魔法学園アイドルマスター 作:MS 学P
○同 空き教室
「花海ウメさん消失事件捜査本部」と書かれた紙が会議室の黒板に貼られている。
ウメや麻央が隣同士ですわっている。
ウメ、キョロキョロする。
ウメ「な、なんだか場違いなような」
麻央「遠慮しなくて良いよ。」
莉波「お菓子食べる?」
ウメ「いただきます!」
星南が壇上に上がる。
星南「こほん。では審議の前に、改めて確認するわね。その日なにが起こったのかを。
入学式前日、ここ天川に向かっていた花海ウメは電車乗車中にクリーチャーによる転移系魔術の攻撃に遭い、誘拐された。
電車降車中、妹の失踪に気づいた姉の花海咲季はプラットフォーム上にいた三年生の有村麻央にそのことを相談し、調査をすることにした。」
○天川駅 プラットホーム (夕)
入学式前日。生徒達が出口の方へ向かっている中で、咲季は二人分の荷物を地面に置きながらおろおろしている。
咲季「ウメー!?ウメー!?どこへ行っちゃったのかしら??」
麻央が立て看板を持って近づいてくる
麻央「どうかしましたか?」
咲季「あなたは・・・・・・」
麻央「有村麻央。三年生さ。誰か探しているのかい?」
咲季「ええ。妹のウメがいないの。
電車で隣の席に座っていたのに、いつのまにか姿がなくて・・・・・・。」
麻央「別のドアから出たということは?」
咲季「もしかしたらそうじゃないかと思って、見渡しているのだけれど、いないの!」
麻央「ううん・・・・・・。あ、そこに車掌さんがいるね」
咲季「きいてみるわ!」
× ×
咲季「トイレまですみずみ探したけど、だれも残ってはいないって」
麻央「ふむ。スマホの連絡も届いていないんだね?」
咲季「ええ。・・・どうしよう」
麻央「そうだね。もういちど、電車の中を見せてもらおうか」
咲季「なにかわかるといいけれど」
○天川駅 電車 車内
咲季と麻央が車内を歩いている。
麻央「うーん」
咲季「・・・・・・ウメがいたのはこのあたりね。
車掌「何の変哲も無い座席にみえるわ」
麻央「なら、別の視点で見るべきだね」
麻央、懐からスカラベの飾りが付いている、変わった色のレンズが嵌められている眼鏡を取り出す。
咲季「それは、マジックアイテム?」
麻央「古い友人の贈りものでね。
魔力の残留物を探ることが出来るんだ」
咲季「魔力の残留物・・・・・・。」
麻央、眼鏡をかける。すぐに目を見開く。
麻央「わっ!」
咲季「びっくりした!なに?」
麻央「妹さんが座っていた所のあたりが特にてかてかと光っている」
咲季「とくに?」
麻央「ふつうは緑色なんだけど・・・。みたほうがはやいね。」
麻央、眼鏡を咲季にもわたす。
普通この眼鏡の中は視界が緑色に染まる。
しかし、いまは電車内を点々と薄く黄色く光っているのが見える。
特に、ウメの座っていた座席がてらてらと金色に光り輝いているのが見える。
咲季「まるで電車内で粉をばらまいたみたいね。」
麻央「これは妖精の鱗粉だね」
咲季「わかるの?」
麻央「種族までは特定できないけどね」
咲季「うーん。妖精って種族がいっぱいいるんでしょう?」
麻央「そうだね。付喪神、河童、やなり・・・・・・。日本だけでも数え切れない位だ」
咲季「つまり、大量の妖精や妖怪の類いがこの辺りをうろついていたというの?」
麻央「数はわからないな。一匹だけが活発に動いているようにもみえる。」
咲季「うーん。もう少し手がかりが欲しいわ。なんの妖精かわかるといいけど」
咲季、杖を取り出しつつ座席の下をのぞき込む。
咲季「あら、なにかあるわ。小さい玉みたいなのが」
麻央「ほんとうかい?」
咲季「ええ。『来い』」
咲季が杖を振る。
座席下からコロコロとタマネギがひとりでに転がってくる。
麻央「タマネギじゃないか。いや、どうしてこんなところに?」
咲季、タマネギを拾い上げる。
咲季「タマネギの妖精かしら」
麻央「タマネギを好む妖精、というよりも身体に生やしている妖精ならいるな」
咲季「なんていう妖精?」
麻央「一部の地域のゴブリンだね。土に塗れている彼等は身体に植物のタネをつけて、気づかずに育ててしまうんだ」
咲季「鳥か何かかしら?
・・・・・・というか、ゴブリンって、海外の妖精だと思ったけど違うの?」
麻央「彼等も色んな異界の「道」を使って世界中を渡り歩いているからね。」
咲季「異界の道」
麻央「ボクらには感知することができない道さ。それで日本に来たんだ」
咲季「へぇ、知らなかったわ」
麻央「ゴブリンは誰にも気取られずに人を攫う魔法を使ったんだろう」
咲季「チェンジリングのこと?でもあれは赤子取り替えの呪文。ウメは私よりも背丈が大きいわ」
麻央「姉妹って言ってたね。だけど、妖精の魔法はまだ分からないことも多いから。」
咲季「ううん。とりあえず、ゴブリンが関係しているということがわかっただけ収穫だと思うことにするわ。」
麻央「そうだね。妖精がこの辺りにうろついていた。
次はいつウメさんを攫ったかがわかればいいね」
咲季、上を見上げる。
咲季「幸い、この電車には監視カメラがついているようね」
麻央「それは名案だね。目撃者もいるかもいしれない」
○駅長室
PCモニターには防犯カメラで撮影された車内の様子がうつっている。
車内は逆再生をしている。
麻央「妙に生徒がよく寝ているね」
咲季「やだ、私の寝顔ってこんなマヌケなのね」
麻央「かわいらしいね」
咲季「え~?そう?褒めても何も出ないけども!(照れっ)」
麻央「もうすこし大きく戻してみようか。そうだね、今の時間で30分位」
咲季、カーソルを操作し、一気に移動させる
麻央「あ、でてきた!」
画面には鼻提灯を膨らませながら、咲季の肩に頭を乗せるウメの姿。
咲季は、本を静かに読んでいる。
麻央「姉妹、よく似ているね」
咲季「でしょ~!」
(またしばらく、時間を早回ししていく。
すると、画面が白ずんでいくのに気づく。)
咲季「画面にもやがかかりはじめた」
麻央「これは霧・・・・・・?困ったな、画面が見えなくなってしまった」
咲季「画面が暗い。トンネルに入ったのかしら」
麻央「天川トンネルだね。」
咲季「ああ、入学試験で使われた所」
麻央「入学試験・・・・・・?
あ、トンネルを出たようだね」
(それから、霧が晴れるまで早回しを続けていく。そして・・・・・・。)
咲季「あっ!ウメがいないわ!」
× ×
咲季「他の車両のカメラもみたけれど、妹の姿がないわ」
麻央「霧がかかり、トンネルに入った。そして出てきてから数分くらいのタイミングでウメさんが消えた。」
咲季「それから、この時点で車内にいる生徒が皆眠っている。」
麻央「皆が昏睡状態に陥っている間、妖精が練り歩いていた。それは一体なぜ?目的は?」
咲季「ウメ・・・・・・。」
× ×
咲季と麻央はコーヒーを飲んでいる。
麻央「(・・・・・・)」
咲季「有村先輩はお砂糖、入れないのね?」
麻央「まぁ・・・・・・ね」
咲季「良い心がけだわ」
麻央「ハハハ・・・・・・。それより、今のはなしだけど、
ゴブリン独自の門がどこかで作り出されている可能性がある」
咲季「独自の門・・・・・・」
麻央「今後の授業でならうと思うけど、
この天川では長距離でのテレポーテーションが限定化されているんだ。
もしも、使用したい場合はここの管理者が作り出した転移門を使用する必要がある。」
咲季「管理者?」
麻央「彼等は鍵を渡されていない、つまり転移を許可されていない者がここの転移門を使った時にそのことを察知できる」
咲季「独自の門、というのは」
麻央「チェンジリングは転移術の一種だ。ただ使ったなら管理者は気づけるはず。」
咲季「管理者が感知できないバッグドアを作られた可能性が高いということ?」
麻央「そんな隙を作るような人達じゃないのだけれどね」
咲季「でも私の妹が攫われたのは事実よ。
あ~~~!ウメぇ!無事でいて・・・・・・!」
× ×
麻央、スマホで通話をしている。
麻央「はい。はい。わかりました。では、よろしくお願いします」
麻央、携帯を切る。
麻央「この後の話だけれど」
咲季「妹を探しに行くわ。トンネルの方まで行けば痕跡があるかもしれない」
麻央「・・・・・・もうすぐ陽が暮れる。聞くところによれば君は首席生だそうじゃないか。明日のために早めに寮で休むべきだよ」
咲季「本気で言っています?トーゼン、妹の方を優先するわよ!
もしかしたら、ウメは今ヒドい目に遭っているかもしれない!そう考えるとのんびりと寝てなんかいられないわ!」
麻央「そうだね。そのとおりだ。
・・・・・・今は非常事態。本来はするべきではないのだけれど、特例措置、だよね」
咲季「何の話?」
○天川駅 ロータリー
麻央、オカリナを取り出して吹く。
咲季「・・・・・・。」キョロキョロ
麻央「来たっ!」
咲季「あれは、天馬?」
空から一頭の白いペガサスがこちらの方に飛んでくるのが見える。空気を地面のように蹴って移動している。
ペガサス「ひひーん」
麻央「紹介するよ!ボクの相棒さ!」
咲季「は、はじめてみた・・・・・・」
麻央「また、ボクの力になってくれるかい?」
ペガサス「ぶるるるる」
麻央「ありがとう!さぁ、咲季、後ろに乗って。」
咲季「え、ええ。」
麻央と咲季がペガサスに乗る。
咲季「た、高いわ!」
麻央「落ちないように気をつけてね!」
二人を乗せたペガサスは、天川トンネルの方に向かって飛行する。
天川トンネルの周囲はベールで隠されるように濃い霧に包まれていた。
× ×
○天川トンネル前
咲季と麻央、線路上に降り立つ。
麻央「降りれるかい?」
咲季「ええ、よっと」
麻央「足下に気をつけてね」
咲季「ありがとうございます。・・・・・・ここが天川トンネル」
麻央「都市と天川の町を隔てる境界線を作るために作られたトンネルと聞いているよ」
咲季「・・・・・・少し寒いわね。」
麻央「上着を貸してあげるよ」
咲季「いや、花海咲季、変身します!」
咲季、腕についている赤いルビーのような装飾品のついた変身装具を交差すると、全身紅く光り輝く。光は咲季の首から下を覆い隠したあとに、みるみるうちに変身衣装に包まれる。FIGHTINGMYWAYに近い衣装に、紅い薔薇のコサージュが頭に飾られる。
決めポーズをすると、背景が爆発する。
咲季「どう!?」
麻央「流石だね。よいしょ。変身。」
麻央、分厚い鎧を身につけたあとに、鎧の内部が一瞬光る。
麻央「よし」
咲季「あっさりね・・・・・・。」
麻央「三年生はみんなこんなもんだよ。
さきほどのグラスをみると、やはり妖精の痕跡が色濃く残っている」
咲季「それを追っていけばいいのかしら?」
麻央「うん。妹さんを連れて行った異界の転移門が存在するはずさ」
咲季「すぐに見つかりそうね」
麻央「問題があるとすれば
招かれざる訪問者は追い返されることかな」
咲季「ならばこじあけるまでよ!」
麻央「いいね。あとは妹さんが無事なら良いんだが」
咲季「戦って勝てる相手なら、心配はいらないわ」
○ 夜 迷いの森
ウメ「うわああああ!!」
ウメ、背丈を遙かに上回る巨大なムカデ型のクリーチャーの牙を跳躍で躱す。
ウメ「負けませんよ!お姉ちゃんに、会うまではあああ!!」
そのまま空中で回転しながらドリルライナーをオオムカデの胴体に喰らわせる。
オオムカデ「ぴぎいいいいいいい!!」
大爆発が起き、オオムカデは四散する。
ウメ「大勝利!!」
ガサガサガサと背後の藪から音がする。
ウメ「な、何の音でしょう」
そこから先ほどよりは小型だが、ウメと遜色ないサイズのムカデ軍団が牙を向ける!
ウメ「うわあああ!増援だ!おねえちゃあん!」
ウメ、杖を取り出す。
「ローリング・ライスボール!!」
杖を振るうと地表がめくれ上がり、ムカデ軍団を樹木や土砂ごと吹き飛ばす!
× ×
ごごごごごごご
麻央「すごい魔力の鳴動を感じる!」
咲季「ウメだわ!魔力を行使しているみたい!」
麻央「ここまでの量の魔力を放っているなら追跡は容易だね」
咲季「こっちよ!」
× ×
ウメ「杖、折れちゃった・・・・・・。
どうしよう」
ウメ、折れた杖を眺めている。
「ゴロゴロゴロ」
ウメ「なにかが来る・・・・・・」
ウメの足下にはいつのまにか線路がある。前方の線路のさきは霧に包まれており、視界が不良。
咲季「ウメェェェェ・・・・・・!!」
ウメ、ぴくっと反応し後ろを振り向く。
ウメ「お姉ちゃん?お姉ちゃん!おねえちゃああああんんん!!」
咲季「ウメェェェ!そこにいるの!」
ウメ「うん!ここにいるよ!
ハッ!」
ウメ、視界不良だった霧の向こうからやってくる存在を視認する。
ウメ「うわあああ!!」
咲季「ウメェ!あぶなぁあああいいい!」
霧の向こう側から爆走する車輪つきの物体がウメを轢こうとする。
咲季、塊を高速で転がして自分ごとウメを轢きこむことで直撃を防ぐ。
麻央「うわぁ!なにがなにやら!?大丈夫かい!??」
咲季「平気・・・・・・!」
ウメ「う~」
咲季「ウメ!しっかり!」
ウメ「おねえちゃあああんんん死ぬかと思った、ウェ。」
ウメ、呻いたあとに、目を回して気絶する。
咲季「ウメ!しっかり、ウメ!」
麻央「大丈夫。気絶しているだけだ。魔力切れだろう」
麻央、印章の入った盾を持って二人の前に立つ。
麻央「さて、大きな何かが、霧を纏っていて見えない。その息苦しいベールを引き剥がしてやる。
(杖を取り出す)正体を現せ!」
麻央の杖の先端から青白い、凍えるような冷気が伴う光が拡散される。
霧が晴れていき、中の物が出て行く。
麻央「これは、トロッコ?」
悪鬼の面がついた棘付き車輪のモンスタートロッコが現れる。
その上には獅子のお面をかぶった小学生くらいのサイズの半裸の小男が乗っている。
咲季「アレがゴブリン」
麻央「咲季、ここは先に脱出してくれ。殿はつとめる」
咲季「でも」
麻央「遠慮はしないでくれ。先導役も大事だよ」
咲季「(頭を横に振る)わかりました。ご健闘を!」
麻央「うん。」
咲季、杖をふるってウメを浮遊させると、出口に向かう。
麻央と、モンスタートロッコが対峙する。
モンスタートロッコのお面の口が開く。
そこからドライアイスの噴出のように、白い息吹が麻央に吹きかけられる。
ゴブリン「けけっ」
麻央「!」
麻央、盾に身を隠す。すると、盾の魔法が息吹を反射する。息吹がかかったモンスタートロッコには目をつむってしまい動かなくなる
ゴブリン「!?」
ゴブリン、トロッコバンバンするが動かない。麻央「眠りの魔法か。乗客を眠らせたのもそれかな」
ゴブリン「ぐぬぬぬぬ」
麻央「捕縛させてもらおうか」
麻央が杖をむける。
ゴブリンたち、お互いに顔を見合わせると、ゴブリンの一体が身体に生えているタマネギをもぎ取る。
麻央「・・・・・・何のつもりだい」
麻央、警戒する。
ゴブリン、タマネギを麻央に向かって投擲する。
麻央「ボクに魔法は通用しな・・・・・・」
ゴブリン、指をパチンと鳴らす。
麻央の姿が煙となって消える。
○夜 天川トンネル線路上
線路上の傍らに布を敷いてその上にウメを寝かせている。
ウメ「(寝言)おねえちゃんんん」
咲季「有村先輩を迎えに行かないと」
麻央「呼んだかい?」ひょこ
咲季「わっ!」
麻央「わぁ!?びっくりした!ど、どうしたんだい」
咲季「いや、いまから中に入ろうとしてて。随分早かったですね」
麻央「まぁね。チェンジリングにああいう使い方があるとは、一本とられたよ」
麻央、タマネギを手の内に転がす。
咲季「逃げられたって事?」
麻央「そういうことになる。ごめんね」
咲季「いえ、ご無事で何よりです。
ウメも怪我はなかったので」
麻央「それはよかった」
咲季「・・・・・・ゴブリンは再び現れると思いますか?」
麻央「彼等はいたずら者だが、本来臆病だ」
咲季「悪戯に懲りるかどうか、っってことね」
麻央「そう、考えていいはずだけど」
ウメ「zzz」
咲季、ウメの寝顔を見る。
咲季「(・・・・・・。)」
× ×
星南「そしてこの翌日にあの怪人が現れることになる」
麻央「自称、怪人VOIDですか」
星南「そう。その怪人とこの事件は関連しているだろうという推測のもと、この1週間の捜索は続けられてきた」
麻央「しかし、あれから妖精の姿は見当たらずその痕跡も少ない」
星南「あなたの目からみて既に妖精はこの地から離脱したとみていいかしら?」
麻央「あのゴブリンの大胆な行動が怪人VOIDの出現によってもたらされたものなら、その巨魁を排除した時点でおのずと解散するはずだ」
ウメ「菓子折りの一つくらい持ってきても良いと思いますけどね」
あさり・莉波「そうですね」
麻央「ボクらとは生態の構造という物が違うからね。基本的に面白そうならノるというのがゴブリンの基本ルールではあるけども」
あさり「つまらなくなったからもう去ったと?」
麻央「わからないね。ただ、星南は今回の会議では電車を再開するべきかどうかを考えたいわけだろう?」
星南「そうね」
麻央「それなら、駅に魔法戦士を配置するっていうのはどうかな。異変があったらすぐに駆けつけられるように」
星南「悪くない提案ではあるけど・・・・・・」
ウメ「うーむー。」
壁に設置してある内線電話が鳴る。
莉波、電話をとる。
莉波「もしもし・・・・・・。え?学P君が!?」
一同「!?」