陰の実力者の親友   作:はちりんご

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3話

僕は魔力を見つけることが出来た。

 

目が覚めたら周囲は魔力で満ちていたのだ。死ぬ間際に見た光とは少し違うが、まぁ些細な問題だ。

 

あ、そうそう、さらに些細なことだがついでに転生していた。きっと魔力を見つけて転生の扉でも開いたのだろう。どうでもいい。

 

とりあえず現在の僕は生後数か月の男児。意識がはっきりしたのは最近だし、時間の感覚もまだ曖昧で正確なところは分からない。何より言葉も分からないし、中世ヨーロッパぐらいの文明っぽいってことがわかれば十分だろう。

 

なにしろ僕は追い求めていた魔力を手にしたのだ。それがすべてであり、家庭やおまけに興味はない。

 

意識が覚醒してすぐ、僕はこの魔力に気づいた。ふわふわと漂う光る粒子の姿は、前世の修業で精霊を探すためお花畑を全裸で走り回ったときの感覚にそっくりだった。

 

あいつは、「こんなことに何の意味があるんだ」と言っていたが、あの修業は無駄ではなかったのだ。その証拠に僕は魔力をすぐ知覚し、そして今では手足の様に操ることができる。

 

そういえば彼女はどうしているだろうか。彼女のことだから引きずったりりはしないと思うが、落ち込むくらいはしていると思う。していなかったら精神性を疑う。

 

僕は、今までの修業を通して感情をなくしていったが、彼女は元々感情が欠落していた。無いとまではいかないがかなり薄い部分がある。まぁ今更そんなことを気にしていてもしょうがない。もう会うことは難しいのだから。

 

魔力を知覚した感覚はキリストを参考にして全裸で踊り祈りをささげたときか……いや、改集を繰り返し全裸で踊り祈りを捧げたときか……おそらくすべての修業が生きているのだろう。もう既に身体強化が出来ることは確認している。

 

赤子のありあまる時間を修業に使い、僕は今度こそ「陰の実力者」に……あ、ウンコ出る。

 

そういえば鳥はウンコ垂れ流したらしいが、人間の赤子もほぼ垂れ流しに近い。どれだけ理性で抗おうとも、本能が出せと囁くのだ。しかし修業に開けくれた僕は、身体強化で肛門括約筋を締め上げ時間を稼ぎ、その合間に……。

 

おぎゃぁぁぁぁああ‼」

人を呼ぶことができるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

多分10年ぐらい経ったと思う。

 

魔力はすごい。人間の限界を軽く超えた動きができるのだ。

 

岩とか余裕で持てるし馬の倍速で走れるし家より高く飛べるし。ただし、まだ昔あいつが算出した核に耐えられる強度には届かない。魔力で強化すれば防御力は上がるけど、地球兵器の火力は偉大だ。この世界に角はないし別にいいかもと思ったけど、妥協はしてなった『陰の実力者』に価値はあるのか。

 

ない、皆無だ。

 

よって僕の目標は核に勝る力を身に着けることだ。

そのために日々研究と修業を重ねた結果、僕が可能性を感じたものが一つだけあって、最近は実験の日々が続いている。これでは、彼女と同じじゃないか。

 

そうそう、僕の生まれた貴族だったらしい。魔剣士と呼ばれる、魔力で体を強化して戦う岸を代々輩出する家系で、僕はこの家の期待の男子……ではなく、ごくごく低凡な魔剣士見習いとして育っている。

 

『陰の実力者』は実力を見せる相手と場所を選ぶのだ。そう、来るべきその瞬間まで……。

 

手を抜いてるとはいえ、魔剣士見習いとしての修業はなかなか役に立っている。この世界の魔力を使った戦い方を学ぶことができるし、僕自身戦い方を見直すいい機会になった。

 

僕が前世で学んだ戦いの技術は、正直言ってこの世界の技術より何倍も洗練されていて合理的なものだった。それは現代の格闘技の試合を見れば明らかだ。無駄な技や動きが淘汰され、様々な武術の技術から優れたものだけが生き残り融合している。

 

その姿はまさに戦いの完成形へ進んでいた。もちろんそれは試合のルールに沿った完成形ではあるが、その洗練されていく過程は、雑多な技術の中から定石を見つける術と広く活用できるものだった。

 

それに比べてこの世界の技術はまず国を渡らない。そして流派も渡らない。門外不出の技とかあるし、仮にオープンになったとしてもそれを伝えるメディアがない。つまり技術の融合がなく、淘汰もなく、研磨もない。一言で言えば洗練されていないのだ。

 

人類が地上最大種になった理由に何代にもわたる継承があるが、この世界ではその幅がとても狭くなってしまっているのだ。これは、時代の関係もあるかもしれないが。

 

しかしやっはりこの世界の戦いと元の世界の戦いには根本的な違いがあった。そう、魔力だ。魔力のおかげで基本的な身体能力がまるで違う。趣味で作られたドーピング剤を飲んだことがあるが、その時とも比べ物にならない。

 

例えば筋力。片手で人を持ち上げられる。そうなると寝技の常識がまず崩れる。マウントをとっても腹筋だけで軽く空を飛ぶ。ガードポジションから片足の力だけで相手が吹っ飛ぶ。うん、寝技とか成立しない。

 

人には人の戦い方があって、ゴリラにはゴリラの戦い方がある、そういうことだ。

 

他にも踏み込みの速度が違う、ステップインの距離が違う、よって戦いの間合いも違う。というかこれが一番重要。格闘技なんて結局間合いゲーだ。距離と角度、ポジショニングが基本にして究極だ。

 

その距離を掴むのに随分と時間がかかあった。だってこの世界の人みんな間合いが遠いのだ。5メートルぐらい離れて向かい合ってる。

 

いや、踏み込みが長いからさ、スピードも速いからさ、わかるよその気持ち。の句もこれが異世界の戦い方か……と感動したものだけど、何のことは無い、ただ防御技術が未熟なだけだった。

 

格闘技あるある、防御が下手な人ほど無駄な距離をとりたがる。

 

 

相手の攻撃が怖いからね。攻撃が届かない場所まで行けば安心だからね。だからガっと踏み込んで

ばっと離れる大味な戦いになる。ヒット&アウェーだって?残念だけど無駄で単調な前後運動をヒット&アウェーとは呼ばない。

 

僕にとって5メートルの距離も100メートルの距離も同党に価値がない。どちらもまともな攻撃が当たらないからだ。6メートルも7メートルも10メートルも、全部一緒。無駄だから歩いて間合いを詰めましょう。

 

だけどある距離を境に1ミリ単位で大きな意味を持つようになる。それが、僕の攻撃が当たる距離であり、相手の攻撃に反応できる距離であり、それから角度とかも色々、半歩横にずれたりするだけで有利不利が変わる。

 

間合いってそういうぎりぎりのラインを調節するものだ。決して5メートル先からはして攻撃して、6メートル後ろにジャンプするようなものではない。

 

いやほんと異世界という先入観と、魔力という未知なもののおかげで随分と惑わされたけど、最近自分の間合いが定まってきたからよしとしよう。

 

さて、そんな感じで僕は毎日家の訓練をこなしている。僕と姉と父の3人、父が僕と姉に指導して、僕と姉が戦う感じ。2歳上の姉はかなり筋がいいらしく、このままいけば将来家を継ぐのは姉になるらしい。この世界は魔力を使えば女でも強いから、女が家を継ぐこともよくあるようだ。

 

だから僕は毎日「ふぇぇ、お姉ちゃん強いよぉ……」と言いながら姉にボコられている。

 

勝つわけにはいかない。なぜなら『陰の実力者』になるために僕は平凡なモブAになりきらなければならないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな日々を過ごしている僕であるが、その日は家族に使用人。皆慌てていた。どうやら国の王族の子が来るらしい。そのおかげで、邪魔しないよう姉に捕まえられ何もできなかった。

 

しかし、それも昼頃には終わり、お客様が到着したようで僕も家前で待つことになった。両親はかなり緊張している様子だった。いつもは豪胆な姉も少し緊張して、繋いでいる手は手汗を少しかいていた。

 

そしてお客様は僕と同じくらいの身長で髪は白を基調に赤が少し混じっていた。服もとても綺麗でいいところのお嬢様と一目でわかる。

 

まずは両親があいさつした後、姉さんが挨拶をした。やはり姉さんはかなり緊張している。姉さんは今まで年の近い同性に会う機会が少なかったこともあるのだろう。

 

終わると、姉さんに背を叩かれ挨拶する。痛い。

 

「初めまして。シド・カゲノーです」

 

特におかしな点はなかっただろう。王族に目を付けられたら今後の活動に影響するかもしれない。

 

「ええ、始めまして。シド・カゲノー君」

 

手を握られた瞬間に並ではない魔力を感じた。この世界の平均がどれぐらいなのか分からないが、これが普通ではないことが分かる。王族は皆こんな感じなのだろうか。だとしたら、血というのはすごい。後、彼女が誰かに似ている気がする。この相手を人として見ていないような目が。まぁそんなことはどうでもいい。どうせすぐいなくなるのだから。

 

僕は日中、貴族としての勉強やモブAになりきるための付き添いやらで自由な時間は少ない。

 

そんなわけで修業は自然と夜遅く皆が寝静まった後に行うことになる。当然睡眠時間を削っているわけだが、僕は魔力による超回復と、瞑想を組み合わせた独自の睡眠法により長ショートスリーパー化しているため快適である。

 

さて、本日も修行に励む。今日は、いつもの森で基礎トレーニングを軽く行った後、特別メニューだ。

 

最近近くの廃村に、ならず者が住み着いたらしい。調べたところそれなりの規模の盗賊団がいた。うん、試し斬りにちょうどいい。野盗は見つけたらちょくちょく斬っているけど盗賊団レベルになると、年に一度の一大イベント、ウキウキである。

 

ああ、もっと治安が悪くなりますように。悪人は私刑、この世界の田舎では割とまかり通っている。裁く人なんて都会にしかいないしね。だから僕がさばいてあげよう、というわけさ。

 

そして本日は、最近試している新兵器の思念すべき実践投入である。その名もスライムボディースーツ。

 

この世界には魔力がある。その魔力を使って人や体や武器を強化して戦うわけだが、魔力を吸う時にどうやってもロスが出る。例えば、普通の鉄の剣に魔力を100流しても実際に伝わるのは10程度なのだ。魔力を流しやすいミスリルでも100流して50伝われば高級品といわれぐらい、きわめてロスが多いのだ。

 

そこでスライムに注目した。スライムは見ればわかる通り魔法生物だ。魔力を使って形を変え、動き回っているのだ。スライムの魔力伝導率は驚異の99%。さらに液体なので自由に形態を変えられる。僕はスライムのコアをつぶし残ったスライムゼリーを研究し、扱いやすく強化しやすいスライムゼリーの調合に成功した。それを全身にまとうことでボディースーツ化に成功した。

 

そんなわけで廃村に到着。深夜だというのに灯りがついており、商隊の襲撃に成功して宴会をしているようだ。盗賊とか計画性がないから奪ったらすぐ使ってしまう。襲撃直後しかまともな物を持っていない。盗賊の物は僕の物、こうして将来の『陰の実力者』になるための資産が増えるのだ。

 

僕はテンションマックスでその宴会に突っ込んだ。不意打ちはしない。練習にならないからね。

 

「ヒャッハー!てめぇら金目の物を出せ!」

 

「な、なんだぁ、このチビ!」

 

10歳なんだからちびなのは当然だ。

 

「おらぁ!」

 

スライムソードでムチのようにしならせながら斬り刻んでいく。最後にボスAが残ったが、すっぱ足を斬りそこらへんに転がしておく。

 

「ぐ、あ、ぁぁー」

 

なんかもがいているが気にしない。戦利品を物色しようとしたが、近くの木の上に気配を感じて動きを止めそちらを見る。

 

「誰だ。只者ではないだろうが」

 

「久しぶりじゃないか。実。ざっと10年ぶりかな」

 

そこに現れたのは昼に来たお姫様だった。それより何故僕の前世の名前を知っているんだ。……考えられる可能性は一つ。

 

「君もこの世界に来ていたなんて。久しぶりだね」

 

「実。君が来ているんだ。私が来たところで何もおかしな話でもないだろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ご覧くださりありがとうございます。
シド視点でした。この作品のシドは原作と比べ少しだけ感情が豊かになってます。ただ、原作がめっちゃ感情薄いのでそんなに豊かにはならないです。
ここが、良かった。ここを直した方が良いなどの、アドバイスをくださるとありがたいです。
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