陰の実力者の親友 作:はちりんご
いやー、不思議なこともあるものだ。
目が覚めると周囲は何か分からないエネルギーで満ちていた。確実に元の世界には無かったものだ。
それと、転生?をしていた。目覚めて数時間は状況を理解することが出来なかった。
ただ、非常に魅力的でもあった。実に借りた本にて、転生という概念は知っていたが、自分が体験するとは思わなかった。
そもそも私は、死の後は何も残らない派なわけで、自分の予想が外れたことに少しだけ苛立ちを覚える。
確かに、すべてが無に帰るには、若すぎたが、まさか記憶の引継ぎが行われるなんて誰が予想できる。
まぁ、そんなことを気にしていてもしょうがない。時間は有限なのだ。
とりあえず現在の私は生後数か月の女児。意識がはっきりしたのは数日前。時間の感覚もまだ曖昧で正確のところは分からない。
何よりも問題なのは、言語が全く分からない。
周りを観察して中世ヨーロッパに近い文明っぽかったので、頭の片隅にある記憶を頼りに、言語の解読を試みたが何一つ分からなかった。
この体も不便なもので、体が中々動いてくれない。なので、とても暇だ。
そこで、一度放り投げていた謎のエネルギーについて考えることにした。
このふわふわと漂う光る粒子の姿は、前世に実の修業を手伝ったときの感覚に似ていた。
精霊を探すためにお花畑で座禅をしていた時に見た幻覚のようだった。
その時、実は全裸で走り回っていたが、本当にそれで精霊を見つけられると思っていたのだろうか。逆に逃げるだろ。
そのおかげなのか、この謎のエネルギーを自由自在に操れるようになった。
これは、過去にした実験や実に付き合って行った修業が生きているのかもしれない。
既に身体能力を向上できることは確認した。
実が、こんな面白い世界に来たらどんなに喜ぶだろうか。そもそも私がこの世界に来ているように、彼がこの世界に来ていておかしくはない。
これは、今後の行動が決まったかな。
4歳にもなると、自分の思うように体を動かすことができるようになってくる。
だからといって元気にはしゃぐわけではない。
私は自室でちょっとした実験をしていた。体の中の魔力を体の一点に集中させた時の魔力がどう動くかがきになったからだ。
元々前の世界でも、私は基本部屋に籠り実験をしていた。
実と仲良くなったのは、実験台に丁度良かったからというのもある。
どたばたと、足音がしたので一度実験を取りやめ、ドアの方に目を向ける。
「アレナー。こんなところで何してるの!早くお庭に行くわよ」
アレナというのはこの世界での私の名前だ。
フルネームだとアレナ・ミドガルだ。
そして、この元気で人の予定を全く気にしない我儘なお嬢様はアレクシア。私の双子の姉だ。
姉。これだけで、私を自分の気が済むまで振り回してくる。割と迷惑している。しかし、前世で兄弟がいなかったから少し新鮮だ。
「何するの?さっきまでは、アイリス姉さんと遊んでいたようだけど」
アイリスとは、ミドガル家の長女で私たちの5つ上の9歳だ。このお嬢様とは違い、優しい。が、ちょっと心配だ。
「今。失礼なこと考えなかった?」
彼女は怒っているようだが、まだ幼く、可愛くほっぺをぷりぷりしている。
「全く。そんな不貞腐れた顔しないで、せっかくの可愛い顔が台無しだよ」
私は、疑いを満面の笑みで否定した。そしてお決まりの言葉を言う。これが毎度の流れだ。
「そ、そう?まぁ、当たり前ね」
本当に変なプライドさえなければもっと可愛かったんだけど。それがなかったら別人だけど。
「それで、どうしてここへ?」
「あなた話聞いてなかったの?お庭へ行くからよ」
「それは聞いた。私が聞きたいのはどうしてお庭に行くのか」
「そんなの決まってるじゃない。稽古をするからに決まってるじゃない」
いや、そんな当たり前かのような顔をしてるんだ。あなた4歳でしょ。普通の4歳は稽古なんてしないよ。
そんなことを思っていたこともあったかもしれない。
ここミドガル王国は『剣術の国』らしく王族であろうと、剣術を学ぶらしい。
イメージ的に、王族は花を嗜んだり音楽を楽しんだりして、武術とは無縁の人生を歩むのかと思っていた。実際そのイメージは間違っていなく、隣国のオリアナ王国は『芸術の国』と呼ばれ、武術は野蛮だと思っている人は多いらしい。
「ほら!剣を構えなさい!」
我儘お嬢様は楽しそうだ。どうしよっかなー、私は剣にさほど興味がないからここでボコボコにすると、注目される可能性がある。それは避けたい。
私は、軽く剣を握った。
「じゃあ行きますね」
私は、軽く踏み込みアレクシアとの距離を縮める。
カンッ
いくら金属の剣を使っているとはいえ、刃も潰され子供どうしでは、軽ーい音くらいしかならない。
何度か刃と刃が衝突する。その度に、お嬢様は楽しそうな顔をしている。
それを観察しながら私は考える。どのタイミングで辞めるかを。
「アレナ。どこ見てるの!ちゃんと集中して!」
ありゃ、ばれてる。この子無駄に勘がいいから別の事考えてるとばれちゃうんだよなー。面倒。
「ちゃんと集中してるよー。それより、私もう疲れてきちゃったんだけど。いつまでやるのー」
嘘だ。後10時間くらいは余裕で戦える。
「早くない?まだ数分しか戦ってないよ!」
「ずっと動いてたら疲れちゃうよー」
「えー、じゃあ、最後に本気で来てよ」
よし。今回は簡単に折れてくれた。いつもこんぐらいだと嬉しいんだけど、無理だな。
「じゃあ、行くよ」
最初よりもちょっとだけ足に力を入れて接近する。アレクシアもしっかりと受け身の体制をつくる。
「セイッ」
ガンッ
アレクシアは、少し体の体制を崩しかけたが、受け止めた。
最初よりはいい感じだったかな。これなら文句は出ないかな?
「最初からこれをしなさいよ」
そう来たか。お嬢様を満足させることは出来なかったみたいだ。
でも、アレクシアの口角は少しだけ上がっていた。
アレクシアとの茂木線が終わり、近くに会った木陰で実験の続きを考えていると、アイリス姉さんが近づいてきた。
「お疲れ様」
最初に労りの言葉が出てくるあたりやっぱりお嬢様とは違う。
「姉さんも」
「ありがとう。……アレナは剣が嫌い?」
姉さんは少し申し訳なさそうな顔で尋ねた。
「え、そんなことはないよ」
予想外の質問に一瞬戸惑ってしまったが、普通に答えた。
何故だ?そんなに、嫌そうな顔してたか?
なるべくポーカーフェイスを維持していたはずなんだけど。
「そう?そうなら良いんだけど」
あんまり良さそうな顔はしていないけれど。
「どうしてそう思ったの?」
これについては、普通に興味がある。お嬢様の話の何倍も気になる。
「アレナってそもそも外あんまり好きそうじゃないし、いつも部屋にいるし。後は、アレクシアに引きずられてここに来ているみたいだから、嫌になったりしていないかなって」
私は、今。心の底から感動している。
まさか、姉さんが、いや、姉さまがここまで周りに気を配える人だったとは、ただの戦闘狂だと思ってた。
「大丈夫だよ。ありがとう。私姉さまの事勘違いしてたよ。それじゃ、私部屋戻るね」
「姉さま?まぁ、大丈夫そうならいっか」
私が、戻る途中でお嬢様に掴まってる最中に、アイリスは、一人混乱と安堵を感じていた。
それから6年位たっただろうか。
今日は、とある剣術大会に来ています。
そこそこ大きな大会で、王族が座る席もあり、私は豪華な席に座っている。
来た理由は、もちろん。アレクシアがボコボコにされるのが見れそうだからです。
見れなかったらそれはそれで面白いものが見れそうなので良し。
「アレナ。お前は、どちらが、勝つと思う?」
隣に座っていた父親。つまりこの国の王が訪ねてきた。
「無難にアイリス姉さまだと思います」
「そうか。では、どちらに勝ってほしい?」
この王様は何を考えているのかが分からない。基本何事も見守るだけ。家族のことも国の情勢のことも。
でも、偶に父親らしく接してくるので、扱いに困る。
「そうですねー。どっちにも負けてほしいですかね」
「…そうか。いい性格をしているな」
彼は表情一つ変えずに言った。
その言葉が、皮肉なのか、本心なのか分からない。
・・・やっぱり、この人は苦手だ。少し気持ち悪くも感じる。
そんなことを考えていると、アレクシアの1回戦だった。
相手は名前も知らない有象無象の一人。
とはいえ、アレクシアはまだ10歳。油断でもしたら負けるかもしれない。
個人的に、このタイミングで負けられると、面白みに欠けるので頑張ってほしい。
しかし、無駄な心配だった。アレクシアは難なく勝ち、どんどん勝ち上がっていった。流石、戦闘狂名だけある。
アイレス姉さまはというと、こちらも楽々勝ち上がっていく。まぁ、優勝候補がそうそうに敗退されても困るが。
そして、次はお待ちかねの姉妹対決だ。どっちが負けるかなー。
「ふぅー」
やっとだわ。やっと姉さんと本気で戦える。
今の私なら、勝てる。いままで頑張ってきたもの。
これで、見下してきたやつを見返してやる。私は強いんだって。あの子だって今なら勝てるって言ってくれたもの。
アレクシアは、強い自信をもってアイリスの前に立つ。
「アイリス姉さま。私は姉さまを倒します」
アレクシアはアイリスの目を見て宣言した。
「ええ、私だって負けません」
アイリスの顔も自信にみなぎっていた。
二人は、剣を構える。
「よーい、始め」
その言葉と同時に二人は、距離を思いっきり縮める。
キーン
二人の剣は思いっきりぶつかり甲高い音が鳴り響いた。
互いの剣のぶつかる回数が増えるたびに、アイリスの顔は真剣に、アレクシアの顔は険しいものにっていった。
どうして!どうして!あんなに頑張ったのにこんなに、剣が通らないの!
アレクシアの自信は剣の刃のように、どんどん削られていった。
しかし、アレクシアは負けぬと、剣を懸命に振る。
しかし、実力は歴然。
アレクシアは最後まで押し切られ、敗北した。
「勝者。アイリス・ミドガル!」
ゥオォォォォ
観客は、大いに盛り上がった。
負けた。しかも圧倒的な実力差で。
アレクシアの心境は、会場とは、反対でどん底に落ちていた。
どうして?私には剣の才能がないから?どうして!!どうして!!
悲しみに合わさり怒りさえも湧き上がってきた。
そんな時だった。
「アレクシア。私はあなたの剣が好きよ」
アイリスは、落ち込むアレクシアを見て笑いながら言った。
「やっぱり私は、無理なのかな?ねぇ、何とか答えてよ」
アレクシアは私のベッドの上で布団にくるまり、ぼそぼそ言っていた。
いやー、忘れてたなー。この子へこんだらここに来るんだった。
私は彼女ががどのように負けるかを気にしすぎていたせいで、何か嫌なことがあったら彼女が私の部屋の部屋でいじけることを失念していた。
「・・・・・・」
私はあえて何も発することはしない。どうするのが正解なのかをまだ分かっていないからだ。
「ねぇ、聞いてるの?」
いつもとは違い覇気の無い弱弱しい声だった。
「聞いてるよ」
「だったら何か言ってよ」
あー、こんなこと言っちゃ駄目だけど、面倒くさい。友達と喧嘩した後の女子くらい面倒くさい。今も似たような状況か。
「何かを言っても不機嫌の度合いが増すだけでしょ」
気を遣うのを辞めた。多分、本音ぶつけた方が早そうだからだ。それに、このお嬢様は、上辺だけ装ってもばれる。
「だとしても、こういう場合は慰めの言葉の一つくらいはあるもんじゃないの?」
「私は、苦手分野をする気はないよ。慰めを求めるならアイリス姉さまのところにでも行ってくるといい」
すると、布団から顔を出して睨みつけてきた。しかし、私は表情を変えない。
「あなた、前から思っていたけど、かなり性格悪いわよね」
ふむ。わざわざベットに座りなおして言うことが人の悪口か。
「…ふふ、お嬢様には及びませんよ。それと、その言葉は嫌味のつもりで言ったのでしょうが、意味はありませんよ。性格破綻者であるのは、遠い昔に自覚しましたので」
私は、頭を少し下げて少し気味の悪い執事を演じて見せた。これは、前世で実と見た映画に出てきた口の悪い執事を見本にした。
アレクシアは顔前面に不快感を出した。分かりやすくてありがたい。
「辞めてそれ。ものすごく気持ち悪い」
段々言葉に覇気が戻ってきている。が、まだまだ落ち込んでいる。まぁ、時間が経てば勝手に治っていくだろうから今、帰らせてもいいのだけれど、後日面倒だから出来ない。
「分かった」
「何よ。近づいてきて」
私は、ベットに向かっていく。アレクシアは急に向かってきた私に動揺するが、変わらず威圧する。それを無視して、ベットの上に乗る。
「何か言いなさいよ」
「邪魔」
私は、短く言い放つ。アレクシアは泣きそうな顔をしていた。しかし、私には関係のないことだ。
「何よ。あなたも私が嫌いなの、無能で、いらないと罵るの!」
いつもより覇気が強いかもしれない。だけど、それには悲しみや悲観といった感情も混ざっていると思う。
「そんなこと言ってないでしょ」
そう言いながら布団に潜り込む。温かい。
「嘘つき!本当だったらそんな投げやりに言わない!もう、私はどうでもいいんでしょ!アイリス姉さまが居ればいいんでしょ!!」
大荒れだ。これが、5,6年後に起きなくて良かったと心底思う。
「そんなことは無いよ」
これは、本当だ。二人はタイプが違う。
アイリスをライオンだとしたら、アレクシアは豹だ。
「嘘だ!そんな訳ない。昔からアレナは私といる時よりアイリス姉さまといる時の方が笑っていた!」
アレクシアは遂に泣き出してしまった。私の布団に涙が、一滴一滴と落ちていく。
「そんなことは無いよ」
実際どうなんだろうか。自分がいつ笑ってるかなんて気にしてないから分からない。
「有るよ。昔、私と遊んでる時は、ずっと表情変えなかったのに、姉さまが来た瞬間に、嬉しそうな顔してた」
あーやばい。飽きてきた。そろそろ終わらせるか。
「アレクシア。座ってないで布団に入って」
私は、布団を一人入る分くらい持ち上げた。
「どうして?」
涙はもう止まり落ち着いてきたようだ。というか、眠そうだ。
「いいから入りなさいよ」
アレクシアは警戒しているる中渋々入った。
「何がしたいの?」
私の目をまた睨んできた。
好きだねー。睨むの。数年後には顔にしわが出来てそうだ。
「そんなの決まってるでしょ。寝るんだよ」
「面倒くさくなったんでしょ」
「うん。後眠い」
久しぶりに出かけたからいつもなら元気な時間でもそこそこ眠い。
「っは、もういい。アレナの事なんてもう知らない!明日から話しかけないで!」
アレクシアは口ではそう言いつつも、布団からは出ていかなかった。不機嫌とはいえ、傷心中で寂しいのだろう。
「…アレクシア。君が私やアイリス姉さまをどう思っても構わんが、姉さまと私は君のことを大切にしているよ。それに、姉さまに言われただろう。」
「アレクシア。私は君の剣が好きだよ」
アレクシアは変わらず沈黙を貫いていた。部屋は、夜らしく静寂に包まれていた。
目が覚めると、窓から日が差していた。
何か違和感があると思ったら、アレクシアは既に部屋からいなくなっていた。
そのおかげで、静かだった。ベットから降りて窓を開くと、音が聞こえてきた。
フッ、フッ。
庭を見ると、素振りをしているアレクシアがいた。
昨日めそめそ泣いていたとは思えんな。
でも、元気そうで良かった。これで心残りなく、行ける。
ご覧くださりありがとうございます。
来週は投稿できませんが、投稿頻度は週1くらいになると思います。
ここが、良かった。ここを直した方が良いなどの、アドバイスをくださるとありがたいです。