「え! カナヲ居ないんですか?」
全集中の呼吸・常中の維持時間はまだ拙いので、訓練に挑む訳ではないが、同じ鬼殺隊の同期だし、少しでも話が出来たらと思ってたところに、しのぶから任務で不在と説明された。
「今回は少し遠くにある村の住人が全員姿を消したという情報が入りまして。前回の那田蜘蛛山同様に多くの隊士を参加させるのだとか」
炭治郎の診察をしながら疑問に答えていく。
「ここ最近の隊士の質の低下が柱の間で問題視されてまして。こうした大きな案件を複数の隊士に任せてみようという話になったんです。前回のように鬼が徒党を組んでたり、十二鬼月のような強い鬼が居る可能性も踏まえて、今回は柱を一人待機させてます」
柱が出張れば高確率で鬼は退治出来るが、それではいつまでも隊士達が育たない。
そもそも柱ですら一年以上勤め上げられる者すら少ないのだ。
それが鬼と人間の力の差であり、鬼殺隊の現状。
話を聞いて炭治郎は自分がこの場で休んでいる事が申し訳なくなってきた。
全集中の呼吸・常中もまだ不完全で、新しい日輪刀もこの手にない。
どうしようもないと思いつつも、なにか出来る事を探してしまう。
「柱が待機してるという話ですけど、誰が?」
「不死川さんです」
「え?」
しのぶの返答に炭治郎は、イの一番に飛び出しそうだな、と失礼な事を思った。
今回の任務で集められた鬼殺隊士は十二人の四小隊と柱一名の計十三人。
そして周囲に一般人が来ないように見張る隠が何名か訪れていた。
「いいか。つべこべ言うつもりはねぇ。鬼を見つけたら頸を斬れ。それだけだ」
単純明快な風柱の言葉に隊士達は緊張で強張り、その表情は怯えが滲んでいる。
そんな隊士達を見て不死川実弥は舌打ちした。
鬼を恐れているのか、柱である自分を恐れているのかは定かではないが、どちらにせよ情けない事には変わりない。
近年、隊士の質の低下の深刻さを改めて実感する。
いっその事、自分一人が村に行ってとっとと鬼を斬り捨てて来ようかという考えが頭を過るが、柱会議で今後、柱の負担を減らす意味でも隊士の育成に力を注ぐ必要があった。
短気なのは自覚しているが、会議で決まった事を考え無しに逆らうつもりも無かった
だがそれにしても思った以上に頼りない。
故に苛立ちが増していく。
「ん?」
そこで不自然な隊士を見つける。
背丈が低く、女みたいな顔をした若い隊士。
年の頃は霞柱の時透無一郎と同じくらいだろうか。
前に並ぶ隊士に隠れて見えなかったが、その隊士は一人、何故かおはぎを食っていた。
あま~い! などと言いながら幸せそうに食っている。
「ってなにやってんだテメェ!!」
そう怒鳴ると、怒鳴られている張本人は不思議そうな顔で左右を見たが、すぐに興味を失くして二つ目のおはぎを食べ始めた。
「食べんのやめろ! なめてんのか!!」
そこでようやく自分が指名されている事に気付いた様子で口におはぎを突っ込んだ状態で動きが止まる。
「ごふゅふぇふほぼぶべぼ!」
「口に物入れたまま喋んな! 呑み込め!」
すると、小柄な隊士は全集中の呼吸の応用で顎の運動能力を強化したのか、物凄い速度でおはぎを噛み続けて胃に収める。
そんな何の意味の無い高等技術をやった後に不死川を見上げて首を傾げている。
不死川はその隊士の頭を鷲掴みにした。
「テメェ、これから鬼を殺しに行くってのに随分と余裕じゃねぇか。危なくなったら助けてもらえると思ってんのか? あぁっ!」
先程までの萎縮した隊士達に苛立ったがコイツには別の苛立ちが沸く。
もしも危険が及んだら柱が助けてくれると高を括っての態度なら今すぐ鬼殺隊から叩き出すつもりだ。
不死川に睨まれているのに、小柄な隊士はなおも不思議そうに見つめてくる。
「私があの村に居る鬼より弱いなら殺されるだけですが、私が強いなら鬼の頸を斬って終わりです」
気負う様子もなく自然体でそう答える。
「大体、今からジタバタしても急に強くなれる訳でなし、です。緊張しても仕方ないでしょう?」
人間はそう簡単には強くならない。
強くなるにはそれなりの時間が必要だ。
ただ、目の前の少年が柱をアテにしている訳ではないと感じた。
興が削がれ、頭を鷲掴みにしていた手を離す。
「チッ。生意気なことを言いやがる。精々口だけじゃないところを見せるんだな。それと、こういう場で食ってんじゃねぇ! 任務が終ってから食え!」
不死川がそう言うと、少年は腰に下げている小さな鞄からもう一つ同じおはぎの包みを見せた。
「ちゃんと鬼を斬った後の自分へのご褒美用に取ってあります」
ムフーとドヤ顔する少年。
やっぱりイラッとしたので一発殴っといた。
村にやって来た鬼殺隊の連中を離れた所から見る。
保存食もそろそろ無くなりそうだったので、鬼殺隊の来訪は彼にとって望むところだった。
「あぁ……女が居るのか」
力をつけるなら稀血が一番だが、そうそう見つかる者でもない。
それに比べて女はそこら中に居り、そして捕まえ易い。
子を産み落とす力を持つ女の肉は男よりも効率良く鬼を強くしてくれる。
それも鬼殺隊に所属する女なら、より一層味も栄養も上質だろう。
今回の獲物は運が良いと鬼は口元をつり上げた。
「なにやってんだよお前ぇ……!」
無人の村に入ると村田が泣きそうな顔で勝己に詰め寄る。
「なにがですか?」
「柱に対してあの態度だよぉ! こっち心臓が止まるかと思っただろ!!」
村の中に三小隊、地下の水源に一小隊が配置されて行動している。
まだ鬼は見つかってない。
村田からしたら、保志勝己は話しやすい少年だった。
もう一人の栗花落カナヲが話しかける度に銅貨を投げて反応を返すのか決めたりと、なんで俺がこの二人の面倒を? と早くも思い初めていた。
「小腹が空いたんです。流石に村に入ってから食べるのは危ないですから」
「そうかよ! でも俺は我慢するって選択肢を足して欲しいけどな!」
と、声を上げる村田に周囲の厳しい視線が突き刺さる。
「少し前にもこの村に隊士が訪れたんですよね?」
「……あぁ、
かなり階級が上の隊士二名が既に殺されている可能性がある。
その事実に勝己は意識を研ぎ澄ます。
「とにかく、俺達も警戒を緩めずに────」
勝己とカナヲの方を向いて警告する村田の後ろから突然複数の人型のなにかが落ちてきた。
「へ?」
村田が敵の方を向くより早く勝己とカナヲが動く。
「月の呼吸、壱ノ型」
「花の呼吸、肆ノ型」
────斬月"
────"紅花衣"
二人が振るった技がそれぞれの敵を斬る。
(鬼じゃない)
斬り捨てた人型は形を崩し、数枚の葉へと変化する。
血鬼術で作られた人型なのだろう。
「うわぁああっ!!」
そこから次々と人型が現れて隊士達に襲いかかる。
勝己が即座に走る。
「月の呼吸、肆ノ型"月華美刃"」
連続で刀を振るいつつ、一太刀で人型共を斬り伏せていく。
(五枚、四枚、七枚、九枚……)
使われている葉の枚数に応じて人型の強さが変化していた。
数が多ければ多い程に強く、硬い。
「大丈夫ですか?」
「あ、あぁ……」
やられそうになっていた隊士に声をかける。
「葉っぱを触媒に手下を生み出す血鬼術ですかね。少し厄介です」
この村にはそこら中に葉が落ちている。
無限に敵を生み出せる可能性があるのだ。
救いなのは、ここに居る隊士達でも人型を相手に引けを取ってないところか。
「それにしても……」
その中でもカナヲは他の隊士達よりも早く次々と人型を斬り捨てていく。
それでも現れる人型の数が多くなっていく。
一番敵が集まっている所へと走る勝己。
「月の呼吸────」
技を繰り出そうとすると、人型とは違うなにかが勝己を蹴り飛ばした。
「っ!」
蹴り飛ばされた勝己は体勢を変えてその先にある家の壁を足場にしようとする。
「月の呼吸、捌ノ────かぐんっ!?」
しかし、家の壁板が古く腐っていたらしく、衝撃に耐え切れずに壊れ、家の中に転がり込んだ。
「俺の蹴り対して咄嗟に跳んで威力を軽減させたか。まぁいい。すぐにこの女を食ってあのガキも喰い殺してやる」
カナヲの方を見たのは、顔に大きな傷のある鬼だった。
その瞳を見て、隊士達が震え上がる。
「そんな……下弦の、参……!?」
血鬼術は当然オリ設定。
勝己と柱の任務で見たいのは?
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