陰の実力者の親友 作:はちりんご
水族館行きたくなってきた。41番の水槽に行く途中に水中関係の研究生物のゾーンを通っていたらふと行きたくなってきた。前世でも数回しか行ったことは無いけれど。
「着きましたよ。行き方覚えておいてくださいね」
そんなことを考えていたら機械的な冷たい声っぽさの声で現実に引き戻された。
「善処するよ。それにしても、何の異変もない水槽だねー。魔力の痕跡を気にしなければだけどね。ちなみに、君は魔力は苦手なんだっけ?」
「いえ、そんなことは無いですよ。そもそもここにいる時点で魔力が使えないと駄目でしょう?」
確かに、ここでは魔力がある程度使えないと生きていけない。でも、剣の一本でも持っていればどうにかなるでしょ。と思ったがこれはシドの考え方だからやめておこう。
「だねー。じゃあ悪い子を捕まえますかねー。とりまこっち」
私はかすかに残っている魔力の残滓を頼りに41番の言った方向に向かっていく。しかし、思ったよりも近くで残滓は見つからなくなった。厳密には別の魔力と混ざり合っている。
「ここは、26番のところ?でもなんでここに?」
と思ったが理由はすぐに分かった。26番と41番は楽しそうに遊んでいた。二匹を見ていて気付いたが姿似てるな。同じ種類の生き物であるとかは絶対ないのだが、どっちも姿が透明なので気が合うのかもしれない。そっか、透明だからぱっと見ではいるか分からないのか。これだったらいなくても気づかないかもしれない。
「戻しますか?」
「いいや、そのままにしておこう。一人は寂しいからね」
すると、隣に立っていた研究者は私をじっと見てきた。
「何?」
「いえ、アレナ様も人の子なんだなと思いまして」
「君は私を何だと思っているんだ?それに、私の個人情報調べたんだから知ってるでしょ。人から生まれたって」
本当に調べたかは知らない。けど、この子のことだから私の個人情報なんて調べつくしているだろう。怖い怖い。
「こんな実験をしている人が人だなんてここに来るまでは思いませんでしたよ。後、私の名前はマリーです。君ではありません」
「この会話も久しぶりだね」
「何言ってるんですか?1週間前にもしましたよ。そもそもアンって名前もあなたが付けたんじゃないですか。自分がつけた名前くらい覚えてください」
そういえば私がつけたんだった。この研究所にいる人の大半は私が名前を付けている。皆何かしらの事情がある。家から勘当されたりなど理由は様々だが名を捨てる選択をする人がいる。そんな時に名をつけるのが私だ。私に拾われここにいるからしょうがないのだろうけど、面倒くさい。
「ちなみに忘れているわけではないよ。アンちゃん」
私は名前を呼ぶと同時にウインクをしてみせた。きれいにできてるといいが。
「っ、辞めてください。恥ずかしい。そもそも私の方が年上なんですけど」
「知ってる。ここに私の年下なんていないしね。何で年上しかいないんだろうねぇ」
年下や同い年が欲しいわけではない。ただ、年上は若干緊張したりしなかったりするわけで、って考えてもしょうがないか。アンがいる限りおもちゃが無くなることは無いし。
「まぁその話は私には関係ないので置いときましょう。取り敢えずユキを置いてくれますか?危険なので」
嫌だなー。なんで癒しを自ら手放さなければならんのだ。そもそもユキは戦闘能力がないだけで、弱くはない。
「頭の中で言い訳を並べているかもしれませんけど、駄目ですよ。頭に乗せたからって変わらないですからね」
「なんで思考読んでるの?それに、頭に乗せるなんてことしない。首痛くなるでしょ?何言ってるの」
あ、これやばい。絶対怒ってる。すまし顔ではあるけど後ろに鬼が見える気がする。美人って怒るとマジで怖いんだなー。今度アルファぶち切れさせてシドにぶつけてみよ。絶対おもろい。
違う。そんなこと考えてる場合じゃない。早くどっかに隠れないと、見つかったら即帰ろう。
「それじゃ」
「待ってください。逃がしませんよ」
私は、足に魔力を全集中させて誰にも視認されないようなスピードで研究所を突き進んだ。アンが私についてこれるはずがない。なので安心して隠れる場所を探せる。数10秒走った後、大きな雄たけびが聞こえてきた。
ゴオォォォ
私はその雄たけびを聞いた瞬間にその方向へ方向転換した。
「久しぶりだね。クーちゃん」
クーちゃんというのは私が初めて作った大型研究生物だ。この子は名前の通りクジラをモチーフに作ったものだ。いつかは忘れたが、シドと海の近くに行ったときに海の魔物を確保して改造した戦闘生物だ。シドと一度戦わせたがボコボコにされてもう外に出なくなってしまった。残念だ。せっかく空を泳げるというのに。
「どうしたの?何かあったのかい?」
私はクーちゃんの鼻先に手を当ててゆっくり魔力を流す。この行為に意味はないが、何か変わるんじゃないかと思いずっとしている。
この子は私の特別だ。理由は分からないが、この子には強く出れない。私はクジラが好きだったのかとも思ったが、そんなことはなさそうなので本当に分からないので考えるのは辞めた。
コオォォォ
クーちゃんはとても高い音で鳴いている。…分かった。寂しいんだ。さっきの41番のように寂しがっているのかもしれない。ここにいるのはクーちゃんだけ。さらにここに来れるのは私だけ、クーちゃんの鳴き声は他の生物に悪影響を及ぼす。動物はもちろん人だって魔力を操れない人では鼓膜がやられる可能性がある。
「クーちゃんと一緒にいられるのなんて私以外には…いたな。耳の聞こえない爺さんが」
私は研究室から離れ、城に戻っていた。
「いるかなーっと、あ、いた。久しぶりーラング爺さん」
ラング爺さんは城の兵士を鍛える師範だ。しかし、爺さんはもう年、引退の時期を考えているようだった。
「……なんじゃ?誰かいるのか?」
「いますよー。どうもアレナでーす」
私は爺さんの前に出て笑顔を見せた。
「アレナか、どうしたんじゃ?こんな老いぼれに」
「退職して隠居生活をしたいって言ってたからその願いを叶えてあげようかと思って。後、誰もいないから耳、気にしなくていいよ」
すると、爺さんは少し険しい顔をした後、気を抜いた。
「そうか、それで隠居先は?」
「とある研究所。結構いいよ。かなり静かなところだよ。常に高音が鳴り響いてるかもしれないけど」
「教団の研究所、ということか?だったら嫌じゃよ。わしはあの組織は嫌いじゃ」
教団って人気ないんだなー。結構権力は強いから就職先としては悪くないと思うんだけど。
「そっか、でも教団は関係ないよ。私の個人経営場所」
「だったら、良いかもしれんな」
「それじゃあ、王に言いに行こう。アポはとってあるよ」
そう、しっかりとった。王には会いたくないのだが、爺さんをゲットするには必要なことだったのでしょうがない。
「ほほっ、準備がいいな。それじゃあ行くとするかな」
「おんぶで運んでいって上げようか?」
私は爺さんの前にしゃがみ背中を向けた。
「か弱いお嬢ちゃんに背をわれるほど老いてはおらんよ」
老いてるでしょ。もう結構いい年してるでしょ。私が初めて会った時からずっとこんな喋り方だったし。
「それはなにより。少し気になったんだけど、なんで私の提案を簡単に受けてくれたの?教団嫌いなんでしょ」
過去に何があったかは知らないけど爺さんは教団を嫌っている。昔教団に誘われたことがあったらしいけどその時に喧嘩でもしたんかねー。どうでもいいけど。
「アレナ、お前は確かに教団に関係しているが、教団に心酔しているようには見えん。もしそうなっていたらもう国は崩壊しているだろうからな」
「随分と評価が高いね。流石の私も国を崩壊させることなんてできやしないよ」
国の崩壊は武力行使をしない限り多かれ少なかれ時間がかかる。そんな面倒なことを私はしない。国を崩壊させるんだったらシドを騙してアトミック撃たせた方が早い。
「どうだかな。それより、扉を開けてくれんかのお」
私が考えているうちに王室の前に来ていた。私は爺さんに言われるがまま扉を静かに開けた。
「じゃ、私は扉の前で待ってるから」
「来ないのか?」
「無理。話すの面倒くさい」
「そうか、正直だな」
そう言って爺さんはゆっくり部屋に入っていった。
よし、話さなくて済んだ。爺さんが物わかりのいい人で良かった。それでどうしよう。すぐ出てくるだろうけど暇だな。それにここは人が結構通る。つまり。
「あ、アレナ。こんな所で何してるの」
やっぱり来た。壁と同化する前にアレクシアが来てしまった。だからここにいたくなかったんだ。
「おじいさんの介抱かな。それでアレクシアは何してるの?」
「何って学園から帰ってきたところだけど、…」
「何?」
アレクシアは私の目をじっと見てきた。なんだ、何をされるんだ。私今忙しいんだけど。
「いや、あなたちゃんと学園の授業出てる?」
「私別に授業出る必要ないし。特待生だから」
私は今まで多くの研究成果を出してきたことで、特待生として入学した。その特権として授業を免除されている。授業に興味のない私にとっては非常にありがたかった。まぁ学園では全く研究してないけど。
「何それ!?聞いてないんだけど特待生とか」
「言ってないからに決まってるじゃん。何言ってるの?あ、でもアイリス姉さんには言った」
「どういうこと!ねぇ!」
あー、やばいやばい。頭が、脳が震えてる。これで馬鹿になったらどうするんだ。国最高の頭脳だぞ。どうやって責任を取ってくれるんだ。
「なんか楽しそうじゃの」
爺さんが王室から出てきた。表情を見るに話は円滑に進んだようだ。
「助けてほしいかもー」
「ほれ、アレクシア様止めてやってやれ」
「それもそうね。それで、どうしてアレナとラング師範が一緒にいるの?…もしかして介抱ってラング師範のこと?」
そういえばアレクシアに剣を教えていたのは爺さんだったっけ?
「なんじゃ、介抱と言っていたのか?」
「間違ってないでしょ」
「次言ったら昔みたいに厳しい訓練じゃぞ」
爺さんってこんな感じで怒るんだ。まぁ昔のようにはどうやってもならないと思うけどね。私は昔と違って剣をちゃんと使えるようになっているし。魔力でずるもできる。
「私を話から置いていかないで、それでどうしてアレナと師範が一緒にいるのかって聞いてるの!」
「わしが退職するからじゃ。そして、隠居後をアレナが提案してくれたからじゃ」
「アレナが?どうして?そんなに関わりないのに」
「知らないだけで私は色々な人と関わっているんだよ」
アレクシアは人付き合い下手だから違うかもしれないけど。
「失礼なこと考えてるでしょ」
何でわかるんだ。人の心読むのって結構難しいと思うんだけど。
「そんなことは無いよ。それじゃあ、私はラング爺さん連れていくんでじゃあねー」
「ちょ、夜になったら話聞きに行くからね」
私は夜の平穏を代償に今の平穏を獲得した。これは良い判断だったのか悪い判断だったのか、それは私も知りたくない。そんなことを気にせず爺さんを連れていく。
「それで、研究所とやらはどこにあるんだ」
「あー、行ってなかったねぇ。残念ながら教えられません。なぜなら私の研究所の場所を知っている人はとても少ない。なので、ばれると面倒なんですよー。だからここからは眠っていてください」
私は爺さんの意識を一瞬にして刈り取った。爺さんを気絶させるのは大変だ。なので私は爺さんの得意分野ではない。魔力を使って気絶させる必要があった。まぁ爺さんだったら誰かに場所を言うことは無いだろうけど。
「…ここはどこだ」
そろそろ研究所に着くころ爺さんは起きた。ここまで来れば起きたとてどこかは分からない。
「研究所に行くための最後の通路かなー」
「そうか、…降ろしてくれんか?この格好は腰に来る」
今私は爺さんを肩にかけておんぶとも抱っこでもない荷物を運ぶように持っている。持ち上げた時は特に気にしてはいなかったが今考えるとこの持ち方は良くなかったかもしれない。
「すいません。あ、着いたよ」
「ほう、随分と綺麗だな」
私と爺さんは研究所の入り口にある扉を通り中に入った。
「でしょー。私頑張ったんだよ。これをつくるのに何度も城を抜け出したんだから」
「誇って言うことではないがな。それにしても凄いな。見たことのない生物が多くいるな。これだけいれば国の軍事力に匹敵しそうだな」
爺さんは年に似合わない少年のような目で研究生物を観察している。研究所が誇る可愛さを持つ生物を見て戦闘能力を考えるあたり流石師範をやっていただけはある。
「ここにいる子たちは一部を除いて戦闘能力は皆無だよ。後、この研究所にいる子たちを兵器として使うことは許さないよ」
「そうか、なら教団として使うこともないということでいいんだな?」
やっぱりそのことを気にしてたのか。私が爺さんの立場だったらそれは気になる。
「それは分からない。私が使いたいときに使うからね。教団の利になる可能性は否定できない。ただ、使うのはあくまでも私だ。だからあなたの信頼するお嬢ちゃんを信じていればいい」
「……そうか。老いぼれらしく見守っておくとしよう」
「そうしてくれると助かる」
私は爺さんをクーちゃんに合わせた後、研究所で新たな実験をして城に帰ってきた。
「あー、疲れた。色々な人に会って楽しかったけど」
私はそう呟きながら自室の扉を開けベットを見るとアレクシアがこちらを睨みつけていた。そして私は扉を閉めた。
「どうして閉めたの?」
そんな抵抗も虚しく部屋に連れ込まれ勝手にパジャマに着替えさせられた。
「別にいいでしょー。それより、何の話?」
「実はね。彼氏が出来たの」
アレクシアはにやつきながら言ってきたが、これは彼氏が出来て嬉しいというより私の反応を楽しもうといった感じだ。
にしても彼氏かー。どんな変人だろう?
「へー、めでたいね。それでなんて人」
「本当に思ってる?…まぁいいわ。あなたも知っているシド・カゲノー君よ」
「oh」
ちゃんと変人だ。
ご覧くださりありがとうございます。
シドとかの話をしたいのに全然関係ない話ばっかしちゃってます。次話はちゃんと進めます。後、オリジナル要素は書いてて楽しいんですけど収集が着かなくなっちゃうんですよね。だからなるべく抑えます。
書き忘れていたんですが、主人公の見た目は髪がエイテッシックスに出てくるレーナの鮮血の女王の時に近いです。他は特に考えてません。でも、アレクシアに近いんじゃないかと思います。
ここが、良かった。ここを直した方が良いなどの、アドバイスをくださるとありがたいです。