ようこそ格闘女王のいる教室へ   作:デュラ様

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第12話

 

 

 

 

 

 無人島特別試験1日目AM。

 

 まったくやる気のないオレ達クラス茶柱は、島の集合場所でもある浜辺にポツンと取り残されていた。

 

 すでに試験は開始されている。

 

 とっくに試験は始まっていて他のクラスはとっくに島の中に入っていったにも関わらず、それでもオレ達だけがまだ動かないでいた。

 

 それはなぜかというとルールを聞いてなかったからだ。

 

 Aクラス担任の真嶋は確かにちゃんと説明した。

 

 この無人島で行われる特別試験の内容をすべて。

 

 だがマッサージを受けた直後で半分寝ていたオレ達はまともに話を聞いておらず、今茶柱に2度目の説明を要求している。

 

 

 

「まったくお前らは気が緩みすぎだ! 次はないからしっかり聞けよ」

 

 

 

 もちろん茶柱は怒りプンプンだ。

 

 プンプンして大きな胸がジャージの中で大暴れしてる。

 

 それをオレは凝視してる。

 

 ただの観察だ。

 

 茶柱の胸を真面目に観察してる。

 

 あの大暴れしてる胸を必死で抑えてるジャージのチャックはきっと悲鳴を上げてるんだろうな。

 

 今日はジャージだが、スーツの時のシャツのボタンも同様だろう。

 

 巨乳という過酷な労働環境下じゃストレスも溜まるだろうに。

 

 そんな中でも露出を防ぐために必死に耐えているお前たちには同情しか湧かない。

 

 なんとも可哀そうな話だ。

 

 だが可愛い話でもある。

 

 みんなプンプンしてる茶柱が可愛くてほっこりしてるからな。

 

 眠気覚ましに浴びた潮風のおかげで、ようやく頭も回り始めてきたようだ。

 

 そんなオレ達のふざけた姿を見た茶柱は怒るのすらやめて、感情をなくした状態で説明を開始する。

 

 オレは真嶋の話を覚えているが、眠かったのも事実なので茶柱から伝えられているルールを再度確認していた。

 

 ルールは以下の通りだ。

 

 

 

 まず、各クラスには300ポイントが支給される。そのポイントで必要な物資を調達しながら一週間を無人島で過ごす。

 

 一週間の試験終了後に残ったポイントがそのままCPに変換される。

 

 試験期間中に怪我や体調不良者が出てリタイアした者がいた場合は、ペナルティとして1人につきマイナス30ポイント。

 

 他クラスへの暴力行為、略奪行為、器物破損などを行った場合もペナルティの対象。その場合は対象者の所属するクラスは即失格となる。また対象者のプライベートポイントも全て没収される。

 

 毎日午前8時及び午後8時に点呼が行われ、それに参加しない生徒がいた場合もペナルティ。

 

 島の至る所にスポットというものが存在しており、そのスポットを占有したクラスが使用権を得る。そしてスポットを占有する度に1ポイントが与えられる。スポットの占有はリーダーに決定した生徒だけができ、その効果時間は8時間。

 

 正当な理由なくリーダーの変更はできない。

 

 そして最も重要なのが最終日のリーダー当て。7日目の最終日に他クラスのリーダーを言い当てられれば50ポイントのボーナス。逆に外してしまうとマイナス50ポイント。他クラスから自クラスのリーダーを当てられてもマイナス50ポイント。同時にスポット占有で得た全ポイントも無効となる。

 

 なお、試験中の生徒は監視兼体調計測を兼ねた最先端スマートウォッチを装着しなければならず、スマホやその他貴重品は持ち物検査によりすでに取り上げられている。

 

 その他にも状況に合わせて様々なルールが適用される。

 

 

  

 ……だそうだ。

 

 このルールを聞いたオレの所感としては、面倒くさそうな試験だなということくらいしか思い浮かばない。

 

 一週間のサバイバル生活というのがまず大変そうだな。

 

 当たり前だが今は夏だ。

 

 ジリジリと照りつける太陽、肌にまとわりつく湿気、容赦なく襲い掛かる蚊の大群。

 

 

 

「なんなのこの試験。普通に無理なんだけど」

 

「ホントだよね。しかもペンションなんてどこにもないじゃん」

 

 

 

 女子たちから不満の声が上がっている。

 

 それもそのはず。茶柱からは無人島でバカンス(大嘘)する際、寝泊りはペンションで行うと聞かされていたからだ。

 

 だが実際にはそれすらも嘘だったらしい。

 

 

 

 

 

――ようこそ全力で生徒を騙す教室へ(完)――

 

 

 

 

 

 そんなわけはないから、試験の考察を続ける。

 

 ネットから隔絶された状態で、しかもこんな暑いときに無人島での野宿を一週間もするなんてのは無理な気もするが、オレ達に拒否権はないからな。

 

 物資購入マニュアルを見る限りでは所持ポイントをどれだけ上手に使って過ごしても、残りそうなのは最大200って所か。

 

 スポット占有のポイントがもっと高ければやる気も出そうだが、1つのスポットで一週間後の正午までに得られるポイントが最大でも20ポイント。

 

 それが何か所あるのか知らないが、リーダーしか占有できないならそんなに数多く占有できるわけでもない。

 

 こちらも最大で200くらいだろうな。

 

 仮に一週間頑張って節約サバイバルして、スポットも最大限占有して、そこまでして得られるポイントが400CPくらい。

 

 それは別に悪くないんだが、最終日のリーダー当てのポイント配分が大きすぎるな。

 

 全クラスのリーダーを当てればプラス150ポイントだが、逆に全部外したらマイナス150ポイント。さらに他クラス全てから当てられたらマイナス300になった挙句スポット占有ポイントが無効になる。

 

 つまりリーダー当て次第では、頑張ってサバイバル生活して得たポイント全てが最終日に消えてなくなる可能性もあり得るという事だ。

 

 中でも一番ヤバいのは、どこか1クラスにリーダー指名成功されただけでもスポット占有ポイントが無効になってしまう事。

 

 このリーダー当てのルール酷すぎないか? と感じるほどの一発逆転謎ルール。

 

 まあクラス間競争を激化させるためにはこういう特殊な試験も必要なんだろうけどな。

 

 ちなみにだが、ポイントがマイナスになることはない。

 

 ゼロポイント以下はどれだけペナルティを食らおうとダメージゼロなわけだ。

 

 いずれにしろこれは博打だな。

 

 リーダー当ての相手が他クラスである以上、正式な取引でもしない限り確実にポイントを残す方法など存在しない。

 

 それに取引するにしても獲得できるポイントの代わりに、こちらも何かを差し出さなければならない。

 

 すでに仕込ませてる他クラスへのスパイを使ってもいいが、今はスマホ取り上げられてるしな……

 

 決断するなら早い方がよさそうだ。

 

 そう思ったオレは、春麗に近づいて耳打ちをした。

 

 

 

「早々に試験をリタイアするのも有りだぞ。物資だけ購入して他のクラスに売りつけてPPあたりと交換してもらえば、少なくとも損せずに残りの時間を豪華客船で過ごせる」

 

「う~ん……それは私も考えたけど、ルール上ではリーダーは簡単にリタイアできそうにないのがネックよね」

 

「そんなの別にどうとでもなりそうな気がするけどな。なんならオレがリーダーになって上手くリタイアしてもいい」

 

「そういう問題じゃないわよ。この試験はどう考えても集団戦なんだから、誰であっても1人だけ残してみんなは楽して豪遊なんてありえないわ」

 

 

 

 春麗も同じことを考えたようだが、あまりお気に召さないらしい。

 

 確かにクラスの団結力を試す試験でもあるが、それを台無しにする試験でもある。

 

 別にそんなチームワークにこだわる必要があるようには見えないが、コイツらしいと言えばコイツらしい考え方だな。

 

 そうやってオレ達はここまで進んできたわけだし。

 

 

 

「じゃあみんなに聞いてみるのはどうだ? これは集団戦なんだろ?」

 

「そうね。そうするわ」

 

 

 

 そうして春麗はクラス全員にリタイアするのはどうかと確認したが、結果は半々となった。

 

 とりあえず豪華客船に戻ってバカンスを楽しみたい連中が半分。

 

 豪華客船もある程度は満喫したし、特別試験にチャレンジしてもいいんじゃないかというのが半分。

 

 意見が真っ二つに分かれたので、春麗の意向によりチャレンジするだけチャレンジすることになった。

 

 まあ、物資だけ購入して面倒臭くなったらリタイアすればいいしな。

 

 そしてリーダーの人選も春麗により行われる。

 

 

 

「リーダーは彼女でお願いします」

 

「分かった。では――はこっちに来い。リーダー専用のキーカードにお前を登録する。同時にスポット占有のやり方も教えるから聞き逃さないようにしろ」

 

 

 

 リーダーに任命されたアイツは茶柱とともにここを離れた。

 

 その人選の意味はなんとなく分かったが、恐らく()()()()()()()()()()

 

 春麗は先を見据えている。

 

 この試験だけでなく、その後のことまで。

 

 いずれにしろ、これでようやくオレ達の無人島特別試験が始まることになったわけだ。

 

 ここまで随分と時間がかかったな。

 

 自業自得だが他クラスから圧倒的に後れを取ってるのは間違いないだろう。

 

 とはいえ焦っても仕方ない。

 

 まずは体力に自信のある奴だけが島の中に偵察に行くことになり、残された人間はなんの物資を購入するかの話し合い。

 

 アウトドアの知識に詳しい池を中心にして話し合いが行われるようだ。

 

 普段はバカばかりやっている池だが、こういう時には意外と頼りになる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 クラスメイトから頼られることなんて滅多にない池だから、ここぞとばかりに張り切ってるな。

 

 若干不安だが、ここは任せるとしよう。

 

 もちろんオレと春麗は偵察部隊で、その他数人とともに島の中に消えていくのだった。 

 

 

 

 

 

 ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

 偵察部隊として森の中を進んでいくと、洞窟があるのを発見した。

 

 岩肌がむき出しになった崖の中腹に、ぽっかりと口を開けた空洞。

 

 中は薄暗いが、奥行きはそれなりにありそうだ。

 

 当たり前だが無人島は屋外なので雨風は凌げない。

 

 だからここは使えそうだなと思ったがどうやら先客がいたらしい。

 

 洞窟の中から誰かが出てくるのが見えたため、中に入るのを諦めて森に身を潜める。

 

 

 

(アイツらはAクラスか……)

 

 

 

 洞窟から出てきたのはAクラスの葛城と戸塚という男子生徒2人。

 

 葛城康平。スキンヘッドが特徴的な、高校生とは思えないほど貫禄のある男だ。Aクラスの中でもリーダー格として知られている。

 

 戸塚弥彦。緑色の短髪で、そんな葛城をリーダーとして慕っているらしい。

 

 入学から4か月も経過してるので、さすがに1年生はすべて顔と名前を覚えてる。特にAクラスは神室がいるおかげで情報が豊富だ。

 

 だから洞窟から出てきた2人もすぐにどこのどいつか、またどんな奴なのかすぐに分かったわけだが、驚くべきことに葛城の手にはリーダー専用のキーカードが握られていた。

 

 

 

「この大きさの洞窟があればテントは2つで充分ですね葛城さん。それにしても運が良かったですね。こんなに早くスポットを押さえられるなんて」

 

「運? お前は今まで何を見ていた。ここに洞窟があるのは上陸前から目星がついていたぞ。それと言動には気をつけろ。どこで誰が聞き耳を立てているか分からないんだ。これからは些細なミスもしないように心がけろ」

 

 

 

 どうやらAクラスは試験開始前からここに目をつけていて、一目散に拠点として確保に向かったらしい。

 

 さすがは優秀なAクラスだ。

 

 遊び惚けてたオレ達とは大違いだな。

 

 おかげで雨風凌げる優良スポットはやつらのものに渡ってしまった。

 

 しかし、なるほどな。

 

 どうやらAクラスのリーダーは戸塚らしい。

 

 なにやらスポット占有したことがミスであるかのような言い方を葛城はしているが、スポット占有自体がミスになるような要素はない。

 

 どちらかと言うと迂闘にスポット占有した戸塚を葛城が責めてるように聞こえる。

 

 という事はリーダーである戸塚がリーダー当てのルールを忘れて迂闘にスポット占有したことを叱責し、キーカードを取り上げたという状況が今のようだな。

 

 洞窟は抑えられなかったが、コレはいい拾い物をしたようだ。

 

 結構遠くまで来たし、いったん帰って報告するか。

 

 

 

 

 

 ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

 偵察組が集合地点に戻り、再度クラス全体で話し合いが行われた。

 

 一応全クラスの拠点を把握することに成功し、その報告から入るようだ。

 

 まずAクラス、葛城クラス。拠点は洞窟。中の様子は不明。スポット占有も順調に行っている模様。リーダーは戸塚が濃厚。

 

 次にCクラス、一之瀬クラス。拠点は森の中。スポット占有より拠点の設営を優先している模様。リーダーは不明。

 

 最後にDクラス、龍園クラス。拠点は開けたビーチ。すでにポイントが尽きるレベルの物資が大量に運ばれ、みんな遊んでいる。リーダーは不明。

 

 みんなの報告を聞く限り、葛城クラスと一之瀬クラスは真面目に試験に取り組んでいるようだが、龍園クラスはオレ達と全く同じ考えらしい。

 

 つまりリタイア狙いだな。

 

 恐らくポイントを使い尽くして物資を大量に購入して他のクラスに横流しする。

 

 その代価として取引相手からPPなりなんなりを獲得して自分たちは早々にリタイアってとこか。

 

 まあ普通そうなるよな。

 

 こんな暑い中で一週間も無人島生活なんて正気の沙汰じゃない。

 

 そんな過酷な試験にも真面目に取り組もうとしてるのが旧A・Bクラスで、アホらしいから旨味だけ狙おうというのが旧C・Dクラス。

 

 なんか性格が出てるな。

 

 もしかしたら龍園クラスとは気が合うのかもしれない。

 

 春麗は絶対に龍園を許さないだろうが。

 

 オレ達は龍園という男がどういう男なのかもう知ってる。

 

 暴力でクラスを支配し、生徒を従えていると。

 

 伊吹の件は証拠が残ってないから目を瞑ってやってるが、犯人が龍園であるのはほぼ間違いない。

 

 他の生徒も龍園の暴力に屈しているはずだ。

 

 きっと対峙したら面倒なことになるんだろうな……

 

 まあそれより今は試験をどうするかだな。

 

 

 

「それよりどうしようか。もう拠点として使えそうな場所はなさそうだけど」

 

 

 

 平田の言う通り有用そうな場所は他のクラスにとられてしまっている。

 

 出遅れたから当たり前だ。

 

 この試験に参加する事すら難しそうな状況のようだが、春麗は何か策を思いついたらしい。

 

 試験にきちんと参加して尚且つポイントが残せそうな策を。

 

 その策が今オレ達に伝えられているわけなんだが……

 

 その策を聞いたときにオレは思わず天を仰いだ。

 

 みんなも苦い顔をしている。

 

 コイツはえげつないことを考えるな。

 

 やはり女王はどこまでいっても女王だったらしい。

 

 そしてその策が通用するか確認するために、春麗は茶柱にとある質問をしていた。

 

 

 

「仮に所有者がいなくなった物資の所有権はどうなりますか?」

 

「いなくなるとはどういう状態だ? それ次第で答えが変わるので何とも言えないが」

 

「ポイントを消費して物資の所有権を獲得したはずのクラス全員が試験から離脱した場合です」

 

「その場合は誰のものにもならない。いかなる理由であろうとも、クラス全員が試験から離脱したクラスは物資の所有権を放棄したものと判断される」

 

「分かりました。物資自体は学校側が回収しますか?」

 

「最終的には学校側が回収するが、それは試験終了後となる。そのため試験中は所有権が失われた物資だけがそのまま放置されることになるわけだが、それを誰がどう使おうが構わない」

 

「つまり試験中であれば、それを私たちが勝手に使用しても略奪行為には該当しないという解釈であってますね?」

 

「もちろんだ」

 

 

 

 茶柱の目が、わずかに細められた。

 

 その表情には、驚きと……そして何か別の感情が浮かんでいるように見えた。

 

 なるほどな。

 

 この試験、どうやら面白くなってきたようだ。

 

 

 

 

 

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