Life以外のTCGが無いのですが   作:野菜大好き丸

8 / 12
これでラーメンフェスでの話は終わります。
スープ吸った麺みたいに話を長く伸ばしすぎた…。

また、話の展開の為に前話での【遠撃】の効果説明を少し修正しました。
(【飛行】持ちをブロック出来るという表記にしただけ)



8.スープも残さず飲み干しラーメンを完食するのを「まくる」というらしい

 

『ななな、なんとぉ~!? 挑戦者、バトルフェイズを封じヨコーヤの攻撃を防いでいくぅぅ!!! 

 しかも、その攻撃を封じたのは扱いづらいことで有名な呪言カード<戦闘中止!>だぁぁ!!』

 

 まさかの展開に驚き隠せない実況の声が会場の特設ステージで響き渡り、その内容に観客やステージ上の選出者から「ざわ……ざわ……」と、ざわめきの声が出てくる。

 

 

「嘘だろ……幕流さんの必殺のヨコーヤを凌ぎやがった……!」

 

「確か<戦闘中止!>って、バトル中に捲れても意味無いカードだったよな? あんな使い方があるなんて……」

 

「けどそれなら、破壊効果の呪言を使えばよかったんじゃないか?」

 

「バカ! 今のヨコーヤは破壊されないだろ!」

 

「破壊じゃない除去系の呪言だと最低でもレアカードくらいだよな。そう考えるとあの戦術は理にかなっているのか……?」

 

 

 内容は聞こえてはいないが各方面から色々と話し声が出てるな~と思いながらフィールドでファイトしている俺こと、孝州布 礼也は一つの気持ちでいっぱいだった。

 

 

 

 

(あ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──っぶねぇええええ!!? 

 

 

 

 手札に運良く<衝撃>と<定めの命運>が揃ってなかったらまともに食らってたわこれ!? 

 しかも妨害対策の<献身の証明>も握ってなかったらガメオベラ一直線だったぞ! 

 

 舐めてたわけじゃないし、以前フッツーからある程度"麵騎兵”の動きや要注意カードを聞いたことがあったとはいえ、一枚でも対処札が揃ってなかったらそんな事前予習も無意味に帰すんだわ。

 

(元とはいえ)やっぱ怖いっすねプロランカーってのは。いきなり殺意ぶつけてくるんですから。

 

 

 とりまこのターンのバトルフェイズは封じたが、まだ相手のメインフェイズは終わってない。この状況からどう来るんだ? 

 

「私はヨコーヤに装備されている<加薬武装チャクラナルト>を起動(ステイ)し効果発動! このカードは起動(ステイ)または装備クリーチャーの攻撃で発動し、相手の場の秘宝カードを破壊するか、相手プレイヤーまたはクリーチャー1体を対象にして2ダメージ与える効果を持つ。

 私は秘宝破壊の効果を選択し、君の場にある<霊樹獣の森(セイクウッド・ビーストフォレスト)>を破壊する!」

 

 

 ちぃ、"霊樹獣”のサポートカード(1コスト軽減とパワー+1修正)を潰しに来たか。ただではターンを渡さないってことだな。

 

 

「私はこれでターンエンド!」

 

 

 よし俺のターンだな。さてどうしたものか。

 

 相手の場には22/18のステータスの化け物と、装備を取られ素のスタッツが2/3となってる麵騎兵のクリーチャーの2体だ。

 下手なクリーチャーで攻撃すればヨコーヤのブロックによる反撃で無駄死になるだけ。

【飛行】持ちのオウルでクリーチャーをスルーしてダイレクトアタックしようにも、装備カードの【遠撃】効果が付与されてるヨコーヤでブロックされて終わりだ。

 

 

 まぁ一応、<具材全部乗せ(フルトッピング)!>でのステータス修正効果はあっちのアップキープフェイズで失われる。

 そして<具材全部乗せ(フルトッピング)!>にはデメリット効果として、同じくアップキープフェイズのタイミングで場と墓地にある加薬武装カードを全てデッキに戻してしまう効果がある。

 

 これで相手ターンにはヨコーヤは大幅に弱体化するが、それでどうにか勝てるならあっちはプロの立場になってないだろう。

 

 確か<具材全部乗せ(フルトッピング)!>には自分メインフェイズで発動できる墓地効果がある。

 それは同じターン中で墓地に送られていない自身を除外して発動し、発動時にデッキに戻った加薬武装カードの枚数の整数値/2の数だけドローすることが出来る効果だ。

 

 場に7枚、そして墓地にも2枚ほど加薬武装カードがあるからあちらが場・墓地の加薬武装の枚数を増やしたり、こちらが手札・デッキバウンスや除外で干渉しない限りは4枚ドローが確定する。

 

 

 たかが4枚、されど4枚。

 おそらく次のターン、相手はそれで十分に押し切れるはずだ。というかこちらはもうさっきみたいに防ぐことが出来ない。

 

 要するに俺が勝つには、このターンで捲り切って相手のライフを削り切るしかないってことだ。

 

 

 多く抱えていたこちらの手札も、先程のターンでの攻防で今残っているのは4枚。

 

 手札にあるのは<怨恨の茨>、<呑泥の大地蛇ミドガルオム>、<霊樹術(セイクウッド・アーツ):豊穣の儀式>、<霊樹命爆(セイクウッド・エクスプロウド)

 -1/-1の修正効果の瞬間魔法に生贄除去送り付けクリーチャー、そして霊樹カード用のコスト増加魔法と全体破壊除去の4枚だ。

 

 まず切腹してるおかげで土地は十分にあるからぶっちゃけ<霊樹術(セイクウッド・アーツ):豊穣の儀式>はこの状況だと無意味(ブタ)に等しい。

 むしろこのテーマ専用の<濁る儀式>にはデメリットとして、次の自分のアップキープフェイズまで俺は霊樹カードしかプレイできなくなってしまう。

 

 

霊樹命爆(セイクウッド・エクスプロウド)>は場の霊樹クリーチャーを生贄に、その生贄のコスト以下の自分と相手の場にいるクリーチャーを全てを破壊する効果を持つ。

 場にいるコスト5のオウルを生贄にすればコスト4のヨコーヤとコスト2のお供ヌードルに効果破壊の範囲は及ぶが、チャーシールドで破壊耐性を付与されているヨコーヤには意味を為さない。

 

 おまけ効果で生贄のコスト以下の霊樹クリーチャーを手札から場に出せる効果があるが、そもそも呼べる霊樹クリーチャーが今手札にいねぇ! 

 オウルで持ってきたのは上記2枚とさっきのターンで破壊された<霊樹獣の森(セイクウッド・ビーストフォレスト)>だったからなチキショウ!! 

 

 

 そして<呑泥の大地蛇ミドガルオム>。

 こいつでヨコーヤを生贄除去することはできるが、代わりにターンに1回だけ戦闘・効果破壊耐性持ちの8/8のデカブツを相手に送りつけることになる。

 一応デメリットとしてこのカードのコントローラーはアップキープフェイズ開始時にライフデッキから2枚墓地に送る効果があるが、多く残っている相手のライフからして引導火力にもならない。

 むしろ送り付けた上で対処できなければ、そのデカブツパワーでこっちがオダブツだ。

 

 

 ……最後に<怨恨の茨>は通常効果は貧弱だが、()()()()()()()()()()()は中々強い性能を持っており、その条件を満たせる今だと逆転の為のキーカードの一つだ。

 

 

 

 だが手札で考えうる逆転としてはあと一枚のピース、相手を押し切るフィニッシャー(切り札)が足りない。場にいるオウルではトドメまで持ってこれない。

 

 

 霊樹獣には切り札クラスのカードが多種に存在し採用しているが、枚数的には殆どがピン差し。しかも、この状況で有用なのは思いつく限り2種。

 

 正直このドローでそれが引けるかはわからん。俺自身が課した制約の関係上、共鳴頼りのドローは出来ない。逆に言えば、共鳴による邪魔が無いとも言える。

 

 それに相手がこのターン使用できるコストは無いが、仮に2枚目の<防災>といった代用コストの妨害を握っていて、召喚や魔法を1回でも防がれたらアウトだ。

 

 まさに乾坤一擲な大勝負。あれやこれやと考えたくなるが……。

 

 

 

 

 

「……ま、ドローしてから考えるか。俺のターン、レディ・アップキープ・メインとライフデッキから1枚ずつドロー!!」

 

 

 デッキの上に指を置く。カードスリーブの感触にそのままに赴いてデッキからカードを引き、そのカードを俺は捲り見た。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 彼がドローした瞬間、ファイターとしての直感が警鐘を鳴らした。

 

 引いたカードに輝きは宿してない。彼の後ろにいる精霊達は何もせず、ただ静かに観戦していた。

 

 

 だが──、

 

 

≪幕流よ、来るぞ……!≫

 

 私の傍らに精霊<羅漢(ラメン)部隊長ソイソス>が現れ、警戒を促す。同じく精霊でもあり、場にいるヨコーヤも装備している加薬武装を問題なく振るえるよう臨戦態勢で身構える。

 

 

 

 

「……おっさん、先程のワンキルコンボは危なかった、正直肝が冷えました」

 

「そのお礼に、一言言わせてもらいます」

 

 

 

「──今からおっさんのライフ。麺一本も、スープ一滴も残さず()()()()()いただきます」

 

 

「っ! ではその食いっぷりを、ぜひとも見せてもらおうか!」

 

 

 

 とはいえ先のターンでこちらがやれる手は既に出し尽くした。

 

 負けてしまうのかとヒリついた緊張感もあるが、それ以上にあの少年はこの状況をどうひっくり返すのか見てみたい気持ちが強く湧き出ていた。

 

 

 私のライフは残り13で、場にはフル装備のヨコーヤと<具材全部乗せ(フルトッピング)!>で加薬武装をヨコーヤに渡したまま場にいる<羅漢防衛隊ピグボン>の2体。

 

 一方、少年は先程の防御で手札3枚消費させられ、先ほどのドローで残り手札は5枚。場には【飛行】持ちの5/5の大型クリーチャーが一体。

 

 高ステータスのヨコーヤを避けてピグボンを狙うにしても、生半可なクリーチャーではヨコーヤでブロックされるだけだ。

 

 

【飛行】持ちのクリーチャーで私を直接狙うにしても、コーンスリンガーで【遠撃】を付与されたヨコーヤで迎撃は可能。

 

 ヨコーヤを除去するにしてもそう簡単には突破できない。チャーシールドの効果でヨコーヤには破壊耐性が付与され、戦闘・効果での破壊は不可能。

 

 さらにチャーシールドは墓地の加薬武装を除外することで自身の破壊を肩代わりする効果を持つ。

 墓地には2枚の加薬武装がある為、最低でも2回は耐えられる。

 

 

 勝敗は少年の手札にかかっており、その手札に逆転の手は残っているかどうかだ。

 

 

「俺は3コスト支払い、<霊樹獣(セイクウッド・ビースト)ウィロウ・ボブキャット>を召喚!」

 

 

 カードをボードにセットし、彼の場に現れた柳色のオオヤマネコのクリーチャー。

 

 ファイト中も少年の傍らで半実体化の状態でゴロゴロと寝そべっていたが、召喚された途端に機嫌良く「出番か!?」と言わんばかりに颯爽とバトルフィールドへと降り立った。

 格としては奥で観戦してる彼らに比べれば低いが、精霊としての存在感はヒシヒシと伝わり油断できない相手だと思い知らされる。

 

 

「ふむ……こちらからの対応はない。対応する際は声を掛けますので続けてくれ」

 

「ならボブキャットの効果を発動! 場に出た時にデッキから霊樹(セイクウッド)カードを一枚手札に加えることが出来る」

 

 

 ……サーチ効果! 

 

 となると逆転の為に、彼は何をデッキから持ってくるのか。

 

 単純に考えれば、破壊以外の除去効果を持つカードを持ってくればヨコーヤは突破できるだろう。

 

 

 

「──俺は<霊樹王獣(セイクウッド・キングビースト)エボエブリッツ・ランページイーグル>を手札に加える」

 

 

 

 

 彼が手札に加えたカードからうっすらと感じる気配でわかる。あれが彼の切り札なのだと。

 

 

「俺は場にいるボブキャットとタクティオウルの2体を生贄にする。このクリーチャーは霊樹クリーチャーを2体まで生贄にし、生贄クリーチャーはのコスト分だけコストを下げて召喚することが出来る」

 

 

 彼の宣言と同時に2体のクリーチャーは光となって混ざり合い、その光は巨大な樹木へと変貌し聳え立つ。

 

 

「呼び出すクリーチャーのコストは8! そして2体のクリーチャーのコストは合計8! よって0コストで召喚することが出来る!」

 

 

 突如、樹の樹上の空に暗雲が立ち込め、暴雨が降り雷鳴がゴロゴロ響き渡る。そして次の瞬間、

 

 

 

 

──ビシャァァァン!!! 

 

 

 強烈な雷鳴の音と同時に凄まじい程の威力を持った雷が巨木に直撃した。

 

 だが樹は焼け焦げ、裂き切れるかと思えば無事に聳え立ち、それどころか生命溢れたかのように、幹や樹冠につく葉が光り輝いていた。

 

 

 

「──来い! <霊樹王獣(セイクウッド・キングビースト)エボエブリッツ・ランページイーグル>ッ!!!」

 

 

 光り輝く樹が姿を変えていく。

 

 樹冠は分かれ翼となり、葉は羽となる。そして幹や根を含めた樹体は巨大な大鷲の姿へと形変わっていく。

 

 

 

 

 

 

≪……キィィィィィィィィィ!!!≫

 

 

 やがて樹の姿が全身が金色の、白頭の大鷲へと変化し終える。

 

 そして大鷲は甲高い産声を上げ、大空は我が物といわんばかりに羽ばたき、フィールドへと君臨した。

 

 

 

『ここで挑戦者! 幕流選手に負けじと自身の切り札を召喚したぁぁあ!! その名も<霊樹王獣(セイクウッド・キングビースト)エボエブリッツ・ランページイーグル>だぁぁぁ!!!!!』

 

 

 

 

「……え、やっと久しぶりの出番で、普段からもっと出せだって? 無茶言うな、今回みたいにお前と噛み合う相手ばかりじゃないんだからな」

 

 

 ビリビリと迸る威圧感は、かつて現役時代に戦ったレガシーカードに引けを取らないほどの強大な存在。

 

 そんな存在を目の前の少年はなんてことなくただ普通に接して、ファイトに集中している。

 

 その様子に改めて人刹師匠の言っていた特異性を理解できた。

 彼はその強大な力に屈せず、それでいて力に呑まれ溺れずにいる。

 

 そして彼の後ろにいる精霊達からして、その強大な力を持つ存在はあの1体だけではないと。ファイターとしてああも普通にしているのは異常だと。

 

 

 

 

 

 ……もし現役の時に彼と遭遇してたら、教会からの指令で保護という名の監視や隔離、下手すれば()()しなければいけなかっただろう。

 

 だが現役を退いた私にはその責務を全うする必要はない。純粋に彼とのファイトを楽しませてもらう! 

 

 

 

「……その召喚に対応はない。続けてくれ」

 

 

 しかしあのクリーチャーのパワーとタフネスはフィールドで映し出されているのを見れば7/7。強力なステータスだが、このままではヨコーヤに勝つことが出来ない……。

 

 となると効果は一体……? 

 

 

「なら<霊樹王獣(セイクウッド・キングビースト)エボエブリッツ・ランページイーグル>の効果発動! このカードは霊樹クリーチャーを生贄に召喚した場合、相手の場にあるクリーチャー以外のカード、コストゾーンの土地以外のカードを全て破壊するっ!!」

 

「なにっ!?」

 

 

 まさか狙いはヨコーヤではなく、彼が装備している加薬武装か! 

 

 

「さらにその数が2体の場合、相手はこの効果に対して連動出来ない! 吹き飛ばせ、イーグル!!」

 

 

 大鷲がその巨大な翼を羽ばたかせ、その風が雷纏う暴雨風となりこちらのフィールドに襲い掛かる。だが……、

 

 

「くっ、<加薬武装チャーシールド>の効果! このカードは墓地の加薬武装カードを1枚除外することで破壊から免れる!」

 

 

 ヨコーヤが装備していた加薬武装の殆どが暴風にさらわれ持っていかれる。更に設置してあった<麵兵の精麵所>も耐え切れず破壊されていった。

 

 しかしチャーシールドのみ自身の効果で場にとどまることに成功した。この効果は発動を介さない効果なので、先ほどの連動不可の影響を受けずに効果が使える。

 

 

 多く装備していた加薬武装は破壊され装備されているのがチャーシールドのみになったことで、ヨコーヤのステータスは自身の能力と<具材全部乗せ(フルトッピング)!>の効果で6/6となった。

 

 

「……イーグルには【瞬速闘】を持っている。これは召喚したターンのみだがクリーチャーに対し攻撃が出来る【速闘】に【機先】の能力が備わった効果だ。

 何も無ければメインフェイズを終了し、バトルフェイズ。俺はイーグルでヨコーヤに攻撃!」

 

 

 ここでステータスの低いピグボンではなく、戦闘破壊されないヨコーヤに攻撃だと!? 

 

 自らに<衝撃>を使うと言い、彼は一体何をするつもりなんだ!? 

 

 ……意図が全く読めないがここはヨコーヤで受けるか、それともピグボンでブロックするk──

 

 

「──す・る・と・き・に! 対象をピグボンに指定し瞬間魔法<怨恨の茨>を3コストと、追加コストで墓地にいる植物種族のクリーチャー3枚をゲームから除外して発動!!」

 

「このタイミングで瞬間魔法!?」

 

 

<怨恨の茨>、確かあれは……。

 

 

「<怨恨の茨>。素の効果は3コストでクリーチャー一体に-1/-1の修正をかけるだけのカード。正直これだけだと弱い」

 

 

「……だが、追加コストで墓地の植物種族のクリーチャーを3枚まで除外することで追加効果が発動することが出来る。俺は墓地の<胞子ゴブリン>、<霊樹獣(セイクウッド・ビースト)オリーブ・シャモア>、<霊樹獣(セイクウッド・ビースト)アカシア・ガゼル>の3枚を除外!」

 

 

 少年の宣言と共に茨が大鷲の爪や嘴、体のあらゆる所に纏わり刺々しく武装されていく。茨からは除外されたクリーチャーの無念が宿り、それが大鷲に更なる力を与えているように見えた。

 

 

「除外した枚数での効果は、1枚以上であればこのターン中に場の植物種族のクリーチャーに【貫通】を付与。2枚以上であればさらに相手プレイヤーに与える戦闘ダメージが2倍になる。そして──」

 

 

 

 

≪ヨッ!?≫

 

≪ピグゥッ!?≫

 

「ヨコーヤ!? ピグボン!?」

 

 

 気づけば私の場にいるクリーチャーが突如地面から飛び出した茨に縛られ、身動きが取れなくなった。

 

 さらによく見ればピグボンの方だけが茨の本数が多くなり、蚕の繭のように包み込まれていく。

 

 

「3枚除外した場合。このターン中、相手の場のクリーチャー全てのパワーとタフネスは0/1として上書き修正される! これは発動時点で他の修正効果は計算された状態の後に上書きされるため、ヨコーヤと<具材全部乗せ(フルトッピング)!>の修正効果はこの時点で無意味になった!」

 

「そしてこの追加効果は素の効果よりも先に処理されるため、ピグボンは0/1の状態で-1/-1の修正することになる」

 

 

 数多の茨に包まれ蔦の繭となったピグボンは、茨ごとそのまま大地へと呑み込まれていった。

 

 

「……つまり、ピグボンのタフネスは0となる。タフネスが0以下になったクリーチャーは死亡するというわけか……」

 

 

 こちらのクリーチャーがヨコーヤのみとなったためこちらのブロック選択・ステップは無視され、戦闘ダメージ・ステップに移行する。

 

 

「行けっイーグル! サンダーダイブだ!」

 

 

 大鷲が茨と雷を纏ってラーメンの戦士に向かって上空から急降下し突貫する。

 

 身体が茨で縛られ、身動きを封じられたヨコーヤはどんぶり頭から伸びた麺を触手のように用いてチャーシールドを持ち、大鷲の突撃を受け止めようと構えた。

 

 

 

 激突する両者。

 

 雷を纏った大鷲の一撃は飛び散る雷撃で周囲を焼き焦がしていく。それをラーメンの戦士は抑えきれない強い力で身体が仰け反りながらも、焼豚の盾で身を守って受け切った。

 

 だが衝突で発生したエネルギーの余波は健在で、ヨコーヤが受け止めきれない程の力のエネルギーがこちらの方へと襲い掛かって来る。

 

 

 7/7と0/1との戦闘。

 

 チャーシールドによってヨコーヤは破壊されないが、相手は【貫通】能力を得たためダメージが私に通る。しかもその戦闘ダメージは<怨恨の茨>によって2倍となり、合計ダメージは12……! 

 

 私のライフは残り13なため1は残るが、次の自分のターンでライフデッキからドローすればそのまま敗北する。

 

 だが……。

 

 

「……! ダメージから呪言(カース)<間一髪>が捲れたため効果発動! この戦闘でのダメージはこのカードのみとなり、残りはライフデッキへと戻りシャッフルされる!」

 

 

 ダメージでライフデッキから捲れたカードから出たのは、呪言(カース)の中でも優秀な防御カード! 

 

 最後の一枚とならずに出て来てくれて助かった。

 

 同時に<焼畑>も捲れたが、この状況を脱すのに<間一髪>で十分な為、これは発動せずそのまま温存する。

 

 

 これでどうにかこのターンは凌ぎ切り──

 

 

 

 

 

 

(……いやまて、であればなぜ<怨恨の茨>の対象をヨコーヤにしなかった? タフネス0による死亡ならチャーシールドで防げないはずだ……!)

 

 

 少なくても<怨恨の茨>の効果はヨコーヤを選択し、ピグボンに攻撃すればこちらの場はガラ空きになっていたはずだ。

 

 

 そんな疑問が頭に過ぎりながら相手の場を見ると────雷の大鷲は、()()()()()()()()()()

 

 

「攻撃可能な状態になってるだと!?」

 

「言い忘れてました。イーグルは【瞬速闘】だけでなく、【双撃】も持っている。よってこのターンもう一度クリーチャーに攻撃が可能!」

 

 

<怨恨の茨>での選択は、これが狙いだったのか!? 

 

 

【速攻】とは違い【速闘】は相手の場に攻撃できるクリーチャーがいなければ、あの大鷲はファイターに直接攻撃が出来ない。

 私のヨコーヤは勝利のためのサンドバッグとして必要であり、破壊耐性がまんまと利用されたというわけだ! 

 

 そして、もう呪言(カース)の宣言は終了したため<焼畑>は使用できない。

 

 

「なにも無ければバトル! もう一度イーグルでヨコーヤに攻撃!!」

 

 

 この攻撃で再び12のダメージが襲い、残り12となった私のライフは0となる。

 

 ライフが0になった時点で<焼畑>は発動する間もなく敗北が決定する。

 

 もし発動していればこのターンの終わりに私のライフは3残っていた。

 

 

 

 最後の最後で慎重になりすぎてしまったか……。

 

 

「……お見事! 君のその食いっぷりは天晴れだったぞ少年!」

 

「ありがとうございます。そちらも大変ボリューム満点で、食べ応えのある大満足なファイトでした」

 

 

 大鷲がヨコーヤに向かって再び突撃する。ヨコーヤは再びチャーシールドを構えてまた受け止めるが、今度はその威力に耐え切れず吹き飛ばされる。

 

 吹き飛ばされたヨコーヤは身体が消え、物言わぬラーメンのどんぶりに変化して少年の元へと落ちていく。そのどんぶりを少年はしっかり受け止め、空となった中身を確認した。

 

 

「グッドゲーム、こちらの完まくです。ごちそうさまでした」

 

 空になったどんぶりを静かにフィールドの台に降ろし、少年は手を合わせて礼をした。

 

 

 





雷が降り落ちて輝く大樹。それは森の大空を支配する王の玉座だ。

──<霊樹王獣(セイクウッド・キングビースト)エボエブリッツ・ランページイーグル>


おま〇け

フェス帰りでの男子高校生の会話
普夫「なぁレーヤ、あの場面って鷲よりもサイの方が安全に勝てたんじゃないか?サイならバトルフェイズ中に呪言を発動できなくする効果もってるし」

礼也「ふふんそれはな……あんだけ展開された装備達をロマン求めてブッパしたかっただけだよ。全て壊すんだ(加薬武装を)」

普夫「結局一枚残って全て壊せてなかったけど、それならまぁ納得した。
けど最後、相手が<焼畑>使わなかったけど、もし使われてたら返しのターンやられてたんじゃね?」

礼也「あ、そん時は手札にミドガル握ってたんで、メイン2でヨコーヤ生贄からの相手ターンでミドガルによるライフ2ロストとライフデッキ1ドローでの3点でゲームセットですわな」

普夫「恐ろしい程に周到なサブプラン、俺でないと見逃しちゃうね」

礼也「なお、実際はトップ解決しなければ手札事故ってて負けてたという真実」



・今話で出てきたカード効果用語
【速闘】_召喚したターン、相手クリーチャーに対し攻撃することが出来る。さらに起動での効果発動も可能。ただしプレイヤーの直接攻撃は出来ない。(【速攻】も持っていたら可能)
上位効果として【機先】が備わった【瞬速闘】が存在する。
元ネタはデュエマの【マッハファイター】。

【双撃】_バトルフェイズで2回攻撃が可能になる能力。

【機先】_ダメージ計算時に、先に相手クリーチャーにダメージを与える能力。


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