陰の実力者の親友 作:はちりんご
ガンマやシドと出会った日の夜、私は城の自室でとあるアーティファクトの資料を見ていた。
シェリー先輩が国から頼まれて研究していたものだ。私は城にあるアーティストなどは全て見たことがあるのでどういったものかはある程度は分かっているが、忘れている部分もあるので一応見ている。
そんな感じで、のんびりと資料を見ていたのだが平穏な時間は長く続かないもので、傷心中の王女様が襲来した。
「アレナ!!」
「もう夜も遅いし、寝ようかな」
私はアレクシアを無視してベットに歩き出す。
「無視しない」
アレクシアは私の腕をつかんで睨んでくる。掴んでいる腕の力がいつもより弱いのは刺されたからだろう。
再生すればいいのに、出来るかは知らないけど。
「怪我したのに元気だね」
そう言いながら私はアレクシアの傷を治した。アレクシアは驚きはしなかったが、不機嫌さが増したような気がする。
「前々から思っていたけど、その技術を表に出さないの?」
「こんな技術やろうと思えば誰でもできる。それに、私は人のために能力を使うのは大切な時だけと決めているんだ」
「例えば?」
…難しいな。人の手助けをするときも基本的には自分の為だったりするので、人のために能力を使うのはあまりないのか?いや、一つあったな。
「部下の娘を救ったりとかかな」
「は?いつ部下なんて持ったの?助手ならまだわかるけど…まさかあの時の女?」
考え始めたと思ったら、勢いよく顔を近づけてきて。相変わらず忙しいな。っていうかあの時の女って誰だ?
「あなた、1週間前くらいに赤毛の少し背の高い女性と歩いてたでしょ」
赤毛…アンか。赤毛で思い出したけど、アンの名前の由来って赤毛のアンだったなー。私あの話読んだことないんだよなー。っとそんなことはどうでもよくて。
「確かに歩いてたよ。部下っちゃ部下だけど。どちらかといえば研究仲間かな」
でも、研究仲間って言うとイータが出てくるんだよなー。まぁ関係なんて何でもいっか。
「やっぱり部下じゃない。私はあなたが組織に入っているなんて聞いたことないけど?」
「言ってないからね。それに、私が研究関係の組織に入っていたとしてもおかしな話ではないでしょ?」
「そうね」
アレクシアは納得してくれたようで、視線を私から話した。
「でも、あなたは誰かの下につくの嫌いでしょ。私と同じくらい」
納得はしてなかったらしい。視線は再度、私に向けられた。
「別に私は人の下につくのが嫌なわけじゃないよ。人の命令を無条件で聞くのが嫌なだけで」
「それは誰でも嫌じゃない?」
「そうかもね。それで、何か言いたくて来たんじゃないの?」
脱線し続けていた話を戻した。
「そうだった。すっかり忘れていたわ。知っているかもしれないけど、さっきシャドウガーデンを名乗る集団に襲われたわ」
「それは災難だったね」
「絶対思ってないでしょ?」
死んだわけじゃないからね。
「そんなことないよ。それで、襲われてどうしたの?」
「…シャドウに助けられたわ」
「助けられたっていうのに、不満そうだね」
「そうね。助けられたことには感謝しているわ。でも、ムカつくわ。2度助けられ、近くで見ているのに強さや正体が全く分からないの」
分からないでしょうね。隠してるのだし。でも、野獣並の勘を持つアレクシアが気づかないとなると、シドは上手く隠せているのか。
「秘密は隠れていれば隠れているほど良いものだよ。それに、直ぐに正体分かったら面白くないでしょ」
「でも、あの強さよ。もし、シャドウが敵に回ったらアイリス姉さまでも勝てるか分からないわ」
「そうかもね」
「本当に分かってるの?この国にとっての危険分子になりかねないのよ」
もう既になっているような気はするけどね。
「そうかもね。アイリス姉さんはどうせ信じないからアレクシアが頑張るしかないね。だから、強くなってね。面白くなるくらいには」
あの子たちの遊び相手になるくらいには。
「強くはなるけど、面白くなるくらいって何?」
「この国一番になるくらいかな?」
「勿論。なってみせるわよ!」
元気だな。
珍しく朝から学園に行った私は、シェリーの下に訪れた。
アーティファクトの進捗状況の確認もだが、つい先日、シェリーがシドにチョコをもらい仲良くなったらしい。どうしてそうなったかは分からないが、今までの流れを考えると、面倒なことになっていそう。
「アレナさん!聞いてほしいことがあるんです!」
私がシェリーの前に座って、一呼吸置いた瞬間に勢いよく顔を近づけて言った。
「はい、なんでしょう」
「そ、その。男の子にチョコをもらったらどう思いますか?」
先ほどの勢いはどこに行ったのだろう。
「そうですねー。私は貰ったことが無いので分からないですけど、多少なりとも好意あっての事だとは思いますよ」
チョコを貰うってバレンタインみたいなことをするものだねー。チョコ作りを手伝ったからいつかはそういう文化が出来てもおかしくないとは思っていたけど。そういえば、前世でバレンタインを楽しんだことは無かったな。
「やっぱり、そう思いますよね。…そうだ、アレナさんが来たら聞こうと思っていたことがあったんでした」
なんだろう?チョコの作り方かな?
「実は、アレクシア王女がシ、とある男子生徒と交際していたという噂を聞いたことがあるんですが本当なんですか?」
シェリーは、心配そうな顔をして聞いてきた。
「さぁ、どうでしょうね。いくら姉妹とはいえ、何もかも把握しているわけではありませんから」
「そ、そうですよね」
「なので、聞きに行きましょう」
「え、誰にですか?」
私は混乱しているシェリーを立ち上がらせた。
「勿論。本人にです」
私は奇声を上げてシェリーの手を掴み、歩き出した。
コンコン、と。
謹慎中のアレクシアの部屋に、ノックしながら入室した。
「どう?元気にしてる?」
「朝に見たばっかりなんだから分かるでしょう?」
ふむ、不機嫌そうだ。怪我が治ったのに行動を制限され、城に戻らないと剣も振れない。そんな状況では戦闘狂のアレクシアならしょうがない。
「あの、こんにちは。学術学園2年のシェリー・バーネットです」
私の後ろからひょっこり顔を出してアレクシアと顔を見合わせた。
「…こんにちは。シェリー先輩。それで、何の用?アーティファクト解析中の先輩を連れてきて」
アレクシアは、シェリーに軽くあいさつした。私がいたことによって社交用の声と顔ではなくなっている。
部屋にあった椅子に私とシェリーを座らせて聞いてきた。
「用があるのはアレナさんではなく私なんです」
私を睨みつけていたアレクシアは、視線の矛先を変えシェリーを見た。ただ、睨め付けているわけではなく、観察するだけ。といった目つきだ。
「へぇ、てっきりアレナがシェリー先輩を利用して私にいたずらをしに来たのかと思いました。すいません。疑ったりして」
アレクシアはそう言って少し頭を下げた。
珍しい。私には頭を下げたことは無いのに、いや、私に下げてないだけなのか?たまに、頭を下げるところは見るし。これは、なめられているな。…それはお互い様か。
私は仕方ないことだと、己の中で納得して話に意識を戻した。
「いえいえ、急に来た私が悪いですし」
「そこについてはお気にせず。アレナがシェリー先輩の話も聞かずに押し切ってきたのでしょう。それに、アレナが急に来ることについては慣れていますので。そんなことより、そろそろ何の用で来たのか教えてくれますか?」
「は、はい。実はアレクシアさんにお聞きしたいことがありまして」
シェリーは少し気まずそうな顔で言った。初対面の人に交際の噂があった人とは本当なのかを聞くのだから。シェリーは知らないが、噂は本当で、既に破局している。アレクシアがその事実を言うのかは分からないが、言ったときにどんな顔をするのか楽しみだ。
「はい」
「アレクシアさんにはお付き合いされている男性がいるという噂をお聞きしたのですが、それは本当ですか?」
「……えっと」
アレクシアは頑張って平静を装っているが、確実に動揺している。
「詳細に言うと、シド・カゲノー君とお付き合いされているとか。現在もお付き合いされているのですか?」
シェリーは、きょろきょろと視線が行き交い、肩に力が入っている。それに対し、アレクシアは私を思いっきり睨んでいる。どうせ、私が何か余計なことを言ったと思っているのだろう。
「今回に関しては、私何も言ってないからね」
「…そう」
一応信じてくれたようだ。その証拠に私を睨むのをやめ、シェリーの方を見ている。
「もう別れました。元々付き合っていたふりをしていただけですし」
「そうだったんですね。よかったぁ」
シェリーは心底ほっとして嬉しそうな声を出した。表情からも緊張は感じられなくなっていた。
「実は私、先日シド君とお友達になりまして、それでとても気になってしまったんです」
「そ、そうなんですか」
アレクシアは今にも発狂しそうなのを我慢して感情を抑えている。
「…も、もしかして。要件はそれだけですか?」
「はい!気になって気になってしょうがなくて。研究が進まなかったんです!すっきりしました。本当にありがとうございました」
「それは、良かったです」
「それじゃあ、失礼します。アレナさんはどうしますか?」
「私はここに少しだけ残りますので、戻っていてください」
私がそう言うとシェリーは扉を閉じて、部屋へ戻っていった。それに対し、アレクシアは下を向いて顔を手で隠している。
数秒経った後に、顔を上げ私の目の前に顔を出してきた。
「ねぇ!どういうこと!」
「ははは、大変だね」
私は、アレクシアの猛攻を受けることになった。
久しぶりです。すいません。
サッカーに脳を支配されたりしていて数か月全く書いてなかったのですが、アニメのアルファエンディングを聞いてやる気が出ました。
次の投稿がいつになるかは全く分からないんですけど、なるべく早く書きたいと思います。
それでは。