陰の実力者の親友 作:はちりんご
アレナ。主と唯一対等である人。アルファ様よりも前に主と出会い、アレナによると、親友らしい。実際アレナと話している時の主は、私たちと話している時とは違い、随分とゆったりして、口調もかなり砕けている。私はそれが、羨ましいとは思わなかった。いや、嘘だ。本当は嫉妬していた。そんな気軽い関係でいられる。彼女が。
だから、私は聞いた。どうしてそんな関係になれたのかを。アレナは言った。「特に理由なんてないよ。ただ、私とあいつが最初に出会って、お互いを友と認めた。それだけだよ」
そう言っている時のアレナは、嬉しそうな顔も浮かれているような顔もしていなかった。おそらく彼女にとって主が友人であることは特別でもなんでもないんだろう。至極当然のことなのだろう。
それが、どれだけ凄いことで多くの人の望むことなのかも分かっていない。だから、私は彼女が羨ましくて、妬ましい。
「それで、今何の話をしていたの?私と駄犬がどうとか言ってたけど」
「大した話じゃないよ。ただただ獣人の嗅覚がどれ位優秀なのか、気になっただけだよ」
嘘は言っていない。獣人の嗅覚が話の中心ではないが、嗅覚について触れてはいた。まぁ嘘が必ずしも悪いわけじゃないし、嘘がばれたとしてもどうにかなるでしょ。
「そう、ならいいけど。じゃあ、報告」
そう言ってゼータは報告を始めた。
これは、大丈夫だった感じかな?七影の皆は基本いい人なんだけど、それぞれに地雷があるので面倒くさい。いつも気を付けてはいるけど今回は防ぎようがなかった。ゼータは七影の中でも得に気配を消すのがうまい。流石隠密担当。とはいえ、いつもは見破ることができる。しかし、今は頭がふわふわしすぎていて察することが出来たとしても、意識するに至らない。
と、まぁそんな状況ではうっかり二人が知らない大事な秘密などを離してしまうかもしれないので、私は音を立てずに部屋を出た。部屋から少し離れた場所について私はホッと息をついた。
「危なかったー。ゼータはやっぱり扱い難しいなぁ」
ゼータと私の関わりは他のメンバーと比べ薄い。彼女の役職的にしょうがないのだが、私にはどうも他の理由があるように思える。まぁ十中八九シド関係なのだろうが、私にはどの事かは分からない。おそらく説明されても納得はしないだろう。……それはしょうがない。なので、気にしない。
でも、どっかのタイミングで向き合わないといけないかもしれない。でもそれは、今ではないので気にしなーい。
私は、窓を開けて、そこから外へ飛び出た。
「ハハハハハッハハハハー」
私は誰もいない城の廊下を笑いながら進んでいた。もう日は完全に落ち、月が綺麗に見えていた。私の精神とは真反対だった。アルファたちに会ったテンションはさらに上がっていき、今は生涯最大のハイテンションとなっていた。そして、明日のテンションは最低になっているだろう。しかし、そんなことはどうでもいい。私はこのテンションは楽しむのだ。
とか、数分前は思っていました。
「あなたも見たわよね?なのに、お姉さまはシャドウの強さを全く信じないの。あれが敵だとしたら、この国は危険だというのに」
私が部屋にスキップして入った瞬間に、私の視界にはパジャマ姿でこちらを親の仇かのように睨んでいるアレクシアの姿が入ってきた。テンションがまだ最高潮だった私はその表情と姿のギャップに笑ってしまった。その反応にキレたアレクシアは私の頭を思いっきり叩いてきた。そのせいで正気に戻ってしまい、アレクシアの愚痴を聞く羽目になっている。
愚痴の内容は、アイリス姉さんに対しての物だった。アレクシアがアイリス姉さんに対しての愚痴を言うことはあまりない。まぁアレクシアはアイリス姉さんのことを尊敬してるし大好きだから不満が出にくいのかもしれない。姉の愚痴を妹に言うのはどうなんだという姉心から、という可能性もある。が、私には分からない。
「だねー。あれは凄かったからねー。でも、アレクシアはシャドウに助けられたんでしょー。だったら味方の可能性もありそうだけどねぇ」
私はアトミックを見ていただけだから中で何が起きていたかは推測しかできないが、アレクシアが生きて帰ってきている時点でシドに助けられたことは分かる。アレクシアがどう頑張ったって雫を飲んだゼノンに勝てるはずはないし。
「それはそうなのよねぇ。あいつは何者なのかしら。……ていうか、私あなたにシャドウに助けられたこと言ったっけ?」
無駄に勘が鋭い。普通にスルーしてくれると思ってた。
「ほかの人に聞いたんだよ。私の人脈は広いからね。色々な所から情報が入ってくるんだよ」
私はそう言いながらパジャマに着替えていた。本来なら部屋に戻ってすぐ着替える予定だったのだが、叩かれてそんな気分じゃなくなったので、一度辞めていたが、布団に飛び込みたくなってきたので着替えることにした。
「そう。…その中にシャドウガーデンの人もいるのかしら?」
私は今アレクシアの姿は視界に入っていないが、おそらく険しい顔で私のことを見ているだろう。
アレクシアは適当な返事をすることはあるが、適当に質問はしてこない。となると、アレクシアは私に対して疑わしい何かがあったのだろう。
「シャドウガーデンというと、シャドウが頭首をしているあの?」
取り敢えず当たり障りのない返答をして様子を見る。カマかけの可能性だってある。
「それ以外に何かあるかしら?」
ボフン、私は着替え終わりベットの空いているスペースに飛び込んだ。
「私は知らないかな」
そう言いながら、掛布団の下に潜り込み温もりに包まれる。
あったかい。入りたてだから、布団が少しだけ冷たくなっているのが、より温かみを強調させている。アレクシアは変わらず疑いの目を向けてきている。アレクシアはアイリス姉さんの妹、つまり頑固な部分がある。なので、疑いを晴らすことはほぼ諦めている。なので、大事なのは疑いを薄める事と、早く寝る事。
「それで、どうなの?居るの?」
「ちなみに、居たらどうするの?アイリス姉さんにでもチクる?もしくは、私と戦う?」
……これミスったかもしれない。アレクシアなら今から戦うとか言い出しかねない。そうなったら私の睡眠が奪われる。アレクシアにとって睡眠は毎日とる当たり前の幸せ感も知れないが、私にとっての睡眠は数日に一回とれるかどうかの大切な物なんだ。…今思うと、私って前世も今世も睡眠を疎かにしがちだなぁ。実験ばっかしてるからそうなるんだろうけど、どうにかしないとなぁ。前もアンに怒られたし。
まぁ、研究をする人間には睡眠不足がつきものなんだろうな。イータもよくイプシロンに怒られてるし、私の研究所の人も皆眠そうな顔してる時多いし。
「アイリス姉様に言ったりしないわ。けど、あなたがどうしてあのテロ組織に関わっているかは確かめないといけないわ」
アレクシアの目は疑惑から確信に変わったように見えた。
「そう、でも残念ながら私にシャドウガーデンの知り合いはいないよ。そもそもそんな重要なことを王族である私に言うような人は中々いないと思うけど。私がもし権力が欲しくてほしくてしょうが無かったらテロリストの力を借りて王になろうとしたかもしれないね。でも、私は王位継承権を放棄しているからそれはない」
こんな感じでいいかなー。眠くて頭が回らなくなってきたこの状態で質問されるとぼろを出しかねないし早く終わってくれないかな。無理やり寝始めてもいいけど、それだと明日また聞かれるから面倒くさい。
「……ならいいけど。だとしても、何か私に隠してる秘密あるでしょ」
ホッとしたのもつかの間アレクシアは別の何か秘密がないか聞いてきた。それが面倒になった私は。
「もう、面倒くさい。また、今度にして。それじゃおやすみ」
そう言って私はアレクシアを布団に引き込んで寝た。
目の覚めたころには、もうアレクシアはいなくなっていた。つまり、追及はこれ以上しないということだ。しかし、疑われていることに変わりはない。これ以上ぼろを出さないようにしよう。頑張れ私。
そう決心した後、私は着替えて学園へ移動した。
私は、自分の研究室に行く前にシェリーの研究室によることにした。おそらく、シェリーに面白いアーティファクトが渡っているだろう。
「おはようございまーす。シェリー先輩いますかー?」
私はシェリーの研究室の扉を開けて元気に挨拶をした。私は低血圧なので朝が弱く朝は大きな声や元気な声を出すことができない。そんな私が元気に挨拶できるのは強制的に脳を活性化させる薬を飲んでいるからだ。この薬はアンと二人だった時に研究が追い付かずに困った時に寝る時間が無駄という結論に至り作ったものだ。ただ、活性化させて眠気を押さえているだけなので普通に疲れる。しかも薬の効果が切れた時に。というのもありアンは研究員が増えてからは使わなくなった。そして、それを私にも押し付けてくる。アンは私が薬を飲もうとすると止めてくる。なので、研究所では飲めなくなってしまった。便利なのに。
っと、そんな薬の話は今度イータとするとして。
部屋の中を見ると、シェリーは机に置いてある謎の物体を睨んでいた。
「そんな顔してどうしたんですか?せっかくの可愛いあお顔が半減してしまいますよ」
私はシェリーの顔を後ろから覗き込んだ。すると、シェリーは私に気づいたようで、慌てて顔を上げた。
「わっ、すいません。集中してて全く気づきませんでした。お、おはようございます」
シェリーは挨拶をしながら手元にあった謎の物体を隠した。おそらくアーティファクトだろう。
「ええ、おはようございます。それで、今睨んでいたものは何ですか?アーティファクトですか?」
「え⁉」
ばれてないと思っていたらしい。
「……そっか、アレナさんは王族でしたね。…だったら、いいか」
シェリーはぶつぶつと独り言を言った後、私にアーティファクトを見せてくれた。
「…強欲の瞳ですか?」
「知ってるんですか?」
「ええ、少しだけですが」
強欲の瞳、一度勝手に盗んで解析しようとしたことがあった。しかし、別の研究をすることになったのでやらないまま興味を失ってしまったのだが、それをシェリ先輩がやることになるとは、優秀な研究者は研究するものが似るんだなー。
「実はアイリス様からこれの解析を任されてしまって、良かったら相談に乗ってくれませんか?」
「ええ、もちろん。聞かせてください」
私は朝から頭を働かせることとなった。