ。
とはいえ油断は禁物。
ここからまさかと思われる
隣で闇ファイトが始まった瞬間、店長がひどく怯えていたのは気がかりだったけど、ハルナちゃんが店長の元へ急いで駆け寄ったのが見えたからこちらもファイトに専念することにした。
「くっそがぁ……!!」
しかし見ていてなんだが、このモヒカンとてもマナーが悪いな。
以前に礼也のカードを狙ってきた迷惑客もあれだったが、目の前のこいつはそれよりも悪いぞ。
「……へっ! おいガキィ……調子こいてるようだが、てめぇのお友達が闇ファイトをしていることを忘れんじゃねーぞ」
「…………? それがどうかしましたか?」
「なっ!?」
ここでまさかの遅延行為か?
流石にマナーが悪いにも程があるぞ。
「闇ファイトは文字通り命を懸けた戦い、しかもおまえのお友達の相手はB級の傭兵ファイター」
「俺に比べりゃ弱えーが、あんなガキ一人を捻るなんて一瞬だ」
「わかるか? 今頃テメェの仲間が血祭りに揚げられている最中だってことだ!」
生憎と闇ファイトや闇のカードの危険性は身を持ってよく知っている。
それは
特に礼也は野良の闇ファイトなんかに関しては、俺以上にけしかけられている。
それを聞いた道場の師範が呆れを通り越した顔で「一度神社に行ってお祓いしてきたらどうだ?」と提案したくらいに絡まれまくっていた。
けれど礼也は──俺の友達はそれらを全て踏み越えていった。
あの時と違い家族に護衛の精霊をつけていて、自分自身だけを狙ってくるなら好都合だと言わんばかりに襲い来る闇ファイターを悉く倒していったんだぞあいつ。
そういったこともあり、この場にいる人の中で闇ファイトにいち早く反応できたのも、皮肉にもそういった経験による賜物なんだろう。
闇のカードが使われたあの時、反応が遅れはしたが俺もあの青モヒカンの方に向かおうとした。
その時、礼也が一瞬だけ顔をこちらに振り向いた。
"あれは俺に任せろ。そっちは頼んだ"
たった一瞬のアイコンタクトだけど、こちらを見る目はそう力強く伝えているのが俺には分かった。
だったらやることは簡単だ。
「それで、ターンを進めないのですか? 遅延行為は止めていただきたいのですが」
「このガキィ……!!」
その時だった。
闇で形成されたドームから、ピシッと割れた音が響いたのは。
━青モヒカン視点━
「攻撃するときに、俺は【攻速詠唱】と【侵生】を宣言する!」
なんだか知らんが、奴は4/3のクリーチャーで攻撃を仕掛けただけ。
加速して突撃するバイクに乗ったガラクタロボットなんぞ、8/6のステータスを持つオリャのメルカバンで一捻りだ。
「まずは1速、【攻速詠唱】により<
な、コスト0で発動だとぉ!!?
「んなインチキ認められっかぁ!」
「【攻速詠唱】は条件を満たすクリーチャーが攻撃する時に、コスト0で瞬間発動出来る効果だ。<
「効果の説明だ。<
「……は?」
奴の魔法が発動すると同時に、オリャの場にいるクリーチャー達は燃えるような赤いオーラを纏い始め、急激にパワーアップをし始めた。
雑魚のウィーバローですら今この瞬間はメルカバンと同等のパワーを得ている。
「……ひゃはははは!!! バッカじゃねーのかおめぇ!! オリャのクリーチャーをパワーアップさせてどうすんだ!」
「対応無し……っと。続けて【侵生】の発動に入る。【侵生】はこの2枚のカードで処理を行われる」
続けて【侵生】とやらの聞いたことのない効果が発動するようだ。
まぁどうせ、さっきみたいに敵のパワーを上げるなんて無駄な効果が──
──ブゥウウウン!!!!
「な、なんだぁ……!?」
バイクで駆ける傷だらけのロボットがさらに加速し、加速による摩擦熱から炎が生まれ、ロボットを包み込んでいった。
「続けて2速。<疼く紅スカー>から<灼き焦がす裂紅 スカーゼレッド>へと【侵生】!」
≪燃やし尽くしてやる!≫
包まれた炎の内側から引き裂くようにして飛び出してきたのは、バイクの意匠がふんだんに盛り込まれた刺々しい巨大なロボットだった。
「ク、クリーチャーが変化しただとぉ!?」
「【侵生】は条件を満たしたクリーチャーが攻撃する時、そのクリーチャーに重ねて【新生】召喚して場に出る効果だ。攻撃は【新生】先のクリーチャーにそのまま引き継がれる」
「──そして3速。最高速度でぶっちぎれ、<荒ぶる裂紅 スカーレッド>!!」
≪ぶっちぎってやる!≫
<荒ぶる裂紅 スカーレッド> (赤)(赤)(赤)(3)
ドライブ・侵撃隊のコマンド・新生・唯一無二クリーチャー
9/8
【新生】……赤のクリーチャー
【侵生】……赤のコマンド・クリーチャー
このクリーチャーが場に出た時、相手の場の最もパワーの高いクリーチャーを全て破壊する。
ガキの宣言と共に巨大なバイクのロボットは加速の摩擦熱で装甲を溶かし、再び形を変えていく。
今度は刺々しさとは変わり、レースで走る流線型の装甲を纏ったスタイリッシュなバイクでの姿に変貌した。
……そういや、レアカードの噂も別のクリーチャーに変化するって聞いたはず。
ならこれもあのガキが持ってるレアカードってことかぁ!
「なるほどなぁ! 最後のあがきでオリャにそいつらを見せびらかしてくれたってことかぁ!」
「けど残念! テメェのクリーチャーは今からバトルでスクラップになるんだからよぉ!」
変化したあのクリーチャーのパワーとタフネスは9/8。
相打ちにはなるが8/6メルカバンでブロックすればバトルで破壊され、奴の場はガラ空きになる。
「……おっとぉ? そういやさっき、てめぇの魔法でオリャのクリーチャーは強化されてるんだよなぁ!」
なら雑魚のウィーバローでもバトルさせりゃいいってわけだ。このままウィーバローでブロッ──
「そうだな、確かに今からスクラップが出来る……もっとも、それはお前のクリーチャーだがな」
「それに、スクラップにするのに戦うまでもない。
「あ″?」
何を言ってやがる?
「クリーチャーの登場時効果の処理に入る。処理順は<灼き焦がす裂紅 スカーゼレッド>→<荒ぶる裂紅 スカーレッド>で行われる」
「まずはスカーゼレッドの登場時効果で、相手のライフ2枚をダメージとして墓地へ送る。これはスカーゼレッドが新生でないクリーチャーで【新生】した場合のみ発動可能」
「何だとぉ!? ──っちぃぃい!!?」
オリャのライフデッキの上から2枚が燃やされ、そのままサブ墓地へと送られた。
実質2点のライフロストだが、これにわざわざ<防災>を使うまでもねぇ!
それにダメージによるライフデッキの墓地送りなら……、
「……っ! 呪言<道連れの報復>が捲れた。こいつを発動するぜ!」
自分のクリーチャー1体を犠牲に、相手のクリーチャーを破壊する呪言!
これで奴のクリーチャーを破壊でき…………?
「なぜ……呪言が発動しない!?」
「スカーゼレッドの効果で墓地に送った
「はぁ?!」
なんだその効果!?
インチキにも程があるんだろうがぁ!?
「続けてスカーレッドの登場時効果、相手の場のパワーが最も大きいクリーチャーを全て破壊する」
今度はクリーチャーの除去か。
効果を受けるオリャの場でパワーが最も大きいクリーチャーは……8/6のメルカバンだ。
切り札を失うのは痛ぇが、破壊されるのが一体だけなら──
"<
「…………あ゛?」
いや、おい待て……嘘だろ?
まさか、あのガキはこれを狙ってたのか?!
オリャのクリーチャーを強化したのは、
不味い、あれは通しちゃいけねぇ!
急にざわついて感じてきた背筋の悪寒からして、通せばオリャの負けになる!
「──舐めるなクソガキィィィ!! てめぇのスカーレッドの効果に連動して<防災>を発動ぉ! 代用コストで色彩3枚を墓地に送る!」
色彩を無理矢理絞り出して放たれたエネルギーがクソガキのクリーチャーへと向かっていく。
ははは! ざまーみやがれぇ!!
<防災>は高額なカードだが、レアカード狩りしてるオリャが当然巻き上げているに決まってりゃあ!
これでオリャのクリーチャーは守られ──
「<防災>に連動して2コストを支払い、瞬間魔法<
「………………は?」
色彩を絞り出してまで放った魔法のエネルギーは、相手の魔法から放たれた熱風でいとも簡単に搔き消されていった。
「<
「対応は……ああ悪いな、もうお前の手札はそのライフカード一枚だけだったな」
クソガキにそう言われ、オリャは今までの手札をどうにか頭の中で堀り返す。
先攻開始時にメイン5、ライフ2の手札でオリャのターンが始まった。
先攻では色彩、<滾る儀式>、クワドリガで3枚使い、エンド時にクワドリガで2枚捨ててウィーバローで2枚ドローしたので先攻終了時の手札はメイン3、ライフ1の合計4枚。
そして先攻2ターン目でメインライフからのドローで開始時の手札はメイン4、ライフ2の合計6枚
魔石<錆付いた機械砦>を張り、バリスタ兵を呼んだが無駄死になった。
攻撃時に相手の呪言の効果で手札にあったクールスとメルカバンを引きずり出された。
これでメイン3枚、ライフ1枚の手札を消費し、エンド時の手札は<防災>であるメイン1、ただの色彩であるライフ1の合計2枚となった。
そして虎の子の<防災>を、このターンであっけなく防がれてしまった……。
「そろそろ頃合いだな……。
≪お前のスピードじゃ、届かない!!≫
クソガキの宣言と共にバイクのクリーチャーの姿がさらに加速し、一瞬にして姿が消えた。
そして瞬きする間も無い速度で紅い一閃が現れては消え、オリャのクリーチャー達に目掛けて何度も駆け巡っていく。
ソレが駆け巡って衝突していく度に、オリャのクリーチャーが荒々しく削り取られていき、加速による摩擦熱で溶かされ、燃やされていく。
次第にオリャの戦馬車は無残に砕かれ、轟々と燃え盛るスクラップへと変貌していった……。
(こんなのファイトじゃねぇ……! ただの蹂躙だ!!?)
「あぁそうだ、<
「え……あ……?」
「<
「ちなみにスカーゼレッドの効果と同様、この効果で墓地に送られた呪言は発動できない。呪いすらも灼き尽くす走り屋達の炎だ」
な、それじゃあ……!
「お前の場には5体のクリーチャーだから、合計10点のライフロストだ。過ぎた力でその身を灼かれ、
「お、おい! 待ちやが……ぐぎゃあああああああああ!!? 」
燃え盛る
「熱ぃ!? 熱ちぃよぉぉぉ!!?」
今まで味わったことも無い熱の痛みが全身を襲う。
同時に1枚1枚とオリャのライフデッキが上から捲られては、墓地に送られる。
色彩、色彩、<焼畑>、色彩、色彩、<錆付いた機械砦>、色彩、色彩、色彩。
そして──、
(10枚目……<間一髪>……!?)
墓地に送られた10枚目にして、オリャのライフデッキに潜む最後の命綱が焼き切れた。
「これで効果処理は終了し、このままスカーレッドでお前にダイレクトアタックだ」
「バカな……!? オリャがこんなガキに逆転されるなんて……!?」
──なぜだ!? どうしてこうなった!?
目の前にいるあのクソガキは闇の領域で共鳴できねぇんじゃねーのか!?
こうなったのも全部、闇カードを渡してきたあの包帯黒マントのせいだ! 強い闇カードと言いながら不良品を掴ませがって!!
「逆転? ……違うな、単にお前のファイトが既に周回遅れだったことに過ぎなかっただけだ……やれ」
≪──レッド↑ゾォオオオオオン↓!!!≫
感極まった叫びを上げながら奴のクリーチャーが突撃し、タイヤで出来た巨大な拳をオリャに目掛けて殴りかかってきた。
「ぶへぇえええ!!?」
巨大な拳の途轍もないパワーにオリャはぶっ飛ばされて闇の結界の壁にまで激突し、ピシッと割れる音が響いた。
「──これにてフィニッシュ、絶望がお前のゴールだ」
遅ぇ!まだあいつらの方がよっぽど速かったし手応えがあったぞ!!
──<荒ぶる裂紅 スカーレッド>
おま○け
テーマ紹介:"
赤のドライブ種族のクリーチャーメインの単色速攻のビートダウンテーマ。
赤のコマンドクリーチャーを素早く出し、【侵生】持ちの新生クリーチャーの強力なパワーで一気に攻め上げるのが戦術の特徴。
ただし踏み倒しメタには弱い。
元ネタはデュエマの"レッドゾーン"、別名赤バイクやバイクと呼ばれている。
ブンブンブンブン ブブーブブンブン♪
単色構築以外に他色のシステムメタクリーチャーを混ぜたデッキタイプもある。
なお今回礼也が使ったデッキだが、実はまだ変身を残している。
その意味が分かるな?(宇宙の帝王並感)
・本作で出てきたカード効果用語
【攻速詠唱】_条件を満たすクリーチャーの攻撃時、コスト0で瞬間発動可能。
元ネタはデュエマの【アタック・チャンス】。
【侵生】_条件を満たすクリーチャーの攻撃時、そのクリーチャーの上に0コストで【新生】し場に出てくる効果。その後の攻撃は新生したクリーチャーに引き継がれる。
以前出てきた【革変】との処理順としては【侵生】→【革変】で行われ、侵生したクリーチャーが【革変】の条件を満たさなければ、【革変】は不発となる。
元ネタはデュエマの【侵略】。