何も考えずに伸ばした手は彼女の肩を掴んだ。
振り向いた彼女の淡い紫の瞳に、真っ直ぐ見据えられる。そこに、特に感情は乗っかっていなかった。
呼び止めたとき、自分自身で驚くくらい焦った声が出て慌てて口を開く
「久しぶりやなぁ、俺んこと覚えとる? 昔、1回だけ会うたよね」
「髪、染めたんだね……覚えてるよ、直哉くんでしょ」
覚えられていて少し安心したが、彼女の声には懐かしさとか喜びとか、そういう温度はなかった。
『知り合いに話し掛けられたから答えた』だけの、平坦な声。
……何やねん、その態度
「なんで君、東京行ったん」
「…京都にいたくなかったから」
「はぁ? なんでや」
「なんでも」
あんたに言うつもりなんてない、とでも言わんばかりに彼女は静かに目を伏せた。
どうしてか目が離せない。この距離感が落ち着かなくて、妙に腹立たしい
「……っ」
なにか言おうと思ったけれど、言いたいことと感情がぐちゃぐちゃと絡まって、やがて沈んだ
「美夜ぁー!! そろそろミーティング始まるよー!!」
「あっ、灰原… 今行く!!」
東京校の1年だろう、灰原と呼ばれた青年に返す彼女の声は、明らかに俺に返す声色より明るかった
「それじゃあ、また後でね」
「…ん」
俺ばかり妙に落ち着かなくて、イライラする。俺のことなんて興味なさそうに、軽く会釈して歩き出した
「あっ」
「あ?」
「今日は暑いから、京都校のみんなに気を付けてって言っておいて」
「覚えとったらな」
「……それと、"交流会は
相変わらず、生意気言いやがって。俺の胸中が晴れた訳ではないが、自然と口角は上がっていた
「はっ、上等や」
「お前、直哉となに話してたの」
戻った直後、悟さんにそう聞かれた
「べつに、久しぶりって挨拶してただけ」
「あいつもクズって有名だろ、気を付けろよ」
「ちょっと硝子、こっち見ながらクズとか言わないでもらっていい?」
「心配いりませんよ、家入さん。もう、
初対面から今日まで1回も会ってないから、さすがに薄れてはいたけどさっきの後追い発動で術式の発動条件は満たしてる
「さすが…抜かりないね」
「ありがとうございます、夏油さん」
「やられる直哉さんの方は、想像以上に嫌でしょうね」
「あの性格だと、尚更ね」
七海の言葉に、苦笑して返した
「あの人がわたしの所に来るようには煽っておいたし、みんなは呪霊狩りに集中できると思うよ」
「美夜の術式は強いからね! きっと上手くいくよ」
「買い被り過ぎだよ、灰原。わたしの術式はべつに──」
「
「…ありがとう」
悟さんとみんなにも掛けた、わたしの術式が動くのを感じた