月の呼吸の後継者。   作:赤いUFO

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考えたら無限列車で杏寿郎が死んでないからどこぞの酒柱はいつ立ち直れば良いのだろうか?
まぁ、別にいいか……。


覚悟。

「今回は流石に死を覚悟したな! 彼らが居なければ、乗客を全員守ることも、上弦との戦いで俺が生き残るのも不可能だったろう! 柱として不甲斐なし!」

 

 上弦の情報を共有する為に集められた柱達に煉獄はそう発言する。

 煉獄の言葉に悲鳴嶋が手を合わせる。

 

「謙遜することはない。これまで上弦との遭遇は柱といえど死を意味していた。こうして煉獄が無事帰還しただけでも朗報である」

 

 それ程までに上弦は強い。

 情報を持ち帰ってこれただけでも充分過ぎる戦果だ。

 そこで胡蝶が釘を刺す。

 

「そうですね。それと煉獄さん。しばらくは安静にしていてくださいね? まだ怪我も治ってないんですから」

 

「そうなのだが、どうにも落ち着かなくてな」

 

 身体を休めて傷を癒やす重要性は煉獄も理解している。

 それはそれとして、上弦に遅れを取った事で今すぐにでも稽古をしたい気持ちがあった。

 だが現実として、煉獄の隊服の下は包帯が巻かれており、こうして柱同士の会議に出席する事さえ胡蝶の立場からすれば控えて欲しいくらいなのだ。

 煉獄が遭遇した上弦の情報を共有していく。

 上弦の参の情報を話し終えたところで恋柱の甘露寺蜜璃が発言する。

 

「ここ最近は下弦の伍、参、壱と立て続けに倒してますし、幸先良いですね!」

 

 甘露寺の発言に珍しく水柱の冨岡義勇が口を開く。

 

「だが、下弦の鬼はすぐに別の鬼が就くだろう」

 

 浮かれている甘露寺に水を浴びせるような発言に伊黒小芭内が睨むが、気付いているのかいないのか、冨岡は表情一つ変えない。

 しかし、冨岡の言う事も事実であり、鬼殺隊が何度下弦の鬼を討ち倒そうと、すぐに新しい鬼が就く。

 そこまで話が進んだところで、産屋敷耀哉の妻であるあまねが、五つ子のうち、二人を連れて現れた。

 彼女が部屋に入って来て、柱達がすぐに姿勢を正す。

 

「今回の柱合会議、夫の産屋敷耀哉の代理として私、産屋敷あまねが務めさせていただきます。当主、耀哉は今晩体調が優れない様子でしたので。皆様の前に出れない不義理をお許しください」

 

 ここ最近、産屋敷耀哉は視力も落ちてほぼ盲目となり、どんどん体調が崩れていっている。

 柱達が産屋敷耀哉に護衛を就けるべきと進言し続けてきたが、全て却下されてきた。

 柱という最大戦力を、自分の為に使うべきではないと。

 小さな報告を済ませた後に、あまねが胡蝶に質問する。

 

「胡蝶様。保志勝己の容態はどうですか」

 

 あまねの質問に胡蝶しのぶは一瞬返答に迷いつつも答える。

 

「傷の方は驚く程の早さで回復を見せています。近い内に完治するでしょう。ですが……」

 

「ですが?」

 

「体温を計ったところ、四十度前後の高熱がありました。本来ならまともに動ける体温ではありません。なのに彼は平然と動き回っていました」

 

 昨日、屋敷に戻った際に伊之助などの同期と一緒に走り込みをしていた。

 驚いてカナヲと二人で取り押さえてベッドに縛りつけて無理やり休ませた。

 胡蝶の話を聞いてあまねが煉獄に質問を移す。

 

「煉獄様。彼が上弦の参と戦っていた時に、身体のどこかに鬼の紋様に似た痣が出ていませんでしたか?」

 

 あまねの質問に煉獄は記憶を辿る。

 

「それらしいモノは見た気がしますが、鬼との戦いが終わった後に見られなかったので、てっきり見間違いかと」

 

 上弦の参との戦闘に集中していて、そこまで気が回っていなかった。

 夜という事もあり、出血かそう見えていたと思っていたのもある。

 あの日の夜を思い出し、煉獄は自分の右側の額から頬まで右目を囲うようにして三日月描く。

 それを聞いていたあまねは改めて口を開いた。

 

「皆様に、お伝えしなければならないことがあります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むー」

 

「あーん」

 

 禰豆子が爪楊枝に刺さった林檎を勝己の口に入れるとシャリッと音を立てて噛む。

 ごくんと呑み込むと禰豆子に礼を言う。

 

「ありがとうございます。美味しいですねー」

 

 そしてもう一切れの林檎を刺して勝己に差し出そうとすると────。

 

「禰豆子ちゃんになにさせてんだテメェはぁああああぁああっ!?」

 

 任務から帰ってきた善逸が勢い良く食堂の戸を開けた。

 

「あ。おかえりなさい善逸君。ご飯にします? お風呂にします? そ・れ・と・も────」

 

「言わせねぇよ気持ち悪ぃ!! それより禰豆子ちゃんになにして貰ってんのお前ぇえええぇえっ!?」

 

 勝己の肩を掴んで揺らしながら捲し立てる善逸。

 食事を摂っていたところ、たまたま起きて来ていた禰豆子が食堂にやって来た。

 最初は兄である炭治郎に寄りかかっていたが、何故か勝己が林檎を食べようと思ったらしく彼の側に近付いて林檎を食べさせてくれたのだ。

 

「炭治郎もぉっ!! 禰豆子ちゃんにそんなことさせちゃ駄目だろおおおおっ!?」

 

「いや、別に邪魔する理由なんてないだろ」

 

「ちっくしょおぉおおおぉおおっ!!」

 

 膝をついてバンバンと床を叩く善逸。

 埃が舞うからやめてくれないかなーと思っていると、案の定騒ぎを聞いて駆けつけたアオイが善逸を怒鳴りつける。

 

「騒がないでください! 追い出しますよ!」

 

「ひゃいっ!?」

 

 アオイに叱られてあっさりと大人しくなる善逸。

 今度は膝を抱えていじける善逸に、禰豆子が勝己にしたように爪楊枝を刺した林檎を一切れ差し出す。

 

「うう〜。ありがとう禰豆子ちゃん。俺を労ってくれるのは君だけだよ〜」

 

 と、林檎を食べる。

 勝己はまだ胡蝶しのぶ(医者)から退院の許可が出ていない上に炭治郎同様に新しい日輪刀も届いていないのが現状だ。

 任務に復帰するのはもう少し後だろう。

 こちらが夕食を食べ終えた頃に伊之助も任務から戻り、自分の馬鹿な事を言い合いながら食事を摂る。

 勝己は、何か楽しいなーと思いながら過ごしていると、食堂に二人の柱が入って来た。

 

「うむ! 皆、思ったより元気そうでなにより!」

 

 頭に包帯を巻いた煉獄杏寿郎と胡蝶しのぶの二人が蝶屋敷の食堂に入ってくる。

 

「煉獄さん!?」

 

「ギョロ目!!」

 

 炭治郎と伊之助が同時に反応を返す。

 アオイ達もしのぶにおかえりなさいと言う。

 しのぶが食後の茶を飲んでいる勝己に近付いて来る。

 

「ところで勝己君。体温は計りましたか?」

 

 食後に体温を計るように言いつけられていた。

 質問に対して勝己は冷や汗を流して目を泳がせる。

 

「さ、三十度ぉ……くらい?」

 

「……言っておきますが、それも大分危ない数値ですからね?」

 

 計ってねぇなコイツと心の中で舌打ちする。

 入院してから判った事だが、勝己はわりといい加減な性格をしている。

 勝己に体温計を渡して体温を計らせるしのぶ。

 そんなやり取りをしている間に煉獄と炭治郎達が話している。

 

「すみません、煉獄さん。上弦との戦いでなんの役にも立てなくて」

 

 上弦の参との戦いで炭治郎達は見ている事しか出来なかった。

 負傷していたが、おそらくは無傷でも役に立つ事など無かっただろう。

 それくらい、あの戦いは自分達の手の届かない領域にあった。

 落ち込んでいる炭治郎に煉獄はポンポンと頭に手を置く。

 

「君達は下弦の壱を倒すという戦果を上げた。不甲斐無いのはむしろ俺の方だろう」

 

「そんなことは……」

 

 煉獄が居なければあの汽車の乗客全てを守り切る事は出来なかった。

 

「上弦の力を体験して理解した! 奴は俺よりずっと強い! だから、一から鍛え直しだな!」

 

 腕を組んで彼らしく快活に笑う。

 まるで、悔やんでいる暇など無いと言うように。

 

「君達もだ。今回の件で己の不甲斐無さを自覚したのなら、その悔しさを糧に強くなれ。どれだけ自分の力不足を嘆いたところでそれだけでは強くなれない。強くならなければ、君達やその仲間も。そして鬼に襲われる誰かが命を落とすことになる」

 

 厳しい事を言っているように聞こえるが、その声は何処までも温かかった。

 

「心を燃やせ。君達はきっと今よりずっと強くなる。そして鬼殺隊にとって無くてはならない隊士に成長するだろう。俺はそれを楽しみにしている。そして次は勝とう!」

 

 そう締め括ると、体温を計り終えた勝己が話す。

 

「汽車でも話しましたけど、日の呼吸の使い手だった始まりの剣士は、鬼の始祖である鬼舞辻無惨をたった一人で追い詰めたんです。人間努力すればそれくらい強くなれる訳ですからね!」

 

「いや、絶対その話盛ってるだろ」

 

 善逸が信じられない様子でツッコむ。

 食事を終えた伊之助が立ち上がった。

 

「おっしゃあぁあ! お前ら! これから修業だ! ついて来い!さっさと強くなって、あの草まつ毛をぶっ殺してやるぜっ!」

 

「もう遅いので明日にしてください」

 

 興奮している伊之助にしのぶが体温計を見ながら止める。

 勝己の体温は三十八度七分だった。

 それだけ体温が上がっていて不調が見られない勝己にしのぶは表情を少し険しくする。

 

「それと竈門少年」

 

「はい!」

 

 呼ばれて驚いていると煉獄が禰豆子の頭に手を置く。

 

「俺は君の妹を鬼殺隊として認める。汽車の中で血を流しながら乗客を鬼から守っているのを見た。誰かを守る為に命を懸けて鬼と戦う者はどんな出自であれ鬼殺隊の一員だ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 妹が認められた。

 その事が嬉しくて頭を下げる炭治郎。

 話が終わると煉獄が勝己の方を見る。

 

「保志少年」

 

「ふあい?」

 

 煎餅を齧りながら返事をする。

 煉獄は、彼にしては珍しく躊躇っている様子だった。

 

「君は、もしもあと十年しか生きられないとしたら、どうする?」

 

 質問の意図が理解出来ずに首をかしげるも、勝己は自分なりに考えて答えた。

 

「別になにも変わらないのでは?」

 

 鬼殺隊は柱ですら運が悪ければ明日には死んでもおかしくないのだ。

 

「剣を取って鬼を倒す。その為に強くなる。やれるところまでやるだけですとも」

 

 日本が明治に変わった頃。名字を付けた。

 たとえ何百年と世代が替わり続けても志を保つ、という意味を込めて保志と名乗ったのだ。

 鬼の居ない世界の為に。

 そして、いつか継国厳勝を────。

 

「それに、十年しかじゃありません。十年もあるんでしょう? やりたいことだって出来ますよ」

 

 勝己にだってやり事くらいある。

 もっと色んな美味しい未知の料理なんかを食べてみたい。

 その為に、いつか外国にだって行ってみたい。

 山を降りて世間に出て、そう思うようになった。

 

「あれ? やっぱり十年は短い?」

 

 考え込む勝己。

 煉獄は自分が未熟なせいで保志勝己の人生を歪めてしまったのではないかと彼なりに責任を感じていた。

 だがそれは、この少年への侮辱にしかならないだろう。

 

「どうやら俺は君を見縊っていたらしい。今の質問は忘れてくれ」

 

「はぁ……」

 

 今年は本当に、頼もしい新人達が来たと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数週間後。

 

 

「き、さまぁああぁああああぁああああっ!! よくも俺の刀をぉおおおおおおぉおおおおっ!!殺してやるぅううぅうううううっ!!」

 

 保志勝己は包丁を持った鋼鐵塚に追いかけられていた。

 

 

 

 

 

勝己と柱の任務で見たいのは?

  • 水柱
  • 岩柱
  • 風柱
  • 恋柱
  • 蛇柱
  • 霞柱
  • 蟲柱
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