陰の実力者の親友 作:はちりんご
騒動が終わり、学校も影響なく始まった頃、私は研究室にいた。
「アレナ様、問題はありませんでした」
私はシドが放ったアトミックによって何か研究体に問題が起きていないかを確かめていた。
「それは良かった。あったらあったで面白いけどね。それじゃ」
「問題、起こさないでくださいね」
アンの注意を適当に聞き流しながら爺さんのいる部屋に向かう。
今回の騒動はまだ始まりに過ぎないだろう。これから、沢山の事件がシドやアレクシア、クレアを巻き込んでいくだろう。私が。
それにしても、アトミックは凄かったなー。あれは私では打てないな。打とうとも思わないけど。自分が核に、なんて普通考えたりしない。だからこそ面白いのだけど。
そんなふうにアトミックのことを考えているうちに爺さんの所に着いていた。
「来たか、お嬢ちゃんはもう起きておる。少し混乱しているようじゃから安心させてやれ」
爺さんはそう言ってどこかへ行ってしまった。
私は、少女が丸まっているベットに近づいた。顔だけ布団から出して私のことを観察している。しかし、恐怖心は強く感じられない。爺さんと少し話したのだろうか?
「初めまして。ミリア。私は、アレナ。君のことは父親から少しだけ聞いている。君が父親について覚えているかは分からないけど」
悪魔憑きになる前についてアルファなどのガーデンメンバーは覚えていたけど、悪魔憑きからさらに改造されていたミリアが覚えているかは正直分からない。
「覚えています」
声には覇気がないが、しっかりと答えてくれる。
「父は、生きているんですか?」
「死んだ。オルバが死んだのは私が見届けた」
間髪入れずに答える。
言い淀んでもしょうがない。事実はさっと言った方が良い。相手が気を病んでいるかもしれない少女だったのはどうかと思うが。
「…そうですか。父の最後はどうでしたか?」
薄々察していたのだろう。自分の父親が死んでいることを。
「決して良いものではなかったよ。無惨に切り刻まれたよ。これは最期にオルバが身に着けていたペンダントだ」
私は二人が仲良く並んでいる写真の入ったペンダントをミリアに渡した。
過去にとらわれないためにも渡さないという選択肢もあった。しかし、私が持っているよりも彼女が持っていた方が意味があると思い渡した。実際、私が持っていてもただのごみにしかならないしね。
「あり、が、とう…」
ミリアは布団で顔を隠しながら静かに涙を流し始めた。
大声で泣いたって何も言わないのに、子供なのに子供らしくない一面を持っている。悪魔憑きを経験すると、こういう部分を持つんかねー。
「思いっきり泣いてもよかったんだよー」
ミリアが泣き止んだところで私はそう声をかけた。心無い一言かもしれないが、これぐらい言った方が逆に接しやすいかもしれないと思ったが、成功したことは無い。
「…大丈夫です。それで、あなたは私に何をしてほしいんですか?」
「そうだなー。取り敢えずその間違った前提から正そうかな。ミリア、君が私に何かをするんじゃない。私が君にするんだ。私は君の父親が私の部下になる瞬間に約束をした。その詳細はどうせいつか分かることだからわざわざ言わない」
ごめんね。本来なら言った方が良いことなのだけど、さっきも言ったけど私は過去にとらわれるという行為はあまり好きではないんだ。厄介なことにこの子はおそらく多感な時期だ。そんな子がもういない父親のことを知っても重く考えてしまうだけだ。だから。
「君がもっと大きくなって私の手元から離れるくらいになったら教えてあげる。……とまぁ、昔の話は置いといて、今の話をしよう。君には2つの選択肢がある。実際はもっとあるんだけど、個人的にお勧めする2つを言う」
ミリアは小さくうなずいた。
「1つ目はここに住む。ここは私の研究所だから安全。ただ、危ない生物がいるゾーンもあるから、そこには行かないようにしてね。2つ目は君が捕まっていたディアボロス教団と敵対しているシャドウガーデンに入る。教団に復讐がしたいなら入ってもいいと思う」
オルバを殺したのシドだから仇の組織ってことになるのかな?…まぁいいや。ガーデンに入らせるつもりはないし。
「おすすめしないものにはどんなものがあるんですか?」
ミリアは、少し顔を上げて聞いてきた。
「特にない。私としては、1つ目の選択肢以外選ぶ意味がないと思ってるからね。だから1つ目を早く選んでほしいと思ってる。ただ、言われるより自分で決めたいでしょ?だから選択肢を出しただけ。2つ目を選んでもいいんだけどさー。辛いよ?結構辛い。私は受けてないけど訓練とか結構辛いよ」
実際どんな感じなんだろ?私はいつも遠目から眺めてるだけだからなー。カイあたりなら知ってるのかな?今度聞いてみよ。
「……分かりました。じゃあ、ここで過ごします」
「なんか。選ばせた感凄いな。まぁいいや。話がスムーズなのは良いことだし。本来なら私も一緒に過ごしてお世話したいんだけど、私はそこそこ忙しい身の上なのであまりここにはいれません。そこで、もう話したかもしれないけどラング爺さんと過ごしてもらいます。何か困ったことがあるなら頼りな。頼りにくかったらそこの右にある道を進むと別の部屋に出るからそこにいる研究員に聞くといい」
この研究所は構造が複雑な場所が数多く存在するが、今いる部屋を中心とした区間は比較的単純な構造になっている。ここにいる研究員はアンを除いて皆外出しない、というか外に出ると危険なので研究所に住んでいる。
研究所をつくった頃はアンと私、偶に来るイータぐらいしかいなかったので良かったのだが、人員や実験生物が増えるにつれ窮屈になって実験生物のストレスが爆発しないために拡張した。その時に住居スペースを作った。そこの一角にこの部屋があるので、過ごしやすいわけだ。少し外れると迷路になるのだが。
となると、間違えて別の道を選んだ場合が少し怖い。クーちゃんのいる部屋の近くに行くとまだ貧弱なミリアでは鼓膜が一瞬でやられるだろう。爺さんがいるから大丈夫だと思いたいが、この研究所は危険な場所が多すぎるな。……道ふさげばいいや。考えるの面倒になってきた。
「分かった」
ミリアは一言だけ、そう答えて爺さんの下へ歩いて行った。
「私、怖がられてるな。しょうがないか」
やっぱり爺さんをここに呼んで良かった。私は決して子供が得意ではない。嫌いなわけではないが、どうも扱い方が分からない。まだ怪物の方が扱いやすいかもしれない。…こんなことを思っているとまた怪物趣味呼ばわりされちゃうな。
私はミリアを爺さんに任せ私はミツゴシ商会に行くことにした。
「どーもー、愛のキューピットアレナでーす」
私は、扉を開けながらそう高らかに言った。
「…はぁ?どういう意味?」
アルファは私を見て心底不思議そうな顔をした。
この世界にキューピットはいないのだろうか?
「意味は一つに決まっているだろう。私はつい先日とある一人の恋する少女の恋を成就させたんだ。さらに、それは恋から愛へと形を変えた。だから私は恋のキューピットではなく愛のキューピットなのだよ」
「なる、ほど。取り敢えず、あなたのテンションが以上に高いことだけはわかったわ。何かいいことでもあったのかしら?」
いつもとは違うテンションの私に反してアルファは落ち着いている。心なしかいつもよりクールで余裕を持っているように見える。
「いやー、前私が助けた少女がいるでしょ。その子と話したんだけど全然つれなくてね。本当に困ってしまうよ。まぁ半年もすれば仲良くなっていると思うけどね」
テンションが狂っているのとは全く関係ないのだが、そういうことにしておこう。
「本当に生きていたのね。あの私は斬ってしまったのに」
「まぁいいじゃん。今は健康に過ごしてるし」
過去は振り返っても大して意味はないし。反省するならその瞬間にしてくれ。そして、私がいない時に勝手にしてくれ。
「…そう、ね。それで、どうしてここに?あなたは騒動の後始末に興味はないでしょう?」
「そうだね。後始末はどうでもいい。ちょっと聞きたいことがあってね」
そう言うと、アルファは眉間にしわを寄せ真面目な話を聞く態勢に入った。私から何かを聞くことが今までなかったのでそのような体制に入ったのだろうが、別に真面目な話をするわけではない。どちらかといえばどうでもいい。
「ゼータとデルタに最近いつ会った?」
「…え?そんなこと?」
「別に私は真面目な話をするとは一言も言ってないからね。アルファが勝手に勘違いしてるだけだからね。で、なんでそんなことを聞いたかというと、アルファとシドが一夜を共にしたわけで、お互いの匂いがこびり付いてると思うんだよ」
アルファの顔と耳は一気に真っ赤になり普段からは想像もできない顔をしていた。これからこの顔を見る機会が増えるのだろうか。そうなると、ありがたいな。
「そう、かしら?」
「付いてるんじゃない?私は獣人ではないから分からないけど、まぁデルタにばれる分には良いんだけどゼータにばれると面倒くさいんじゃない?」
「誰が面倒くさいって」
声のする方を見ると、ゼータが立っていた。
あー、これミスったな。
「…久しぶりね、ゼータ」
アルファは笑みを浮かべているが、冷や汗が出て、気まずさが顔から漏れ出している。
「久しぶり、アルファ。……アレナも」
ゼータは私の名を呼ぶと同時に私の目を見つめてきたが、すぐにアルファの方を向いてしまった。
「報告、の前に今の話について聞かせてもらってもいいかな?」
めんどくさいなー。
別の作品も書くことにしたので不定期投稿になります。申し訳ないです。この作品も書き続けるのでその時は読んでくれるとありがたいです。