「ただいま。」
「お、おかえりなさい!」
帰宅するなりキュリンが駆け寄ってくる
「お怪我とかしてませんよね?大丈夫ですよね...?」
「大丈夫だ。」
一通り俺の身体を見回し、強張っていた顔が少し綻ぶ
「よ...良かったぁ...。」
「誰か来たりしたか?」
「えっ...と、静かでしたし、誰も来ていないはずです。」
「そうか。」
バッグを下ろす
ネズミ2人分の重さでドスンと音をあげる
「...これは...?」
「...。」
もはや見慣れ、日常になった物体だが、キュリンには刺激が強すぎるかもしれない
見せないほうが良いだろう
すぐバッグを背負い直し、自室に向かう
解体はそっちでしよう
「フォルケさん...?」
「見るな。」
「っぁ...は、はい...。」
扉を閉め、薄暗い電球の下でナイフを握り、バッグを開く
皮を剥ぎ、肉を切り分け、内臓を取り出し、骨を外す
皮と骨は乾燥させれば値が付く
内臓は鮮度が大事 袋詰めにして、あとで店売りに行く
最後に肉をさらに切り分けてから部位ごとに袋に詰めて、冷凍庫に入れる
これで手に入るのが食料と、一人当たり大体4万眼の現金
命の値段と考えれば安いかもしれないが、そういうものだ
気にしている余裕なんか無いだろう
今も、今までも、これからも
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キュリンを拾ってから、大体三ヶ月だろうか
生活が安定し初めた
金を貯め始め、食料を常備でき、自衛も3人程度なら全く問題ない
代わりに都市怪談から都市伝説にされてしまった
フィクサー三人に対し、二人殺して生存というのは都市怪談では済まないらしい
そのせいかフィクサーと戦うことが増え、むしろネズミを狩ることは少なくなった
ネズミより質がいいし、服や武器も金になる
案外悪くはない
それも勝てたり、逃走できているからに尽きるが
肉の焼ける音がする
これは少し前に狩ったフィクサーの二の腕だったかな
最近気がかりなのはキュリンだ
どこか目を逸らすことが多くなったし、何かを言わんとして口ごもっているように見える
フライパンを振り、輪切りのようになっているソレをひっくり返す
今は裏路地の夜すら過ぎた深夜...いや、朝4時
最近はこの時間が飯の時間だ
人肉をためらい無く焼いて食ってるところなんて、キュリンには見せられないからな
両面が焼けたらあとは側面
俺からキュリンに何かした記憶はないし、特別嫌われてるわけでもなさそうなのが分からない
昨日だって鍛練中に冷蔵庫から水を持ってきてくれた
中まで火が通っていることを確認する
考え事はここまでにして、焼き上がった
少し癖のあるが普通の肉の匂い
...いや、そういえば普通の肉は買ったことがないな
とにかく焼き上がった肉をトングで掴み、齧る
少し固いがまあまあ美味い
何グラムかなんて計ってないが、すぐに食べ切ってしまう
戦闘を行えば、当然疲れて腹だって減る
そこに火を通した温かい食料というのは、かなり沁みる
キュリンにも味わって欲し──...それは、違う
俺とは違う意思が漏れるような感覚
最近からだと思っていたが、よくよく思い返せばかなり前からだった
あの温かく冷徹で、安心感と不快感で全てを抱擁する声のせいではない
コレは、
だからこそ余計タチが悪い
否定し切るには、あまりにも
自由で、羨ましく思ってしまうから
やっと自覚してくれた
最近はフォルケくんをマエストロにしたりウサギにしたり朱色の野人にしたり、キュリンちゃんをT社徴収職にしたり長姉にしたり灰色の窮鼠にしたりして遊んでる