同期の竈門炭治郎達が入院している胡蝶の屋敷にやって来た保志勝己。
「あぁ、本当に人間だったんですぇ、伊之助君」
最終選別で斬らなくて良かったとあの時の事を思い返す。
「なんだと思ってたんだテメェ!!」
猪の被り物をして怒る伊之助。
伊之助が誰か判らないのは被り物をしていないせいだと思った善逸が被せてようやく一致した。
炭治郎や善逸ならその優れた嗅覚と聴覚で人か鬼か判断出来るが、勝己違った。
怒る伊之助から意識を逸らす意味も込めて話題を変える。
「十二鬼月と戦いになったと聞きましたけど、よく生きてましたね」
「あ、うん……強かった。禰豆子と義勇さんが居なかったら俺は今頃……」
難しい顔をする炭治郎。
もしも禰豆子が血鬼術に目覚めなかったら。
水柱である冨岡義勇が間に合わなかったら。
自分は今頃鬼に殺されていただろう。
もっと強くならないと、と気を引き締める。
「私は結構遠い村に居たから行けなかったんだよね。炭治郎君達が入院したって知ったのも二日前だったし」
自分で持参したお見舞い品の饅頭を食べながら説明する勝己。
そこで炭治郎が最終選別の時の会話を思い出す。
「そういえば勝己はある鬼を探してるって言ってたけど、もう見つかった?」
「それが中々に。まぁ気長にやりますよ」
「どんな鬼なんだ?」
善逸の疑問に待ってましたと言わんばかりに説明する。
「体長体重変化自在。最高三丈程大きくなる鬼です。音を超える速度で走り、大木素手で引き千切って投げる上に全身にある目玉から常に怪光線を発する。その喉から歌われる美声で人を誘き寄せては獲物を丸呑みするそりゃあ恐ろしい鬼なんです」
「そんな化物と戦わなきゃなんねぇの、鬼殺隊ぃっ!?」
物凄く真面目な表情で話される目的の鬼の説明に善逸がヒィッ!? と両頬を手で押さえながら涙声で絶叫する。
すると勝己が急に天井に視線を向けて。
「だったら面白いなぁっていう想像です」
「この野郎……!」
冗談だという事が判り、血管が浮く善逸
そんな話をしていると、誰かが勝己の肩に手を置く。
「楽しそうですね」
背後から触れられ、声をかけられた事で反射的に刀に手をかける勝己だが、声をかけてきた人物に腕を押さえられた。
「ここは病室ですので、そういう行動は控えてくださいね」
「しのぶさん!」
近づいて来たのが鬼殺隊の者だと判ると、勝己は刀から手を放す。
「すみま、せん……?」
「いえいえ。驚かせてしまったみたいで。それより、炭治郎君と伊之助君の体調はどうですか?」
「あ、はい。もう大分良くなりました」
しのぶの質問に炭治郎はそう返す。
実際、折られた日輪刀が新調されればすぐにでも任務に出られるくらいに回復していた。
「それでは、機能回復訓練に入りましょうか!」
機能回復訓練という聞き慣れない単語。
その後、連れて行かれる炭治郎と伊之助。
「今の人は?」
「あぁ。柱の胡蝶しのぶさんだよ。
「あれが、柱……」
善逸の説明に勝己は緊張を解すように息を吐く。
保志勝己は物心つく前から剣と呼吸法を学び、修得してきた。
だから腕には自信があったし、自分の実力は柱にも引けを取らないと思っていた。
なのに。
(背後から触れられるまで、まったく気配に気づかなかった)
それが慢心だと思い知らされる。
気を引き締めていると、善逸が淋しそうに目尻に涙を浮かべる。
「炭治郎達行っちゃったぉ……俺一人でさみしいじゃんかよぉ」
「添い寝してあげましょうか?」
「なんでだよふざけんな!! 気持わりい奴だなっ!!」
それから任務で数体の鬼を斬り、蝶屋敷に居る炭治郎達へ会いに行く。
蝶屋敷の女の子達から炭治郎が走り込みをしていると聞き、そっちの方に向かった。
「おぉ。頑張ってますね」
「あ、勝己……!」
勝己を見て走り込みを中断する炭治郎。
「邪魔しちゃいましたか?」
「いや、そろそろ休憩しようと思ってたから」
そう言って大きく息を吐く。
勝己は蝶屋敷の女の子に貰ったおにぎりを食べながら話しかける。
「常中の特訓をしてるんですね。あれ大変ですよね」
「常中?」
「全集中の呼吸・常中。技を繰り出す時だけじゃなくて、常に全集中をする基本技術のひとつです。これが出来ると出来ないとじゃ、持久力や戦闘時の動きが段違いになります」
「あ、うん。訓練でカナヲに全然勝てなくって。どうしてだろうって思ってたら、なほちゃんきよちゃんすみちゃんの三人が教えてくれたんだ。勝己は出来るの?」
「出来ますよぉ。というか、今もやってます……すっぱ〜! でもおいしい!」
おにぎりの具に入ってた梅干しに口をバツ印になる勝己。
「まだ俺の肺が弱くて全集中を少しでも長くするとすぐに色んなところが痛くなっちゃって」
「分かります。私もその修行をしてた時は辛かったですから。でも慣れてくるとトントンで意識しないでも出来るようになってますよ。歩くのと一緒です。それくらい自然になったら、格段に強くなってます。普通の呼吸から全集中の呼吸に切り換えるのも無駄が多い証拠ですから」
全集中の呼吸を意識するのはそれだけ集中力を割いている。
それ自体が戦闘中の隙になりかねない。
炭治郎が感心していると、勝己が話を変える。
「ところで善逸君と伊之助君は? 別のところで修行中ですか?」
「あ〜二人は……」
炭治郎が言うには、機能回復訓練でカナヲにまったく歯が立たず、伊之助は不貞腐れ、善逸は諦めてしまった。
そう話すと勝己は困ったように腕を組む。
「怠けると、動きはすぐに劣化しますし、成長はありません。やっぱりコツコツ修行を続けるのが一番強くなる近道だと思うんですけどね。私だって基本の修行は欠かしてませんよ」
鬼を退治しながらも、勝己自身、鍛える為の時間は取っている。
そうでなければいつまでも強くなれないし、先へは進めないから。
「あぁ。だから俺が早く出来るようになって二人にも教えてあげるんだ」
炭治郎が出来るようになれば二人も続いてくれると信じている。
その言葉は自分だけ強くなる事ばかり考えていた勝己には少し新鮮だった。
「頑張ってください。肺を強くして常中を覚えるのはあくまでもきっかけです。大切なのは正しい呼吸と正しい身体の動き。それを極めれば、ずっと動く事が出来ます」
「その言葉……」
かつて炭治郎の父が同じ事を言っていた。
竈門家に伝わるヒノカミ神楽。
それを日の出まで舞っていた父が口にしていたのと同じ。
「ねぇ────」
質問しようとすると、勝己の鴉が彼の腕に留まる。
「任務ー! 新タナ任務を伝エルー! 北東ニ鬼ノ出現情報アリー! 他ノ隊士ト共ニ直チニ現地ヘ向カウベシー!」
「うわぁもう? 私、今戻って来たばかりなのに」
あまり任務の多さにちょっと辟易する勝己。
流石にこれで聞ける状況ではなく、炭治郎は後回しにする事にした。
「勝己、気をつけて」
「はい。炭治郎君も常中の修得頑張ってください」
そう言って勝己は鴉の案内について行った。
山暮らしだった勝己は基本方向音痴である。
鴉が案内してくれないと目的地に着く事は先ず無い。
という理由で頭に乗せた鴉に誘導されながら他の隊士との待ち合わせ場所に着くと、男女一名ずつの隊士が待っていた。
「遅れましたか?」
「いや、俺はたまたま近くに居ただけだから。一応今回二人の引率というか、指示役に選ばれた村田だ。よろしくな!」
人の良さそうな上官に勝己は笑顔で自己紹介する。
「保志勝己です。こっちこそよろしくお願いします」
勝己がもう一人の少女に視線を向けると小さな笑みのまま名乗った。
「栗花落カナヲ、です……」
※まだパワハラ会議前です。
勝己とカナヲだけだと話作りが大変なので村田さんを急遽追加しました。
勝己と柱の任務で見たいのは?
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