陰の実力者の親友 作:はちりんご
「それもそうだねー。でも、その姿はどうしたの?あまり外に出るような服には見えないけど」
シドは漆黒のスライムスーツで違和感があまりないが、私はパジャマ。明らかに外には合っていない格好だ。
「まぁ夜だからね。それに、私はその面白いスライムの改造物は持っていないわけで、着替えるのも面倒だったからこのまま来た」
「へー。取り敢えず戦利品の確認でもしますか」
こいつぶれないな。自分の欲に忠実すぎる。まぁいいか。そんなことより荷台の檻にいる魔力の塊が気になる。
シドは気づいているだろうが、宝か何かないかと別の物を散策しに行った。私は宝なんて興味がないので魔力の方へ歩いていく。この魔力の波長、見覚えはないんだけど何か似てる気がする。まぁなんでもいい。どうせ後で分かることだし。
「せいっ」
檻にかかっていた布をどかすと。
「ほう。『悪魔憑き』か。見るのは3回目だったっけな。しかも生きてる」
『悪魔憑き』とは協会に処刑される化け物。はじめは普通の人間として生まれ、ある日を境に肉体が腐りだし、放っておけばすぐに死ぬが、教会は生きた『悪魔憑き』を買い取り、浄化と称して処刑している。馬鹿馬鹿しい。そんな無駄なことをするくらいなら私にくれ。
悪魔の浄化、病人を虐殺しているだけだが、それに民衆は喝采し平和が守られたと教会を讃える。中世ってこんな感じだったんかねー。魔力がある分いびつになっているだろうけど。
「すごいね。これ。悪魔憑きだっけ?教会が虐殺ショーしてる」
小さな宝箱のようなものを持ったシドが散策を終えて見に来た。
「これ魔力暴走だよね」
「そうだね」
随分と簡単に考えすぎてるような気がするが、簡単に言えばそうだ。こいつよく気がついたな……魔力暴走したことあるのか?まぁ強くなるには効率的で私もやったことがあるけど、危険な行為だ。
「これさ、良い実験台になるんじゃない?」
こいつ、倫理観おかしいんじゃないか。形は違えどまだ生きている人だぞ。だが。
「賛成だ。私もいい実験台になると思う」
私も実験台が欲しい。実験に倫理なんて気にしていてはしょうがない。それに、これを直すことが出来たら今後の役に立つかもしれない。
3日が経った。
私は喜びと同時に落胆をしていた。魔力暴走に制御に成功したからだ。実験成功したこと自体は嬉しいのだが、もうちょっと貴重な実験体が無くなってしまったのが、勿体無い。だが、城へ戻る前に終えることが出来て良かった。一人だったらもっと時間がかかっていただろう。
その反面シドは明らかに混乱していた。それは当たり前といえば当たり前で制御に成功した瞬間……金髪エルフの少女がそこにいたのだ。
「嘘…あれほど腐り果てていた身体が、元に戻った⁉」
なるほど。あの状態であっても意識はあるのか。これも何か役に立つかもしれない。そんなことを考えていると、シドが目配せをしてきた。
(どうする?どっちが話す)
(お前がやれ。私は知らん)
色々聞きたいことはあるが、先に話すのは後々面倒になりそうなので、シドに押し付けた。本人も特に嫌がっている様子はないし。ちなみに、この目だけで会話するのは昔、シドが途端に「この目で会話する奴、かっこよくない?」と言ってきて習得した。
「な……なんとお礼を言えばいいか分からないわ。この恩は生涯をかけて返します」
「あーいいよ別にそうゆうの重いし」
確かに重い。やっぱりこいつに任せて良かった。生涯かけて恩返しとか面倒。実験台にするのは流石に可哀そうだし。まぁ本人がどうしてもというなら構わんがね。
「つまりそれは僕の陰の実力者の配下になると……?」
こいつなんか変なこと言い始めた。
「え?」
まぁそういう反応になるよね。意味わかんないもん。
「よし決めた。今日から君の名前はアルファ。僕の配下となり共に働いてもらう」
ギリシャ語で1か、2人目が出てきたらベータになるんだろうな。
「僕たちの仕事は『魔人ディアボロス』の復活の阻止だ」
おー、えー、何で知ってんの。まぁ偶々本で読んだとかだと思うけど、こいつに限って本なんて読むか?馬鹿なのに?でもクレアさんから聞いたとかかな?
まぁいいか。どうせ今考えた嘘だろうけど、こいつがディアボロス教団と敵対してくれたら面白そうだし。
「『魔人ディアボロス』?それって有名なおとぎ話の?」
「そう。遥昔、『魔人ディアボロス』によって世界は防回の危機にさらされた。だが人間、エルフ、獣人の3人の勇者によって倒されたというおとぎ話」
そういえばそんな話だったな。何回も聞いたのに毎回別の事考えてるから覚えてないんだよなー。話もつまらんし。
「皆知らないがこれは昔本当にあったことでね。話にも続きがある。ディアボロスは死に際勇者に呪いをかけ、その呪いは子孫へ代々続いていると……それが『ディアボロスの呪い』いあや、『悪魔憑き』……君の身体を蝕んでいた病のことだ」
シドは神妙な面持ちで話し始めた。アルファも話が進むにつれて口に手を当て縮みあがった顔をしていた。
それにしてもよくそんな嘘ぽんぽん出てくるな。
「つまり『悪魔憑き』は英雄の子孫である証。昔は大切にたたえられた」
「そんな、嘘でしょ。今は讃えられるどころか迫害の対象よ」
本当に酷なことだ。助けたのにこんな扱いされて、子供に聞かせたらトラウマもんだね。アレクシアに聞かせてあげようかな?お土産として。
「何者かがそう歴史を塗り変えたのさ。全てを隠蔽し英雄の血をひくものを消そうとするもの」
『ディアボロス教団』魔人ディアボロスの復活を目論む者達
「それが僕らの敵。教団は決して表舞台に現れない。陰で邪魔者を始末している」
「となると、敵は権力者……真実を知らずに操られている人たちもたくさんいるはず」
シドは鷹揚とうなずいた。
ふむ、この子そこそこ頭切れるな。この状況で冷静に分析が出来ている。シドはこの子を右腕にとか考えているんだろうけど、本当にこの子がなったら丁度いいのかもしれない。
「困難な道だろう。だが、僕らが成し遂げなければならない。協力してくれるね?」
なんか最初かっこいい感じだったのに、最後で脅しみたいになったな。
「あなたが望むなら、私はこの命を懸けましょう。そして咎人には、死の制裁を」
美しい。アルファは青い瞳でシドを見据え、不敵に笑った。その顔は覚悟と決意に満ちていて幼くも美しかった。
ディアボロス教団なんて当然存在しないから、いくら探しても見つかるはずがない。後は主人公っぽい人たちの戦いに乱入し思わせぶりなこと言って立ち去ったり、戦場に颯爽と現れ敵を一掃したり、とか考えているんだろうけど、そんなこと考えていると痛い目にあうぞ。それこそ4、5年後くらいに。
「我らは、『シャドウガーデン』……陰に潜み、影を狩るもの」
「『シャドウガーデン』。良い名ね」
黒い庭。クロユリでも沢山咲いてるのかな。とか、色々気になったが二人は納得しているようなので」、何も言わないでおいた。
「ところでそちらのお嬢様について聞いてもいい?」
アルファはシドとの話を終え、ずっと黙って話を聞いていた私に興味を示したのだろう。
「私はアレナ・ミドガル。こいつの親友かな?」
「なんで疑問形なの?」
シドが、聞いてきた。
「だって、お前みたいな変態の親友ってなんか憚られる」
流石に私も全裸の女の子の前でどうどうと話すような奴の親友を名乗りたいとは思わない。
「ひどいね。仮にも親友を変態呼ばわりなんて」
「しょうがないよね。それがお前なんだし。人のあり方を変えることは難しいけど、一つ言えることはある。君はデリカシーを持った方が良い」
うん。これに関しては前世からずっと思っていた。だが、一々言うのも面倒なので特に何も言わなかったが、流石に一度注意しておくべきだと思った。まぁこんな一言で改善が見られたら目の前に立っている少年は影野実の精神を一部持っただけのシド・カゲノーなのだろう。
「そっか、でも君もあんまりデリカシーないよ」
「安心してくれ。お前ほどじゃない。その事実だけで十分だ」
私の自信の半分はシドよりも優秀という事実で出来ている。まぁ一部シドの方が優秀なこともあるが、そんなこと一々気にしていたら私は自信皆無のつまらん人間になってしまう。人は基本自信があった方が面白い。その証拠に馬鹿は見ていて面白い。
「ふふっ、あっ、ごめんなさい。二人の掛け合いが面白くて」
アルファは思わず笑ってしまった。それを聞いた私とシドが一斉に振り返ったのに驚いてすぐに謝った。
「まぁ関係は見てもらった通りだ。まぁ気軽にアレナと呼んでくれ。それと、服」
「ええ。ありがとう」
アルファは私が念のため持ってきた外着を身に着けた。
中々に似合っている。元がいいのだから当たり前か。そういえばあまりエルフは見たことなかったな。まぁエルフが王都に来てすることなんてあまりないし、それもあってエルフは基本森に引きこもっている。
「ま、とりあえず魔力制御を鍛えつつ剣の練習しますか。メイン戦闘は僕がやるけど、君も雑魚戦はやってもらうからそれなりに強くなってね」
「最初から盗賊団に突っ込むのか?」
「そのつもりだけど」
シドはさも当たり前かのように言った。
流石に、危なくないか。怪我なんざいくらでも直せるとはいえ、私の大切な実験体が傷つくのは避けたい。
「それだと効率は良いが危険じゃないか?せめて今日は訓練だけで明日から襲撃にしないか?」
「それもそうだね。じゃあ剣術は僕が教えるけど魔法系はどうする?」
よし。説得完了。こいつの説得は犬を従えるのと同じくらい簡単だ。
「魔法なんて剣術教える時に流れで教えることになるでしょ。剣だけじゃ1チャン死ぬかもしれないし」
まぁ急所をやられなきゃそう簡単に死ぬことはない。とはいえ痛いからね。
「確かに、じゃあアレナは何すんの?」
「私はもちろん。観察。私が戦うわけないだろう。私は王国史上最も温厚な王女だよ」
私が知る中では確実に一番温厚だ。
「へー。王女様って結構野蛮なんだね」
「王都に来たら分かると思うよ。クレアさんに似ている子もいる。クレアさんの方が可愛いけど」
この発言アレクシアに聞かれたらやばいな。多分本気ではないだろうけど結構強く剣をぶつけてくるんだろうな。まぁ良い運動になるかもしれないけど面倒くさいだろうなー。まぁいないし関係ない。
「姉さんの方が可愛いなんてありえない。姉さんの傍若無人ぶりを知らないからそんなこと言えるんだ」
ほう。シドがここまで言うか。だとすると、クレアさんは中々に面白い人のなのだろう。明日はクレアさんと話してみるのもいいかもしれない。ここに来てからに見ているだけでちゃんと話したことは無かった。まぁシドの姉だから面白いのはわかってたけどね。
私はシドの戯言にをフル無視して想像に花咲かせていた。
ご覧くださりありがとうございます。
アルファ登場です。シドのヒロインはアルファにしようかなと思ってます。七影の皆もヒロインにする可能性もなくはないですがシドとアルファのコンビが好きなので、今のところはあまり考えてないです。
主人公のヒーロー及びヒロインは一応候補はいるんですが、原作の5巻。つまりアニメ化外のキャラなのでいつになるかわかりません。もしかしたら話を捻じ曲げて早めに出すかもしれません。そんなに重要人物ではないので。
よかったら誰か予想してみてください。
ここが、良かった。ここを直した方が良いなどの、アドバイスをくださるとありがたいです。