何かが足りない
何かを欲している
一体その『何か』がわからない
水は飲んだ
飯も食べた
今更殺しに抵抗は無い
お金だって無いわけじゃない
俺は、何が不満なんだ?
...!横の路地!
右腕を落とすように刃物が振り降ろされる
腕こそ無事だが左肩に浅い切り傷をもらってしまった
ッ...最悪だ、油断した
血を被ったエプロンを着て、肉切り包丁を持った体格のいい集団
畜産業者か
「今のは切り落とせると思ったんだがなぁ。」
「でも当たりはしたんだろ?良いじゃねぇか、そっちのほうが美味しくなる。」
増援がなければ2人
逃げる隙をどうにか作れるか...?
肩の止血もしたいがそんな余裕はないな
「一撃で殺すな...たっぷり苦しませろ。」
「わかってるよぉ。」
言葉こそ間延びしてるが動きは早い
肉切り包丁を避けたりこっちの剣で受け止めたり弾いたり
相手のほうが身長が高いせいで常に上から振り下ろされるのがかなりキツイ
「なかなかしぶといねぇ。でもいい顔だぁ...苦しそうで、美味しそう...。」
「気持ち、悪い...!」
受け止めるとき、片手じゃ力負けするから両手が必須
長い時間受け止め続けるのも悪手だ
もう一人に対して隙をさらすことになる
力を込めるたび左肩から痛みと血が溢れる
長期戦はダメだ
少しでも隙を作れ
そして一撃で刈り取れ
ここだ
包丁を受け止め
剣の右側を押し上げ流す
甲高い音を立てながら剣の上から包丁が滑り落ちる
「あっ」
体制を崩し、降りてきた頭を
切り落とす
ほとんど抵抗無く落とされた頭が地面に転がり
切断面を晒した首から血が吹き出し、左半身に降りかかる
とてつもなく濃い血の匂い
肌についた血が落ちること無く伸びていく
「ハア...ハァ..ハッ、ハッ、」
息が荒くなる
何故か動悸が止まらない
震える血まみれの左手を閉じたり開いたりし...
開くたびに指の間にできる赤い糸から目が離せなくなる
ああ、コレだったんだ...
「なんだ?殺しは初めてだったのか?」
...まだ
包丁が上から振り下ろされる
戦い方は同じか
横に回避してから追げ...危ない
「チッ、ちょこまかと...!」
余った左腕で殴ろうとしてきやがった
さっきの奴より隙がない
「こんだけ手強いなら...良い肉質に違いないな!」
包丁を握り、やたらめったらに振り回してくる
刃先の刺突、刃による斬撃、峰による打撃
様々な振り方で俺を
反撃するタイミングこそ無いが全て受けれている
膠着状態というやつだろう
そういえば、さっきなんか言ってたな
『手強いなら良い肉質に違いない』って
そんな事、今言わないでくれよ
止まれなくなるじゃないか
突き出された包丁を受け流し
引き戻されるより早く剣を翻し
右手首を切り飛ばす
「ッあああ!」
痛みで仰け反ったところを左腕を肩から切り離す
振り下ろした剣をそのまま水平にして
左に振り抜く
「ーーー!」
消えた左腕
手首のない右腕
腿のみの両足
すべての切断面から止まること無く血が溢れ出し
もはや動くことすらままならなくなっている
「あ、あああ...」
それでもまだ生きているらしい
良かった
剣を右肩ごと突き刺し、地面に繋ぎ止める
「もう、殺してくれ...」
なにか言ったようだがそんなことはどうでもいい
両足で足を踏みしめ
両肩を手で握りしめ
四つ足の獣のような体勢で乗りかかる
目の前には忙しなく空気を運ぶ喉笛
もう我慢出来ない
「...いただきます。」
「ッ!?嘘だろ!?待て!辞め
あらぁ^〜