これは、支配でも服従でもない   作:榊 時雨

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幼魚と逆鉢 弐

記録────

2018年9月、神奈川県川崎市 キネマシネマ

その映画館にて、上映終了後に男子高校生3名の変死体を従業員が発見

死因 頭部変形による脳圧上昇、呼吸麻痺

 


 

「いやぁ、すごかったね…あの変死体。あそこまでの変形は初めて見たかも」

「そうですね、人間をどう弄ればああなるのか…」

「…あんま考えたくないね」

 

わたしは補助監督の伊地知くんの運転で、被害者3人以外で映画館にいたという1人の少年の身元を追っていた。

警察と協力することで、もしその少年が犯人であれば現場に残っていた残穢で判別できる

 

「あっ、そうだ伊地知くん、悟さんと七海が酷い話聞いてよ」

「酷い?」

「わたしの男の趣味が悪いって」

「ああ……まぁ、悪いとは言いませんけど…」

 

伊地知くんもちょっと納得してる……ええぇ、ショックかも…

 

「直哉とわたしが付き合ってるって知ったとき、そんなに驚いた?」

「五条さん達から、彼がどんな人か聞いていたので…それなりには」

「悟さん、直哉のこと何て言ってたの?」

「あの人はクズって言ってましたね、家入さんはもっと酷かったな…『クズとカスを足して2乗』みたいな感じだったかと」

「はははっ、何だそりゃ」

「否定はしないんですね…」

「割とクズなところあるからね、直哉」

 


 

「はあぁ!? 改造された人間に襲われたァ!?」

 

高専に戻った後、被害者以外に映画館にいた少年──吉野順平について、警察の資料と照らし合わせながら書類にまとめていたら七海から電話が入った

 

「何それ、大丈夫だったの?」

『能力としては3〜4級程度でした、問題ありません』

「映画館の3人みたいに、術式で無理に弄られてたってこと? それだけなら人間って気付けるんじゃ…」

『問題はそこです、家入さんによると術式で脳幹辺りを弄られた形跡があったそうで。

脳まで弄ることができるのなら、非術師を呪力が扱えるようにすることも可能なのかもしれない…と』

「なるほどね。まだ脳と呪力の関係ってよく分かってないし、ただ戦えるようにするだけならできる可能性もあるのか」

『そういうことです』

「あ、そうだ」

『はい?』

 

改造された人間と言えど、最初は呪霊だと思って祓おうとしたハズだ。それ自体は全くおかしくない、が

 

「虎杖くんは、大丈夫? 変に罪悪感とか感じてない? そういうの気にする子だって、悟さんから聞いたんだけど」

 

悟さんは、虎杖くんを真っ直ぐな子だと言っていた。実際、ついこの前まで普通の高校生だったんだ。

わたしも彼と話してみて、真っ直ぐで素直で明るい子なんだと、しっかり分かった

 

『…家入さんがフォローを入れてくれたので大丈夫だと思います、実際に彼のせいではありませんしね』

「うん、ならよかった」

 

さすが家入さんだ、わたしが心配するまでもなかったみたいだ。安心して、わたしは七海との電話を切った

 

「にしても……なかなかに趣味の悪いヤツがいるみたいだね」

 

相当な技術のある相手だ、気を引き締めていかないとね

 

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